2011年4月27日水曜日

第二百八十一夜/ツマキチョウ

 春先に現れる小さなシロチョウの仲間のツマキチョウ。名前の由来は前翅のつま先の黄色から。この蝶、ちょうど今頃2〜3週間程度現れて来年の春まで現れない年1回の発生。食草に産みつけられた卵から生まれた(ふ化)幼虫は、食草のハタザオの仲間、イヌガラシ、ナズナ、ダイコンなどを食べ、梅雨入りまでには蛹になってしまう。学生の頃、この卵を沢山採集して多くを蛹まで育てた。ある年の事、夏〜冬を乗り切った蛹達からは翌春、きれいな成虫が羽化した。しかし、たった1個の蛹だけは夏まで待っても羽化することはなかった。きっと死んでしまったのだろうと思い、その蛹を本棚に飾っていた。夏が過ぎ、秋が過ぎ、年末の大掃除の時も片付けられる事がなかった蛹。次の春、つまり蛹になってからまる2年が経った日。外出から戻り部屋に入った時にそこに一頭のツマキチョウが舞っていたのだった。「あれれ?」・・・「おおっ!」生きものってすごいなと思った。室内は自然界に比べれば外敵はいないかもしれないが生きものにとって劣悪な環境、その中で丸2年間耐えてきたのだった。全部がいっせいに成虫にならずに大きな時間差を持って成虫になる事によって子孫をつなぐ。決してめずらしくない、どこにでもいる小さな蝶をこの時から僕は特別な目で見るようになった。当時の図鑑にはこんな事例は書かれていなかったが、近年の本には「稀に二冬あるいは三冬を過ごして羽化する場合もあることが報告されている」と書かれている。写真の吸蜜植物はウマノアシガタ。Photo:2011/04/26 @京都御苑

2011年4月5日火曜日

第二百八十夜/アオバト

 アオバトを見るとつくづくきれいな鳥だと思う。胸から頭部にかけての黄緑色から濃オリーブグリーン、羽の赤紫色(これは雄の場合だが)。この美しい羽色の体が彼らが棲む樹林に入るとまったくの保護色になってしまう。地面から上を見上げると陽光に透ける葉のように見え、肩の赤紫色が枝や樹皮と区別付かない。樹冠から見下ろすと今度は頭部の濃緑から肩の赤紫色が葉面の風景にまぎれるのだろうと思う。これは捕食者に対しての魚体の色と同じ効果があるのだろう。どんな鳥も自分が棲む環境の中で羽色を進化させてきたこと思うと驚く。Photo:2011/04/05 @京都御苑、京都市