2013年8月31日土曜日

第五百二十二夜/生き残ることの大変さ

 写真を整理していたらアオバズク(Ninox scutulata フクロウの1種)の羽の散乱シーンを思いだした。忘れていた訳ではないが、その時は結構ショックであまり見たくなかったからである。鳥が補食された痕跡はいくども見ているのでさほどのショックは無いが、ここのところアオバズクが狙われるケースが少なくないからである。狙う相手は、痕跡からおそらくオオタカであることは間違いない。アオバズクは個体数の少ない鳥である、にも関わらず、補食されるケースが割合として多いと言う事は、昼間は枝に止まり休むアオバズクはオオタカにとって捕らえやすい獲物なのか、それともアオバズクを補食すること、居場所を覚えた個体がいるのだろうか。いずれにしてもこの貴重なフクロウの1種を狙わず個体数の多いドバトや他の野鳥を捕らえたらよいと思うのだが(多分、日常的な獲物はドバトだろうが・・・)、これは人間の勝手な言い分であって、野生生物である以上、自分にとってコストがかからない獲物を狙うのが一番合理的である。他の小鳥や小動物を狩るアオバズクと言えども生き延びる事はたやすくないのである。合掌。Photo:2013/06/11 @京都御苑、京都市

2013年8月30日金曜日

第五百二十一夜/草間に潜むアオメアブ

草葉に止り近くを獲物を通るのを待っているアオメアブ(Cophinopoda chinensis写真の個体は♂。金緑色から緑色に輝く大きな複眼、長い足、筋肉質の胸部・・・なかなかきれいな肉食性のアブ。名前の「アオメ」は複眼の色を表すが、角度によって緑から銅色まで複雑に変化する。草の葉上で待ち伏せし、昆虫を捕らえて体液を吸い、けっこう大きな獲物も捕らえてる。脚のとげとげは飛びながら獲物を確実に抱え込むのに役立ち、細い草葉に止まる時も上手く使っている、これはトンボやキリギリスと同じ。Photo:2013/08/29 @京都御苑、京都市

2013年8月29日木曜日

第五百二十夜/労働寄生をする小さなハチ

 腹部を赤いインクビンにつけた様な体色のハチがいた。唐辛子の様でもある。単純ながらも不思議な色分けである。これは初めて見る種類。体長15mm程、一所に止まらず花の蜜を忙しく吸っているのですぐに見失ってしまった。でも特徴的な体色だけはなんとか写真に収めることが出来た。早速、調べるとハラアカヤドリハキリバチ(Euaspis basalisと判った。このハチ、ハキリバチ科のオオハキリバチに労働寄生すると書かれている。聞き慣れない「労働寄生」とは、「宿主の体から直接栄養を得るのではなく、宿主が餌として確保したものを餌として得るなど、宿主の労働を搾取する形の行動を取ることを指す。盗み寄生とも言う。」とあった。しかしながら疑問は残る、今日見たハチは自分でちゃんと花の蜜を求め得ているではないか・・・。このハチの仲間=ハキリバチはその名から想像できる様に植物の葉を切り取り、それを竹筒などの穴に運び入れ、卵を産むための部屋を作り、そこに花粉を運び入れ卵を産みつける。だからこのハチの労働寄生とは、宿主=オオハキリバチが竹筒に運び入れた巣材と花粉の部屋に忍び入り、自分なりのアレンジを行い卵を産みつけると言うものらしい。つまり鳥の託卵にも似ている。巣も作らない、幼虫の餌も集めない・・・だけど他のハチが準備した産卵場所にちゃっかり潜り込み、自分の卵を産み付ける。これだけなら彼らは何もせず楽して産卵しているようだが、実際は「宿主=オオハキリバチ」の行動をちゃんと把握することに全てが懸かっている。宿主の行動が全てを左右する、これも決して楽ではない。なかなか上手くしたものである。やはり昆虫の世界はまったく不思議である。・・・が人間界での労働寄生ももちろんある、これを古くから「ひも」と呼ぶ。花はイヌコウジュ(シソ科)。Photo:2013/08/29 @京都御苑

2013年8月27日火曜日

第五百十九夜/モノサシトンボのペア

 水辺の近くでモノサシトンボ(Copera annulataのペアがいた。交尾中で一般的によく言われるハート形の状態である。セミの声もすっかり勢いが無くなったが、このモノサシトンボのシーズンも今年は後ひと月ぐらいだろう、このペアもこれから産卵に忙しいだろう。この母トンボ(写真の下)が産む卵は、年内に孵化し、幼虫(ヤゴ)で冬を越し、来年の5月頃成虫となる。Photo:2013/08/27 @京都御苑

2013年8月25日日曜日

第五百十八夜/雨のショウリョウバッタ

 突然の強雨がショウリョウバッタ(Acrida cinereaを打つ、外敵が来ると素早く飛び逃げさるオスの様に出来ない体の大きなメスは、近くによっても水に濡れた重い体を「よいしょ.よいしょ」と動かすのが精一杯だった。Photo:2013/08/25 @近江八幡市

2013年8月22日木曜日

第五百十七夜/ヒバリの寝苦しい夜?

