2013年7月31日水曜日

第五百六夜/モノサシトンボと樹林

 薄暗い樹林の中に休むモノサシトンボ♂(Copera annulata。水辺だけに住むかと思いがちだが意外に水辺を離れ樹林でも見ることが出来る。羽化後の成虫は性成熟するまでに時間がかかる。その間、外敵から身を守り、しっかりと食べ物を獲る必要がある。それには開放的な水際よりも樹林地の方が食料となる小さな昆虫が沢山いたり、捕食者の大きなトンボ等が飛びにくい環境なのだろう。トンボと言うと水辺と思ってしまうが、彼らにとって水辺〜草地〜樹林地が分断されない環境が無くてはならない。Photo:2013/07/31 @京都御苑、京都市

2013年7月26日金曜日

第五百五夜/コフキトンボ

 仕事の帰り道にいつものヨシ原に立ち寄る。ヨシ原の中を流れる水路で出会った青白いトンボ=コフキトンボ♂(Deielia phaon。長い水路に♂、♀共に1頭だけしか見かけなかった。強風の中、ヨシの茎に止まり、時折飛び去るが必ず同じ場所に戻って来た。Photo:2013/07/26 @西の湖、近江八幡市、滋賀県

2013年7月25日木曜日

第五百四夜/トンボの特徴はなにか?

 トンボ(写真:シオカラトンボ♀(Orthetrum albistylum)の体は実に良く出来ている。特に複眼や翅の構造の特徴は図鑑に書かれているが、その脚も秀逸でありながらあまり書かれていない。その機能は、まず最初に獲物を捕らえる道具。小さな昆虫を飛びながら捕獲するための網の役目を持つ、6本の細い脚の間には獲物を取り逃がさないように細かや刺がある。次に休むための道具、トンボは細い草木の葉先・枝先に止まり休む。休む場所は風で揺れたりして不安定なところが多い、必ずしも水平な場所だけでなく、垂直の場所にも止まらなくてはいけない。しかも餌を食べる時は、前脚で獲物を抱えている。その時に脚の刺や長い後脚が上手く機能している。空中を自由に飛び、餌を捕らえるトンボにとって、翅と脚は切り離す事の出来ない身体構造と判る。Photo:2013/07/23 @仰木、大津市、滋賀県

2013年7月24日水曜日

第五百三夜/モズのはやにえ(早贄)

 モズ(Lanius bucephalusは捕らえた獲物を木の枝やフェンスなどの鋭いものの先に刺す「はやにえ(早贄)」という習性をもっている。今までに見た「はやにえ」のメニューは、カエル、オタマジャクシ、トカゲ、カナヘビ、ザリガニ、フナ、バッタ、オケラ、ミミズなどの昆虫類や小動物である。今までに多くのはやにえを見たけれども、実際に彼らが獲物を枝先に刺す行動を見たのは今日が初めて。ギチギチ・・と言う独特の鳴き声の主を見ると、ヒグラシを捕らえたモズが柿に止まっている。食べるのかなと見ているとそばの竹林のてっぺん辺り(地上高さ15mほど)に飛び移り、上から3段目ほどの枝に刺し始めた、何度か刺したりくわえたりを繰り返し、ちゃんと刺さったか(?)を確認して飛び去った。この行動をずっとフィールドスコープで観察できた。よく見る「はやにえ」は地上高さ3m程度までだが、こんな高さにもあるのかと驚いた。「はやにえ」の理由はよく判らないが、縄張りの印とも獲物が少ない冬期の貯食とも言われている。しかし今は、獲物は豊富な時期、冬の貯食を今からするとも思えない、場所は周囲から目立ちカラスやヒヨドリも止まったり通過する場所である。夏のはやにえは、モズの縄張りのためのマーキングなのだろう。Photo:2013/07/23 @仰木、大津市、滋賀県
写真上:ヒグラシを枝に刺すモズ 
写真下:上から3段目の枝に刺されたヒグラシ(枝の小さなこぶの様に見える)

2013年7月23日火曜日

第五百二夜/ハラビロトンボ

 谷戸に広がる棚田を歩く。本来は農業作業路とあぜ道が棚田を縫う様にあるはずなのだが、現在はイノシシ・シカ被害防止のために田んぼの周りはびっしりと電気柵と金網柵で囲われている。こっちの路からあっちの畦に行こうと思うのだが実際はいけない。自由に行き来できるのは鳥か虫ぐらい。あぜ道から金網柵の向こうに行かずに、止まってくれたのはハラビロトンボ♀(Lyriothemis pachygastra周りにはよく似た色調のシオカラトンボも沢山いたが、一見してその腹部の幅の広さで区別が出来る。今の水田は稲穂が延びるまで畦の草刈りが大切な作業中で、あちらこちらで刈り取った草を燃やす煙が上がっていた。Photo:2013/07/23 @雄琴、滋賀県

