2008年12月29日月曜日

第四十八夜/スギから生まれたカシの木?


 今年最後のお墓参りに行く。お墓のすぐ横の杉の木を見るとやや不思議・・・よく見ると幹の途中から別の木が生えている(写真下)。今までぜんぜん気づかなかった。さて別の木とは「アラカシ」、つまり常緑性のドングリの木である。杉の木の周りを見てもアラカシは生えていない。ドングリが風に乗って杉の木の洞(うろ)に飛び込むこともあり得ない。きっと小鳥などの小動物が杉の木の洞(うろ)にドングリを隠して、その実が芽生えたのだろう。さて次の疑問、このカシの木は一本か、何本かの芽生えだろうか?カシの根元(つまり杉の木の幹)をみるとこぶ状になって、そこから細い枝が何本も生えている。カシの木の仲間は、枝や幹を伐られたとしても細い芽(ひこばえ)をだして(このことを萌芽=ほうがと呼ぶ)株状になる特性が強い。このカシの木を見ると以前に伐られた様子もあまりうかがえない。ひょっとすると小鳥が冬支度のために洞(うろ)に蓄えたドングリがいっせいに芽生えたのかもしれない。しかしカケスやリスが実の実を洞に隠すことはあるが、この街中の墓地で他の動物でこんなことをするのがいるのか?今後、どんな成長を見せてくれるのか、お墓参りの時の楽しみが増えた。一本の木を見て頭の中ではいろいろなシーンが想像された。【2008/12/29】Photo:@京都市左京区黒谷

2008年12月18日木曜日

第四十七夜/モズのはやにえ(カマキリ)

栗東の里山でアキアカネを見つける。12月も半分過ぎたと言うのに元気に飛んでいる、通常は夏前に羽化するのでもう半年近く生きていることになる。そんなアキアカネの写真を撮ろうとしていたら目の前にあったのが「モズのはやにえ」。生きものの写真を撮っていると良くあること。一度、目にする(見つける)と続けざまに見つかる。例えいなくても何となく気配があるとか、いそうな気がするとか(この「感じ」はけっこう当る)。今回もそれに近い。アキアカネを見つけるまでは、「こんな場所にはやにえ、ありそうだな」と思っていた。この「はやにえ」は、コカマキリのようだ。すでに頭とカマの部分(前脚)は無くなっているが、後ろ足と羽、残された体の形で判る。さて・・気がつけば、アキアカネはどこかへ飛び去ってしまった。
【2008/12/18】Photo:2008/12/14 @こんぜ桃源郷こんこん山(栗東市井上)

2008年12月10日水曜日

第四十六夜/モズのはやにえ(早贄)


 アートギャラリーの小さな庭で『モズのはやにえ(早贄)』を見つける。『モズのはやにえ)』とは、モズが捕らえた獲物の小動物を木などの先端にさしておいたもの。庭では高さ2m程度のムクゲの木の枝先に2匹のバッタが刺されていた。果たして冬の保存食として利用するのかは定かではないが、春になる頃にはあまり見つからないことを考えると少しは利用されているかも知れない(もちろん忘れられているものも多い)。はやにえはモズの縄張りとも関係するのか、同じ場所で複数見つかることが多い。今回、見つけたのはコバネイナゴ(上)とオンブバッタ(下)。その他、よく見るメニューは、トカゲ、カエル、オタマジャクシ、イモムシ、カマキリなど。以前、小さなネズミのはやにえも見つけた。変わったものでは小魚、大物としては小鳥もメニューとして上がる。こうなればモズは、日本最小の猛禽類(もうきんるい=タカやワシの仲間)と言ってもおかしくない。【2008/12/10】
Photo 2008/12/10 @近江八幡市ボーダレス・アートギャラリーNO-MAの庭

2008年11月24日月曜日

第四十五夜/ニホンアカガエル

近江八幡市の近江奥島の森に出かける。林縁のほとんど、そして芝生の一部がずたずたに掘り起こされている。よく見ると一面にイノシシの足跡が残る。芝生広場から林縁へ、そして小川を越え林内にいく筋にもつづく獣道。作物のない公園とはいえイノシシの被害が尋常でない、夜の様子も想像出来る。もし周辺に農地があったとしたらその被害は簡単に想像出来る。イノシシは果たしてなにを探していたのだろうか。イノシシの荒らした林縁を歩いていると足下から一匹のカエルが飛出した。目の後ろから背中に続く線の様子からこれはおそらくニホンアカガエル。こんな小さなカエルもイノシシ達にとってはごちそうなんだろうなと思う。カエルは草むらに戻っていったが、無事生き延びることが出来るか心配だ。【2008/11/23】
Photo : 2008/11/23 @滋賀県近江八幡市近江奥島の森

2008年10月28日火曜日

第四十四夜/イタチ

第四十二夜(10月17日)の「交通事故死のウグイス」を拾った近くで今夜はイタチ(大きさからチョウセンイタチと思う)に遭遇。道路を跳ねるように転がるように目の前を左側から右側に横切ってきた。ちょうど止めてあった自転車の近くでこちらを見ていたのでカメラを急いで取り出す、残念ながらイタチはブロックの隙間に飛び込む、しかしまだこちらの動きをうかがっている。なんとか一枚だけ撮る。なにぶんとっさの出来ごとと暗い場所なのでぼんやりしている。ヤマブキ色のきれいで大きな個体(40cm近くあるようだ)だった。イタチと言えば子どもの頃、手足付きの毛皮が(姿のまま)女性用マフラー(襟巻きって呼んだ気がする)になっていたことを思い出す。ちょうど口の部分がクリップになっていて、首に巻いたときイタチの腰の辺りをはさむことが出来た。もちろん僕の母も持っていた。これを僕は実際の生きているイタチを想像しながら触れているのが好きだったことを思い出す。【2008/10/27】
Photo : 赤丸の中央の黄色いものがこちらを見ているイタチの顔 @京都市左京区聖護院