 ヨシ原にツバメ、スズメの塒(ねぐら)入りを見に行く。18時30分次々と小群で鳥たちがヨシ原にやって来て、ヨシの葉先に止まっている。まるで頭をたれる稲穂の様に小鳥がなっている。そばの農道の砂利道でヒバリ(Alauda arvensisが砂浴びをしていた。砂浴びは昼間にするものとばかり思っていたので、この時間の砂浴びには驚いた。双眼鏡で見ると「ハアハア・・」と口を開けていかにも暑そう。鳥たちにも寝苦しい夜ってあるんだろうか。それにしてももう少しマシな写真撮れなかったのかと・・・自分に問わざる得ない。Photo:2013/08/22 @西の湖、近江八幡市

2013年8月20日火曜日

第五百十六夜/風に揺れる秋の気配

野生の生きもの達を見ていると暑い暑いと思うのは人間ばかりではない。いつまで暑い夏が続くのかと心配にもあるが、すこしばかり鳴き声に勢いが無くなったセミや、渡り準備をしている野鳥、そして植物の変化を見ていると秋が始まりつつある事に気付く。水辺でギンヤンマの黄昏飛翔が始まろうとする少し前にヨシ原に差し込む光と風、キンエノコロ(イネ科)の穂先が風に揺れとても美しく暑さを忘れさせてくれる。きっと生きもの達もどこかで同じこの風景を見ているはずである。Photo:2013/08/19 @西の湖、近江八幡市

2013年8月19日月曜日

第五百十五夜/なにか御用でも? オオタカとカラス

「なにか私に御用でも?」オオタカ(左)
「その獲物を置いてどこかに行っていただませんか!」ハシブトガラス(右)
今日、 川岸で見た光景。 小鳥を捕らえた、その姿をハシブトガラスのカップルに見つかってしまったのだろう。食事中、すぐそばでしつこく騒がれていたオオタカ(Accipiter gentilis)♂。カラスが直接的なちょっかいを出さなかったが、あまりのしつこさにさすがのオオタカも近くの河畔林に姿をくらしてしまった。こんな時のカラス達はしつこいのである。あまり騒がれると他のカラスも集まり、事が大きくなってしまう・・・タカと言えども多勢に無勢、しかも体の大きさではカラスに劣る、こんな時は逃げるが勝ちなのである。Photo:2013/08/19 @西の湖、近江八幡市 

2013年8月18日日曜日

第五百十四夜/夕暮れとギンヤンマ(黄昏飛翔)

本日のフィールドノートより/ギンヤンマ(Anax parthenopeの黄昏飛翔
17時00分 オオタカ(♂)、ミサゴ(ペア)、トビ上空を飛ぶ。カワラヒワ・ツバメ・スズメ、小群毎(5〜10羽)に葦原に入る。 カイツブリ、バン、カルガモ水面を行き来。ウスバキトンボ群飛、ギンヤンマの縄張り巡回飛行、交尾、産卵、休息(写真)など多数観察。時折、トンボ同士がもつれ、足元に落ちて来たり、水面に落ちたりする。
18時30分 ギンヤンマの摂食飛翔、30頭以上の群飛。水田、草地、地面より2.0〜6.0m程度で盛んに餌を獲る。ギンヤンマに混ざり、時折オニヤンマ、ヤブヤンマ(翅が淡褐色)、コシボソヤンマもいるようだ。
18時45分 コウモリ(アブラコウモリ?)の飛翔多くなる。アオサギ横切る。
19時00分 トンボの群飛に代わり、コウモリが急に多くなる。
Photo:2013/08/18 @西の湖、近江八幡市

2013年8月15日木曜日

第五百十三夜/今年の樹液はいかがですか?

 今年の樹液はいかがですか?「いや〜少なくって大変です」と返事が返って来た(〜気がした)。例年よりも雨量が少ないためか、クヌギの樹液の量がすくないみたい。わずかばかりの地際からしみ出す樹液にやって来たのはヒメスズメバチ(Vespa ducalisとカナブン。このスズメバチは、オオスズメバチにくらべ腹部がスマートで、腹部の先が黒いことから他のスズメバチとは簡単に見分けられる。性質はこの仲間にしては比較的穏和、写真を撮るために20cmほど近づくが威嚇さえしなかった。幼虫のエサは、アシナガバチの幼虫や蛹なのでアシナガバチにとっては天敵と言うわけ。Photo:2013/08/15 @京都御苑、京都市

