2011年11月27日日曜日

第三百十四夜/カワセミ

 府立植物園に行く、蓮池の四阿に幾人もの鳥を撮る人たち。レンズの先は、池の中央のネットに止まる一羽のカワセミ。決して良くない場所なのにカワセミが動く度に皆さんしきりにシャターを切る。カワセミはそんな魅力を持つ鳥である事はもちろん判っているがどうもこの様な人達の動きと、このような環境での撮影は好きになれない。はなれたところからコンパクトデジカメで一枚だけ押さえた。Photo:2011/11/21 @京都府立植物園

2011年11月9日水曜日

第三百十三夜/モリアオガエルの幼体

 観察を続けているある池のモリアオガエルが冬期どこで越冬するのか知りたかった。毎年探してはいいるものの確実な事は判らない。昨年はハスの枯葉が漏斗状になった中に潜んでいるものを見つけたが果たして春までいたかどうかは判らなかった。今年も探す、やっと一頭の幼いカエルを発見。体長2cmに満たない今年上陸した個体だった。池そばの倒木の地際にあいた孔にすっぽりと収まっていた。如何にも居心地が良さそうだ。乾燥に弱い彼らは以外にも水際からはなれずに越冬していると考えても良さそうだ。Photo:2011/11/02 @京都市

2011年11月1日火曜日

第三百十二夜/秋のオオアオイトトンボ

 オオアオイトトンボ、光沢の強い緑色をした美しいイトトンボ。アオイトトンボに似るが、こちらの方がやや大きい。京都御苑界隈では、秋になってから見る事が出来る。このトンボの産卵習性は面白く、水面におおいかぶさった木の樹皮に産卵する習性がある、そのために木陰のある池でよく発生している。成虫は、池の周辺の林床や、うすぐらい草藪で見かけることが多い。体が大きい割には、脚部がキャシャだからか、草にぶら下がるように止まる。Photo:2011/11/01 @京都御苑

2011年10月18日火曜日

第三百十一夜/樹上に住むアオマツムシ

 今や街の街路樹でよく見るアオマツムシ。コオロギやキリギリスの仲間とは、思えない面構え。むしろナナフシの顔の様である、樹上に住むとこんな顔になるんだろうか。日本では本州、四国、九州に分布。明治時代に中国大陸より日本に入り帰化した外来種という説が一般的だが、原産地ははっきりせず、日本での初記録年月日も1898年という説と1908年ごろという説があるが、はっきりしていることは初記録地は東京都の赤坂榎木坂であるらしい。一生を通して樹上に住むので土の地面が無くても、少々乾燥した環境にも対応できるたくましさ、だから街のなかでも増えることが出来る。バス待ちの時に頭の上で声はすれど姿は見えず・・・形が平たく、葉や枝の上を素早い動きをするためだ。Photo:2011/10/18 @京都御苑、京都市

2011年9月27日火曜日

第三百十夜/リスアカネ

 今日は暖かく気持ちのいい一日だった。陽がさすといろいろな昆虫が顔出す。そろそろ赤トンボの季節。下界の暑さを避け山地に登っていたアキアカネも下界に降りてきた。ハスに覆われた池ではリスアカネの産卵も始まった。リスアカネの♀が空中から草が繁茂した水際に、まるで尾の先を水に打ち付けているかのように卵を産んでいる(打空産卵という)、これは産むというより「蒔く」という方が正しい表現。面白い光景だった。名前の「リス=Risi」はイギリスのトンボ学者F.Risに献呈されたもの。外来種ではありません。Photo:2011/09/27 @京都御苑、京都市

2011年9月16日金曜日

第三百九夜/アメンボ

 鴨川は台風12号の影響もほとんどなく、むしろ河原の堆積物が流され本来の清流に変わった。護岸の植物のたくましさは驚くばかりで、濁流に没したものさえ元気に残っている。川岸の水流が穏やかなところでは、魚の稚魚が沢山泳いでいる。濁流の中どのようにして過ごしたのか。水面に軽やかに浮かぶアメンボは、構造的にとてもきれいな姿だ。その動きから想像しにくいが水面に落ちてくる昆虫を見つけると直ちに捕らえて体液を吸ってしまう。Photo:2011/09/16 @鴨川、京都市

2011年9月14日水曜日

第三百八夜/クジャクチョウ

 出張先(長野県小諸市)で出会ったクジャクチョウ。夏場の高原ではよく見れるが街中の駅前で見るとやっぱり長野なんだなと思ってしまう。翅の裏側は地面か枯葉のような模様で翅を閉じているとどこに止まっているのか判らない。時折、ぱっと翅をひろげるとそこには名前のクジャクの羽模様の目玉が現れる。この目玉模様、生きている時は前翅にしか見えないが展翅標本にすると後翅にも現れる(生きている時は前翅に隠れている)。今、見ることが出来る個体は越冬に入り、来年春に再活動する。@小諸市駅前、長野県小諸市 Photo:2011/09/12

2011年9月8日木曜日

第三百七夜/蛾の身になにが起こったか?



 知人より蛾の写真が送られてきた(写真上)。翅の紋様からするとオスグロトモエ(♀)だと思う。「思う」と言うのは、近似種のハグルマトモエに非常に似ているからなのだ。この写真を見て「おおっ!」と興味を持った。その興味は蛾の種類ではなく。この蛾の左下翅にざっくりとするどく、あたかも爪で(しかも5本指?)はぎ取ったかのような欠損にである。その部分を拡大すると写真下のように「スパッ」となにかで切り落とした様になくなっていることが判る。こんな傷がただ飛んでいる時に付くとは思えない、翅の状態から羽化してさほどの日も過ぎていない、しかも片側だけだ。はたしてなにがこの蛾の身に起きたのか? 実はこの蛾の翅は、アオバズクというフクロウの仲間の食事痕によく現れる。この翅の傷もアオバズクから逃れた時に出来たものか? それとも街灯に引き寄せられ壁に止まっていた時にネコに手を出されたか・・・そんなことを想像すると一枚の写真からでも自然の中で起こる様々なことに思いが向かうのだった。原則として自分が撮った写真を使っていますが、今回は友情出演です。Photo:2011/09/07 @京都御苑。京都市