2013年7月20日土曜日

第五百一夜/ヨシ原とセセリチョウ

 夏のヨシ原は高さ3mを越す高さまですっかり成長し、中に入ると視界が利かないが、ここはヨシ原の中に田んぼと水路があり、風が気持ちよく流れ開放感があるので好きな場所である。残念ながら意外に生きものの姿は見えない、時折オオヨシキリやホオジロの鳴き声が聞こえたり、イタチがちょろりと畦道を横切ったり、頭上をカルガモが飛ぶだけ。足元をちらりちらりと飛ぶのはイチモンジセセリ(Parnara guttataとアオモンイトトンボぐらいだった。でもそれで十分満足な時間。Photo:2013/07/20  @西の湖、近江八幡市、滋賀県

2013年7月18日木曜日

第五百夜/ウチワヤンマの谷戸

 近々おこなう自然観察の下見で谷戸を歩く。以前もなんども歩いた場所なのだがこんなにウチワヤンマ(Sinictinogomphus clavatus)が多産するとは思ってもいなかった。場所によっては、畦に張り巡らされた獣害防止の電気柵の支柱に一つおきに止まっているほど。隣の谷戸に行くとそこにはまったくいない。今日歩いた谷戸の一番奥に比較的深そうで開けた貯水池があった、どうもそこが彼らの繁殖拠点になっているようだ。写真上=♂、写真下=♀ Photo:2013/07/18 @大津市、滋賀県

2013年7月16日火曜日

第四百九十九夜/ほっといてくれないかな?

 人間達は、私をアオバズク(Ninox scutulataと呼びます。ただ今、子育て中。昼間は外敵から巣を守るために近くで見張り、夜はひな鳥のための餌獲りに忙しいのです。ゆっくり休もうと・・・眼下を見るとそこには鳥好きと称するギャラリー(その大半は「鳥の写真撮り好き」と言える人達)が黒くて長いものをこちらに向けています。その真ん中がギラリと光っているので正直、怖いです。今日もギャラリーの人間達が私のいる近くでいろいろな話をしています。人間達は気付いていませんが、私たちは耳がいいので声がよく聴こえます。そして周りを大勢で歩かれると地面の振動が木の根から幹に伝わり巣穴まで響きます、巣穴の中の子ども達もびっくりしています。皆さんどうかそっとしておいてください・・・というか、「ほっといてください!」(アオバズクの声を訳しました)

観察談:一人で静かにアオバズクを観察していると、かれらがリラックスしているのが判る。両目をつむる時間が長く、片足で止り、休憩しているのだ。時折、カラスの声に反応するが、すぐにもとの休息に戻る。僕は多くのギャラリーがいると本当に不愉快になる。ギャラリーの中には心ない人たちもいるだろうが、人間が集まり直視する、つまりアオバズクにとって多勢から一方的に見られると言うことが相当なストレスになっているはずである。観察のコツは、見て見ぬ振りをすることである。Photo:2013/07/16 @京都御苑、京都市

2013年7月13日土曜日

第四百九十八夜/不思議な色のキノコ

 乾いた樹林の地面に直径3~5mのキノコの菌輪が出来ていた、姿をすっかり地面に表しているものよりのまだ頭に枯葉をのせたものの方が多い。そのキノコは、不思議な色をしていた、表面はうっすらカビを生やしたお餅状、しかし裏を見るとひだの色が凄く綺麗な薄紫色。早速、写真をキノコの小寺先生に送り見て頂く。これはウスムラサキシメジ(Lepista graveolensという比較的珍しいキノコで、胞子が星型という珍しい形状とのこと。キノコはまったくお手上げである。Photo:2013/07/09 @京都御苑、京都市

2013年7月12日金曜日

第四百九十七夜/セミの梅雨明け宣言

 ちょうど10日前の7月2日、空を見て梅雨が明けたと直感した。その日の午後、今年初めてクマゼミの初鳴きを聞いた。そして6日後、気象庁から近畿地方が8日頃梅雨明けしたと伝えられた(たいした気圧配置の変化もないまま)。ここ数年、生きものの様子から梅雨明けが判る様になってきた。もちろん天気図見たり、空の様子を見たりするのだけど、多分、気象庁より正確(と思っている)。
 今夜は外出からの帰り道、アオバズクの鳴き声を聞こうと思い、アオバズクの営巣場所に立ち寄るが姿も見えず、声も聞けず。きっとどこかでどんどん羽化するセミをヒナ鳥に運んでいるのだろう。よく見ればあちこちでセミの幼虫が地表にはい出し、石積みや樹木を登っている。歩道に迷いでて踏みつぶされている個体も多い。歩道の縁石でもクマゼミ(Cryptotympana facialis)の羽化が見れた。果たしてこの幼虫、卵から孵化し、何年間地中にいたのだろうか? 実はこのクマゼミ、身近すぎる存在故かあまり調べられていないようだ。羽化時に雨に打たれると死活問題のセミ達、確実に気圧の変化を感じて羽化のタイミングを計っているに違いない。Photo:2013/07/12 @京都御苑、京都市