2008年10月24日金曜日

第四十三夜/カマキリの夜は更ける

近江八幡市にある近江兄弟社小学校の穴窯(作陶用の窯)に連日、薪がくべられている。今日はそんな穴窯の作業を見に行った。穴窯のある場所まで田んぼ沿いの暗い道を歩いていった。驚くことに2kmも前から風の中に窯から出る煙のにおいが漂っていた、においは近づくにつれ濃厚になる。行ってみる子どもたちが真っ赤に燃える穴窯の中に薪を投げ入れている。なんともダイナミックな火遊びだ。そんな作業を離れた場所で眺めていた時、穴窯の光に照らされたネットにオオカマキリのシルエットを見つける。電気に誘われた虫がネットに止まるのを待っているのか、しきりに歩き回っている。そんなところを子どもたちに見つかってしまった。子どもたちが手を伸ばすと一瞬早く草むらにぽとりと落ちて闇に身を隠した。【2008/10/24】
Photo : オオカマキリ(♀)2008/10/24 @近江八幡市北之庄

2008年10月17日金曜日

第四十二夜/交通事故のウグイス

夜、仕事帰りに近くの店まで買い物、道路の真ん中に何かが落ちている。見ると交通事故死のウグイスだった。今しがた事故にあったらしい、まだ羽や脚が柔らかい。ちょうど神社の向かいだったので路面から拾い上げ近くの生垣の下におく。さて買い物から戻り、事故死のウグイスを見ると跡形も無い。この間、10分ぐらい。この辺りで道路を横切るイタチをたびたび目撃、この鳥もイタチが持っていったのか。死して他者の糧となる、悲しいなかにもなんだかほっとする。前回のキジバトと偶然に鳥の話しが続いた。【2008/10/17】
Photo : 事故死のウグイス 2008/10/17@京都市左京区聖護院

2008年10月16日木曜日

第四十一夜/キジバト

大好きな俳優・緒方拳さんがさる5日に世を去った。人間の死って突然来るものなのだと思う。こんな時、自分もいつか体験する死におきかえて考える。以前、自宅の近くの真如堂の森でうずくまるキジバトを見つけた。体には外傷の一つも見当たらないがまったく身動き一つしない。鮮やかな目の瞳孔にはあきらめや怯えの表情も無い、それどころか穏やかな表情だった。自分にやがて訪れる「なにか」をすでに悟っているのか。僕はしばらくこのキジバトのそばにいたが、なにもせず森を後にした。こんな時はいつも、今までに自分の手の中で息を引き取っていった数多くの鳥達のことを想い出す。そしてこの森を通る度に死んでしまった鳥たち(何度か埋めた森でもあるから)やこのキジバトのことを想い出す。
【2008/10/16】Photo : キジバト@京都市左京区真如堂2007年秋

2008年10月15日水曜日

第四十夜/楽しい稲刈り・マムシにご用心

稲刈りのシーズンも盛りを過ぎた。かつて丘陵地の水田で稲を刈っていた時に出てきたのがこの写真のマムシ(45cm以上あったので大きな個体)。周りから稲を刈ったものだから最後に刈り残った場所から飛び出てきた。おおっマムシだ!すると今度は僕の脇から農家のおじいさんが飛び出てきて、すかさず鎌の柄で一撃、首の骨を折られたマムシは近くの小川で皮をはがされておじいさんにとって一番の収穫物となった(その夜の酒の肴=蒲焼きになったかな)。周りでそれをみていたおばあさんたちの手にはビニール袋が握られ、中には沢山のイナゴが入っていた。無農薬の水田には、昆虫がいっぱい来る、それを求めてカエルもやって来る、カエルを求めてヘビもやって来る、カエルやヘビを狙ってあぜ道にはサギが歩き、上空ではタカが飛んでいる。生きものが賑やかだから子どもたちも楽しい。みんな幸せなのがこんな田んぼ。マムシには気の毒だが、いろいろなことを気づかせてくれた。これから稲刈りをする方はマムシに注意しましょう。
【2008/10/15】 Photo : 鎌の柄の一撃でぐったりしたマムシ、特徴ある模様がよく判る。@茨城県金砂郷町

2008年10月13日月曜日

第三十九夜/生きもの速報・続報! クロマダラソテツシジミ

徹夜続きのぼんやりした頭を庭でさましていた時、目に入ったのがこのシジミチョウ、こんな小さな小さな庭にまでやってきたとは驚きだった。どうしてかと言うと僕の庭には、このチョウの食樹のソテツの苗が一鉢あるからだ。はたしてこの小さなソテツ(長さ15cmの葉っぱが3枚ぽっきり)に誘われて来たのだろうか、もしそうだとしたらすごい能力だ。幸い(不幸にも?)ソテツの新芽にまだ卵は見つからない。この個体は先日、宝塚で見たもの(10月6日)よりもずっと翅がいたんでいる、どこからやってきたんだろうか。ソテツもある、花もある、当分庭にいそうな気配だ。【2008/10/13】
Photo : クロマダラソテツシジミ(♀)@京都市左京区岡崎

2008年10月12日日曜日

第三十八夜/カナヘビの昼寝

葉っぱの上の昼寝中のカナヘビを見つける。自分の尾っぽを枕にいかにも気持良さそうな感じ。身近な「は虫類」にカナヘビ(正確にはニホンカナヘビ)とトカゲ(こちらは正確にはニホントカゲ)がいる、たびたび混同されるが、皮膚がざらざらしているのがカナヘビ、ツルツルしているのがトカゲ。カナヘビは木登りも上手く、体と尾の比率がトカゲよりも長い、そのためかトカゲよりもずっとスリムな体型。顔の感じは、トカゲよりもいっそう精悍で「恐竜」に近い感じ。このカナヘビもなかなかいい顔つきだった。【2008/10/11】
Photo : @京都市左京区黒谷

2008年10月11日土曜日

第三十七夜/挑戦をうけたチョウセンカマキリ


滋賀県近江八幡市にあるアートギャラリーの玄関にチョウセンカマキリを発見。遊びにきていた友人K君の愛娘Tちゃん(2歳)が先手のお腹わしづかみ、この突然の挑戦に驚いたカマキリは両腕の鎌ですかさず反撃。今度はこの鎌の鋭さに驚きひるんだTちゃん、カマキリを放り出す。なかなか面白いシーンだった。多分、両者にとってもこの出会いは予想外だったはず。このあと両者、場所をあらため再度対面で和解。Tちゃん自己紹介と共にお腹わしづかみの失礼をわびる。生きものと接する時はこれが大切。一件落着、カマキリはススキの株に戻っていったのでした。【2008/10/11】
Photo上/カメラのレンズに映る自分を攻撃するカマキリ.
Photo下/Tちゃんから逃れたカマキリ、その後もTちゃんを見る。その驚きがうかがえる?「なんやあいつ、ああっビックリした!」 カマキリってすごく表情のある虫だ.
@滋賀県近江八幡市ボーダレスアートギャラリーNO-MA

