2012年5月30日水曜日

第三百四十四夜/樹液を吸うコゲラ

 オオスズメバチが大アゴで傷つけたコナラの樹皮からしみ出す樹液を吸いにやってきたコゲラ。樹液にやってきた昆虫がお目当てと思いきや、虫には見向きもせず樹液を吸っている。鳥だって甘いものには目がないのである。だから目の前にいるシロテンハナムグリなんて石ころ同然の無視である。そのような状況の中でも唯一気にする虫はスズメバチのようだ、実際にスズメバチがやってくると威嚇はするが実力ではスズメバチのほうが強いらしく飛び去ってしまった。もちろんハチがどこかへいけばまた樹液にやってくるのだ。Photo:2012/05/30 @京都御苑

2012年5月29日火曜日

第三百四十三夜/オオスズメバチは偉いのである

 人って生きものを見るとなんだかんだ・・・例えばこのスズメバチを見ると危ないだの、怖いだの好き勝手なことを言うが、よく見ると彼らだった必死に生きているし、彼らのお陰で他の多くの生きものが恩恵を受けることもある。写真のオオスズメバチは、コナラの樹皮を強靭な大アゴで傷つけしみ出す樹液を食べている(吸っている)。
 このスズメバチが樹皮を傷つけるお陰で、シロテンハナムグリやサトキマダラヒカゲ、ゴマダラチョウ、多くのアブやハエ、そしてコゲラまでもやってきて甘い樹液にありつける。一見すると大きな顔をして偉そうに樹液をなめているのだが、彼らにしてみれば自分たちの特権なのである。Photo:2012/05/29 @京都御苑

2012年5月24日木曜日

第三百四十二夜/モリアオガエル

今年のモリアオガエルの産卵は例年に比べ少し遅いようである。鳴き声は時々聞こえるので、丹念に水際を探せば見当たるはず・・・ようやく水際のコケの中から顔を出す個体を見つける。頭だけを出して休息している、眠たそうな面持ちである。これから産卵シーズン、さて今年はどのぐらいの卵塊を見ることが出来るか楽しみである。Photo:2012/05/24 @京都市

2012年5月22日火曜日

第三百四十一夜/メジロを前から見る

 今の季節、ちょっと樹々があるところにいけばさまざまな鳥の囀り(さえずり)を聴くことが出来る、なかでもメジロは小さい体から驚く程の声量を出して囀っている。特に江戸時代からメジロは鳴き合わせる(競争)道楽の対象となってきた、もっとも近年ではそんな遊びもできないが。その囀りは「忠兵衛・長兵衛・忠長兵衛!」とか「チルチルミチル・チルチルミチル!」と例えられている。さて、この身近な野鳥・メジロのことを今まで書いていなかった。よくよく考えればメジロの写真データはPCのトラブルで消えたからだった。そこで写真に収めようとしても収まらないのが自然の生きもの。しかたなく満足でないが先日に撮ったものを眺めて気付いた、それはメジロの正面写真である(頭から尾までがほぼ一直線にならんだ状態)。正面から見るとなんて円形に近い体なんだと・・・早速、円定規で真円を描いてみる(写真の赤い線)となんと驚くばかりにピッタリ!もちろん写真を加工してなんかいません。考えれば飛行機の動体も真円、これが空を飛ぶ生きものの空力構造なんだろう。メジロのくちばしに付いているのは「よだれ」「鼻水」なんかではありません餌です。写真の画像が悪いのは拡大のせいです。Photo:2015/05/22 @京都市

2012年5月20日日曜日

第三百四十夜/テングチョウの幼虫

訳あってテングチョウの説明を数日後にすることになった。フィールドのエノキでは沢山の幼虫を見つけていたが日に日にその数が減っていく、見ているとスズメやメジロが獲っていくことが判る。このままでは説明時にすっかりいなくなってしまうことが予想できたので5頭の幼虫を自宅に持ち帰った。これらを手持ちのエノキの苗で育てる事にした、持ち帰った幼虫はほとんど終齢幼虫、エノキの葉を食べ尽くし数日後にはすべて蛹となった。そして・・・予想した通りフィールドの幼虫は全ていなくなった。テングチョウの説明は幼虫と成虫の写真と実物の蛹ですることにした。Photo:2012/05/20 @京都市

