2011年2月25日金曜日

第二百七十三夜/トビは油揚をさらうか?

 その体験は突然きた、聞くに勝るその瞬時と迫力・・・「大切にしているものを横取りされてあっけにとられること」これを昔からトビに油揚さらわれると言う。現代では油揚ならぬサンドイッチやお弁当がさらわれると聞く。その事件が自分の身に起こった。相棒と二人、僕は鴨川の川面を遊ぶ水鳥を見ながらベンチでサンドイッチを食べようとしていた。「鳶には注意しないとな〜」と周囲を注意していたその瞬間、相棒が今まさに食べようと手にしたコロッケパンが消えた。不思議なことに「バッサ!」と言う羽音は事件の後で聞こえた。つまり羽ばたき一つせず背後から急降下したトビは大人二人の間(互いの間は50cmもない)をピンポイントでコロッケパンをつかみ獲った後に羽ばたき一つで0.5秒後には10メートル前方上空に舞い上がった、と言う訳だ。悔しいやら、感動やら、関心するやら、複雑な思いでトビとコロッケパンを見送った。一回280円の少々お高い餌やりだがすばらしい(?)体験になった。この餌の獲りかたは許しがたい、しかし立派な猛禽類としての運動能力を認めるには十分である。草原でうっとりしているネズミだったらこれでは歯が立たない。今度はカメラの上にパンを置いて、その瞬間を撮ろうか・・・なんてことを思ってしまう。さて、今回の体験で判ったことは「鳶に油揚・・・」のことわざに有るようにきっと昔から鳶はこんな餌の獲り方をしていたんだろうなと思った。Photo:2011/02/25 @鴨川、京都市

2011年2月23日水曜日

第二百七十二夜/キツネの巣穴と昼間のフクロウ


 仕事の現場でキツネの巣穴を見つける・・・といってもあまりにも判りやすい場所で驚く。さてここは今までなんども通った場所である。今まで気付かなかったことの方がおかしい。砂山に直径25cmぐらいの穴が3本、内2本が奥まであるようだ。穴の入り口には真新しい足跡が残る。肉球で出来たくぼみの砂はまだ湿り気があったから人の気配を察して巣穴に逃げ込んだのかもしれない。よくよく見ると巣穴の周りの砂は枯れ草の上に乗っている・・・ということは今年に入ってから掘られたものに違いない。キツネには気の毒だがこの場所は春にはグランドとして整備されてしまう。さてどうしたものか。この後、すぐ側で昼間に飛ぶフクロウを見た(めったなことでは見れないと思うのだが)、キツネがフクロウに化けて逃げていった? さほど羽ばたきもせず、羽音一つ立てずに樹々の間を滑らかに飛ぶその飛行に大変驚いた。フクロウが飛び去った辺りを見ると地面にいくつものペリット(餌動物の消化できない部分=毛、羽根、骨、うろこなどの塊)が見つかった。キツネの糞も沢山有る。見るとほとんどがネズミの毛と骨、キツネとフクロウどちらも知恵もの、両者ここではネズミが主食のようだ。Photo:2011/02/23 @浅小井、近江八幡市、滋賀県

2011年2月17日木曜日

第二百七十一夜/オカヨシガモ

 ヨシの茂る水路を気持ち良さげに泳ぐカモ達。少しスレンダーなボディ、地味なカモがやって来た。このカモ、オカヨシガモという(写真は♂)。雄雌共にあまり特徴がないのですぐに見過ごしてしまう。水面に映るヨシのなかを泳ぐ姿はとても綺麗だった。Photo:2011/02/17 @浅小井、近江八幡市、滋賀県

2011年2月15日火曜日

第二百七十夜/五位鷺(ゴイサギ)

 普段なら夜行性の上、警戒心の強いゴイサギ(*)が真っ昼間にしかも人が近づいても逃げる気配もなく池に架かる端のたもとにたたずんでいる。側を通る人は「なれているのね」なんて言いながら写真に収めていくのだけれど、よくよく見れば生気がない。本来なら真っ赤に目立つ虹彩(目の白目の部分)も濁っている、目もどこか落ち込んで見える、ゴイサギの特徴でもある2本の白い冠羽(頭の飾り羽)も一本しかない、さらに見ると背中の一部の羽がなくなり、周りの羽がべっとりと汚れている。このゴイサギの冠羽の特徴からちょうど一週間前に写真に収めた個体と同じだった。一週間前は元気なようだったが、その頃からなにか体に不調があったことも想像できる。そしてこの一週間満足に餌も食べていないのかもしれない。一体このゴイサギの身に何が有ったのだろうか。背後からオオタカの一撃を喰らい、逃げてきたのか? なんとか元気になって欲しいと心から願う。

*ゴイサギ:サギ科の鳥。全長58センチくらい。頭と背が緑黒色、翼は灰色、顔から腹は白く、頭に2本の飾り羽がある。幼鳥を星五位(ほしごい)、成鳥を背黒五位(せぐろごい)ともよぶ。夜行性で、水辺で魚・カエルなどを捕食。名は、醍醐(だいご)天皇の命によって捕らえようとすると素直に従ったので、五位を授けられたという故事に由来。
Photo:2011/02/15 @九條池、京都御苑、京都市

その後のゴイサギ:この写真を撮った夕方、近くの水路で力なくたたずみ、翌日別の水路で死んでいたことを知人から伝えられた。時勢がら死体は保健所に届けられ、インフルエンザの検査がされたそうだ。検査は陰性。その後、死体がどのような処分をされたかわからない、おそらくその亡がらは別の生きものの血となり肉となる野生の生きもの本来の最期とはならなかっただろう。一羽のゴイサギに起こった事件、それがもとで餌を採れず、加えて積雪に勝てなかったのか。自然界ではごく日常的な出来事、ならばこそせめて草むらで死なせてやりたかったなと思うのである。(2011/02/17)

2011年2月5日土曜日

第二百六十九夜/葦原のホオジロ

 琵琶湖の内湖/西の湖のヨシ原を歩く。今日は(も)ハイイロチュウヒ(タカの仲間)をカメラに収めようと沢山のバーウォッチャーが土手沿いに並んでいた。人を避けてヨシ原のなかに入ってみた。背丈3mを越すヨシ原に足を踏み入れるとまるで迷路の様、遠くの山を目印にしないかぎり迷ってしまうだろう。時々、ヨシ刈りで出来たぽっかりとした空き地が現れる。そんな見通しの悪い場所ならではの出会頭系接近遭遇ってあるもんだ。ヨシ原を曲がったとたん地表から2m程度の高さでハイイロチュウヒがこちらに向かってきたのだから。互いの距離は5mほど、残念なことにカメラに三脚につけていたからさすがに写真は撮れなかった。ハイイロチュウヒも驚いて急上昇。しかし肉眼でしっかりとその姿は見せてもらった。2度目の出会いを期待したが、その後はこんなラッキーな出会いは無かった。周りのヨシ原に耳を澄ませば、パチパチと周囲から音がする。ホオジロ(写真)の群れが草の種子やヨシの茎を割る音だった。Photo:2011/02/05 @西の湖、近江八幡市、滋賀県