2008年10月10日金曜日

第三十六夜/いつも三歩先行くハンミョウ

ハンミョウは真夏を代表する昆虫だと思う。お盆の頃、墓参りに行くといつも墓地の路やお寺の境内で見られた甲虫だ。こちらが歩く足下から飛び立ち、数メートル飛ぶと地面に止まり、こちらに体を向ける。こちらがまた近づくと再び同じように飛び立つ。まるでこちらの行き先を知っているようだ。この動作を何度となく繰り返すので「ミチオシエ(みち教え)」と呼ぶのだと子どもの頃、父に教えてもらった。この虫に出会うといつもあの頃の炎天下の墓参りを想い出す。特異でハデな体色も太陽の下、照り返しの強い砂利の地面に止まっていると保護色になる。一旦地面に止まると見つけにくい。飛び立って初めていた場所を知ることになる。顔の写真は撮れなかったが、鋭い大アゴを持っていてなかなか迫力のある面構えだ。成虫はハエなどを、幼虫は地面に開けた孔にひそみ近づく昆虫を食べる。今回は炎天下、自分とカメラのバッテリー切れで負けた。やっと撮った一枚、飛び立とうとするハンミョウの後ろ姿。【2008/10/10】
Photo: 2008/10/04 @京都市左京区真如堂墓地

2008年10月9日木曜日

第三十五夜/いったいどうした?イナゴとサビキコリ


クヌギの枝先にコバネイナゴを見つける、そしてその鼻先にはサビキコリ(コメツキムシの一種、茶色の虫が枝先にしがみついている)が・・・。面白いシーンに出会った。イナゴのピンと立った触角、つり上がった目、口のモグモグ感、そして前脚の立ち位置、かたやサビキコリはイナゴに背を向け何かを耐えている態度。どれをとっても怒ったイナゴがコメツキムシに説教をしているか、強面(こわもて)で言い寄っているとしか見えない。いったいこの二匹の間に何があったんだろう。僕たち人間が判らないだけで実際に彼らはなんらかの手段で会話をしているかも知れない。こんな場面に出くわした時には物語を考えてみればいい。君ならどんなお話を作る?【2008/10/09】
Photo : 左/コバネイナゴ、右/サビキコリ 2008/10/09 @滋賀県近江八幡市北之庄

2008年10月8日水曜日

第三十四夜/祈りのイモ虫(キアゲハの幼虫)

ある庭園でフェンネルの葉にキアゲハ(*1)の幼虫を見つける。第二十夜では、黒いクロアゲハの方がキアゲハよりも彩りがゆたかと書いた。しかし幼虫時代はクロアゲハよりもずっとハデで、毒々しささえ感じるほどだ。実際に食草のセリ科(ニンジンの仲間を食べる)の植物は幾分、葉に独特の風味(くせ)がある。おそらく幼虫はこの葉に含まれている「風味=くせ」を体内に蓄えていて、とてもまずいに違いない。やはりこの毒々しさは当ってるのか。鳥などの捕食者(ほしょくしゃ)に対して「私はとってもまずいよ」もしくは「私を食べるとひどいことになるよ」警告しているのだろう。アゲハチョウやクロアゲハの幼虫と模様はずいぶん違うが体型は同じ、やはり頭を触ると臭い角を出す。この幼虫は体の大きな割には食べている草の葉(ニンジンの仲間)が細いので、その葉先で止まっている姿は胸前で手を合わせ、なにかを祈っているかのようだ。【2008/10/08】
Photo : キアゲハの終齢(しゅうれい)幼虫 2008/10/06@兵庫県宝塚市 
*1 成虫は第十三夜をご覧下さい。

2008年10月7日火曜日

第三十三夜/コカマキリ

ブログを見た友人より是非「カマキリ」をとの要望があったので今夜はコカマキリ(小蟷螂)が登場。この小型のカマキリは、草原で見るオオカマキリやチョウセンカマキリの半分ぐらいの大きさでスリムな体型。草原よりも林縁や民家の周りでよく見る。前脚(鎌の部分)の内側に茶色とクリーム色の斑紋が特徴。形も大きさも色も違うが、ギョロリと向く様はやっぱりカマキリのそれだ。写真を撮るために近づくと最初は鎌を構えて威嚇(いかく)するが、スキをみてジャンプして逃げてしまう。意外にすばしっこいので写真を撮るには最初が肝心。【2008/10/07】
Photo : 2008/10/04 @京都市左京区真如堂

第三十二夜/いきもの速報「クロマダラソテツシジミ」

今日は仕事で宝塚にいった。そこで見たことも無い蝶を見つける、飛ぶ姿(雰囲気)がちょっと違う「???」。一応、仕事中なのでゆっくり写真も撮れない、幸い数枚だけ写真にきっちり納めることが出来た。さて、家にもどって写真を見ると一度だけマレイシアで見たことのあるチョウに非常に似ている。図鑑で確認すると「クロマダラソテツシジミ」と判明! この蝶は、過去に沖縄などで迷蝶(*1)として確認されている。2007年より沖縄本島、鹿児島以北で、さらに秋には関西でも見つかった。続いて2008年になって宝塚で確認された。日本で確認されてる場所は、極めて局地的、その分布をみると食樹(*2)のソテツの分布にあっている。もちろんソテツは宝塚には自生していないので、宝塚での発生は鹿児島あたりから庭園用に運ばれてきたソテツに幼虫か蛹が付いていたと考えられている。東南アジアの蝶なので寒さに弱いが、今年見つかった個体は、昨年確認された個体が繁殖している可能性が強い。はたしてこのままこの地に定着するのか、いずれ越冬中に死んでしまうのか注目される。しかし、まだまだ謎の多い蝶らしい。今後の動向が気になる(・・・のは僕だけか?)。
【2008/10/06】
Photo : 2008/10/06 @兵庫県宝塚市
*1 迷蝶:台風などの影響で本来の生息地から遠く離れた地域まで運ばれてきた蝶。多くの場合は、生息環境が適していないのでその発生は一過性に終わる。
*2 食樹(しょくじゅ):幼虫の食べる樹木、草本類(そうほんるい=草)を食べる場合は「食草(しょくそう)」と呼ぶ。

