2012年9月30日日曜日

第四百十六夜/ヤマクダマキモドキ

 初めて見たヤマクダマキモドキ(Holochlora longifissa、全身がきれいな緑色のキリギリスの仲間。近似種のサトクダマキモドキは良く目にするが、「ヤマ」は初めてである。全身の特徴はほとんど同じだが、サトクダマキモドキの前脚は緑色、本種は前脚が赤紫色で区別する。「クダマキ」とはクツワムシの事らしいが、そのクツワムシに似ているので「モドキ」が名についた。訳せば「ヤマにいるクツワムシに似たキリギリス」と言う意味になる。写真は柿の葉上に休む♀で、左側の後脚をなくしています。Photo:2012/09/29  @栗東市、滋賀県
*サトクダマキモドキは2009年8月18日第百三十三夜をご覧下さい。

2012年9月29日土曜日

第四百十五夜/里山のトンボ


  里山のトンボと言えば・・・イトトンボやシオカラトンボ、アカネ(赤とんぼ)、ギンヤンマ、オニヤンマ、ハグロトンボなどを思い浮かべる。むしろトンボと言えば里山と言うぐらい里山の多様な環境に中で様々な種が暮らしている。今日のトンボは、オオルリボシヤンマ(Aeshna nigroflava(写真は休息中の♂)。谷戸の一番奥の樹木に囲まれた池で♂♀5頭以上が飛び回っていた。テリトリーをまわる♂(写真下)、交尾をする個体、産卵する♀も観察できた。♂同士がテリトリーを巡る戦いで両者水面に落ちる光景もあった。気長に観察していると時折近くで休息することが判る。この池周辺には、本種以外にオニヤンマ、クロスジギンヤンマ、ヤブヤンマ、マルタンヤンマなど大型のトンボも多い。池には季節になるとモリアオガエル、カスミサンショウウオも見られる。一見、特徴の無い、樹木に覆われ、泥が溜まった池は人間の興味を「汚い、危険」以外に引く事はないだろうが、里山の生きものの生活にとって無くてはならない環境である。Photo:2012/09/29 @栗東市、滋賀県

2012年9月28日金曜日

第四百十四夜/ウラナミシジミ

 秋になると数を増すウラナミシジミ(Lampides boeticus、暖地を除いては越冬することができず、冬の訪れとともに死に絶えてしまう。 幼虫は、ソラマメ、エンドウ、ハギ類など、マメ科植物の花や若い果実を食べるので、秋の収穫時にちょうど食草が豊富な季節となるのでこの季節、豆の畑に行けばいくらでも飛んでいる。Photo:2012/09/27 @京都府立植物園、京都市

2012年9月27日木曜日

第四百十三夜/キジバトの日光浴

 「ああったまらないこの気持ちよさ! 羽の裏側も右左、羽の表も・・・尾羽もシッカリ広げて根元まで・・・陽光をあてよう。間近で人間が見ていても大丈夫、奴らさえこなければね。」と聞こえてくるようなキジバト(Streptopelia orientalisの日光浴にであう。右左と近くで見るこちらを気にする事無く体の向きを変え丹念にしている。尾羽はきっちり180°広げて見事、尾羽の模様も良く判る。最高の秋晴れの下、至福の日光浴もついにはカラスがやってきて終わってしまった。Photo:2012/09/27 @京都府立植物園、京都市

2012年9月26日水曜日

第四百十二夜/マツモムシ

 小さな池で見つけたマツモムシ(Notonecta triguttata。写真を撮るためにすくい捕り地面の置いてみる。普段は水面下に腹面を上に向けて、つまりひっくり返った状態で生活している。後ろ足が長く、ボートのオールのような動きで水中を泳ぐ。体にはビロードのような細かな毛(?)が密生して一滴の水さえもはじき返している。背中はベッコウ(ウミガメ)の様な模様で、その姿もウミガメのような感じである。けっこう飛ぶのが上手く、以外に移動するようだ。カメムシの仲間で、小さな水面に落ちた小動物などの体に鋭い口吻を刺し、体液を吸う。だからこいつをうっかり握りしめるとその口吻を皮膚に一差しされ、これが大変な激痛なのである。これは昆虫少年はだれもが経験するものである。Photo:2012/09/25  @京都御苑、京都市

2012年9月25日火曜日

第四百十一夜/ホシミスジの幼虫

 ホシミスジ(Neptis pryeriの産卵行動9月4日/第四百四夜)を観察した場所を訪れた。9月11日にはすでにふ化していたので、もう2週間以上になるがまだ1齢幼虫のままだった。もうしばらくは活動し2齢になって冬を迎えるはずである。この小さな幼虫は葉を食べ終わると、葉の先端にある枯葉の巣の中に戻って行く。Photo:2012/09/25 @京都御苑、京都市

