2009年12月27日日曜日

第百七十九夜/セグロセキレイ

 胸を張って、尾っぽを上下に振りながら歩こう・・・八幡堀(近江八幡市)の川べりでそんなことをいいながら歩いていた鳥。セグロセキレイは日本固有種。似た仲間でハクセキレイという種がいるが名前に反して背中は黒い。2種の区別は、ほっぺたが白いのがハクセキレイ、ほっぺたが黒いのがセグロセキレイ。Photo:2009/12/27 @八幡堀、近江八幡市、滋賀県

2009年12月24日木曜日

第百七十八夜/イカル

今の季節、エノキやムクノキ林のなかからぱちぱちと音がすればきっとこの鳥が地面に落ちた実を食べている音。そんな時は梢から「キーコーキー・・・・」と面白いさえずりも聞こえているに違いない。スズメを一回り大きくしたサイズの鳥で、どこか文鳥に似ている。太いくちばしで堅い樹の実を割って食べる。Photo:2009/12/22 @京都御苑、京都市

2009年12月23日水曜日

第百七十七夜/ハヤブサ

林を歩くとぱちぱちとはっきりとした音が地面からする、イカルが地面に落ちた樹木の実をくちばしで割って食べる音だ。近づくと30羽ぐらいの群れがいっせいに飛び立ち近くの梢に移動する。梢をみるとシジュウカラやメジロが枝先にとまり昆虫を探す様子も見れた。しばらくすると梢の向こうに一羽のタカが滑空していた。とっさながらも写真を数枚撮ることができた。オオタカだろうと気にしなかった・・・しかしやはり気になる。オオタカと思いながらもやはりどこか違った。夜、写真を拡大して見るとそこに写っていたのはまぎれもないハヤブサだった。しまった、もう少しじっくり見ればよかった。Photo:2009/12/22 @京都御苑、京都市

2009年12月19日土曜日

第百七十六夜/風変わりなハチ

ハスの葉もすっかりしおれてしまって、枯れた茎にいくつもの茶色く変色した葉が垂れ下がる。この枯葉を眺めているうちに何かいそうだと直感した。早速、いくつもの葉の内側を見るとクモやクサカゲロウが見つかった。なかでも写真のヒメバチは大物だった。ヒメバチの仲間のコンボウアメバチ(コンボウアメバチ亜科
Gravenhorstini 族のなかの1種、詳しい種名は判らない)、体の形と色が面白い。詳しく同定するとなるとこの個体を専門家に見てもらう必要があるが、今回はアメバチがいることが判っただけで十分だ.虫を見つけるコツは、直感を大切に、そして先入観を捨てること。Photo:2009/12/16 @京都御苑、京都市

2009年12月3日木曜日

第百七十五夜/ゴマダラチョウの越冬

 昨日までの陽気が一変して冷たい雨の一日となった。モミジ、イチョウ、桜の色づいた葉がつぎつぎと落ちる。地面に黄色や紅の円形模様が現れる。エノキの葉もずいぶんと落ちている。そろそろ見れるだろうとエノキの根本の落葉をめくるとすぐに見つけることが出来た。頭に2本の角、背中には3対のトゲ状の突起物、これがゴマダラチョウの越冬幼虫。同じ場所に先週はまだ見つけることが出来なかった。Photo:2009/12/03 @京都御苑、京都市

2009年11月25日水曜日

第百七十四夜/リンゴドクガ

 「あんまり触ると・・ひどいことになるよ。背中の黄色い毛が見えないか!」判った判った、おっしゃる通りいたずらしません、触りません・・・とつい口に出てしまうほどの毛虫。でも一応、小枝で突っついてみよう。何事も試すことが肝心。すると、おおっやっぱり・・・尻部上方に赤い毛の束を上げ、4つの黄色の毛の束を盛り上げる、なんと黄色い毛の間に隠されていた黒い毛が現れ隠なかなか不気味! 黄と黒のストライプはやっぱり危険信号だ! 想像以上の反応だ。この体と反応の特徴ですぐにリンゴドクガであることが判った。名前にリンゴとつくがリンゴ以外にミズキやカシ類も食するらしい。この時はアラカシの食べていたようだ。Photo:2009/11/24 @京都御苑、京都市
 