2008年10月6日月曜日

第三十一夜/クマバチ

石の上にクマバチ(♀)が一頭止まっている、動きは緩慢、もう飛ぶことは出来ないようだ。クマバチの体は、名前のように胸(背中)のところだけ黄色い毛だがあとは体も脚にも全身黒い毛がびっしりと生えて確かに熊のようだ。このクマバチはメス、巣の孔をなんども行き来したのだろう背中の黄色い毛はすっかりすり切れている。
クマバチは木造の建物(例えばお寺や神社)の垂木や柱、枯れた木の枝に直径10〜15mmぐらいの孔を掘って中に卵を産む。成虫で越冬するのでこの個体は昨年生まれて今年精一杯生きたのだろう。地域によってスズメバチを「クマバチ」と呼ぶので、このクマバチも危険だと思われるがこちらはいたっておとなしい。【2008/10/06】
Photo : 2008/10/04 @京都市左京区真如堂

2008年10月5日日曜日

第三十夜/ヒラタシデムシの幼虫

この奇妙なダンゴムシみたいな虫は、ヒラタシデムシの幼虫だ。親子共に生きものの死体や腐肉を食べている。いわばアフリカ・サバンナのハゲタカやハイエナの様な存在。背の低い草地に落ちている木の枝が唯一の高台なのか、その高台にのって体全身で餌の有りかを探っているようだった。触覚を前上方に広げ口をもぐもぐさせている、体はバランスをとって精一杯立ち上げている。この幼虫を見ると宮崎駿の「風の谷のナウシカ」に登場する「王蟲(オウム)」を連想する。時々、王蟲はその体型からダンゴムシに思われるふしもあるが、本当はこのシデムシの幼虫こそオウムのモデルだろう。(映画を見た時にこいつが出ていると思った。こんなことは多分、だれも言っていないので今日が本説の公式発表かな)実際に食べるものも「腐海」のことばからイメージ出来る「腐肉」だし、その走る様子も実によく似ている。宮崎駿監督は、根っからの虫好きだ。この虫の存在ぐらいはご存知のはずだ。余談だが、「天空の城ラピュタ」に登場する「ロボット庭師」(手が長くて主人公たちを城に案内する)は、中国の伝説に登場する「セミ」に酷似している。さすが宮崎監督これもご存知だったようだ。こちらも未公表論。
【2008/10/05】Photo : ヒラタシデムシの幼虫 体長30〜35mm。2008/09/27 @京都御苑

2008年10月4日土曜日

第二十九夜/ニホンミツバチとキイロスズメバチ

京都御苑の東辺・清和院御門近くのイチョウにニホンミツバチが営巣している。巣の入口は地際。どうしているかと見に行くと、巣の入口近くにキイロスズメバチの死骸がいくつも横たわっている。1週間前に行った時は見つけていないのでキイロススメバチがミツバチの巣を襲ったのは最近のことだろう。昆虫の中では驚異的に強いスズメバチだが、自然の中では強い者が必ず勝つとは言えない。ニホンミツバチは、巣を襲うスズメバチを多数の個体で団子状におおいかぶさり、体を動かすことにより発生した熱で温圧死させてしまう。これはミツバチ達がスズメバチの上限致死温度が自分たちよりも数度低いことを利用した抵抗・防御手段。このようなニホンミツバチだが本来はとてもおとなしく、指が触れるほど近寄っても、つまんだりいたずらしない限り刺されることはまず無い。【2008/10/03】
Photo : ニホンミツバチの巣の入口に横たわるキイロスズメバチの死骸 @京都御苑・清和院御門近く

2008年10月3日金曜日

第二十八夜/庭の極小戦闘機・イチモンジセセリ

今日は僕が好きな蝶の一つセセリチョウの仲間のイチモンジセセリ、幼虫がイネ、ススキ、エノコログサなど身近な野草を食べるので都会の真ん中から、田んぼや高原に至るまで様々な環境で見られ、個体数も極めて多い普通種(ふつうしゅ)。セセリチョウの仲間の触覚は、他の蝶のように丸くなくて先が飴細工のように伸びているのが特徴。頭でっかち、目は大きくしかも離れている、顔は細かな毛におおわれていてどことなくぬいぐるみのようだ。この蝶の特徴は、後翅に白い斑点がつながった一文字模様(これが名前の由来)、他のセセリチョウと同様、チョウにしては胴体が太く色合いも地味なので、よくガの仲間と間違われる。昼間、部屋の中に蛾が入ってきたといってよく騒がれるのがこれ。すごく速く、直線的に飛び、近くを飛びすぎる時は「ぶんーん」って羽音がする、まるで庭の極小の戦闘機みたい。茶色で地味な色の翅と体だが、太陽の光の具合によっては少し青みがかって見える時もある。なかなか渋さの効いた蝶である。【2008/10/03】
Photo : セージの花に来たイチモンジセセリ。この角度からみると一番、翅の模様がよく判る。@京都市左京区岡崎

2008年10月2日木曜日

第二十七夜/餌探しも大変だ・センチコガネ


先日、京都御苑でセンチコガネの死骸を園路で見つけた。頭に鋭利なもの(鳥のくちばしのような感じ)でグサリと刺したような跡がある。果たして鳥の仕業かどうかは判らない。このセンチコガネは、動物の糞を主食に腐ったキノコや果物なども食べている。生態的な話しの中で、(本来はもう少し説明がいるが)植物は「生産者」、動物が「消費者」と位置づけられている。このコガネムシは「消費者」の中でも、ゴミ・不要物(例えば、糞や死体)を消費する「分解者」。この分解者がいて初めて、自然の有機物が「生産者」に戻される。だからこのコガネムシがいることは健康な自然であることを意味する。このコガネムシは、ここの森の中で動物の排泄物を食べて分解を早くする大切な役割を持っている、といってもここでは主に犬の糞に依存しているようだ。しかし近年は、犬の飼い主の(糞の)始末が良いために少なくなっていると思える。たとえ犬の糞があったとしても最近のものは、ドライフードのために変な糞(飼い主にとっては固くて乾燥気味なので拾いやすい)が多く、しかも臭いも少ない。こんな糞はこの分解者が好きでないらしく、いつまでも放置状態にある。偶然だろうか、このセンチコガネの死骸は公衆便所の横で見つけた。この森の中で動物の糞を見つけるもの容易でなさそうだ。【2008/10/02】
Photo : 2008/09/27 @京都御苑・清和院御門近く