2011年9月7日水曜日

第三百六夜/木陰で休息するカラスアゲハ

 木陰で休息するカラスアゲハ(夏型♂)を見つける。翅はまっさら、鱗粉も尾状突起も完璧、羽化してまもない個体と思う。普通は春と夏の年2回の発生、夏の個体は7〜8月に羽化するのでこの個体は少し時期遅れの登場とも言える。でも自然界では発生の時期が微妙にずれる個体がいることで健全なのだ。種のほとんどが同じ時期に発生してしまうと気象などの自然環境に大きな変化が出た時に、一番大切な繁殖に支障が出てしまう。登場する時期がばらばらとある一定の約束の上(大まかな季節)でずれることで、自然環境の変化に対応できるので健全なのだが、かといって変な時期に一匹だけ登場してもこれまた繁殖が出来ない。虫の世界はなかなか複雑に、かつ上手く出来ている。このカラスアゲハの場合は、登場するある一定の約束とは、春型5月頃(前年秋に蛹になって越冬した個体が羽化=春型)、夏型7〜8月頃に羽化(春の個体が産んだ卵から発生したもの=夏型)する時期である。これを年2回発生という。Photo:2011/09/06 @京都御苑、京都市

2011年9月2日金曜日

第三百五夜/よくわからない蛾の世界

 虫の世界はよくわからない。大きくてりっぱなものはほんの一握りで、ほとんどは小さくてその生活史も満足に判っていない。芥子粒のようなハエや甲虫でいっぱいである。ぱっと見で「**の仲間だ」と判れば良い方(これが難しいのだが)で、この写真なんかはフィールドで見ると植物の種が葉っぱについているとしか思えない。ほとんど見過ごしてしまう。幸いに「蛾の仲間」と言うことまでは経験上で判る。体長10mmに満たない、動きもせずひたすら葉の上で、頭を下にむけて、触覚を体に沿わしている。体の不思議な体色は、翅の模様である。調べると「ヤブマメヒメシンクイ」名前だけでは植物なのか鳥なのかさっぱり見当もつかないだろう。でも蛾の仲間である。ポップ類を食害するヨツスジヒメシンクイと酷似するが、はっきり判っていることは食草の違い。名前の頭につく「ヤブマメ」を幼虫は食べる。判らないから面白い、でものめり込むにはちょっとした勇気も必要。Photo:2011/08/30 @京都御苑、京都市

2011年9月1日木曜日

第三百四夜/卵を細枝に託す・クマゼミの産卵

 あれほど熱かった夏なのに過ぎてしまうと、ほっとするどころかどこかさみしい。涼しい日が続くと日ごとにセミの鳴き声も減ってきた。今日はクマゼミがアラカシの細枝(枯枝)に卵を産んでいた。地面から高さ1m程度、鉛筆の太さよりも少し細いぐらいの枝だったのでゆっくりと観察できた。腹部先端を小刻みに動かし続ける、産卵管はまだ出ない。しばらくすると腹部先端より少し上(写真=セミの腹端より少し上に見える)から太い産卵管が現れた、このキリの様な産卵管を全身の力で枝に差し込む。この時、セミ成虫の前脚が強靭なのが役に立つのか。数分をかけて産卵を行なう、卵は樹皮下に産みつけられた。産卵が終わるといったん産卵管を抜き、休み、少し枝の上に移動してもう一度同じことを繰り返す。一回の産卵で相当に体力を消耗するのだろう、産卵と産卵の間の休息の時間は長い。セミが飛び立ったあとは、枝皮に上側にささくれたノミで刺したような痕が残った。産卵された卵はこのまま冬を越し、来年夏前に孵化し、地面に降り長い地下生活(幼虫)に入る。成虫となって地上に現れるのは数年先。成虫の期間は短いが、一匹の生涯(卵〜幼虫〜成虫)を考えると昆虫にしては極めて長生きと言える。Photo:2011/08/30 @京都御苑、京都市

2011年8月23日火曜日

第三百三夜/クモの子を散らす

「蜘蛛の子を散らす」=「大勢の者が散り散りに逃げていく様子をいう」。知っていることわざだが実際にクモの子を散らすことはあまり無い経験だと思う。今夜の写真は、このクモの子を散らした状態のもの。写真のクモは「イオウイロハシリグモ」という、このクモは普段餌を捕る巣をかけない。ただし母グモはまんまるの「卵のう(卵の塊を糸でくるんだもの)」をくわえて運び守るが孵化する前に草葉間に吊るした卵のうのまわりに保護用の簡単な巣をかける。孵化してしばらくはまだ母グモが卵のうを守っているが、この巣に母グモの姿は見当たらない。子グモの塊を写そうと葉に触れてしまった・・・この瞬間、まさに「蜘蛛の子を散らす」状態が起こった。何匹いるのだろう500以上か1000匹以上か見当もつかない、小さなクモがものすごい数動き出した。この塊を「まどい」と言う(団居る、円居=1か所に集まり会すること、特に親しい者どうしが集まって楽しむこと)。 ただしむやみに散ること無く、やがて落ち着くともとの塊に戻った。塊から出ることは、補食される確率が高いのだからもうしばらく大きくなるまで「まどい」を続ける。そこで新たな疑問が、この大きさ子グモの餌は何だろうか・・・ひょっとするとこの中で共食いも起こっているかもしれない。さてこの中から親にまで生き残る確率はどれほどのものだろうか。まどいの大きさは、直径3〜5cm程度。Photo:2011/08/23 @京都御苑、京都市

