2010年9月29日水曜日

第二百四十九夜/クロコノマチョウの2齢幼虫

 ススキの葉にクロコノマチョウの幼虫(2齢)を観る。葉の左側には卵跡が白く残り、ちょうど11個がここに産卵されたことがわかる。さて白い跡はあっても卵殻がない・・・これはふ化した幼虫(1齢)が食べてしまうから。若齢幼虫は産まれた集団で行動を共にし、やがて個別の行動となる。この若齢幼虫の集団は全部で5頭、あとの6頭の姿が見当たらない。はやくもクモ等に食べられたか、脱皮に失敗したかだろう。写真ではわかりづらいが頭には左右に小さなツノ状の突起があり、赤ちゃん鬼といった面持ちである。クロコノマチョウの幼虫は、ススキやジュズダマ、ヨシなどを食草とする。Photo:2010/09/28 @京都御苑。京都市

2010年9月28日火曜日

第二百四十八夜/ススキの葉陰からのぞく虫

 草むらでクロコノマチョウの幼虫を探している時に、ススキの葉軸の中に潜んでこちらをうかがう泡吹き虫(アワフキムシ)の一種を見つけた。ゴルゴ13のようなクールな目つきがなかなかイカしている。幼虫時代は身を守るために自分のおしっこ(排泄物)をあわ立てた泡状の巣のなかにいるが、成虫になると写真のように立派(?)なセミ状の体形となる。これからわかるようにこの虫はセミの仲間。幼虫時代のように成虫になった今は逃げも隠れもせず、危険が迫ったらジャンプ一発、すこい速さで逃げ切ってしまう。Photo:2010/09/28 @京都御苑、京都市

2010年9月24日金曜日

第二百四十七夜/生きるも死ぬも大切・ヌートリア


 鴨川に架かる橋(丸太町)を渡っていたらかすかに生きものの腐敗臭がした。周りの道路を見るがそんなものはない。ふと橋から下の川を見ると30mほど離れたところに魚のような形をした物体。形からオオサンショウウオの死体と思い、橋を降りて河原に行く。不思議と近くでは腐敗臭は少なく、風向きで30m以上離れた橋上に匂いが流れているようだ。さて、この死体は巨大なヌートリア(巨大なネズミ)だった。全長90cmはあるだろう、頭部が背骨で骨盤・尾骨につながった状態でねじれている、その他は前脚が一本のみ。かろうじて骨が皮でつながった状態で肉部はほとんどない。口部には特徴のあるオレンジ色の湾曲した大きな歯が見える。鴨川では、この近く(二条大橋付近)で一頭だけ生息を確認している(第百八十二夜・2010年1月11日)。今回の死体はこの個体か、それとも別の個体か。先日の豪雨時に上流から流されて来たのかもしれない。水中にある時は魚などの水生生物に、河原にある時はカラスやトビの餌になったに違いない。生きるのも大切だけど、生きている以上は死ぬことも大切なんだなと思う。Photo:2010/09/24 @鴨川、丸太町、京都市

2010年9月21日火曜日

第二百四十六夜/コガタコガネグモ

 クモを見るとたいていの人はギャーッと言うか、顔を背ける。なんとなくその気持ちは解る。でもよく見ると面白く不思議な生きものではある。今日見つけたのはコガネグモ。網の中心にいるのだが写真を撮ろうとするとすばやく網から飛び下り草むらに隠れてしまう。数分後にみるとちゃんと元のところに止まっている。これを何度も繰り返すもいっこうに背中の模様を見せてくれない。我慢できずにさらに追いかけると今度は地面にへばりついたまま動かない。なんとなく普通のコガネグモと動きが違う。まあ背景は悪いが背中の模様がちゃんと判った。背中の模様は不思議な網目状、よく見るとお尻の先から糸が出ているのがわかる。クモは逃げながらも糸を出し続けるので、もといた自分の網(巣)に迷わずに戻ることが出来る。夜、この背中の模様とこのクモの行動をもとに調べると「コガタコガネグモ(♀)」であることが判った。このクモの「網から飛び下り草むらに隠れてしまう」がヒントとなった。やっぱり生きているものを見ることが大切なんだと思う。Photo:2010/09/21 @京都御苑