2009年11月24日火曜日

第百七十三夜/シモフリスズメ

 週一回の定点観察調査で京都御苑を歩く、さすがに寒くなってから昆虫は少なくなってきた。すっかり冬支度かと思いきやまだ幼虫でクサギの葉を食べているのに出くわした。まるまると太った10cmほどもある大きなイモムシ。調べてみるとスズメガの仲間のシモフリスズメの終齢幼虫、緑の体には枯葉にも似た茶色の班が入っている。数日の間に地面に降り枯葉の中で蛹になるんだろう。写真は顔の前で、前脚を合せて拝む様にじっとしている幼虫。Photo:2009/11/24 @京都御苑、京都市

2009年11月23日月曜日

第百七十二夜/迷い鳩


 私用で三重県多度町に行く。ここは僕が小学校に入るまで育った場所、家の向うには木曽三川の揖斐川が流れる。昔、魚釣りをした小川を訪れるもすっかりその面影は無く、コンクリート3面張りの溝になっていた。そんな田んぼ道を歩いていると刈り取りの終わった稲の中で一羽のカモメ・・・カモメにしてはおかしな場所にいるもんだと思い眺めていると草むらから出て来てこれがハトだと初めて判った。そのぐらい体つきが大きく、しっかりしていた。双眼鏡で見ると脚環が見えた、青い環には細かな字が書かれている。明らかに伝書鳩(レース鳩)。通常ハトは群れで行動する、そのハトが単独で落ち穂をしきりに食べている・・・これはレースから脱落した個体か、迷子の個体に違いない。幸いにもケガや衰弱した様子は無く、元気に落ち穂を食べている。胸が落ち穂で膨らむのがレンズ越しに判る。よほどお腹がすいているだろう、レース鳩としてはちょっと情けない状況だが、さすがにその体つきはたくましい。家に戻って伝書鳩の情報を調べると数日前に岐阜から練習放鳥が行なわれた様だ。この場所だと岐阜にもとても近い、この練習放鳥の一羽かもしれない。お腹いっぱいになったら元気に自宅に向うことを願う・・・といってもこの辺りハヤブサの仲間がいたりしてけっこう危険だろうな。Photo:2009/11/23 @南之郷、多度町、三重県

2009年11月11日水曜日

第百七十一夜/セスジツユムシ

 朝もずいぶんと寒くなった、真っ赤なヤマボウシの落葉に一頭のセスジツユムシ(♀)。寒さの為に動きが鈍い。陽があたり体が暖まるまでにはもうしばらく時間がかかる。Photo:2009/11/10 @京都御苑、京都市

2009年11月10日火曜日

第百七十夜/背中にハートマークのカメムシ

 エサキモンキツノカメムシ・・・・・長い名前だな、12文字もある。昆虫学者・故江崎悌三博士が記載した、黄色い紋を付けたツノカメムシ(両方の肩が角状に張っている)の意味。背中の真ん中に薄黄色のハート型の紋が印象的で名前はともかく、この模様は忘れることはないだろう。さて、長い名前の虫を調べてみると、12文字程度なんてざらにいる。チョウなんかだと「リュウキュウウラナミジャノメ」、「カラフトタカネキマダラセセリ」が14文字、さらに15文字が「キマダラコシホソトガリヒメバチ」、「シラホシヒゲナガコバネカミキリ」、「クロズジュウジアトキリゴミムシ」など。ああっここに16文字がいた「アトグロジュウジアトキリゴミムシ」。長ければ長いほど身体の特徴を説明した名前になるな。そこで一番短い名前はなにだろうと考える・・・これは簡単、多分2文字の「ケラ」だろうな。Photo:2009/11/10 @京都御苑、京都市