2011年8月16日火曜日

第三百二夜/子育てをするクワガタ

 「チビクワガタ」と聞くと少し冗談のような名前だが、れっきとしたクワガタムシの一種。他種のように♂が大きなアゴを持っているという訳でなく、名前から想像できるように体長15mmほどのチビで、♂も♀も小さなアゴしか持たない。ただし、他種との違いはその体形よりもその生活にある。普通、昆虫類は親子が互いの顔を知らない、ましてや親が子育てなんかしない・・親は卵を産み死ぬ、その後卵からふ化した幼虫は成長しやがて親となる。しかし、このチビクワガタは、朽木・倒木の中で家族単位で暮らし、成虫(親)が材を噛み砕いて幼虫の餌を生産するという亜社会性生活を営む。成虫(親)は、動物性の餌を好み、樹皮下でミミズや他の昆虫などを捕食しているようだが、樹液に来ることもあるらしい。意外と飛翔性が高く、灯火にもよく飛来する。そんな家族単位の暮らしだから、倒木を割ると100頭以上もの成虫と幼虫が見つかることがあるという。こうなれば家族というよりも「村」の様相だ。Photo:2011/08/07 @京都御苑、京都市

2011年8月10日水曜日

第三百一夜/お面を持つベッコウハゴロモ


 昆虫が持つ翅や体の色や斑紋を見ていつも不思議に思う。なぜそれが必要なのだろうか、どんな時にそれが役立つのだろうか。そして時としてその意味が観察で判ることがある。今日のベッコウハゴロモとクサギカメムシがそうだった。クサギの枝にとまるベッコウハゴロモを写そうと観察していた時、正面からクサギカメムシがやってきた。クサギカメムシがハゴロモの前まで来たその時、ベッコウハゴロモは逃げること無く翅を垂直に、つまり正面から来る相手に対して最大に見える状態にして翅の斑紋を見せつけた(写真上)。瞬間、カメムシの脚がとまり、ハゴロモを避けるように通り過ぎたのだった。なんらかの効果はあったようだ。昆虫の写真を撮る時は頭を上位置にしてしまいがちだが、ベッコウハゴロモの場合、頭を下にした時に翅の左右にある斑紋が「鋭くにらむような目」に見えることが判った。目に見える斑紋は左右の端にあるのでまるで大きな顔に見える。なんと太い眉もある、きりりとした鼻筋も見える(写真下)。そして一番大切な頭部はなんの斑紋もそなわっていない。おそらく捕食者の一撃は翅の目にむけられるだろう、しかしその時は逃げれば良い。大切な身体の部位にはまったく影響は無いのだから。翅の斑紋はまるでパプアニューギニアの原住民のお面のようでもある。Photo:2011/08/09 @京都御苑

2011年7月24日日曜日

第三百夜/巣の話(キジバト編)

 京都御苑の「夏の自然教室」で鳥の話をする。鳥の話と言っても夏鳥の探鳥会ではない。季節柄鳥たちは子育ての真っ最中。だから鳥の巣の話を主にした。御苑では、ちょうどアオバズクが繁殖中という時期でもあるので、まずアオバズクの話をして、実際に営巣木近くで雄を観察する(雌は巣穴にこもっている)。幸いに雄が巣穴の近くの枝に止まっているのを観察できた・・・とは言えアオバズクの巣を持ってくる訳にはいかないので、ここはキジバトの巣を解説。先日、キジバトの古巣を採取し、巣材をひと枝毎に白紙の上に並べてみた。他の鳥のように巣が細密に造られていないのでばらして、並べるにはさほど苦労しない。並べ終わると面白いある約束事が見えてきた。なにげに見る小枝だが、実際は約半分は細かく分岐した枝、そして半分は湾曲した枝を巣材として選んでいることが判る。両方のタイプとも最長は24cmと同じ。キジバトにとって24cmという長さはヒトのどれほどなのか今後考えてみたい。さて、巣材に使われた小枝は、それぞれ91本と92本、他の細かなのやら、ぐるぐるした枝をあわせると193本。採取の時の落しを含めると200本強といったあたりだろう(いくつかの巣をばらすと平均が判るはず)。個々の枝を見ると、分岐した枝の多くはドウダンツツジ、その枝の切り口を見ると鋭利な刃物の後が伺える。これは剪定した枝を集めたものと想像できる。湾曲した小枝はメタセコイヤが多くあった。キジバトが巣材の落枝を集める光景はよく目にする。実はなにげなく集めているようだが細やかな計画のもと、落枝を吟味している事に気付いた。この巣材でキジバトの巣を造ろうと思ったが、まったく手に負えない。鳥たちの巧みさに驚く。この巣材を見ていて他にいろいろなことも判った。今日、僕に与えられた時間は30分少し、今日もやっぱり時間切れ。この続きは別の機会としよう。Photo:2011/07/22

2011年6月27日月曜日

第二百九十九夜/風変わりなカモ兄弟

 京都府立植物園で風変わりなカモの群れに出会う。雑木の下で餌を採る4羽のカモがいた。一見、2羽のマガモと、2羽のカルガモが仲良くしているように見えるが、それぞれのクチバシ、羽色、模様を観察すると、4羽はマガモとカルガモを親に持つ若鳥兄弟のようである。落ち葉の下の昆虫を探している。枯葉をかけばいくらでもミミズが見つかった。さっそくミミズを投げてやるとすかさず食べる、こちらの様子を伺うように徐々に近寄り、そのうち手から食べんばかりだった。もう少し時間があれば手から餌を食べたと思う。野生のカモがこれほど近くまで寄ってくるとは少々驚いた。一番前と左奥の個体はマガモ的な体色をもつ、ただし背中はカルガモ似。真ん中はカルガモとほとんど同じ体色だがクチバシの色が少し違う(マガモの♀的)。右奥の個体はマガモの♀的ではあるが体色にカルガモの特徴が出ている。4羽それぞれにマガモとカルガモの特徴がモザイク的に出ていて面白い。Photo:2011/06/27 @京都府立植物園