2010年9月20日月曜日

第二百四十五夜/コオニヤンマ・風変わりなヤゴ

 買い物がてら自宅近くの鴨川に散歩にいく。少し前の豪雨で中州に発達していた草むらはすっかり流され河原となり、あたらしい生きもののの住処ができたので一度じっくりと観てみたかった。河原には早くも新しい植物が成長し、その水際ではオイカワの稚魚が群れている。川岸で水中の小石を一つひとつめくり上げるとカワゲラやトビケラの幼虫が見つかった。中には風変わりなコオニヤンマのヤゴ(写真)も沢山みつかる。いく匹か捕まえているうちに気付く、そのヤゴの大きさがまちまちなことに。写真のヤゴは、体長(脚を含めず)8mmほど、中には体長30mmほどの大きな個体もいる。大きさの異なるヤゴが同時期に見つかるということは、このトンボの幼虫時代は単年以上必要ということ。大きな個体は来年の初夏に羽化するだろうが、この小さなヤゴは早くとも2年後の羽化となるだろう。羽化までに豪雨・濁流のような大変な場面に遭遇するだろうが、小さなヤゴがそれをやり過ごすことに驚く。コオニヤンマのヤゴは、水中ではひらりひらりとまるで枯れ葉が舞うように泳ぎ逃げていく。名前にオニヤンマと付くが、オニヤンマの仲間でも、ヤンマの仲間でもなく、サナエトンボの仲間である。成虫の複眼の位置と、幼虫の口部の形状でそれと判る。Photo:2010/09/20 @鴨川、丸太町、京都市

2010年9月18日土曜日

第二百四十四夜/オンブバッタ

 秋になると俄然増えてくるオンブバッタ。たいての植物は食べるようで、植木鉢でも庭でも、都市部から田舎までどこにでもやってくるのだから不思議な昆虫だと思う。名前のとおりメスはいつも背中にオスをおんぶしている・・・本当のところはオスが勝手にしがみついてのだが。この状態はバッタ類の交尾の際に観察されるが、他のバッタ類がすみやかに離れるのに対し、オンブバッタは交尾時以外でもオスがメスの背中に乗り続けている。メスは、オスを背中に乗せて葉っぱをもぐもぐ食べている、さてオスはいつ葉っぱを食べているのだろう。このバッタ、ちゃんと翅を持っているのに全く飛ばない、宙に投げ上げても飛ぶどころか、翅も出さずにそのまま地面に落ちてくる。移動はもっぱらジャンプ。Photo:2010/09/18 @近江八幡市、滋賀県

2010年9月15日水曜日

第二百四十三夜/ウラギンシジミ

 修学院離宮の門前で知人と待ち合わせ。時間まで近くを散歩。そこにタイミングよくやって来て翅を開くウラギンシジミ(♂)。名のとおり翅の裏側は脚の先まで銀白色の鱗粉と細毛で覆われている。この蝶が飛ぶと翅裏の銀白色がチラチラと良く目立つが、いったん本来の生息環境である常緑樹(照葉樹)の樹冠部(常緑樹の葉は陽光が当たるとキラキラ光る)を飛ぶとこの「チラチラ」が保護色になる。昔は分類が「ウラギンシジミ科」だったが今は「シジミチョウ科」になっている。Photo:2010/09/15 @修学院離宮、京都市