第二十六夜/今年もやって来たキチョウ

今年もキチョウが庭にやって来た。毎年、今の時期に咲くセージの花がお目当てらしい。セージの花の周りにいつも飛んでいる。時々、レモンやアジサイの葉っぱの裏に止まっているのは、越冬(えっとう)の場所を探しているようだ。なん箇所かの同じ葉っぱを交互に選んで止まると言うことは、キチョウの頭の中には庭の地図がちゃんと出来いると思って間違いない。キチョウは、モンシロチョウと同じシロチョウの仲間だが成虫で冬越しする変わり者。昨年は2頭(または2匹)がレモンの葉っぱに止まったまま、12月頃から春までいた。不思議なことにこの黄色い翅が保護色になり、葉っぱの裏に止まっているとなかなか見つけられない。さて今年の個体はどこで冬超しをするのか楽しみだ。今のキチョウは、春までの三ヶ月間寒い季節を乗り切るために11月末まで咲き続けるセージの蜜をせっせと吸い続けるだろう。【2008/10/01】
Photo : セージの密を吸うキチョウ@京都市左京区岡崎

2008年10月1日水曜日

第二十五夜/マシュマロのようなオオゴムタケ

京都御苑・母と子の森の朽木でキセルガイを探していた時におもしろものを発見。それは朽木のほどよくこなれた部分から出ていた。形は火鉢、質感は黒いマシュマロのような感じである。触ってみると想像通り少し固いがマシュマロの感触。小さなキノコらしい。早速、写真をキノコ専門家のS先生に送る。のちに「オオゴムタケの幼菌(らしい)」と返事を頂く。名前に加えてキノコをカットすれば中身は透明性のゼラチン質の組織が見え、火鉢状の内側に胞子を作るとも教えて頂いた。調べてみると「チャワンタケ」の仲間とある、火鉢ではなく「茶碗」だった。しかし、じっくりと見ていると水木しげるの描く妖怪のような気配があって、それは今にも歩き出しそうだった。京都御苑は歩く先から面白い生きものと出会える。【2008/09/30】
Photo : 2008/09/27 オオゴムタケ 直径25mm 高さ15mm程度@京都御苑・母と子の森

2008年9月28日日曜日

第二十四夜/渡りをする蝶・アサギマダラ

ちょうど2年前のこの頃、知っている方から庭に見たことも無い蝶がいるからすぐに見に来てと言われいってみると、庭木にとまっていたのがこの蝶。名前は「アサギマダラ」と言う、「浅葱色(浅黄色、あさぎいろ)のマダラ蝶」の意味。体はマダラチョウの仲間の特徴であるマダラ模様を持ち、翅の薄緑色の部分は半透明で鱗粉がなく透けてみえる。この仲間は南方系の蝶で日本ではこのアサギマダラ以外は南西諸島までいかないといない。この蝶は秋になると越冬の為に南西諸島に向けて渡りをすることで知られている。この時も渡りの途中の休息だったと思う。この写真の後、翅裏に場所と日付、イニシャルをマジックで書いて放蝶した。これから10月中頃まで渡りが続く、秋晴れの日にこの小さな蝶の渡りを想像するのもいいものでしょ。アメリカ大陸ではこの蝶の仲間・オオカバマダラがカナダやロッキー山脈の広い地域から越冬のためにカリフォルニアやメキシコの限られた地域まで渡りをすることで知られている。【2008/09/28】
Photo:アサギマダラ(♂)=後翅の下にこげたような茶色の斑紋が♂の目印(このような雄雌の違いを示す模様や紋を性斑(せいはん)と呼ぶ)。旅疲れかちょっと元気がないようだった。

2008年9月27日土曜日

第二十三夜/時期遅れのアブラゼミ












 京都御苑の森の中を散歩していると園路の真ん中の小さな孔に何かが引っ込んだ。近づくと孔の中にはセミの幼虫が外の様子をうかがっている。時々頭を出して周りを見ている。人が近づくと孔の奥のほうに隠れる。セミは羽化のために地表面まで孔を掘って来たけど、なんとそこは園路のど真ん中だったという訳。孔の際で静かに待ってみた。地面の振動も影響するようでかすかな振動で出て来ない。さらに待つこと数分、セミの幼虫は孔から出始めた。途中で体のどこかが引っかかって上手く抜け出せない。こうなればもう孔には戻れない、身をくねって脱出を試みている、スポッと抜けたかと思うと勢い余って背中からひっくり返ってしまった。気を取り直し、周りを見渡し今度は近くの木まで走り始めた。結構、よく周りの様子が見えているらしい。セミには気の毒だが笑えるシーンだった。もうセミの声はぜんぜん聴こえない、このセミはたして大丈夫なんだろうか。【2005/09/27】
Photo上から順番に:
1)大丈夫かな?
2)今だ!よし出るぞ!
3)よいしょ、よいしょ、
4)よいしょ、もう一息、
5)出た!こてん!あれっ?
6)あそこに木がある急げ! 
アブラゼミ(♀)@京都御苑

