2011年6月27日月曜日

第二百九十九夜/風変わりなカモ兄弟

 京都府立植物園で風変わりなカモの群れに出会う。雑木の下で餌を採る4羽のカモがいた。一見、2羽のマガモと、2羽のカルガモが仲良くしているように見えるが、それぞれのクチバシ、羽色、模様を観察すると、4羽はマガモとカルガモを親に持つ若鳥兄弟のようである。落ち葉の下の昆虫を探している。枯葉をかけばいくらでもミミズが見つかった。さっそくミミズを投げてやるとすかさず食べる、こちらの様子を伺うように徐々に近寄り、そのうち手から食べんばかりだった。もう少し時間があれば手から餌を食べたと思う。野生のカモがこれほど近くまで寄ってくるとは少々驚いた。一番前と左奥の個体はマガモ的な体色をもつ、ただし背中はカルガモ似。真ん中はカルガモとほとんど同じ体色だがクチバシの色が少し違う(マガモの♀的)。右奥の個体はマガモの♀的ではあるが体色にカルガモの特徴が出ている。4羽それぞれにマガモとカルガモの特徴がモザイク的に出ていて面白い。Photo:2011/06/27 @京都府立植物園

2011年6月26日日曜日

第二百九十八夜/ミドリシジミ

 シジミチョウの中でもとりわけ美しいグループがある。♂の翅の表面が緑色に輝くミドリシジミ類(ゼフィルスと呼ばれる)で日本の蝶の中でも最も美しいことで人気がある。中高生の頃、このチョウを採集するために梅雨時にもかかわらず毎週山に通った。標本を作るに特徴的な翅表面の緑色と後翅の尾状突起が完璧にそろう事(これを完品=カンピンと呼んだ)が絶対条件。だがフィールドで採集する個体では非常に難しい。そこで完品を得るために晩秋から冬にかけて山に行き、卵を採集する。卵は春、食樹(幼虫の食べる樹木)の芽吹きにあわせてふ化する。だから春から梅雨明けにかけては自室の机の上はシャーレ(幼虫を飼育する容器)が200個以上も積まれるようになる。週末のフィールド通いも忙しい、毎日の幼虫の世話も忙しい、世話を怠ると病気もでる、餌の確保も大切だ、その上、生態的な記録もとらないといけない、よなよな顕微鏡で幼虫を覗いているわけだ・・・これは自分にとって何ものにも代え難い幸せな時間、他人から見れば完全に病気以外のなにものでもない。さてこのミドリシジミの仲間、フィールドでの採集も難儀だ、コナラ等の樹木の樹冠を居場所とするので捕虫網も10mの長さのものを振り回すことが必要。絶えず樹冠のあたりを見ていて、素早く動くチョウをめがけて「よいしょ、えいや!」と振り回す訳だ、体力と視力がもの言う。子どもの頃から小さな昆虫を追いかけたお陰だろうか「動体視力」にはやや自信がある。だからスポーツ観戦時もその動体視力がもの言う。今日は車を運転しながら、路肩の栗の花に吸蜜に来たミドリシジミを見つける(もちろんよそ見でなくて)。後続車がいるので路肩で止まりたいが止まれない。いったん通り過ぎてUターンして戻ると・・・既に飛び去っていない。こうなれば直感で、チョウが止まりそうな枝葉を探す・・・やっぱりいた。ミドリシジミ(♂)が葉に止まりテリトリー(縄張り)を見張っている。周辺はハンノキ林もある、きっとどこかにもっといるはずだ、この個体の状態からすると来週からは♀も登場するに違いない。Photo:2011/06/26 @近江八幡市、滋賀県

2011年6月18日土曜日

第二百九十七夜/草地を移動するサワガニ

 樹木調べの為に山を歩く。思いのほか生きものの姿に出会わない。尾根状の草地でサワガニを見つける。危険と感じてか両手のハサミを振り上げている。水辺では素早く逃げるカニも背丈の低い草地では不利と感じてか。安全な水辺を離れて移動するサワガニの目的はなになのか。Photo:2011/07/17 @花背山の家、京都市

