2009年5月31日日曜日

第九十二夜/カラスアゲハとナガサキアゲハ

 近江八幡にボーダレス・アートミュージアムNO-MAという美術館がある。ここが行なう地域交流事業の下見に八幡山を歩く。今年のテーマは森の神様の「天狗」。スタッフの皆さんと森を歩いた後、再び森に戻る。雑木林に開いた小さな広場で出会ったのは「からす天狗」ならぬ「カラスアゲハ(写真上)」。広場の林縁は「蝶道」(蝶にもちゃんと飛ぶコース=道がある)になっていて、ひっきりなしにクロアゲハ、モンキアゲハ、カラスアゲハ、時々ナガサキアゲハ(♂ 写真下)がやって来る。写真のカラスアゲハ(♂)(写真上)は吸水にやって来たものの結局、落ち着いて吸水をしてくれなかった。このような時の蝶を見ると、触覚をピンと前方に立てて、脚は体に付けている、ただし口吻は伸ばしていることがわかる。Photo:2009/05/31 @八幡山、近江八幡市

2009年5月30日土曜日

第九十一夜/ニレハムシ

 街の中どこにでも居ると言うと大げさだが、このニレハムシはたしかにどこにでもいる。今日はバス停の横にあるアキニレの葉状で見つけた。ケヤキやアキニレなどニレ科の樹木の葉を食べる。 ハムシ(葉虫、金花虫、英語:Leaf beetle)の仲間は、現在日本に約780種が知られるという。体の大きさは1cmにも持たない(6mm前後のものが多い)、名前の通り多くは生きた植物の葉を食べる。不思議な事にそれぞれのハムシの種類によっておおむね食べる植物が決まっている。例えば、ウリ科の植物を食べる「ウリハムシ」、山芋を食べる「ヤマイモハムシ」などなど、だから見つけた時には必ずハムシがいた植物も調べておけば後で種類を調べやすい。このハムシ達、農作物に被害をもたらす種類も少なくない。ニレハムシもしばしば公園や街路樹のケヤキに被害を与える。ハムシの仲間は形や文様は多様だが、比較的簡単な形のものが多く、いわばコガネムシを小さくしたような虫である。写真を撮ろうと安易に近づいたり、葉っぱに触れると脚を縮め、ポトリと落ちて逃げてしまう。Photo:2009/05/29 @熊野神社、京都市左京区.

2009年5月23日土曜日

第九十夜/徘徊するクモ・コアシダカグモ

 昔、深夜に部屋の灯りをつけると床の間の壁に手の平サイズのクモがよくいた。こちらがビビっている間に障子や襖のすき間にささっ・・・とかすかな足音と共に消えていく。なんとも迫力があった。近頃ではすっかり見なくなってしまったが、今も家のどこかに生息しているのだろうか。今夜見たクモはこの「アシダカグモ」に似ている「コアシダカグモ」、「コ」と名前の頭に付くが大きさはさほど変わらない。アシダカグモが家屋に棲むのに対して、こちらは主に崖地や樹林内、洞窟など屋外で見られる。体は褐色で全身にまだら模様、脚には小さな白点がある徘徊性のクモ。アシダカグモ同様、夜間に活動する。Photo:2009/05/22 少し小ぶりの個体、建物の外壁にへばりついていた。頭は下。

2009年5月22日金曜日

第八十九夜/カゲロウの夜

 夜遅く鴨川に架かる橋を歩いていたら欄干にたくさんのカゲロウの亜成虫(フタスジモンカゲロウか?)がとまっていた。体はまだ白く柔らかいが目だけはしっかりと黒い、前脚をピンと前方に伸ばしている姿勢が面白かった。カゲロウの幼虫は水底から水際または水面に浮上して羽化する、水面から飛び立った亜成虫はその後、一日後にもう一度、脱皮をし完全な成虫となる。成虫の形になってもう一度脱皮するという珍しい変態をする。成虫は食べ物を一切摂らずに交尾・産卵を終え1日程度で寿命を終える。橋の上から川面を見下ろせば大きな魚(鯉かナマズか?)が浅瀬を泳いでいるのが見えた。カモも元気に泳いでいる。水底から水面に浮上し羽化するカゲロウを狙っているのだろう。カゲロウの仲間は、成虫も幼虫も優れた釣りの疑似餌(毛針)のモデルになる。Photo:2009/05/22 午前0時頃、写真の右上の灯りは地下鉄の出入口。@京都市鴨川(川端丸太町)

2009年5月20日水曜日

第八十八夜/ジョウカイボンってなんや?