2011年6月26日日曜日

第二百九十八夜/ミドリシジミ

 シジミチョウの中でもとりわけ美しいグループがある。♂の翅の表面が緑色に輝くミドリシジミ類(ゼフィルスと呼ばれる)で日本の蝶の中でも最も美しいことで人気がある。中高生の頃、このチョウを採集するために梅雨時にもかかわらず毎週山に通った。標本を作るに特徴的な翅表面の緑色と後翅の尾状突起が完璧にそろう事(これを完品=カンピンと呼んだ)が絶対条件。だがフィールドで採集する個体では非常に難しい。そこで完品を得るために晩秋から冬にかけて山に行き、卵を採集する。卵は春、食樹(幼虫の食べる樹木)の芽吹きにあわせてふ化する。だから春から梅雨明けにかけては自室の机の上はシャーレ(幼虫を飼育する容器)が200個以上も積まれるようになる。週末のフィールド通いも忙しい、毎日の幼虫の世話も忙しい、世話を怠ると病気もでる、餌の確保も大切だ、その上、生態的な記録もとらないといけない、よなよな顕微鏡で幼虫を覗いているわけだ・・・これは自分にとって何ものにも代え難い幸せな時間、他人から見れば完全に病気以外のなにものでもない。さてこのミドリシジミの仲間、フィールドでの採集も難儀だ、コナラ等の樹木の樹冠を居場所とするので捕虫網も10mの長さのものを振り回すことが必要。絶えず樹冠のあたりを見ていて、素早く動くチョウをめがけて「よいしょ、えいや!」と振り回す訳だ、体力と視力がもの言う。子どもの頃から小さな昆虫を追いかけたお陰だろうか「動体視力」にはやや自信がある。だからスポーツ観戦時もその動体視力がもの言う。今日は車を運転しながら、路肩の栗の花に吸蜜に来たミドリシジミを見つける(もちろんよそ見でなくて)。後続車がいるので路肩で止まりたいが止まれない。いったん通り過ぎてUターンして戻ると・・・既に飛び去っていない。こうなれば直感で、チョウが止まりそうな枝葉を探す・・・やっぱりいた。ミドリシジミ(♂)が葉に止まりテリトリー(縄張り)を見張っている。周辺はハンノキ林もある、きっとどこかにもっといるはずだ、この個体の状態からすると来週からは♀も登場するに違いない。Photo:2011/06/26 @近江八幡市、滋賀県

2011年6月18日土曜日

第二百九十七夜/草地を移動するサワガニ

 樹木調べの為に山を歩く。思いのほか生きものの姿に出会わない。尾根状の草地でサワガニを見つける。危険と感じてか両手のハサミを振り上げている。水辺では素早く逃げるカニも背丈の低い草地では不利と感じてか。安全な水辺を離れて移動するサワガニの目的はなになのか。Photo:2011/07/17 @花背山の家、京都市

2011年6月9日木曜日

第二百九十六夜/ゲンジボタルの乱舞

 ホタルの乱舞っていう表現はたびたび聞くけれど、出張先で出会ったゲンジボタルは本当に乱舞していた。しかも驚く事に街の真ん中を流れる川でのこと。ここは山口市役所、県庁からほど近い一ノ坂川。ここのゲンジボタルは天然記念物となっている。聞けば今年のホタルの発生はとても多く、ピークは3日前だったと言う。その日は2000頭を越えたらしい。ホタルは辺りが暗くなると徐々に飛び始め、午後8時頃から活発さを増し、9時頃をピークに行動する。橋の上から眺めていると、岸辺の草地や樹木に止まっている数匹のホタルの発光は別の個体の発光を誘うように、徐々に多くのホタルが発光し、飛翔を始める。時折、両岸の道や橋を通過する車の強い人工の光が川面まで達するとホタルの発光はいったんそれにかき消されるが、暗くなると再び発光が始まる。カメラに三脚をセットし、ホタルの光の軌道を写そうとするが、通過する車のライト、ホタルを写真に収めようとするストロボが障害となって思うように撮れない。なにせホタルの弱光を撮るには、絞りを開放にした上に、1分以上の露光時間が必要だから(写真:絞り2.8、露光時間60秒)。僕が訪れた夜の個体数は約800頭、はたして2000頭の乱舞はどれほどのものなのか想像もつかない。ちなみにホタルの発生する川の周辺の道路や橋は、ホタルに影響に無いオレンジ色の保安灯を使う等の配慮がされていた。ゲンジボタルの発光は2秒に1回(西日本)、ヒメボタル(第二百九十三夜)のフラッシュ光と違い、光の軌道「スッ〜、スッ〜」と尾を引くように写る。Photo:2011/06/08 @一ノ坂川、山口市
ホタルの記録はこちらをどうぞ http://www.c-able.ne.jp/~denshou/hotaru/nippo11.htm

2011年6月4日土曜日

第二百九十五夜/トビの若鳥

 先日、見つけたトビの巣を見に行く。2羽の若鳥はすっかり成長し、今日明日にでも巣立ちをしそうな様子。巣の近くまで行くと、1羽は巣に伏せて身を隠した、別の1羽は逆にこちらを見ようとするそぶり。これもそれぞれの個性か。気持ちのいい風を受けて若鳥は湖面を見ている。巣立ちのイメージをしているのか、単に親鳥が持ち帰る餌を待っているのか。Photo:2011/06/04 @中主町、滋賀県

2011年6月3日金曜日

第二百九十四夜/カイツブリの親子

 びわ湖に通じる水路で見つけたカイツブリの親子。親が盛んに潜水を繰り返し餌を捕らえヒナに与えている。両親は捕らえた獲物が小さければそのまま、少々大きな場合(ザリガニか?)は小さくしてから、ザリガニの場合はハサミの部分を除いて与えているようだった。ヒナは全身真っ黒で頭から首にかけて白いシマを持つ面白い体色。時折、遊ぶように潜水をしていた。親子に近づこうとするとヒナは水辺の草の茂みに隠れ、2羽の親はその場とはまるで関係ないように泳ぎ去る。再びよからぬものがいなくなり、安全が判ると互いに呼び合い、もとのように餌捕りに夢中になった。Photo:2011/06/03 @中主町、滋賀県