2012年5月16日水曜日

第三百三十九夜/羽蟻を食べるカラス


 京都御苑で葵祭を観た後、園内を散歩。マツの切り株の上でハシブトガラスがなにやら熱心に食べている。こちらでもあちらでも同じような個体がいる。これは何か訳がありそうだと近づく と・・・ご覧のような状況だった(写真下)。なにか細かなものが切り株を覆い尽くしうごめいている、その中でハシブトガラスがクチバシを切り株の面に平行 になるように・・・例えるならスプーンでビンに残ったジャムをそげ落す様に・・・ 飛び出そうと切り株から出てくる羽アリ(ヤマトシロアリ)を食べている(写真上)。テレビの自然系の番組を見ているようだ。
「濡れ手に粟」という言葉があるが状況はそのもの、クチバシで集めた羽アリを団子にして食べている。口に中には相当量の羽アリ団子が入っているようで喉がぱんぱんに膨らんでいる。カラスにとって羽アリは、大変においしいようで2mほど近くで観ていてもいっこうに止める事はしなかった。軽い羽アリはわずかな風でフワフワと舞い上がり、観ているこちらにも飛んでくる、目にも口にも入りそうだ。
 シロアリの羽アリが飛び立つには、いろいろな気象状況が一致しないと起こらないようである。この日も羽アリの発生はわずかな時間だった、人が観てようとカラスはこの時間を逃す訳にはいかないのである。
 シロアリは数万から数百万頭の単位でコロニー(巣)を形成し、女王蟻と王蟻を中心とした高度な社会生活を営んでいる。役割分担に応じたそれぞれの形態があり、これを階級(カースト)と呼ぶ。ヤマトシロアリの場合、4月中旬から5月中旬の雨が降った翌日などの気温が上がり蒸し暑くなった無風の日の午前中に飛び立つらしい。飛び出した羽蟻は地面に落ちるとすぐに自ら羽を切り落とし、そして雌が誘引物質を出し、雄が寄ってきたところでつがいになり新しい巣を作る。まさに前日の15日は雨天で葵祭が翌日16日になった。気温も上がり、風もほとんどなかった、飛び出す条件がそろったようだ。カラスにとっては「花より団子」・・・この一年の中でも、超旬の食べ物を味あわずにはいられないのだ。このカラスも興味深いが、切り株には 巣立とする羽アリを見送る様に白い働きアリが出てきていた。働きアリは白く、か弱い感じの体つきで枯れ木で孔を掘って暮らすに適した形態、羽もないので飛ぶ事は出来ない。なのに切り株の上まで出てきている。彼らには彼らの感情とか意識があるんだろうなとつくづく思う。人間がそれを感じる能力がないだけでね。図らずもカラスの話題が続いてしまった。メジロやツバメの巣を襲うカラスは憎い存在だが、やっぱり面白い生きものである。Photo:2012/05/16 @京都御苑


2012年5月10日木曜日

第三百三十八夜/マヨネーズとハシボソガラス

カラスと言う鳥は、ほんとうに観ていて飽きない。今日のカラス(ハシボソ)は草地に飛来したかと思うと草の根元からビスケットぐらいの白い四角いものをクチバシで拾い上げた。これはあらかじめ隠してあった食べ物だろう。カラスは食べ物を木のウロや、草むら、時には線路敷きの砂利の下に隠す「貯食」という習性がある。もちろん隠した食べ物はちゃんと後で食べるのである。
写真のカラスはその白いものを脚で押さえてしきりにクチバシで何かしようとしている。しばらく経ってようやく、中身を食べ始めた。クチバシは真っ白に汚れている。やがて満足したように小さなゴミを残し、近くの木に移りクチバシをきれいにし始めた。
さて、何をいったい食べていたのか?僕はカラスがいた場所に行った・・・それはお弁当に付いている「マヨネーズわさび風味」とプリントされた小袋だった。マヨネーズの小袋は隅が三角形に切り取られ、あのクチバシでどうやって食べたかと思う程すっかり内容物が無くなっていた。先ほどまで僕がカラスを観察していたが、今はカラスが僕を観察している。空になった小袋を拾い上げる人間を観てカラスは何を思っているのだろうか?僕はこの小袋をもとあったように置きその場を立ち去った。きっとカラスはもう一度、この小袋をつまみ上げ、「???」と思うのだろうな。
夜中なのに先ほどからカラスが 騒いでいる・・・とこの後「ドンッ!」0時20分地震だ。京都南部震度3。地盤の微妙な揺れは、木の根から幹に伝わり、カラスが寝ている枝に伝わる。この地盤の揺れを察知して騒いだのだろう。カラスは本当に興味深い生きものである。Photo:2012/05/08 @京都御苑、京都市

2012年5月7日月曜日

第三百三十七夜/巣立ちのモズ

 仕事先でモズがしきりに警戒の鳴き声をあげは始めた。今の季節だから近くに巣でもあるのだろうと遠ざかった時に横から巣立ちビナが飛び立った。十分に飛べるのだがまだまだ自由にとは行かずに、このあと横の茂みに逃げ込んだ。ヒナは全部で3羽だった。親鳥が警戒の鳴き声をあげると近くのキンモクセイの刈り込みに逃げ込みじっとしている。この近くで巣をかけていたのだろうか、数本の込み入った樹木のまわりから離れようとしない。近くでは親鳥が子ども達の居場所と外敵の侵入を見張っている。ヒナ鳥の大きさは、親鳥とほとんど同じで、尾羽を上下に動かす仕草もすっかりモズらしい、ただ尾羽の長さは親の1/3ほどでまだかわいい。観察していると近くのケヤキの木にカラスが巣をかけている。どうも親鳥の警戒は僕よりもむしろカラスかも知れない。カラスの巣の近くではムクドリも見張りをしていたから彼らも近くに巣を持っているに違いない。この季節、モズやムクドリにとって卵や子どもを襲うカラスの存在が一番の脅威に違いない。Photo:2012/05/07  @近江八幡、滋賀県