2009年11月7日土曜日

第百六十九夜/カネタタキ

 日射しを受け、材木の上でカネタタキ(♂)が体を暖めていた。夏場には木の葉裏や込みいった枝の陰に身を寄せる昆虫も初冬の寒さの中では、その行動も変わってくるものだ。「♪♪チン・ チン・ チン」と鐘を叩いた様な音を出すことからカネタタキと名付けられた。鐘はカネでも鉦叩(かねたたき)と書き、ゴーンゴーンと鳴る除夜の鐘ではなく、仏前にある青銅のチーンと鳴る鉦(かね)。これでもコオロギの仲間、見ての通り♂の翅はとても小さく飛ばないと・・・本には書かれているが、実際には高いところから飛び降りときにはちゃんとはばたいている。(この状態を飛ぶとするには無理があるかな?)♀の翅は退化してしまって無い。写真を撮って気づいた、触角が体長よりもずいぶんと長いんだな・・・・。Photo:2009/11/04 @京都御苑

2009年11月6日金曜日

第百六十八夜/ジョウビタキ


 仕事で訪れた樹木園、後ろでコツコツという音がしたので振り返ると今降りたばかりの車のサイドミラーにジョウビタキ(♂)が体当たりしている。鏡に映る自分の姿を縄張りに進入した別の鳥と思い込んでいるようだ。ミラーの中に姿が無くなると落ち着き、再び自分の姿が映ると体当たりを繰り返す。見ている分には面白いが、後で「やられた!」と思った。このジョウビタキ自分の姿が映るミラーの上に止まり縄張りを見張っている・・・止まっている時に糞をする。しばらく経ってミラーを見ると糞で白く汚れている・・・汚れると姿が映らなくなるのでどこかへ飛んでいってしまう。樹木園のオーナーさん曰く「紋付(もんつき*1)はいつもミラーを糞だらけにするんですよ・・・」。
*1:この辺りでは、ジョウビタキを羽の白い紋の特徴から「紋付」と呼ぶらしい。Photo:2009/11/06 宝塚市兵庫県

2009年11月5日木曜日

第百六十七夜/ミルンヤンマ

 車で走っていると意外に目につく交通事故のムシ達。特にトンボは車のフロントガラスに当たることが多いようだ。今日も路面に大型のトンボ「ミルンヤンマ」が落ちていた。車を止め、路面から拾い上げ見ていると、死んでいると思っていたトンボがかすかに動き始めた。脳しんとうを起していたのだろうか、触れている間に徐々に脚や翅を動かし始め枝に止まることができる様になった。今日は気温も低く、これから暗くなるので飛ぶことができるかは判らないが、明日になれば再び飛べるかもしれない。和名と学名につけられたミルン「milnei」とは、明治時代に地質学と鉱山学を教えるために来日したイギリス人 Jone Milne 氏に献呈されたもの。Photo:2009/11/15 @近江今津、滋賀県

2009年11月4日水曜日

第百六十六夜/秋深まりてウラナミシジミあらわる

 木枯らし一号・・・やっぱり昨日は寒かった。庭のレモンの木のナガサキアゲハはなんとか蛹になったようだ。ただし居場所はもっか捜索中。今日、庭のセージの花にやってきたのはウラナミシジミ。このシジミチョウ、夏にはまったく姿を見せないのに秋が深まるにつれ目にすることが多い、個体数も増えてくる。普段は菜園なんかで豆科の植物の若い実を食べている。庭には卵を産むための豆は無いが、当分の間セージの花で蜜を吸うことができる。Photo:2009/11/04 @岡崎、京都市

2009年10月30日金曜日

第百六十五夜/ナガサキアゲハがやってきた−2

 ゆるゆるゆる・・とカタツムリの目の様な赤橙色の臭角を出すのはだれか?(写真上) その正体は昨日のナガサキアゲハの終齢幼虫でした。(写真下)アゲハチョウの仲間でも種類が違うと微妙に色も違います。ナミアゲハは黄色っぽく、クロアゲハはもっと紅色が濃いのです。匂いは臭いと最初感じるが、その臭味の中にやはり柑橘類の香りがする。臭角(しゅうかく)を出してからなおもつつくと、今度は頭を左右に揺らしながらイヤイヤをするような動きをする。Photo:2009/10/30 @岡崎、京都市