2011年6月1日水曜日

第二百九十三夜/人知れず過ぎるヒメボタルの夜

 京都・桂川の河川敷にヒメボタルを見に行く。このホタル、ゲンジボタルやヘイケボタルのように川岸ではなく、樹林地の林床部に生息する。何故かと言うと、幼虫はカワニナを食べて生長するのではなく、オカチョウジガイ(陸貝)を食べるため。この陸貝の仲間は湿った林床部を生活の場とする。ちなみにデンデンムシ(カタツムリ)も陸貝。ヒメボタルの発光は、すこし黄色がかったストロボ光(パッ、パッ、パッ、パッ・・)で歯切れ良く明滅を繰り返す。まるでクリスマスツリーだ。10時頃から活発になり夜12時をピークとするらしい、かなりの夜更かし型。11時頃はまだ下草に止まって光っていたホタルも12時頃になると、地上20cm程度の高さを緩やかに飛び始めた。オスは飛翔しながら発光するが、メスは草木につかまった状態で発光する。ちなみにメスは後翅が退化して飛べない。写真の中で同じ位置で強く光っているのが♀の光、空中にある細かな光の点そして光の軌道がオスの発光。樹林地のなか凄まじいばかりの光だった、ここは知られている生息地では日本で一番広く個体数も多いという、ただしこの生息環境が今後も守られると言う保証はどこにも無い。幸いこの生息地は研究家達により生息調査・保護活動が続けられている。活動が夜遅く人に知られる機会に乏しい、河川の水質汚濁に左右されない事などを考えると以外に身近な場所で生息をしているとも考えられる。しかしこのことは人知れず生息地が開発され、絶滅していることでもある。ながらく都市人にとって水際も山際も無駄な土地として扱われてきた、悲しい事に今でもそれは同じ。興味深い事にこんな場所こそ環境の多様性を持ち、面白い生きものがいっぱい暮らしている場所なのだ。僕たちはある場所や環境を語る時に、様々な季節、様々な時間を費やし多様な感覚を駆使しない限り、判った・知ったなんて安易に言ってはいけないのだ。この地を守っているボランティアの方々に感謝。真っ暗な樹林地でヤブ蚊に耐えながら、10分露光してやっと撮れた。満足にホタルの光をとらえようとすると20分以上の露光が必要。Photo:2011/05/31 桂川河川敷、京都市

2011年5月29日日曜日

第二百九十二夜/ケリの抱卵

 梅雨入りが発表された、生きもの達の様子を見ているともう少し先かと思っていた。驚く事に早くも台風が上陸する勢いでやってきた。今日は台風雨。先日、水田の真ん中で抱卵するケリを見つけた。あぜ道ならまだしも、このケリの巣の高さ(水面から15cmぐらい)では田んぼの増水で没してしまう。巣の近くでは、卵を狙うカラスに雄の警戒が途切れない。このケリは若いカップルなのだろうか、鳥たちの子育ても楽じゃない。Photo:2011/05/27 @近江八幡市、滋賀県
後記:このケリは、台風2号の強雨による増水で水没した巣を放棄しました。(2011/05/29)

2011年5月26日木曜日

第二百九十一夜/風変わりな陸貝

 大きなエノキの根元に転がっていた朽ちた枝をひっくり返すと風変わりなカタツムリ(陸貝)が付いていた。大きさは直径1.5cmぐらい、小さく薄っぺらである、ルーペで見ると殻にかすかな縞模様が見える、一番の特徴は殻の外周につく毛状の刺(?)。図鑑で調べると「ケマイマイ」と言うらしい。それ以上のことは判らない。また一つ、興味深いものに出会った。Photo:2011/05/24 @京都御苑、京都市

2011年5月25日水曜日

第二百九十夜/トビとスズメ

 琵琶湖岸の道を車で走っている途中、道端にトビの巣を見つける。巣は道路から5mぐらい離れた松の木、巣の高さは地面から7m程度。ちょうど親鳥がヒナに餌を運んできたところだった。車を止め、近づくとすでに食事は終わり、2羽のヒナ鳥は体を巣に隠すようにこちらをうかがっている。しばらく見ていた時、巣材の下枝の間からスズメが出入りしている事に気付いた。写真にスズメが写っている。スズメとトビのヒナ鳥との距離は1m程度だろう。猛禽類の巣の近くに小鳥が巣を造る事は聞いた事はある。スズメの巣はよくカラスに襲われる、小鳥が他の捕食者から身を守る知恵だろう。それにしてもスズメもなかなかの知恵者である。Photo:2011/05/25 @中主町、滋賀県

2011年5月24日火曜日

第二百八十九夜/イガイガ・デコボコのハムシ

 キショウブの葉上にゴミとも、小さな糞とも言いようのない小さな塊を見つけた。なんだかムシの予感。こんな予感は結構あたる。まさにゴミのごとく・・・と言った表現が似合うムシだった。頭に二股の鋭い刺を持ち、ごっつい肩はでこぼこ。図鑑で調べると「カタビロトゲハムシ」とあった。判りやすい名前だ。ルーペで見ると、この形に見とれる、カブトムシ程大きければすごい人気がでるだろうに。Photo:2011/05/26 @京都御苑、京都市

2011年5月21日土曜日

第二百八十八夜/マガリケムシヒキ

 水辺の草地でアブが盛んに小さなムシを捕らえている。このアブの名は「マガリケムシヒキ」という体長15~20mm。全体は黒く、胸部背に灰白の模様があり、肢の脛節は黄褐色をしている。♂の腹部先端は丸く、♀は細く尖っている、だから写真の個体は♀である事がわかる。成虫はヨコバイ、ハエ、ガガンボ、ハナアブなどの小型の昆虫を捕らえて体液を吸うが、幸い人の血は吸わない。名前の「マガリケ」は♂♀共に頭部裏にある、前方90度に曲がった毛を持つ事から名前が付けられている。♂♀の腹部の形も曲がった毛も他の人にとっては、どうでもいい食えない話だけど、やっぱり自分の目で実際に確かめたくなる。Photo:2011/05/20 トンボ池(一般公開の日)、京都御苑

