2011年9月27日火曜日

第三百十夜/リスアカネ

 今日は暖かく気持ちのいい一日だった。陽がさすといろいろな昆虫が顔出す。そろそろ赤トンボの季節。下界の暑さを避け山地に登っていたアキアカネも下界に降りてきた。ハスに覆われた池ではリスアカネの産卵も始まった。リスアカネの♀が空中から草が繁茂した水際に、まるで尾の先を水に打ち付けているかのように卵を産んでいる(打空産卵という)、これは産むというより「蒔く」という方が正しい表現。面白い光景だった。名前の「リス=Risi」はイギリスのトンボ学者F.Risに献呈されたもの。外来種ではありません。Photo:2011/09/27 @京都御苑、京都市

2011年9月16日金曜日

第三百九夜/アメンボ

 鴨川は台風12号の影響もほとんどなく、むしろ河原の堆積物が流され本来の清流に変わった。護岸の植物のたくましさは驚くばかりで、濁流に没したものさえ元気に残っている。川岸の水流が穏やかなところでは、魚の稚魚が沢山泳いでいる。濁流の中どのようにして過ごしたのか。水面に軽やかに浮かぶアメンボは、構造的にとてもきれいな姿だ。その動きから想像しにくいが水面に落ちてくる昆虫を見つけると直ちに捕らえて体液を吸ってしまう。Photo:2011/09/16 @鴨川、京都市

2011年9月14日水曜日

第三百八夜/クジャクチョウ

 出張先(長野県小諸市)で出会ったクジャクチョウ。夏場の高原ではよく見れるが街中の駅前で見るとやっぱり長野なんだなと思ってしまう。翅の裏側は地面か枯葉のような模様で翅を閉じているとどこに止まっているのか判らない。時折、ぱっと翅をひろげるとそこには名前のクジャクの羽模様の目玉が現れる。この目玉模様、生きている時は前翅にしか見えないが展翅標本にすると後翅にも現れる(生きている時は前翅に隠れている)。今、見ることが出来る個体は越冬に入り、来年春に再活動する。@小諸市駅前、長野県小諸市 Photo:2011/09/12

2011年9月8日木曜日

第三百七夜/蛾の身になにが起こったか?



 知人より蛾の写真が送られてきた(写真上)。翅の紋様からするとオスグロトモエ(♀)だと思う。「思う」と言うのは、近似種のハグルマトモエに非常に似ているからなのだ。この写真を見て「おおっ!」と興味を持った。その興味は蛾の種類ではなく。この蛾の左下翅にざっくりとするどく、あたかも爪で(しかも5本指?)はぎ取ったかのような欠損にである。その部分を拡大すると写真下のように「スパッ」となにかで切り落とした様になくなっていることが判る。こんな傷がただ飛んでいる時に付くとは思えない、翅の状態から羽化してさほどの日も過ぎていない、しかも片側だけだ。はたしてなにがこの蛾の身に起きたのか? 実はこの蛾の翅は、アオバズクというフクロウの仲間の食事痕によく現れる。この翅の傷もアオバズクから逃れた時に出来たものか? それとも街灯に引き寄せられ壁に止まっていた時にネコに手を出されたか・・・そんなことを想像すると一枚の写真からでも自然の中で起こる様々なことに思いが向かうのだった。原則として自分が撮った写真を使っていますが、今回は友情出演です。Photo:2011/09/07 @京都御苑。京都市

2011年9月7日水曜日

第三百六夜/木陰で休息するカラスアゲハ

 木陰で休息するカラスアゲハ(夏型♂)を見つける。翅はまっさら、鱗粉も尾状突起も完璧、羽化してまもない個体と思う。普通は春と夏の年2回の発生、夏の個体は7〜8月に羽化するのでこの個体は少し時期遅れの登場とも言える。でも自然界では発生の時期が微妙にずれる個体がいることで健全なのだ。種のほとんどが同じ時期に発生してしまうと気象などの自然環境に大きな変化が出た時に、一番大切な繁殖に支障が出てしまう。登場する時期がばらばらとある一定の約束の上(大まかな季節)でずれることで、自然環境の変化に対応できるので健全なのだが、かといって変な時期に一匹だけ登場してもこれまた繁殖が出来ない。虫の世界はなかなか複雑に、かつ上手く出来ている。このカラスアゲハの場合は、登場するある一定の約束とは、春型5月頃(前年秋に蛹になって越冬した個体が羽化=春型)、夏型7〜8月頃に羽化(春の個体が産んだ卵から発生したもの=夏型)する時期である。これを年2回発生という。Photo:2011/09/06 @京都御苑、京都市

2011年9月2日金曜日

第三百五夜/よくわからない蛾の世界

 虫の世界はよくわからない。大きくてりっぱなものはほんの一握りで、ほとんどは小さくてその生活史も満足に判っていない。芥子粒のようなハエや甲虫でいっぱいである。ぱっと見で「**の仲間だ」と判れば良い方(これが難しいのだが)で、この写真なんかはフィールドで見ると植物の種が葉っぱについているとしか思えない。ほとんど見過ごしてしまう。幸いに「蛾の仲間」と言うことまでは経験上で判る。体長10mmに満たない、動きもせずひたすら葉の上で、頭を下にむけて、触覚を体に沿わしている。体の不思議な体色は、翅の模様である。調べると「ヤブマメヒメシンクイ」名前だけでは植物なのか鳥なのかさっぱり見当もつかないだろう。でも蛾の仲間である。ポップ類を食害するヨツスジヒメシンクイと酷似するが、はっきり判っていることは食草の違い。名前の頭につく「ヤブマメ」を幼虫は食べる。判らないから面白い、でものめり込むにはちょっとした勇気も必要。Photo:2011/08/30 @京都御苑、京都市

2011年9月1日木曜日

第三百四夜/卵を細枝に託す・クマゼミの産卵

 あれほど熱かった夏なのに過ぎてしまうと、ほっとするどころかどこかさみしい。涼しい日が続くと日ごとにセミの鳴き声も減ってきた。今日はクマゼミがアラカシの細枝(枯枝)に卵を産んでいた。地面から高さ1m程度、鉛筆の太さよりも少し細いぐらいの枝だったのでゆっくりと観察できた。腹部先端を小刻みに動かし続ける、産卵管はまだ出ない。しばらくすると腹部先端より少し上(写真=セミの腹端より少し上に見える)から太い産卵管が現れた、このキリの様な産卵管を全身の力で枝に差し込む。この時、セミ成虫の前脚が強靭なのが役に立つのか。数分をかけて産卵を行なう、卵は樹皮下に産みつけられた。産卵が終わるといったん産卵管を抜き、休み、少し枝の上に移動してもう一度同じことを繰り返す。一回の産卵で相当に体力を消耗するのだろう、産卵と産卵の間の休息の時間は長い。セミが飛び立ったあとは、枝皮に上側にささくれたノミで刺したような痕が残った。産卵された卵はこのまま冬を越し、来年夏前に孵化し、地面に降り長い地下生活(幼虫)に入る。成虫となって地上に現れるのは数年先。成虫の期間は短いが、一匹の生涯(卵〜幼虫〜成虫)を考えると昆虫にしては極めて長生きと言える。Photo:2011/08/30 @京都御苑、京都市