2010年9月14日火曜日

第二百四十二夜/ササグモ

 クモは苦手だった・・・基本的には今も苦手である。なぜ苦手か、脚が8本とか、目がいっぱいあるとか、動くのが速いとか、色が綺麗でないとか、糸を吐くとか・・・いろいろあるけどつまるところは「よくわからない」から。何事も理解しようとする気持ちで新しい展開が産まれるはず。まずはこの苦手をクリアーしようとササグモとかハエトリグモの辺りから見てみようと思っている。葉の上でツマグロオオヨコバイをくわえたササグモを見つけた。このクモは糸の巣は造らず、獲物を待ち構える「待機型」。獲物を見つけるとぴょんと飛びついて捕らえる。その俊敏さが取り柄で、逃げる時もジャンプして素早い。脚のついている沢山の針状の突起物は獲物を捕らえる時に役立つことが想像できる。Photo:2010/09/14 @京都御苑、京都市

2010年9月8日水曜日

第二百四十一夜/シュレーゲルの旅だち

 台風一過ですこし秋らしい風が吹き始めた。自然の出来事をなんとなく見ているとさほどの変化は無いように思うが、昨年の記録と見比べるとその変化が大きなことに気付く。カエルの行動も少し違っていた、これが猛暑と関係あるか否かはわからない。まだ数年の観察が必要なことは確かである。昨年は8月に入るとモリアオガエルの成体も幼体も水辺を離れ森に帰り始めたが、今年はまだ水辺の周りに残っている。今夜のゲストはそのモリアオガエルの仲間のシュレーゲルアオガエル(幼体)。モリアオガエルに近い種であるが、お肌はなめらかで、体形もすこしスマート、全体的にハンサムな感じ。モリアオガエルよりも水辺に近い場所を住処とする。この幼体は元気に葉から葉へ飛び移り移動していた、食べ物でも探していたのだろう。でもうっかりすると後ろから大きなモリアオガエルが狙っているかもよ、気をつけろよ!カエルにとっては同じ仲間であろうと自分の目の前に現れた口に入るサイズの生きものはどれも餌なのだから。Photo:2010/09/07 @京都御苑、京都市

2010年9月6日月曜日

第二百四十夜/赤紫色に輝く糞虫

 小学校の森案内で京都北山の花背に行く。子どもたちの到着を待っている間に散歩。早速、現れたのがオオセンチコガネ。この辺りのオオセンチコガネは赤紫色の金属光沢に輝く一般的なタイプ。このオオセンチコガネは日本全土に分布するが、地域によってその色味が金緑色、瑠璃色などの大きく異なるので興味深い(同じ種類なのに別種のように色が違う)。森を歩くと本当にたくさんの個体と出会うことができる。この甲虫は一般的に「糞虫(ふんちゅう、くそむし)」と呼ばれる糞食性のコガネムシ。個体の多さは、食べ物がふんだんにあるからだろうか。森の中、林縁問わず鹿の足跡やイノシシが餌をあさった痕がいたるところに有った。オオセンチコガネは森の中を獣の排泄物(糞)を探して低空飛行して、片付けてくれる大変ありがたいお掃除屋さん。彼らがいないと森の中は糞だらけのはず。もちろん糞を主食とするがキノコなんかも食べる。ピラミッドの再生の象徴の虫やファーブル昆虫記で有名な「スカラベ」は世界的に有名な糞虫、このスカラベは別名=糞転がし。残念ながらオオセンチコガネは糞を転がすことは無い。写真の個体はモデルの役を果たし後、触覚をヒクヒク動かし、行くべき方角を確かめ地面を低く飛び去った。森歩きでは子どもたちが糞虫と聞いて「げっ〜、とかきたな〜」なんて言ってるんだけど、すぐにその輝くひかれて手のひらに乗せしげしげと見てる、でもその手でそのまま飴なんかを口に運んでるから面白い。Photo:2010/09/06 @花背交流の森、おすすめの糞虫の本:ふんコロ昆虫記(塚本珪一・共著、トンボ出版)、フンころがしの生物多様性(塚本珪一・著、青土社)