2011年5月19日木曜日

第二百八十七夜/ヨツボシトンボ

 府立植物園にクロスジギンヤンマを見に行く。前回は盛んに産卵していたのだが今日はその姿を見る事は出来なかった。変わりにヨツボシトンボを見れた。このトンボ決してどこにでもいる種ではなく、比較的観るのは難しい。主に寒冷地の平地から山地の水生植物が繁茂する池沼や湿地、湿原などに生息する。北海道など寒冷地では春から秋まで比較的普通だと言うが、温暖地では春に限って出現し、個体数も少なく生息地も限られているらしい。翅にある4つの黒色斑が名前の由来。Photo:2011/05/19 @京都府立植物園、京都市

2011年5月18日水曜日

第二百八十六夜/ムクドリとミミズ

 葵祭りを観に京都御苑に行く。祭りの後、御苑を散歩。松林の草地でムクドリが大きなミミズを仕留めたようだ。見ているとなかなか苦戦している。食べずにぐるぐると振り回している。半分に切ろうとしているのだろうと見ていると、なんと振り回している間にミミズの両端をくわえることに成功。つまり輪っか状にくわえたかったのだ。なかなか器用だ。やっと輪っかにしたところで、今度はまっしぐらに林めがけて飛んで行ってしまった。きっと巣にはお腹をすかせたこども達が待っているのだろう。葵祭の観覧の最中に後ろのご夫婦「あの人より、トンビの方がきれいだね・・・」。なにも人とトンビを比べることは無かろうにとその方向を見ると、時代装束の列の上にはトビが風に乗っていたのだった。確かに暑い中ではあるがだらだらとやる気無く歩く祭り人よりもトビの方が明らかに美しい身のこなしで新緑の空を舞っていた。判らないでもないご意見だった。Photo:2011/05/15 @京都御苑、京都市

2011年5月12日木曜日

第二百八十五夜/コチドリ

 仕事先、車で移動中に見つけたコチドリ。水田の畦の上を右へ左へ、あっちにこっちに、こちらのすぐ側まで来たと思うと、向こうへ飛び去り、再びこちらへ忙しく動き回っている。双眼鏡で見ているとしきりに地面をつつき何かを食べている。なかなかかわいらしいチドリである。小学生の頃、釣り好きのH君が僕の家にこのチドリのひな鳥を持ってきた。河原で拾ったので保護した、飼えというのである。その頃、僕に家にはいろいろな小鳥がいた。だから僕に渡せばなんとかなるだろうと言う訳だ。河原の小石にも似た模様の羽で全身を覆った手の中にすっぽりと収まる小さなひな鳥は居間の畳の上を元気に走り回るのだが、いっこうに餌を食べない。ついに朝にはホコリのように箱の隅で動かなくなっていた。チドリの仲間の巣は、地面に小石を敷きならべたくぼみで、そこに卵が産み落される。ひな鳥は、ふ化後しばらくすると歩き出し、親鳥と共に行動し、餌を食べる。スズメの様に巣立ちなんて事はしない。ふ化した時は、すでに目も見え、しばらくすると走り回るほどの状態になる。鶏のヒヨコと同じである。H君は迷子のひな鳥を保護したのではなく、おせっかいにも地面に隠れていたものを連れ帰ったという訳だ。これからの季節、小鳥の巣立ちビナが多くなる。車が走る道路上にいた時は別としても、人間が善かれと思って手を出してはいけないのである。Photo:2011/05/12 @守山市、滋賀県

2011年5月2日月曜日

第二百八十四夜/モンカゲロウ

 水辺のキショウブ葉上に大型のカゲロウを見つける。体色などの特徴からモンカゲロウだろう。足は細くきゃしゃなのに前脚だけは長く発達しており、止まっている時に前脚を前方の空中に突き出すようにしている。これは大きな触覚のように見える。このカゲロウの仲間は幼虫期を水中で過ごし、成虫になるのだが、完全な成虫の前に「亜成虫」と呼ばれる時がある。水中からいったん羽化し=亜成虫、そのあとすぐにもう一度羽化して「成虫」になる。一度、羽化し翅が伸びた後にもう一度脱皮する昆虫は他にいない。成虫は餌を取らず、交尾を終え、水中に産卵すると、ごく短い成虫期間を終える。翅をもった期間は、まったく生殖のためだけに陸上に現れるということだ。はかないものの例えに「かげろう」があるが、これは成虫の期間の短さがその理由とも言われるが、幼虫期にほぼ一年過ごしているのだからけっしてはかなき命と言う訳ではなさそうだ。Photo:2011/05/02 @京都御苑、京都市

2011年5月1日日曜日

第二百八十三夜/ツグミ

 樹木の新緑もすっかり出そろった感じ。夏鳥も姿を現し、繁殖も始まっている・・・なのにまだ居残っている冬鳥もいる。ツグミ(写真)は北国から越冬のためにやってくる。来たばかりの頃は群れだが、冬の間は単独行動。このツグミが再び小さな群れを作るようになった。ふるさとの北国に帰る日も間近なようだ。北国の春から夏は短いので、大慌てでパートナーを見つけ、子育てをしないといけない。今度、御苑にやってくるのは今年の秋。考えてみれば、一年の半分以上の期間を日本で過ごしている事になる。ツグミを正面から見るとけっこうコワモテである。Photo:2011/04/30 @京都御苑、京都市

第二百八十二夜/クロスジギンヤンマの産卵

 なんだか暑くなったり寒くなったり、日ごとに入れ替わる天候に今年の春はちょっとおかしいと思うのは人間だけか。外では野鳥の子育てが盛んだし、水辺でもトンボの産卵が始まっていた。でもこのクロスジギンヤンマ(♀)の産卵早くないか? 植物園の小さな睡蓮池で盛んに産卵を繰り返す。一度、産卵し始めると水中の植物生体内に産卵するために比較的時間が必要、そこで注意深く近づく事で、ほとんど接写状態の写真も収めることが出来た。でもこのぐらいの適度の距離が周りの環境も判っていいと思う。*このクロスジギンヤンマは、第215話(2010/06/10)と、2回目の登場となりました。Photo:2011/04/30 @京都府立植物園