2011年6月9日木曜日

第二百九十六夜/ゲンジボタルの乱舞

 ホタルの乱舞っていう表現はたびたび聞くけれど、出張先で出会ったゲンジボタルは本当に乱舞していた。しかも驚く事に街の真ん中を流れる川でのこと。ここは山口市役所、県庁からほど近い一ノ坂川。ここのゲンジボタルは天然記念物となっている。聞けば今年のホタルの発生はとても多く、ピークは3日前だったと言う。その日は2000頭を越えたらしい。ホタルは辺りが暗くなると徐々に飛び始め、午後8時頃から活発さを増し、9時頃をピークに行動する。橋の上から眺めていると、岸辺の草地や樹木に止まっている数匹のホタルの発光は別の個体の発光を誘うように、徐々に多くのホタルが発光し、飛翔を始める。時折、両岸の道や橋を通過する車の強い人工の光が川面まで達するとホタルの発光はいったんそれにかき消されるが、暗くなると再び発光が始まる。カメラに三脚をセットし、ホタルの光の軌道を写そうとするが、通過する車のライト、ホタルを写真に収めようとするストロボが障害となって思うように撮れない。なにせホタルの弱光を撮るには、絞りを開放にした上に、1分以上の露光時間が必要だから(写真:絞り2.8、露光時間60秒)。僕が訪れた夜の個体数は約800頭、はたして2000頭の乱舞はどれほどのものなのか想像もつかない。ちなみにホタルの発生する川の周辺の道路や橋は、ホタルに影響に無いオレンジ色の保安灯を使う等の配慮がされていた。ゲンジボタルの発光は2秒に1回(西日本)、ヒメボタル(第二百九十三夜)のフラッシュ光と違い、光の軌道「スッ〜、スッ〜」と尾を引くように写る。Photo:2011/06/08 @一ノ坂川、山口市
ホタルの記録はこちらをどうぞ http://www.c-able.ne.jp/~denshou/hotaru/nippo11.htm

2011年6月4日土曜日

第二百九十五夜/トビの若鳥

 先日、見つけたトビの巣を見に行く。2羽の若鳥はすっかり成長し、今日明日にでも巣立ちをしそうな様子。巣の近くまで行くと、1羽は巣に伏せて身を隠した、別の1羽は逆にこちらを見ようとするそぶり。これもそれぞれの個性か。気持ちのいい風を受けて若鳥は湖面を見ている。巣立ちのイメージをしているのか、単に親鳥が持ち帰る餌を待っているのか。Photo:2011/06/04 @中主町、滋賀県

2011年6月3日金曜日

第二百九十四夜/カイツブリの親子

 びわ湖に通じる水路で見つけたカイツブリの親子。親が盛んに潜水を繰り返し餌を捕らえヒナに与えている。両親は捕らえた獲物が小さければそのまま、少々大きな場合(ザリガニか?)は小さくしてから、ザリガニの場合はハサミの部分を除いて与えているようだった。ヒナは全身真っ黒で頭から首にかけて白いシマを持つ面白い体色。時折、遊ぶように潜水をしていた。親子に近づこうとするとヒナは水辺の草の茂みに隠れ、2羽の親はその場とはまるで関係ないように泳ぎ去る。再びよからぬものがいなくなり、安全が判ると互いに呼び合い、もとのように餌捕りに夢中になった。Photo:2011/06/03 @中主町、滋賀県

2011年6月1日水曜日

第二百九十三夜/人知れず過ぎるヒメボタルの夜

 京都・桂川の河川敷にヒメボタルを見に行く。このホタル、ゲンジボタルやヘイケボタルのように川岸ではなく、樹林地の林床部に生息する。何故かと言うと、幼虫はカワニナを食べて生長するのではなく、オカチョウジガイ(陸貝)を食べるため。この陸貝の仲間は湿った林床部を生活の場とする。ちなみにデンデンムシ(カタツムリ)も陸貝。ヒメボタルの発光は、すこし黄色がかったストロボ光(パッ、パッ、パッ、パッ・・)で歯切れ良く明滅を繰り返す。まるでクリスマスツリーだ。10時頃から活発になり夜12時をピークとするらしい、かなりの夜更かし型。11時頃はまだ下草に止まって光っていたホタルも12時頃になると、地上20cm程度の高さを緩やかに飛び始めた。オスは飛翔しながら発光するが、メスは草木につかまった状態で発光する。ちなみにメスは後翅が退化して飛べない。写真の中で同じ位置で強く光っているのが♀の光、空中にある細かな光の点そして光の軌道がオスの発光。樹林地のなか凄まじいばかりの光だった、ここは知られている生息地では日本で一番広く個体数も多いという、ただしこの生息環境が今後も守られると言う保証はどこにも無い。幸いこの生息地は研究家達により生息調査・保護活動が続けられている。活動が夜遅く人に知られる機会に乏しい、河川の水質汚濁に左右されない事などを考えると以外に身近な場所で生息をしているとも考えられる。しかしこのことは人知れず生息地が開発され、絶滅していることでもある。ながらく都市人にとって水際も山際も無駄な土地として扱われてきた、悲しい事に今でもそれは同じ。興味深い事にこんな場所こそ環境の多様性を持ち、面白い生きものがいっぱい暮らしている場所なのだ。僕たちはある場所や環境を語る時に、様々な季節、様々な時間を費やし多様な感覚を駆使しない限り、判った・知ったなんて安易に言ってはいけないのだ。この地を守っているボランティアの方々に感謝。真っ暗な樹林地でヤブ蚊に耐えながら、10分露光してやっと撮れた。満足にホタルの光をとらえようとすると20分以上の露光が必要。Photo:2011/05/31 桂川河川敷、京都市