2010年9月2日木曜日

第二百三十九夜/リスアカネ

 今夜は少しさわやかに赤とんぼの仲間。このトンボ、見事にシッポ(といってもこれは腹部)が赤くなったので高々と持ち上げて「どうですか綺麗でしょう」とパフォーマンスしてるんではない。トンボもさすがに暑いらしく、なるべく太陽から受ける熱を最小限にとどめようと体の向きを調整している。暑いからといって木陰で休む訳にはいかない事情がある。成熟した雄である以上は水域近くに縄張りを持ち、他の大型の赤とんぼであろうと他者が侵入してきたら追い出さないといけないのだ。この赤とんぼは和名をリスアカネと言う、かわった名前である。ネズミ目リス科のリス(栗鼠)とは全く関係がなく、英国のトンボ学者の名に由来するもの。他の赤とんぼのように遠くはなれて山のてっぺんまでいくことは無く、羽化後も羽化水域の近くに留まり摂食活動を行う。Photo:2010/08/31 @京都御苑、京都市

第二百三十八夜/クマゼミと蓮

 セミはどうやって樹液を吸う判断をしているのか。見ていると電柱や壁にとまった時にも一応にストロー状の口を差し込もうとしているようだ。つまりとまった場所はどこであれ樹液を吸う試みをするのだろう。人間から見ると不自然に思うが、彼らの棲む自然の中ではコンクリートの壁も電柱もないのだから一番適切で理屈に合った行為なのだろう。今日のクマゼミは、ハスの葉の茎にとまりやはりストロー状の口を差し樹液(?)を吸い始めた。やめる気配がないのできっと吸っているんだろう。色味的にさっぱりとした味わいか? 昔、マレイシアの森で綺麗な色のセミを採った、鮮やかな透き通るような緑色で目まで同じ色だった。あとでゆっくり見ようとしばらく手に持っていたら、強烈な痛みを感じた。その痛みは押しピンかなにかでぐさりと皮膚深く刺された感じ。驚いたことにセミが僕の手のひらを刺したのだ・・・たしかに分厚い樹皮の内部を流れる樹液を吸うのだから人間の皮膚や筋肉程度を貫通するのは容易いこと。手の指を広げるとそこには緑色の目の色一つ変えずクールな表情のままに僕の手を刺し続けているセミがいた。果たして軟禁状態から逃げたくて刺したのか、喉が渇いて刺したのか判らない。確実なことはこの時、セミは僕の血液を微量ながら吸ったはずだ。世界のどこかに吸血性のセミが一種類ぐらいいても不思議じゃないと思った。ナンキン虫なんかの吸血性のカメムシがそれに相当するのかもしれない。話はすこし違うが、セミが電線に産卵しておこるトラブルが少なくないという。産卵管を差し込まれたケーブルは孔だらけになり漏電を起こす。セミの♀は木の枝と電線のケーブルとを混同しているらしい。これも不自然でない、森の中では電線ケーブルなんてそもそも無いのだから。Photo:2010/08/31 @京都御苑、京都市

2010年9月1日水曜日

第二百三十七夜/ムラサキツバメと温暖化

 やっと出会えたシジミチョウの仲間=ムラサキツバメ。かつては京都、三重が生息の北限とされていた。近年の温暖化の影響かその生息地を延ばし、十年ぐらい前には東京でも生息が確認された。もともと京都市内でもそう多くはないチョウなのだが近年は、目撃件数が多くなっていた・・とは言っても自分ではまだ見ていなかった。幼虫の食樹は、常緑性のカシ類:マテバシイやシリブカガシ。マテバシイは都市公園・緑地などの植栽で一般的な木なのでチョウ自らの移動以外に、植栽樹木についた幼虫が北限を延ばしたことも可能性としてあるだろう。このムラサキツバメの面白い生態は成虫で越冬すること、しかもその越冬初期は集団を作ること。昔、宮崎でこのチョウがビワの葉に100頭以上もの集団をつくって越冬していたのを見た。写真の個体は翅の縁がすこし波打っている、羽化してさほど時間が経っていないと思う。翅の表は、濃い紫色だが裏面は見てのとおり地味な茶色、でも光の当たり方でうっすらと紫色が浮かび上がる。今日は4頭ものムラサキツバメを見ることができた。Photo:2010/08/31 @京都御苑、京都市