2011年4月27日水曜日

第二百八十一夜/ツマキチョウ

 春先に現れる小さなシロチョウの仲間のツマキチョウ。名前の由来は前翅のつま先の黄色から。この蝶、ちょうど今頃2〜3週間程度現れて来年の春まで現れない年1回の発生。食草に産みつけられた卵から生まれた(ふ化)幼虫は、食草のハタザオの仲間、イヌガラシ、ナズナ、ダイコンなどを食べ、梅雨入りまでには蛹になってしまう。学生の頃、この卵を沢山採集して多くを蛹まで育てた。ある年の事、夏〜冬を乗り切った蛹達からは翌春、きれいな成虫が羽化した。しかし、たった1個の蛹だけは夏まで待っても羽化することはなかった。きっと死んでしまったのだろうと思い、その蛹を本棚に飾っていた。夏が過ぎ、秋が過ぎ、年末の大掃除の時も片付けられる事がなかった蛹。次の春、つまり蛹になってからまる2年が経った日。外出から戻り部屋に入った時にそこに一頭のツマキチョウが舞っていたのだった。「あれれ?」・・・「おおっ!」生きものってすごいなと思った。室内は自然界に比べれば外敵はいないかもしれないが生きものにとって劣悪な環境、その中で丸2年間耐えてきたのだった。全部がいっせいに成虫にならずに大きな時間差を持って成虫になる事によって子孫をつなぐ。決してめずらしくない、どこにでもいる小さな蝶をこの時から僕は特別な目で見るようになった。当時の図鑑にはこんな事例は書かれていなかったが、近年の本には「稀に二冬あるいは三冬を過ごして羽化する場合もあることが報告されている」と書かれている。写真の吸蜜植物はウマノアシガタ。Photo:2011/04/26 @京都御苑

2011年4月5日火曜日

第二百八十夜/アオバト

 アオバトを見るとつくづくきれいな鳥だと思う。胸から頭部にかけての黄緑色から濃オリーブグリーン、羽の赤紫色(これは雄の場合だが)。この美しい羽色の体が彼らが棲む樹林に入るとまったくの保護色になってしまう。地面から上を見上げると陽光に透ける葉のように見え、肩の赤紫色が枝や樹皮と区別付かない。樹冠から見下ろすと今度は頭部の濃緑から肩の赤紫色が葉面の風景にまぎれるのだろうと思う。これは捕食者に対しての魚体の色と同じ効果があるのだろう。どんな鳥も自分が棲む環境の中で羽色を進化させてきたこと思うと驚く。Photo:2011/04/05 @京都御苑、京都市

2011年3月29日火曜日

第二百七十九夜/虎斑木菟


 虎斑木菟と書いて「トラフズク」と読む。「虎のような斑紋を持つミミズク」という意味である。ミミズクとは、頭に耳のような冠羽をもつフクロウの総称。今日はこのトラフズクの姿をやっと写真に収める事が出来た。今年になって6羽程度の集団越冬の木を見つけた。しかしいざ写真を撮る段になってみるといなかったり、こちらの気配を察して飛び去ったりして写真にすることが出来なかった。ねぐらの近くには沢山のペリット(消化できないものを塊にして吐き出したもの)が落ちている。その一つを拾ってみると、ご覧のようなネズミの頭骨(黄色い鋭いものが前歯)と毛を見る事が出来る。このペリットは一見動物の糞のように見えるが無臭。毎日拾って水にさらせばその内容物が判別できるし、一日どれぐらいのネズミを食べているかも判るだろう。このミミズク、食べ物のメニューはそれほど広くないようで、転がっていたペリットのほとんどはネズミの毛玉だった。どれほど多くのネズミを周辺の田畑から獲ってくるのかとても興味深い。Photo:2011/03/29 @浅小井、近江八幡市、滋賀県

2011年3月22日火曜日

第二百七十八夜/国鳥・キジ


 川岸の草地を歩いていた時、クズの枯枝の向こうから赤い顔とにらむような黄色の鋭い目が見えた。キジだ!近すぎる。こちらが動けば対岸に飛び去るのは間違いない。体をかがめ向こうが動き出すのを待つしかない。しばらくじっとしているとこちらを伺いながらゆっくりと現れた。顔の様子から先ほどまでの警戒心は伺えない(瞳孔の鋭さが消えている)。時折、地面をつつくように何かを食べている。互いの間の草がキジの顔に重なってよく見えない。欲を出してしまった・・・体を動かした瞬間にキジは小走りとともに、大きな羽音を残して対岸の葭原に飛び込んでしまった。写真のキジは♂で、顔の赤い部分(鶏のトサカにあたる)は皮膚が露出していて、耳のように見える冠羽も目立っている。これは繁殖に入っている証拠。キジはテリトリー(縄張り)が強いので多分ここにくればいつも見れるはず。Photo:2011/03/22 @浅小井、近江八幡市、滋賀県

2011年3月21日月曜日

第二百七十七夜/ヒヨドリと個性

 庭にやってきたヒヨドリ。いつも同じ個体を見ているとその個性もよく判る。ヒヨドリとメジロ・・共に食べ物が同じなので常に敵対関係にあるらしい。庭のえさ場にメジロがやってくるとすかさずヒヨドリが追い散らす。しかしこの個体はどうもそうではないらしい。メジロがやってくる事を許容してる様子。どこかおっとりしている。メジロもそれを知ってか、さほど慌てない。鳥たちを見ていると共通言語を持っているようでもある。それが理解できれば面白いのになとつくづく思う。Photo:2011/03/21 京都市

2011年3月19日土曜日

第二百七十六夜/ツグミの仲間のイソヒヨドリ

 造園工事現場にやってきた珍客イソヒヨドリ(♂)。頭から胸、背中にかけて綺麗なブルー、お腹の辺りは茶色のコンビカラー。職人さんが運んでくる土がお目当てのようで、見ているとミミズとコガネムシの幼虫をついばんでいるようだ。名前に「ヒヨドリ」と付くが行動を見ていると「ツグミの仲間」である事が判る。その動きはとても面白く、立ち止まり胸を張ると次に頭を地面につけるようにしてお尻を高く上げる。地面にいる時はこれを繰り返す。ムシを食べた後は近くの屋根や柵の上で次に運ばれてくる土砂を待っていた。平気で車の下にも入り、この時もカメラに気付くと車の下に隠れた。素知らぬ振りをして樹木や土をいじっていると、すぐ後ろまできていた。あまり人を怖がっていないようだ。Photo:2011/03/18 @守山市、滋賀県