2008年9月26日金曜日

第二十二夜/目玉模様はヒカゲチョウ

昼食を済ませ、ふと店の外を見ると外テーブルのイスに一頭のチョウがとまっていた。天気は雨上がりで気温も低い、普段は元気で写真を撮るにも近づきにくいヒカゲチョウも今日ばかりは動きが鈍い。このチョウは花には来ずにもっぱら樹液や腐った果実、時にはカエル等の死骸(しがい)に集る。樹皮や地面では目立ちにくい翅色もプラスチックのイスではさすがに目立つ。ヒカゲチョウの仲間は地味ではあるが、翅の目玉模様(めだまもよう)がそれぞれ種類ごとに違って面白い。このチョウの仲間は、後翅(うしろばね)の目玉模様がピンセットでつまんだような形に無くなっている個体を良く見かける。これは捕食者(ほしょくしゃ)の鳥がこの目玉模様の部分をねらって来るからと言われている。しかし見ようによっては二つの目がこちらを見ているようでもある。いずれにせよこのチョウを見つけた鳥は、この目玉を見て何かを考えるだろう。この個体は翅の鱗粉(りんぷん)が薄くなっているが、幸いまだ大丈夫なようだ。【2008/09/26】
Photo:ヒカゲチョウ(ナミヒカゲ)@滋賀県近江八幡

2008年9月25日木曜日

第二十一夜/路上で拾ったコシボソヤンマ

交通事故(?)で死んだトンボを拾った(鴨川の近くの横断歩道上)。オニヤンマをずっと小さくした様なトンボだが、すこしずんぐりとした体つき、胸と腹(しっぽの部分)の間のくびれが特徴的。車にひかれて腰つきがおかしくなったのではない。これがオリジナル。調べてみると「コシボソヤンマ」とすぐに判った。川辺を飛んでいたらきっと見つからない、気づかなかっただろう、生きていたらさぞきれいだろうと思う。鴨川にはこんなトンボもいるんだ。【2008/09/25】

2008年9月23日火曜日

第二十夜/クロアゲハ

前回、キアゲハ(第十三夜)を紹介した後に「黄色の次はやっぱり黒色かな」と思っていたら、ナガサキアゲハ(第十七夜)の後に「クロアゲハってどんなの?」との問合せをいただいた。せっかくなので紹介しておきます。これがクロアゲハ(夏型♀)、以前に羽化したばかりの個体を道ばたで見つけたもの。後翅の先に尾っぽのようなところ(尾状突起)がナガサキアゲハとの違い。(でもこれは日本での話し、お国が変わればナガサキアゲハにも尾っぽが出たり、クロアゲハの尾っぽが無くなったりします)「クロ」といっても見る角度から翅の色が違って見えたり、写真のように白い部分があったり、赤い紋の大きさが変わったりなかなかきれい、むしろキアゲハよりもずっとハデな(彩りがゆたか)感じがする。特に写真のように羽化したばかりの個体は見とれるばかりの美しさ。林縁や少し暗い林間を緩やかに飛ぶ。【2008/09/24】

第十九夜/森に住む貝・キセルガイ

京都御苑には、迎賓館のすぐ北側に「母と子の森」と言う場所がある。少し小高くなった場所に大きな木が地面に置かれている。倒木は、昆虫やキノコに食べられ長い時間をかけて土に帰っていく。これは自然の仕組みを知るための大切な展示物である。ぼろぼろになった表面を見ると長さ1cmぐらいの細長い貝が沢山いた。朽木を食べている。これは陸産貝:りくさんがい(または陸貝:りくがい)と呼ばれる貝の仲間、カタツムリも同じ仲間。写真の小さな貝は、キセル(タバコを吸う道具)に形が似ているから「キセルガイ」と呼ばれる。キセルガイといっても何種類もいる、詳しい名前は判らない。ここ京都御苑には、10数種類の陸産貝が棲んでいるというがその名前も生活の様子もくわしいことは判らない。この小さな彼らは移動が苦手、環境の変化も苦手、だから彼らにとってここの一本の倒木は大きな世界、産まれてから死ぬまでここを出ることも無いかも知れない。これからはこの小さな生きものを気にかけて歩こうと思った。【2008/09/23】
Photo:2008/09/23 @京都御苑・母と子の森

2008年9月21日日曜日

第十八夜/ツチガエル

雨後のしっとりとした京都御苑の自然環境を見て歩いた。樹林に囲まれた池でツチガエルを見る。何年ぶりに見ただろうか、昔は家の回りの雨樋の桝やドブみたいな場所にも何処にも沢山いたのにいつの間にか姿を消してしまった。その頃は土の地面も、雨が降ればあふれる溝もあちこちにあった。家のすぐ近くでいくらでも採れた。家が建ち変り、地面が舗装されて、雨水はすぐに道路の下に消えるようになってしまった。カエルも消えてしまった。イボガエルとも呼んだ記憶がある(触ってもイボなんて移らないのに)。御苑の池のカエルたちは、水辺の周りの草地にたくさんいた。踏みつけないように注意して歩く。草地には餌となる小さな昆虫も沢山いた。彼らにはもうすぐ冬眠と言う作業が待っている、今のうちに沢山食べておかなければいけない。今日は、渡りをするフクロウの仲間・アオバズクの若鳥も見ることが出来た。こちらはもうすぐ南の国に渡ると言う大きな試練が待っている。今日の御苑は、大文字山の借景と低く流れる雲そして近景の赤松林の風景がひときわ美しかった。【2008/09/21】
Photo:@京都御苑・トンボ池

2008年9月19日金曜日

第十七夜/南から来たナガサキアゲハ

近年、南から生息域を広げてくる昆虫が多い。人為的に生息域を広げた訳ではなく、自らの力で風に乗り、海を越え、あるいは陸地伝いに転々と棲み場を広げて来た。先に紹介したツマグロヒョウモンのようにこの黒い大型のアゲハチョウも同じ。10年近く前から関西でも目につくようになり、今では確実に生息している。もともといた大型の黒いアゲハチョウ=クロアゲハは林縁もしくは林間の少し暗い・涼しい場所を好んで飛ぶのに対して、このチョウは夏の暑い日に炎天下を飛ぶことで目にすることが多い。例えば夏の学校のグラウンドを横切る黒いチョウをみればおそらくこのナガサキアゲハだろう。一見、クロアゲハに似ているが、後翅の端部が長くなっている(尾状突起といいます)クロアゲハに対して、こちらは端部が丸く、尾っぽのようなものが無い。雄の裏翅の基部には赤い紋がある、雌は後翅に白と赤い紋があるので簡単に区別がつく。写真の個体(ナガサキアゲハ♂)は、羽化時のトラブルだろうか、失敗し前翅が十分に伸びきらず硬化してしまった、残念ながら飛ぶことは出来ない。草むらを歩いていたためせっかくの美しい翅もぼろぼろになっていた。【2008/09/20】
Photo:@近江八幡

第十六夜/蚊に刺されると本当に痒いか?