2009年10月29日木曜日

第百六十四夜/ナガサキアゲハがやってきた

 自宅の庭においてあるレモン(鉢植え)に待ち望んでいたナガサキアゲハがやってきた・・・といっても成虫は見ていない。レモンの実を栽培しているので薬剤は一切使っていない。そのレモンの葉にナガサキアゲハの幼虫(大きな方、奥の小さな幼虫はナミアゲハ)がついていたと言う訳である。毎日眺めていると同じアゲハの仲間でもアゲハチョウ(ナミアゲハ)やクロアゲハとは少し行動が違うようだ。アゲハチョウの幼虫が葉表にべたりと止まっている時も、こちらは大きな体を葉の重なっているところや葉裏にいつもいる・・・若齢幼虫では葉表に止まっているが、終齢幼虫では常に陰の様なところに止まっている。鳥等の捕食者から見つからないようにしているのかどうかは判らない。さて終齢幼虫も蛹への脱皮の頃になるとつぎつぎと姿を消していく、蛹になるために木から離れていくのだろう。このレモンは実を育てる為になるべく日当たりの良い場所に置いている、こんな場所にはクロアゲハな滅多にやって来ない。一般的に黒っぽい色のアゲハは日陰が好きなのだが、ナガサキアゲハが日当たりが好きなようだ。成虫も夏の炎天下、グランドの様な日当たりの良い場所を飛んでいる。(逆に言えば、日陰を飛ぶ黒いアゲハはクロアゲハ、炎天下を飛んでいる黒いアゲハはナガサキアゲハと思っていいだろう)成虫は、第十七夜、第九十二夜をご覧下さい。Photo:2009/10/29 @岡崎、京都市

2009年10月24日土曜日

第百六十三夜/ハクセキレイ

 夕方あぜ道を歩いていると、一羽のハクセキレイが水田の溝の横に止まり陽光に体をあたためていた。今日も一日終わった、これから秋が深まるにつれ日ごとに寒くなるな・・・さて、なんて思いながら仲間のいるねぐらに向うんだろうか。Photo:2009/10/22 @蓼科、長野

2009年10月23日金曜日

第百六十二夜/モンキチョウ

 仕事で長野県蓼科へ、休耕田を見て回っているとモンキチョウが異常に多い。牧草として蒔かれたアカツメグサを食草とするからだろう。モンキチョウが20m×20mの面積に100頭ぐらいは飛んでいたような畑もあった、これはちょっと異常な個体数だ。飛んでいる蝶を見ると黄色タイプと白色タイプがいる、この辺りでは多くの場合、白色タイプは♀。空中に停止する様に小刻みに羽ばたく1頭の♀の後ろを黄色の♂が同じく小刻みに羽ばたく場面が多く見られた、これは♂のプロポーズ。1つのペアが道路上に飛んで行った、♀が地面(右下)に止まり、♂(左上)がその回りを飛ぶ。このペアは上手くいくかなと思っていたら、彼らのところに猛スピードで軽トラがやってきた。幸い轢かれはしなかったが、軽トラの起した風でバラバラに飛び去ってしまった。Photo:2009/10/21 @蓼科、長野

2009年10月19日月曜日

第百六十一夜/カラスアゲハ

 写真は今夏のもの、クサギの蜜を吸うカラスアゲハ(♂)。後翅の尾状突起も完璧にそろっている、翅も新しい。このような個体はなかなか出会えない。♀の個体を待ってみたが全く来なかった。昆虫の世界では一般的に♂の出現が早く、次いで少し遅くなってから♀が現れる。だからモンキアゲハ(第百五十八夜)の様に♂はぼろぼろなのに♀は美しいことになる。Photo:2009/08/29 @八幡山、近江八幡市

2009年10月16日金曜日

第百六十夜/オオスカシバの飛翔

 いつも眺めながら写真に撮りたいと思っていたハチドリの様に飛ぶオオスカシバ、思い続ければいつかはチャンスが来る。写真に撮ってみるとやはり虫らしくない。姿、色共にハチドリみたい、違うところは翅と脚の数、触角があること、クチバシが無いこと。目頭から目尻への黒線、緑の毛むくじゃらの体にえんじ色の腹巻き、ピンとのばした触角がかわいい。注:オオスカシバは2度目の登場、第百五夜をご覧下さい。Photo:2009/08/29 @八幡山、近江八幡市