2012年9月17日月曜日

第四百十夜/ツバメシジミ

 暑さが残る京都御苑を散歩。小さなシジミチョウが1頭草地を飛んでいた。ようやく止まったところを写す。ツバメシジミ(Everes argiadesの♂だった、小さな翅は1点の汚れも傷もない、尾状突起も揃っている。羽化したての個体だろう。しきりに草地を飛び♀を探している様子。数日後には♀も辺りの草地に姿を現すだろう。Photo:2012/09/17 @京都御苑、京都市

むしの気持ち:もう少しピントをきりりっと合わせて欲しいですね。さて私の頭はどちらでしょう。


2012年9月12日水曜日

第四百九夜/じっとしている事も大切

 葉の上に止まる小さな蛾は、シロオビノメイガ (Spoladea recurvalis。止まったまままったく動く事無くじっとしている。指先で触れるとさすがに飛び去るが、再び葉に止まるとまたじっとしている。葉の上についた鳥の糞か落ち葉の断片にも見える。僕たち人間は、色彩や形で生きものが外敵から身を守っていると思いがちだが、じっとする事も大切な身の守り方である。この小さな蛾の捕食者はクモやトカゲ、カエルであればなおさらである。この蛾がカエルの前に止まっていようともおそらくカエルは食べ物として反応しないだろう、しかし一度この蛾が身を動かせばすぐさま飛びついて食べてしまうはずである。身の守り方は形や色彩も大切だが、無駄に動かない事である。Photo:2012/09/11 @京都御苑、京都市

むしの気持ち:無駄な動きはお腹も減ります。

2012年9月11日火曜日

第四百八夜/カノコガ

 カノコガ(Amata fortunei fortuneiは、6月〜9月の雑木林の林辺や草地でよく見る昼間に活動する蛾の仲間。体の紋様は、「フタオビドロバチ」に擬態していると言われるが果たしてどうか。止まり方も飛び方も弱々しく全然似ていない。もちろん蛾なのでハチの様に針もない。Photo:2012/09/11 @京都御苑、京都市

2012年9月10日月曜日

第四百七夜/シャチホコという名の蛾

 探せばムシは必ず見つかる、でも探そうと思ってムシは見つかるモノでもない。視界の端っこにちょっことだけ写り込んだものに気付くこともある、本命のムシを撮ろうと思って、カメラのファインダー越しに別のモノを見つける事もある。写真の蛾も同じ状況でその存在に気付いた。遠くから見た時は葉の上に落ちている小枝と思った、でも少し不自然でもある、「さて?」的な直感で見ると初めて「蛾」である事が判った。これはおそらくクロツマキシャチホコ (Phalera minor、「おそらく」としたのは、この仲間(属)は数種類いるのだが、その差はどれも翅の斑紋のビミョーな違いでしかないから。殺して標本にすれば同定もし易くなるがそうもいかず、数枚の写真を行ったり来たりして探るほかない。後ろから撮った写真(下)は写りが悪いが、翅を体につけると筒状になる体形がよくわかる。Photo:2012/09/04 @京都御苑、京都市

むしの気持ち:普通は気付かれないんですよ・・・多分。

2012年9月7日金曜日

第四百六夜/ワキグロサツマノミダマシ

 ワキグロサツマノミダマシ(Neoscona mellotteeiという変わった名前のクモ。日中は網を畳んで葉上で休み、夜間になると円形の網を張り虫を捕食する。写真はアラカシの虫食いの葉上に休んでいる個体だが、上手い具合に虫に食われた葉のエッジが茶色に変色し、クモの体色と良く似ている。クモは葉の状態と自分の体色が似ている事を知っているんだろうか。変わった名前だが調べてみると「サツマノミ」とは「ハゼの実」の事、「ダマシ」とは「似ている」の意味とある。つまり「ハゼの実に似ているもの」となる。一度、未熟なハゼの種子を見てみよう。「ワキグロ」とは、体の側面が黒いと言う意味。近似種で「サツマノミダマシ」という種がいて、こちらは脇も緑色なのだ。Photo:2012/09/04 @京都御苑。京都市

2012年9月6日木曜日

第四百五夜/キマダラセセリ

  茶褐色と黄色の粗いまだら模様のセセリチョウの仲間・キマダラセセリ(Potanthus flavumがハスの葉の上で休んでいた。見れば見る程、セセリチョウの仲間はチャーミングである。このキマダラセセリは、身近な場所の原っぱや河原、林の周辺などでよく見られる。弾丸のように敏速に飛ぶので近くを通過する時は「ブンッ」と羽音がするほど。 幼虫は、メヒシバ、ノビエ、エノコログサなどのイネ科、ミヤコザサなどのタケ科の植物の葉を食べる。 Photo:2012/09/04 @京都御苑、京都市