 ジョウカイボン・・・変な名前だ。名の由来は平清盛の法名「浄海坊」、かつてジョウカイボンは、皮膚炎を起こす毒性のカンタリジンを持つカミキリモドキと混同されており、熱病で死んだ平清盛の名前に結びつけたと言われている。昔、この虫はカンタリジンを持っているのでけっしてつぶさない様にと教わったが、今回調べてみるとこれは「カミキリモドキ」の話しであってジョウカイボンは持っていないらしい。つまり僕は長い間、すっかりジョウカイボンに騙されていたと言う訳である・・・が(この呪縛で)今もやはり触る事は避けている。これが「擬態」の効用である。カミキリモドキに似る事によって捕食者(とちょっかいを出す生きもの)から身を守っているというわけだ。今の時期は、ハルジオンの草地、エノキやサクラの葉上など、どこでもよく見かける。カミキリムシに似ているが体(前翅)が柔らかく、花の蜜や小さな昆虫を食べる。カミキリムシよりもホタルに近い仲間。写真をよく見ると左上にもう一頭の虫が写っている、これは同じ仲間の「セボシジョウカイ」。黄色い体に黒い斑紋がある。Photo:2009/05/19 @京都御苑・母と子の森

2009年5月19日火曜日

第八十七夜/モノサシトンボ


 今朝は、京都自然観察学習会の西台先生がされている京都御苑の定点観察会に公園協会の杉林さんと共に参加。トンボ池ではカエルの声が多く聞こえる。池縁の草地には、モノサシトンボを沢山見る事が出来た。このトンボ、頭の先から尾(腹部)の先まで4cm〜5cmほどのイトトンボの仲間、腹節の模様が「ものさし」の目盛りのように見える事が名の由来。トンボが餌とする小さなハエやアブ、トンボを餌とするムシヒキアブやクモ・・・そしてそれらの昆虫を餌とするカエルや鳥など、樹林に囲まれた小さな水辺にも多様な生きものが棲んでいる。西台先生は野鳥の息づかいにアンテナを張って、僕は飛びすぎる蝶の存在が気になる。それぞれのアンテナ(センサー)の張り方が違って面白かった。多くの生きものの存在を知るには、こちらも足の裏から頭のてっぺんまでアンテナを張り巡らしておくことが大切なんだろうなと・・・。「ゲゲゲの鬼太郎」が妖怪の存在を感じる時に髪の毛が逆立つシーンがあったが、気持的にはそんな感じ。写真の一番下は、モノサシトンボの脚の拡大。全ての脚が櫛(くし)の様になっている。飛びながら小さな昆虫をこれで抱え込んで捕らえてしまう、いわば捕虫網の役割を持っている。Photo: 2009/05/19 @京都御苑・トンボ池

2009年5月16日土曜日

第八十六夜/小雨の中のヒメウラナミジャノメ

 京都御苑に出かける、あいにくの天気だ。気温も低く、小雨模様。こんな日はお目当てのムシは出ない。そんな中、ハルジオンの花の間で元気に飛び回っているのがこのヒメウラナミジャノメ。快晴の暑い日よりも元気なようだ。北は北海道から、南は屋久島辺りまで平地から低山地までごくごく普通に見る事ができるジャノメチョウである。Photo : 2009/05/16 @京都御苑・バッタ原

2009年5月15日金曜日

第八十五夜/スジオチバタケ

 今夜は先週、京都御苑で見つけたキノコを紹介。どんな生きものでもそうなんだが、見つけようと思っても見つからないものだ。このキノコもそうだった(実際に後日行った時は見つけられなかった)、倒木のそばに立って昆虫を探していた時に偶然目についた。形と色がなんとも不思議で印象的。昔、おやつに食べた「アポロチョコ」(月面探査機のアポロ号に似ていたからだと思う)に似ている。和菓子の様でもある。パラシュートの様でもある。どこか地球外生物の様でもある。早速、図鑑で調べる、「オチバタケ」の仲間らしいが確信が持てない。キノコの佐野先生に写真をメールで送り、名前を教えて頂く。キノコは「スジオチバタケ」であると言う、そして興味深いコメントが・・「押し花のようにして"しおり"に出来ますから、試して下さい。乾燥したきのこをコップの中の水に浸せば、復元しますよ」とあった。やっぱりキノコは不思議な生きものだ。(そんなことを発見した人も不思議だが)Photo:2009/05/09 @京都御苑・母と子の森