仕事をしていると一匹の蚊がしきりにやってくる。気がついたら左腕にとまって血を吸おうとしているではないか。蚊の写真は無かったので血を吸わせる代わりにワンショット。一旦、口先を皮膚に刺せば、少々こちらが動こうが平気で吸ってる。右手でカメラを構えながら、吸い始め(多分)から吸い終わりまでの時間を計ると約4分。蚊のお腹は真っ赤に透けている。お腹いっぱい血を吸って体が重くて満足に飛べない。当の僕はと言うとほとんどかゆみを感じない。これは蚊の吸血の満足度によるものらしい。蚊は人の皮膚に口先をさした時に血が固まらないようにダ液をまず注入する。そして血を十分に吸ったあとは最後に自分が出したダ液さえも吸い取ってしまうらしい。実はこのダ液がかゆみを起こす原因と言うのだ、つまりダ液が残らなければかゆみも出ない。だから蚊がお腹いっぱい吸血して満足するほどかゆみはない。一度、お試し下さい。ちなみに実験によるとO型の人の血をもっとも好むらしい。さて、僕の血をたんまり吸った蚊は一晩、シャレーならぬ「シャーレ」と言うガラスのお宿にお泊まり頂いた。今朝、容器をみると底のガラスに卵がいくつも産んであった。彼らは吸血して初めて産卵することが出来るということが判る。写真の蚊はヒトスジシマカ、もちろん雌。雄の蚊は吸血はしない。【2008/09/19】

2008年9月18日木曜日

第十五夜/コクワガタとキノコ

今日は仕事で京都御苑の自然環境(キノコ類と昆虫類を重点的に)を見てあるいた。時間をかけて歩くと多くの生きものの気配を感じる。最後に今日のテーマに相応しい、つまりキノコ×コクワガタのツーショット・シーンに出会う。なんだが出来すぎた演出でもあるが本当の話し。エノキの大木の根元(地表から10cm程度)にナラタケモドキが生えて、その中にきれいなコクワガタの♂が頭を突っ込んでいた。果たしてコクワガタがキノコの粘液を食べていたのかどうかは判らないが、その様子は樹液を吸っているそれと同じだった。樹液以外にこんなものにもやってくるとは初めて知った。手でコクワガタを採ろうとするとポトリと地面に落ち、あわてて落葉に潜り込んでいった。これもまったく普段と変わらない行動だった。【2008/09/18】
Photo : 写真では見にくいが、キノコと樹皮の間にコクワガタのつややかな黒い背中が見える。2008年9月18日@京都御苑

2008年9月17日水曜日

第十四夜/草地に紅一点・ベニシジミ

キアゲハに続いて今夜はベニシジミ。このチョウも日本列島の山地平地を問わずにどこでも見られる。あまりに普通に見ることができるので他の虫なら気にも止めないが、このチョウの場合つい立ち止まってしまうほどなかなか可愛い。緑の草むらの中でも紅色が映える。生きものの写真を撮っていると雑誌であろうと電車の吊り広告やポスターであろうとそこに生きものが写っていると気になって仕方が無い。そんな写真をじっくり観察しているといろいろな場面が見えてくる。写真の背景、写真家の息づかいまでもが伝わってくる。しかし最悪なのは、捕まえた虫を花や葉っぱにとまらせて(置いて)撮った写真。だいたいそんな写真はごまかしを隠すために上からべったーと撮っている。見分けるためにいくつかポイントがある。例えば生きているチョウの正しい姿勢の特徴は、触覚がピンと上を向き、ちゃんと体が脚で支えられている。目が生き生きとして姿勢がいい。これは翅がぼろぼろになってとしても同じ。今までで一番最悪だったのは背中のまん中に虫ピンを抜いた孔があった(これは大胆にも標本を花において撮っている)。こんなのもあった、翅に指でつまんだ跡(鱗粉が指紋でとれていた)が残っている。半殺しのチョウを絶対に来そうにない花の上にとまらせたものもあった。(こんなふうに写真を見るのも普通じゃないと思うが)こんな写真をみるととても不愉快である。最近では、パソコンで合成したものも少なくない。野生の昆虫と言うものは、どのようなものでも死んでしまうと驚くほど早くその美しさを失ってしまう。野生に生きてこそ魅力的なのだ。【2008/09/17】

2008年9月16日火曜日

第十三夜/キアゲハ(黄揚羽)

家でパセリやニンジンをうえているとキアゲハの幼虫(黄色と緑のシマシマもよう)が見つかる時がある。このキアゲハ(黄揚羽)、アゲハチョウ科のなかではもっとも多くの国で見ることができる。これは食べる草がセリ科のしょくぶつで、そのぶんぷが広いからだろう。アゲハチョウの仲間はミカンの仲間の植物を食べるものがおおいのですが、ミカンは寒い地方ではそだたない。ヨーロッパでは、日本のナミアゲハはいなくて、このキアゲハが「ナミアゲハ」と呼ばれている。英語の名前は「Swallow Tail」(ツバメのしっぽ)、後ろバネのとくちょう(これを「尾状突起=びじょうとっき」と言います)からつけられたもの。はねをひろげると、ふちの黒いおびと青と赤のスポットもようがきれい。【2008/09/16】
Photo : 木陰で休むキアゲハ(夏型♀)、おそらく羽化したばかりの個体。(2007/8@京都・木津町)