2012年5月6日日曜日

第三百三十六夜/ノコギリクワガタの初もの

滋賀県栗東の里山で森の整備に行く。参加者のTさんが腐った切り株を動かしたら中から現れたのが小振りのノコギリクワガタ(♂)。今の時期に成虫と言う事は、昨年春に蛹から羽化したものがそのまま一年を朽木内で過ごした新成虫である。外に出て樹液に来るのはもう少し先だと思う、写真を撮った後、再び朽木に戻しておいた。この個体を見て子どもの頃よく捕まえたのはこのタイプの小型ばかりだったことを想い出す。牛の角のような湾曲する大アゴを持つ個体は、ほとんど採れなかった。成虫の大きさを決定するのは、幼虫時の環境と言うけれど地域的な特徴もあるだろう。Photo:2012/05/06 @栗東市、滋賀県

2012年5月5日土曜日

第三百三十五夜/街に舞うトビ

  京都の東山連山を代表する大文字山に登る。山頂からはトビが風に乗り空中で停止するのが間近に見える。風に流されたかと思うと上手く気流に乗り上へ下へ、急降下をしても再びももとの空間に戻ってくる・・・トビの尾羽は体(左右の翼)に対して直角になるほど自由に舵をきり、左右の翼と首でも微妙に体重移動をしているように見える。観ていてまったく飽きることはない。時間を忘れて観てしまった。時々、カラスが追いかける、無風なら勝ち目もあるが、こんな強い風に乗るトビにはかなわない。シジュウカラ、キビタキ、アオゲラの声を聞き、ツミと思われる小型のタカの姿も見れた。Photo:2012/05/05 @大文字山、京都市

2012年5月2日水曜日

第三百三十四夜/エノキの虫こぶ

 エノキの新葉にテングチョウの幼虫を探している時に不思議なものを見つけた。葉の表面にドングリのような形の緑色した「こぶ」である、これは「虫こぶ(虫瘤)」と呼ばれるもので、植物の内部に昆虫が卵を産み付けることによって、植物組織が異常な発達を起こしてできるこぶ状の突起のこと。虫癭(ちゅうえい)とも言う。虫こぶは、昆虫の種類と樹種(樹木の種類)の関係が強いようで、どれでもいいと言う訳ではなさそうだ。
 ある特別の関係が必要。今日、見つけた虫こぶの場合=「(植物名)+(部位)+(形状)+フシ」→「エノキ+ハ+トガリ+タマ+フシ」と呼ばれる。この虫こぶの中には、エノキトガリタマバエの幼虫が入っているはずである。この虫こぶは、もう少しすると、葉から脱落して下に落ちてしまう(写真の葉上には2個が並ぶが、葉の中ほどに既に落ちてしまったと思われる丸い痕跡がある)。幼虫は、地上におちた虫こぶの中で、来年の春まで過ごし蛹になり、3~4月に成虫になって虫こぶから出て、エノキの新芽に産卵する。どんなハエか知らないが、全く不思議な生活である。Photo:2012/05/01 @京都御苑、京都市
参考文献:日本原色虫えい図鑑 湯川淳一、桝田長 編著 全国農村教育協会

2012年5月1日火曜日

第三百三十三夜/これでもガの仲間

草地を低く、草葉を縫う様にしてハタハタ・フワフワと小さな虫が飛ぶ。目立つのはその虫の白く長くしなやかな触覚。体長の3倍はありそうなヒゲのためにバランスが少々悪いようだ。ようやく葉に止まる。まぎれも無く小さなヒゲナガガの仲間。調べるとクロハネシロヒゲナガ(ヒゲナガガ科)、種名が読みにくいので・・・クロハネ・シロ・ヒゲナガ(ガ)と区切ると判りやすい。写真は長く立派な触覚(ヒゲ)を持つ♂の個体だが、♀の個体の触覚はもう少し短く、根元が黒く太い。名前の由来は体の特徴の「黒い翅+白い+長いひげ+蛾」より・・・とはいってもこの黒い翅に光があたると一瞬きらりと緑紫のような微妙な色にひかりきれいだった。最初の一頭に気がつくと、辺りの草地に沢山飛んでいることに気付く。ただし全部♂で、彼らはもうすぐ羽化するであろう♀を探し待っているに違いない。果たしてどんな生活をしているのだろうか。Photo:2012/05/01 @京都御苑、京都市