2009年5月14日木曜日

第八十四夜/ヨコヅナサシガメ

 写真のカニの様な虫は、ヨコヅナサシガメというカメムシの仲間。名前の「ヨコヅナ」は成虫の腹部の模様が関取の「横綱」の化粧回しに似ているから、「サシガメ」とは「刺す(肉食性の)カメムシ」の意味。ちょうどこの季節、コナラやサクラの落葉樹の樹皮の間に集団で見ることができる。赤い体の虫は、ちょうど幼虫が脱皮して成虫になったばかりもの。しばらく経つと中央上の黒白の縞模様(成虫)のように変色する。右の小さなものはこれから脱皮をする幼虫。他の昆虫を捕らえストロー状の口で体液をすってしまう。いわば流動食なので顎(あご)が発達せず細長い顔をしている。う〜んなんとも恐ろしい。ヨコヅナサシガメは外来種と考えられている。在来種でヤニサシガメと言うのもいる。Photo:2009/05/12@滋賀県近江八幡市八幡山公園

2009年5月13日水曜日

第八十三夜/ごきげんようトノサマガエル姫


 出張のために朝一番で京都駅に向う。午前5時30分、京都御苑のそばの地下鉄(丸太町駅)出入口の階段を駆け下り改札へ、そこでびっくり。改札の近くの床に大きなトノサマガエル(女の子かな)がいるではないか・・・誰かの落とし物ではあるまいし、きっと京都御苑から跳ねて来て、不幸にも階段を下りて来てしまったようだ。仕方あるまい、まだ時間はある京都御苑に連れ戻すか・・・幸い彼女はおとなしかった(でも大きくて手の平に収まらない)。彼女を持って階段を上る。御苑の樹木の下に放す。やれやれ・・・そこで気づいた「しまった!」写真を撮るのを忘れていた。地下鉄に乗れなかったことは「しまった」とは思わないけど(地下鉄のドアが閉まっただけのことだから)、こればっかりは「しまった!」である。英国では、カエルは幸福を連れて来る生きものの象徴だし、グリム童話の「カエルの王様」はハッピーエンドなお話として有名。今朝一番のカエルとの出会い、彼女を森に放したら、魔術がとけてカエルがお姫様に変身したって事は起らなかったが、今日は良い一日だった。感謝。【2009/05/13】Photo: 写真は別の場所で撮影したトノサマガエル @新潟県川西町

2009年5月11日月曜日

第八十二夜/ケラ・ケラ・おけら


 水田近くの側溝にケラ(おけら)が落ちていた。水田の突然土が起され、掘り出されたケラが逃げる時に落ち込んだようだ。ケラの前脚は土中にトンネルを掘ることや泳ぐ事は出来てもコンクリートの壁は登れない。ケラにとてもよく似た動物に「モグラ」がいるが、ケラはバッタやコオロギの仲間、モグラはほ乳類。どちらも生息環境が似ているために、その体のつくり(体型、手足の構造、体の表面を覆う体毛)も非常に似ている。食べ物は雑食性、普段は土中で植物の根や種子、ミミズ等を食している。そんな生活しているため、探そうと思ってもなかなか見つからないが、この時期はこのような状態で良く見つけることができる。立派に翅で飛び、街灯に飛来する。もちろんコオロギの様に翅をつかって鳴く事もできる。泳ぎも達者。(土に)素早く潜る、走る(地面を)、飛ぶ、泳ぐ、鳴く・・・けっこう優れた身体能力を持っている。Photo:2009/05/11 @滋賀県近江八幡市北之庄

2009年5月10日日曜日

第八十一夜/アナグマの死から想像したこと


 小学校のT先生の運転する車で近江八幡から能登川図書館に向う道中、車道前方に交通事故死のタヌキを見つける。横を通り過ぎる瞬間、タヌキではなくアナグマ(正式には、ニホンアナグマ)と判った。しばらくして、やはり気になる。T先生にお願いして車を止めて頂く、車を農道に駐車して歩いて現場に戻る。(車で少し通り過ぎたと思いきや結構、距離があった)やはり事故死の野生動物はアナグマだった。大きさは柴犬(またはビーグル犬)の首と手足を短くした感じ。頭部から左前脚あたりに血が少し付着していた。体には大きな損傷は見られない。軍手をはめて(幸い近くに落ちていた)、アナグマを道路上から歩道脇の草むらに移した。性別は確認していないが、雌かもしれないお腹の大きさが目立つ。鼻先から目周辺にかけて皮膚に感染症らしき様子。体はまだ柔らかく、血痕も乾いていない。昨夜から今朝にかけての事故だろう。道路に出て来て車にひかれるカエルでも探していたのだろうか、はたまた道路周辺の水田・里山間の移動時に運悪く車に接触してしまったのだろうか。いずれにしてもこのような場所にアナグマが生息していたことに驚く。近年、「ミニチュアダックスフント」が人気だが、この「ダックス:Dachs」がドイツ語でアナグマ、「フント=犬:Hund」を意味している、つまりダックフンドは「アナグマ犬=アナグマ狩りの犬」と言うことになる。こんな場面に付き合って頂いたT先生に感謝。Photo:2009/05/10 @滋賀県近江八幡市白王町、(上)事故死のアナグマ、長命寺から大中に向う白王町の(近江八幡彦根線の)路上(昼夜車の往来が多い)。(下)爪が発達した前脚。