2013年8月13日火曜日

第五百十二夜/木陰で休むナガサキアゲハ

 連日の35℃超え、さすがに日中元気なのはクマゼミぐらい。今日は木陰で休むナガサキアゲハ(Papilio memnon)♀に出会う。黒いアゲハチョウの仲間が林縁や樹林内の比較的暗い場所を好んで飛ぶのに対して、このナガサキアゲハは炎天下、グラウンドのような開けた場所でも平気で飛んでいる。もし炎天下のグランドを横切る黒い蝶がいたら、それはたいていはナガサキアゲハのオス。ただしメスはあまりそのような場所を好まないようで、そのためかオスよりもずっと見る機会が少ない。ナガサキアゲハのメスは、後翅の白紋が美しい夏を代表する大型のアゲハチョウ。このメスは、日陰で休んだ後はクサギの花の蜜を求めて飛んでいた。お腹がずいぶんと膨らんでいた、彼女がたっぷりと栄養を摂ったら、今度は大切な産卵が待っている。Photo:2013/08/13 @京都御苑、京都市

2013年8月6日火曜日

第五百十一夜/イボバッタ、葉の上では目立つ?

 草の葉の上にいるイボバッタ(Trilophidia japonicaの幼虫。砂利のある地面では効果的な保護色も葉の上ではさほど意味がないが、じっとしていればけっこう目立たないものだ。しかし写真を撮ろうとして気付いた・・・イボバッタの体色と微妙なぶつぶつで上手くピントを合わせられない。ピントが合っていないようで合っている、またその逆も。たとえ彼らが緑の葉の上に止まろうとも、レンズで見る様に捕食者にも同じように見えているのかもしれない。たとえ居所がばれても、最後は自慢のジャンプで姿をくらませてしまう。Photo:2013/08/04 @京都御苑、京都市

2013年8月5日月曜日

第五百十夜/小さなセミの仲間・ヒシウンカ

 木に幹にゴミの様につく小さなセミを見た。ヒシウンカの一種(Cixiidaeらしい。ルーペで見ると、体の特徴はセミそのものだが、体長は1cmぐらいで小さい、マダラの翅を持っていた。Photo:2013/08/04 @京都御苑、京都市

2013年8月4日日曜日

第五百九夜/セスジスズメ

 用を足そうと入ったトイレで上を見るとセスジスズメ(Theretra oldenlandiaeが天井に止まっていた。なかなかきれいな紋様である。このトイレの近くの大木に営巣するアオバズク(フクロウの仲間)の食痕からはこのセスジスズメの翅が比較的多くの見つかる。Photo:2013/08/04 @京都御苑、京都市

2013年8月3日土曜日

第五百八夜/南から来た? ツマアカベッコウ

 見かけた事の無いベッコウバチが大きなクモ(アシダカグモ Heteropoda venatoria)を運ぶ現場を見る。腹部先端のオレンジ色の特徴から ツマアカベッコウ( ツマアカコブベッコウ) Tachypompilus analis と判る。他にも、このベッコウバチは、本来、南西諸島が分布域の北限だったそうだが。温暖化で北上してきたと言う・・・真相はわからないが、どうりで見た事が無い訳だ。ハチは、大きなクモを神社の壁の上まで運び上げようとしている。ただ、獲物が大きく、かつ壁表面は漆喰で足場が滑るためだろう、クモ共々何度となく地面に落ちてしまう。それにしても母蜂の根気強さには驚かされた。このベッコウバチは捕まえた獲物に麻酔を施し、岩の隙間などに堆積したわずかな土に蜘蛛を埋め産卵するらしい。獲物のクモは麻酔をかけられたまま眠り、ハチの幼虫に生きたまま喰われる。Photo:2013/08/03 @京都御苑、京都市

2013年8月2日金曜日

第五百七夜/ムラサキシジミの母蝶

 ムラサキシジミ(Narathura japonicaの母蝶が静かに、丁寧に、ゆっくりとアラカシの生垣の葉に卵を産みつけていた。生垣では春先から徒長した枝の高さを揃える刈り込み作業がされている。幼虫は新芽だけを食べるので、本来なら卵も新芽近くに産みつける。もし徒長した枝に卵を産みつけると、孵化する前に刈り込まれてしまうだろう・・・この母蝶はこのことを知っているかの様に刈り込まれない高さの葉に産みつけている。今、この位置に産みつけておけば、刈り込まれた後にすぐに出て来る新芽にも近く、ふ化した幼虫にも都合が良い。普通ならこんなごわごわの葉に産みつければふ化した幼虫はこの葉を食べる事は出来ないし、また新芽を探すにも困難な状況となる。むしろ産卵場所を同じ条件ではない場所にする事で、一時的な環境の変化にも耐えることが出来ると言う「生き残りのための戦略」だろうか。観ていてまったく不思議な光景だった。Photo:2013/08/02 @京都御苑、京都市