2011年3月13日日曜日

第二百七十五夜/シメ

 ニュースで報じられてる東北関東大震災の悲惨な状況を疑うばかりの穏やかな一日。いろいろなことを思い浮かべながら京都御苑を歩く。こちらが無心で歩いているからか普段は臆病なシメ(文鳥をひと回り大きくしたような野鳥)が目の前の草地で餌を食んでいた。地面に転がった松ぼっくりから種を取り出しているようだ。この野鳥は、ヨーロッパ中部および南部からロシア南部を経て中国東北部、サハリン、カムチャツカ半島までの、ユーラシア大陸中部域に広く分布する。北方で繁殖した個体は、冬季南方へ渡る。日本では北海道や本州の中部以北で繁殖するほか、冬鳥として本州以南に渡来する。もうしばらくするとふるさとに繁殖のために旅立つ。冬場は肌色だったクチバシの色が変わりだしている、はやくも繁殖期の姿が現れてきた。Photo:2011/03/13 @京都御苑、京都市

2011年3月9日水曜日

第二百七十四夜/二種のタカに魅せられる




 今日は葭原一帯に強い風が吹いていた。時折吹く強い風で車が揺れる程。ハイイロチュウヒを見に行ったが見当たらず、変わりにミサゴ(写真上)とノスリ(写真下)が元気よく飛び回っていた。ノスリは獲物でも見つけたのかすごい勢いで葭原に見え隠れした。近くの畑地にはチョゲンボウが地面にとまっていた、強い風を避けているかのようだ。さて仕事でいったん葭原を去り、日暮れにもう一度同じ場所を訪れた。この時間タカ達の姿は無かったが、トラフズク(フクロウの仲間)が複数羽、葭原を元気に飛び回っていた。このトラフズク、越冬時(冬場)は少数の群れで同じ木に止まる習性が有る。実は先日、この群れを葭原近くの木に見つけたのだ。今日も昼間確認すると確かに枝に止まっていたが、夕方にはすでに活動を始めたようでいなかった。日暮れの葭原と畑地に飛ぶトラフズクを双眼鏡で追いかけるが、しばらくしてすっかり日も暮れ見えなくなった。今日はなかなかラッキーな一日。Photo:2011/03/09 @近江八幡市、滋賀県

2011年2月25日金曜日

第二百七十三夜/トビは油揚をさらうか?

 その体験は突然きた、聞くに勝るその瞬時と迫力・・・「大切にしているものを横取りされてあっけにとられること」これを昔からトビに油揚さらわれると言う。現代では油揚ならぬサンドイッチやお弁当がさらわれると聞く。その事件が自分の身に起こった。相棒と二人、僕は鴨川の川面を遊ぶ水鳥を見ながらベンチでサンドイッチを食べようとしていた。「鳶には注意しないとな〜」と周囲を注意していたその瞬間、相棒が今まさに食べようと手にしたコロッケパンが消えた。不思議なことに「バッサ!」と言う羽音は事件の後で聞こえた。つまり羽ばたき一つせず背後から急降下したトビは大人二人の間(互いの間は50cmもない)をピンポイントでコロッケパンをつかみ獲った後に羽ばたき一つで0.5秒後には10メートル前方上空に舞い上がった、と言う訳だ。悔しいやら、感動やら、関心するやら、複雑な思いでトビとコロッケパンを見送った。一回280円の少々お高い餌やりだがすばらしい(?)体験になった。この餌の獲りかたは許しがたい、しかし立派な猛禽類としての運動能力を認めるには十分である。草原でうっとりしているネズミだったらこれでは歯が立たない。今度はカメラの上にパンを置いて、その瞬間を撮ろうか・・・なんてことを思ってしまう。さて、今回の体験で判ったことは「鳶に油揚・・・」のことわざに有るようにきっと昔から鳶はこんな餌の獲り方をしていたんだろうなと思った。Photo:2011/02/25 @鴨川、京都市

2011年2月23日水曜日

第二百七十二夜/キツネの巣穴と昼間のフクロウ


 仕事の現場でキツネの巣穴を見つける・・・といってもあまりにも判りやすい場所で驚く。さてここは今までなんども通った場所である。今まで気付かなかったことの方がおかしい。砂山に直径25cmぐらいの穴が3本、内2本が奥まであるようだ。穴の入り口には真新しい足跡が残る。肉球で出来たくぼみの砂はまだ湿り気があったから人の気配を察して巣穴に逃げ込んだのかもしれない。よくよく見ると巣穴の周りの砂は枯れ草の上に乗っている・・・ということは今年に入ってから掘られたものに違いない。キツネには気の毒だがこの場所は春にはグランドとして整備されてしまう。さてどうしたものか。この後、すぐ側で昼間に飛ぶフクロウを見た(めったなことでは見れないと思うのだが)、キツネがフクロウに化けて逃げていった? さほど羽ばたきもせず、羽音一つ立てずに樹々の間を滑らかに飛ぶその飛行に大変驚いた。フクロウが飛び去った辺りを見ると地面にいくつものペリット(餌動物の消化できない部分=毛、羽根、骨、うろこなどの塊)が見つかった。キツネの糞も沢山有る。見るとほとんどがネズミの毛と骨、キツネとフクロウどちらも知恵もの、両者ここではネズミが主食のようだ。Photo:2011/02/23 @浅小井、近江八幡市、滋賀県

2011年2月17日木曜日

第二百七十一夜/オカヨシガモ

 ヨシの茂る水路を気持ち良さげに泳ぐカモ達。少しスレンダーなボディ、地味なカモがやって来た。このカモ、オカヨシガモという(写真は♂)。雄雌共にあまり特徴がないのですぐに見過ごしてしまう。水面に映るヨシのなかを泳ぐ姿はとても綺麗だった。Photo:2011/02/17 @浅小井、近江八幡市、滋賀県