むしの気持ち:人間は私を見てたびたび「蛾だ!」と言いますが・・・どうしてだろう。

2012年9月4日火曜日

第四百四夜/ホシミスジの産卵

 タテハチョウの仲間・ホシミスジ(Neptis pryeriの産卵に出会う。近縁種のコミスジに似るが、1本目の帯が白色紋列になっていることで区別できる。この蝶の幼虫は、公園などに植えられるシモツケ、ユキヤナギ、コデマリの葉を食べるので個体数も多く、どこにでも生息すると思いがちだが、なぜか個体数は少なく目にする機会は少ない。
  今日は、このホシミスジ(♀)がずいぶんとユキヤナギにこだわった飛び方をしていた、どうも卵を生む新芽を探しているようだ。しばらく様子を見ると予想通り、新葉の裏に腹部を曲げて青白い卵を産みつけた(写真下)。翅の裏側の紋様がきれいなので写真に収めたかったが裏は見せてくれなかった。この蝶は止まる時はたいてい翅を開く習性があるのでたいてい上のような写真になる。Photo:2012/09/04 @京都御苑、京都市

むしの気持ち:卵を見てください、すごくきれいだから。

2012年9月3日月曜日

第四百三夜/森のソーセージ?

 フィールドにしている里山で見つけたツチアケビ(Galeola septentrinalis。大きさも色もまるでウインナーソーセージがなっているようだ。このツチアケビは、アケビの仲間ではなくラン科植物(腐生ラン類)、ただしこのランは光合成を行う葉を持たず、養分のすべてを共生菌に依存している。一年を通して地上部に葉はなく、初夏に花茎を地上に伸ばす。花茎は高さが50 - 100cmに達し、あちこちに枝を出して複総状花序となり、枝の先端に花を咲かせる。花は3cm近くになりかなり大型。花の頃に同じ場所を通ったのに全く気付かなかった。来年の夏に期待しよう。Photo:2012/09/02 @栗東市、滋賀県

2012年9月2日日曜日

第四百二夜/秋の谷戸の風景とオオカマキリ

 稲穂も実り、谷戸は確実に秋の風景だった。まわりの草地や畦では、オオカマキリ(Tenodera aridifoliaがイナゴやトンボをねらう様子も見る事が出来た。以前と変わらない谷戸の風景がまだまだ残っている。特に谷戸の田んぼでは、最近の減農薬栽培などにより昆虫類も多く戻ってきたことを実感する。言わば望ましい自然環境に戻りつつある。しかし大きく一つだけ昔の風景には無かったものがある・・・田んぼのまわりに張り巡らされたネットである。ネットの目的はただ一つ、イノシシや鹿が稲穂を食べない様にである。周辺の地面にはシカの足跡や糞、イノシシが地面を掘った後がところかまわずあった。農家にとって虫が多くなった事は許容できるが、作物をすっかり台無しにしてしまう獣害は直接収益に関わる事態。ネットの購入や設置・管理などただならぬ負担が必要である。なにか良い防御があればいいのだが・・・。
これは農家だけの問題ではなく、谷戸の風景にブルーネットはぜんぜん似合わない、僕にとっては容易に水辺に近づく事が出来なくなり、あぜ道を歩く事もはばかられる。ちょっとコマッタ事態である。Photo:2012/09/02 @栗東市、滋賀県

むしの気持ち: ・・・・今日はへんな人間がネット越しに写真を撮っていました。なにもしなかったので、まあいいでしょう。

2012年9月1日土曜日

第四百一夜/優美なコヤマトンボのヤゴ

 鴨川で水辺の生きもの調査に参加(主催:NPO法人ビオトープネットワーク京都)。普段接している鴨川でも今日はずっと下流の十条あたり。水は一見きれいだが、川に入ってすぐに水の匂いが気になった、どことなくどぶ臭い。時折、泡が消えずに流れて行く。さて何が採れるのだろうか。早速、対岸の水際の草根元をガサガサと狙ってみる、オイカワ、ナマズ、フナ、ヨシノボリ、ヘビトンボ(幼)、コオニヤンマ、オナガサナエ、コヤマトンボなどトンボ類のヤゴなど一通りの収穫があった。中でも写真のコヤマトンボ(Macromia amphigenaのヤゴは優美(?)な体形だった・・・さてこれはどこかで見た事のあるもの。体に不釣り合いなほどの細く長い手足、頭部前額の小さな突起、もちろん顔は一面だけだが、国宝「阿修羅像」に似ていると思うのは僕だけだろうか。Photo:2012/09/01 @勧進橋、鴨川、京都市

むしの気持ち:阿修羅像が私に似ているだけです。早くもと居た場所に帰してください。