2013年7月11日木曜日

第四百九十六夜/クロイトトンボ

 美しいブルーの小さなイトトンボ、クロイトトンボ(♀青型 Paracercion calamorum。小さい上になかなか止まってくれない、その上このブルーの体が緑にまぎれてしまうので少し目を離すとすぐに見失ってしまう。糞虫の塚本先生のおっしゃる「生きものの曼荼羅」の中心にこのトンボをおいたときどんな生きものの関係図、環境の図柄が生まれるのだろうか・・・と考えると一日見ていても飽きそうにもない。Photo:2013/07/09 @京都御苑

2013年7月9日火曜日

第四百九十五夜/アミガサハゴロモ

 小さな昆虫もよくよく見れば不思議な色彩と形に富んでいます。今日は、アミガサハゴロモ(Pochazia albomaculataと出会った。体長1cm程、暗褐色~黒褐色で、前翅の前縁中央部にはっきりした白紋を持つハゴロモ(セミの仲間)。写真の個体は羽化直後だろう、翅の表面はうっすらとオリーブグリーンの粉でおおわれている、これも活動するうちに脱落してしまうから。なんだか米軍のステルス戦闘機に似ている。
 

2013年7月5日金曜日

第四百九十四夜/水辺のエイリアン?

 生きものの姿が見れないと言って、そこに何も存在しない訳ではない。足跡、翅や時には食痕や死骸が、生きものの存在を教えてくれる。今日、見つけたこのヤゴの脱け殻(羽化跡)は、マルタンヤンマ(Anaciaeschna martiniの♀だった。脱け殻と言え、じっと見ていると何かが飛び出てきそうな面構え、その様相はエイリアンの様である。きっと早朝か夕暮れには、湿った空気の中をブルーの体を輝かせ飛び回っているのだろうと思うと楽しくなる。Photo:2013/07/05 @京都市

2013年7月4日木曜日

第四百九十三夜/キノコとトビムシ

 梅雨入り後、たいした雨も降らずなんだかもう既に梅雨明けした感じである。こんなことも影響してか、地面に生えるはずのキノコも少なく感じる。そんな中にも一度、雨が降ればにゅこにょこと出て来るから面白い、実にたくましい。地面に一粒のドングリが転がる様に生えているのは、タマゴテングタケモドキ(Amanita longistriataの幼菌。これから笠の部分を広げる。根元のツボの部分には沢山のトビムシの仲間が来ていた。キノコの一部を食べているのか、キノコが出す液を吸っているのか? さて、このキノコを人間が食べると腹痛を起こすことで「毒キノコ」とされている。でもトビムシ達は大丈夫のようだ。キノコもよく判らない、トビムシはもっと判らない。自然界の食物連鎖(循環)で、植物は「生産者」、動物は「消費者」までは学校で習った、でもこの2者では自然界の循環が完結できないことをキノコの佐野先生に教えて頂いた。ここでキノコが「還元者」として活躍する。つまり消費者が出したものを生産者が利用できる様に還元すると言う訳だ。Photo:2013/07/03 @京都御苑、京都市

2013年7月2日火曜日

第四百九十二夜/オナガサナエ

 外出帰りに自宅近くの歩道手すりの上に一頭のオナガサナエ♀(Melligomphus viridicostus)を見つける。どことなく若い個体なのですぐ右手に見える平安神宮の細流から羽化後すぐにやって来たのだろう。サナエトンボは丘陵地の清流のイメージで道路の脇は似合わない、写真を数枚とった後、彼女は平安神宮の森に戻っていった。Photo:2013/07/02 @京都市左京区

2013年7月1日月曜日

第四百九十一夜/土食って虫食って口渋〜い

 畑横の農作業道に出来たわずかな水溜まりに沢山の小さな足跡が残っていた。しばらくするとツバメHirundo rusticaが長さ3〜5cm程の枯れ草をくわえやって来た。見ていると枯れ草をくわえたまま、クチバシの上面で泥をすくい上げる様に集め、すぐに飛び立ち、しばらくするとまたやって来て同じことをしている。見ているとほとんど1分以内に舞い戻って来た。巣作りの真っ最中、巣の場所は水たまりから15mほど離れた建物の軒下である。ツバメは、巣の場所から先ず近くの畑に降り、枯れ草をくわえる、そしてこの水溜まりにやって来る。午前中に比べ水たまりは午後には半分程度まで小さくなっていた。巣作りの泥も早くしないと乾燥してつかなくなる。だからツバメのペアは大変に忙しい。巣作りの場所、枯れ草、泥(水溜まり)の3条件がぴったり揃う場所は、多くはなさそうである。ツバメの巣は、日本の家屋や土蔵と同じ「土壁」である・・・というよりも、日本の家屋がツバメの巣をきっと真似たのだと考えても違和感はない。実に日本の農村環境に似合う鳥である。
ツバメのさえずりは、『チュビチュビチュビチュルルルル』と比較的大きな声で鳴く。その声は、 『土食って虫食って口渋〜い』等と聞きなしされる。昔の人はよくツバメの生態を観察したものだ。Photo:2013/06/30 @八瀬大原、京都市