2008年9月15日月曜日

第十二夜/窮蛇毒を吐く・ヤマカガシ

秋になると多くの生きものたちは冬の準備に入る。特に越冬する生きものは今の時期たっぷりと食べておかないといけない。秋には虫も増える、それをカエルやトカゲが狙ってる、その背後ではヘビが彼らを狙ってる。今回は今の時期、田んぼの周りで良く見かける蛇の話し。ヤマカガシという小ぶりで、きれいで、おとなしい蛇。ちょうど後頭部から顎下にかけて黄色い模様が特徴。普段はおとなしいが、ちょっかいを出すと首の辺りの黄色い部分を膨らませる。これは「警告色」ここを注意しろよと言ってる。実はこの蛇は猛毒を持っている。毒牙は口の奥にあるのでよほど深く噛まれない限り問題でないと言われるが危険度は変わらない。それ以外にも首から顎にかけての皮膚から毒を出す、猟犬がこの部分を噛んでたびたび昇天する事故があると言う。さらに怖いのは危険が迫ると口から相手の目をめがけて毒液を飛ばすという離れ業も持ってる。写真を撮った時も、首周りを一段と膨らませた後は鎌首を持ち上げた。くわばらくわばら。これ以上の接写は避けよう。「窮蛇毒を吐く」だ。出会う機会もマムシよりずっと多い。きれいな蛇にも毒があるので注意が必要。
  数年前、児童館に勤める友人が「子ども達ときれいな蛇採ってきたので飼い方を教えて」と頼まれて言ってみると、水槽にこの蛇の子どもが2匹入っている。沢山の子ども達が水槽を囲んで見ていた。生まれてさほど日が経っていないのだろうか、体長は割りばしよりも少し長いぐらい、とは言え万が一子ども達が蛇を持った手で目でもこすったら失明しかねない。説明をすると児童館職員である彼は驚いた「今から裏の草むらに逃がしたい」。しかしそれはあまりに勝手過ぎ、採ってきた人間の責任上、週末を待って元いた場所に放すようお願いした。子ども達には、このきれいで愛らしいベビー蛇を飼ってみたい気持は理解出来るが、餌の問題(小さなカエルは手に入らない)と毒蛇と言う二つのことを説明し、諦めてもらうしかなかった。人間の子ども達と子ヘビにとって少し騒がしくも、貴重な数日間の交流体験でした。【2008/09/15】
Photo下:上から見ると首筋の膨らみが判る。(2007年9月@新潟・川西町)

2008年9月13日土曜日

第十一夜/オニヤンマの産卵

今頃、里山に行けばきっとオニヤンマの産卵に出会えるだろう。写真は数年前、稲刈りに田舎に出かけた時に写したもの。田んぼ道を歩いていると、前から飛んできたオニヤンマが道脇の水路に急降下した。水路は幅・深さ共に75cmぐらいの狭いもの、周りからは草が生い茂ってよく見えない。そこで僕も水路に降りてみた。さて中に降りてはみたが人間にとって身動きするのも一苦労。そんな僕を横目に草が茂る狭い水路の中で大きなトンボがホバリングしながら行ったり来たり。普段は高速で直線的に飛ぶオニヤンマもこんな器用に飛べるんだと感心する。オニヤンマは産卵場所を探していた。しばらくすると体を垂直におこし、一定のリズムでお尻を上下に水底の砂に差し込んで産卵を始めた(水深約3cm)。大きなトンボの産卵場所としてはあまりにも狭いが、確かにオニヤンマのヤゴはこんな場所で沢山見つけることができる。水田と林との間に流れる細流、比較的緩やかな流れを持ち、底が砂地でないといけない。ただし水深はさほど必要ではない(5cmあれば十分)。産卵を見ている時は気づかなかったが、後で写真をみると柴栗(野生のクリ)が一個写っていた。まさにオニヤンマの棲む環境を表している。樹木が上部に枝を延ばす山際の砂底の細流。成虫はこんな場所を縄張り(テリトリー)に持ち、細流にそって一日になんどもなんども往復する。写真の写りは良くないが、産卵場所の環境をよくあらわしているのでこの一枚を選んだ。さて産卵をみた後、水路底から田んぼ道に上がった。僕はそこの近くに違う生きものを見つけた。ちょうどマムシが一匹ひなたぼっこしていたのだ。考えてみればマムシもこんな里山環境に棲む生きものなんだと・・・先にマムシに気づかないでよかった。やれやれ。【2008/09/13】

2008年9月12日金曜日

第十夜/ヤモリのやっちゃん

道を歩いていると何かの視線・声を感じるときがある。それは鳥であったり、虫であったり、時には植物であったりする。たぶん知らず知らずのうちに自分も彼らを探しているのだろう。だから電車に乗っても車窓からいろいろな姿や声が伝わってくる。「絶対音感」があるように「絶対むし感」みないなもの?。今日の視線は桜の木からやってきた。桜の幹に開いたウロの中にはヤモリが一匹。見れば見るほど不思議な目でこちらを見ている。ウロの中のヤモリには写真を撮る外の僕がどんな風に見えるんだろう。かつて家の台所にヤモリが一匹棲みついていた。「やっちゃん」と名付けられたヤモリは炊飯器の底側が暖かいので一年中そこにいた。ある時、僕はそいつを捕まえて飼った。餌を沢山与えてるのに日ごとに痩せていった。悲しかった。ヤモリがどれだけの虫を毎日獲ってくれていたのか初めて知ったのだった。【2008/09/12】

2008年9月10日水曜日

第九夜/モリアオガエル

 虫が続いたので今夜は虫を食べるモリアオガエルの話し。このカエルは大人の手の平の1/4から1/2ぐらいの大きなアオガエル、オタマジャクシの時期は水中生活だが、カエルとなってからは水辺近くの樹上で暮らす、水にはほとんど入らない。そして産卵の頃だけ水面近くに降りてきて、張り出した木の枝に泡に包まれた卵塊を産みつける特異な生態。このカエルが近年まで近所のお寺・黒谷さん(黒田光明寺)の池に産卵にきていた。一昨年、その蓮池が新しくコンクリートで防水整備がされた。池には新しく蓮鉢が沈められ、鯉も放された。また一つ、この興味深いカエルの居場所が無くなった。泡に包まれた卵を木の枝に産みつける特異な生態が間近に見える場所だっただけに残念。たとえ産んだとしてもそのオタマジャクシが生き残ることはもう出来ない。このような場所での鯉の存在はカエル、イモリやトンボなどにとってブラックバスにも勝る脅威なのである。京都府立植物園の小さな小川でも木の枝に卵塊を見つけた。この細流ではアメリカザリガニが待っていた。このカエルを天然記念物指定する自治体も多い。【2008/09/10】
Photo:2009年6月23日撮影 注:以前掲載の写真は、シュレーゲルアオガエル(♀)と同定を訂正しました。よって写真はモリアオガエル(♂)に訂正しました。【2009/07/07】