2009年5月6日水曜日

第八十夜/水田に残るタヌキの足跡

 ハルリンドウの自生していた畦脇の水田の表面には、タヌキの足跡がいくつもついていた。あまり水田の中には入らず、畦と水田の際を歩いているようだ。カエルでも探しながら歩いていたのだろうか。そのうちのいくつかの足跡は、僕がここに来る少し前のものかと思わせるほど新しいようだった。Photo:2009/05/05 @滋賀県日野町

2009年5月5日火曜日

第七十九夜/ハルリンドウ

 滋賀県日野町の谷戸に水生昆虫を見に行く。田んぼに水が引かれたばかりでめぼしいものは見当たらない。きれいに刈り込まれた畦に無数のハルリンドウの鮮やかなブルーの小花が咲き始めていた。場所的には足の踏み場も無いほど見事な群落。小雨の降り始めた谷戸で足下のハルリンドウと頭上でさえずるキビタキ(小鳥)のさえずりに時間を忘れる。【2009/05/05】Photo:@滋賀県日野町

2009年5月4日月曜日

第七十八夜/ヤマトシジミ

 水田にもすっかり水が引かれ、田植えが盛ん。「減農薬云々」と表示された水田にもいくつか印象深い風景が見られた。一つは、きれいに刈り込まれた畦を持つ田んぼ、もう一つは、まっ茶色の畦に囲まれた田んぼ。後者の田んぼの畦はたっぷりと除草剤がまかれたことを物語。そんな畦に一頭の白っぽいシジミチョウを見つける。最初はなにか判らなかったが、やがてヤマトシジミと判った。街中のアスファルトのすき間に生きるカタバミ(ヤマトシジミの食草)で良く目にするチョウもこんな場所では、ちょっと違うものに見えてしまった。【2009/05/04】Photo:黄色の花は、コメツブツメクサ(帰化植物)@滋賀県近江八幡市北之庄

2009年5月3日日曜日

第七十七夜/アオスジアゲハ

 道を歩いていると歩道に一匹のアオスジアゲハが止まっていた。「?」普通では歩道でこのように翅を広げて休む蝶ではない。注意深く遠くから一枚写真を撮る。なおも近づき今度は近くから一枚。「?」ちょっと様子がおかしい。なんとこの蝶死んだばかりのようで、拾い上げると体はまだ柔らかい。翅にも体にも一つの傷も無くとても美しい。今の時期だと昨年秋に蛹になり、羽化したばかりの個体(春型)のはず、なにがあったか判らないが、やっと羽化したばかりなのにちょっと悲しい。Photo : 2009/05/03 @滋賀県近江八幡市

2009年5月2日土曜日

第七十六夜/早春の蝶・コツバメ


 ミヤマセセリと同様に早春の一時期だけ雑木林に現れるシジミチョウの仲間・コツバメ。ミヤマセセリとよく似た環境にいるのでいつもセットで現れる。翅の模様・色彩もミヤマセセリになんとなく似ている。(ただし翅表は黒地に藍色)早春の寒い時期に現れる蝶の特徴として体を効率よく温めるため陽光が全面に当たる様に体を傾けている。幼虫は、ツツジ類やバラ類の花・実を食べて育つ。止まっているのは野バラの新芽。【2009/04/29】Photo:@長野県姨捨山(冠着山)

2009年5月1日金曜日

第七十五夜/早春の蝶・ミヤマセセリ


 早春の山に行くとおなじみの蝶に会えた。翅の裏も表も地味で色味に欠けるがなんとも味があり好きな蝶だ。このミヤマセセリは、一年でも春一番先、雑木の新芽が吹き出す前にだけ現れる。陽があたると地表近くを活発に飛ぶが、いったん日が陰ると枯れ葉の間に身をひそめ、翅の模様が保護色なり見つけることは出来ない。成虫はまだ芽吹いていないコナラやクヌギの新芽に産卵する。幼虫は新芽が出すころ孵化しゆっくりと成長、晩秋に地表面に降り、枯れ葉を綴って冬を越し、そのままの状態で春を向え蛹になり羽化する。
【2009/04/29日】Photo:ミヤマセセリ♂ @長野県姨捨山(冠着山)