2009年10月15日木曜日

第百五十九夜/モンキアゲハ

 クサギの花は夏の数少ない蜜源植物、やって来たのはモンキアゲハ(♀)。僕たちが身近な環境で見ることのできる一番大きなチョウ。蜜を吸う姿は本当にきれいだ、こうやってみると脚がとても長いことに驚く。モンキアゲハは名前通り♂♀共に翅(後ろ)に黄色の大きな紋がある、♀は後ろ翅の赤い紋がよく発達している。昆虫採集に夢中だった子どもの頃、夏型の♀を展翅するためには特大の展翅板(翅を開いた標本を作るための道具)が必要だったことを想い出す。Photo:2009/08/29 @八幡山、近江八幡市

2009年10月14日水曜日

第百五十八夜/モンキアゲハとアゲハチョウ

 今夏、クサギの花が満開の頃のこと。モンキアゲハ♂(左)が吸蜜にやってきたモンキアゲハ♀(右)にしきりにプロポーズしていた、当の♀はそんなことより花の蜜を吸うのに夢中。そこにやってきたのがアゲハチョウ♂(真ん中のチョウ)、2頭の大きなモンキアゲハの間に入り、♀にプロポーズ。アゲハチョウの♂の方が元気で素早いので翅がぼろぼろのモンキアゲハの♂は常にアゲハチョウの後ろ側。こんな状況がしばらく続いた、やがてモンキアゲハ♀が花から飛び去ると・・・後にアゲハチョウとモンキアゲハの2頭の♂が我さきにとモンキアゲハ♀を追いかけ去った。アゲハチョウ♂の左右の後翅の上部に黒い丸印が見える、これは夏型の♂の印。Photo:2009/08/29 @八幡山、近江八幡市

2009年10月13日火曜日

第百五十七夜/枯れ葉にまぎれる蝶・クロコノマチョウ

 樹林地の中を歩くと足元から黒い蝶が勢い良く飛び出る、少し飛んではまた地面に止まるが・・・どこに止まっているのかさっぱり判らない。またもや足元から飛び出る。しかも踏みそうになるぐらいの場所から。なんどか繰り返すうちにやっと居所がわかる。その正体は、クロコノマチョウ(漢字では「黒木ノ間蝶」と書くらしい)、翅の裏は見事に枯葉状の模様で地面にいる時はご覧の通り(写真上)。緑の葉に止まっていても枯葉がひっかかっている程度にしか見えない(写真下)。地味な蝶も翅表はきれいな赤褐色に目玉模様が並ぶ、裏面も光の具合で体周辺の細毛がほんのりと青く写ったのには驚いた(写真下)、これはなかなかきれいではないか。本来は南方系の蝶で、近年北へと生息域を拡げつつある。食草は、ススキ、ジュズダマなどのイネ科植物だから食うには困らないだろう。写真:秋型♂。Photo:2009/10/13 @京都御苑、京都市

第百五十六夜/森の糞虫・ミドリセンチコガネ

 里山遊びの準備で森のなかの広場の木屑を片付けたり、地面をいじっているとどこからともなく緑色に光るコガネムシが飛んできて、今しがたまで木屑で覆われていた地面を嬉しそうに歩き回っている。様子を見ていると何かを探しているらしい。この山にはシカやイノシシが沢山生息しているので普段はこれらの野生動物の糞を食べているはず、今日は何に反応してきたんだろうか。このきれいなコガネムシは、糞虫(動物の糞を食物としているコガネムシの仲間)で、種名はオオセンチコガネと言う。日本全国に広く分布するが、大きく分けて赤色、緑色、藍色の3つの色彩型に区別される。京都府から滋賀県にかけては主に緑色系が分布し、これはミドリセンチコガネと呼ばれている。この緑色タイプは遠くはなれて北海道の日高地方沿岸部などにも見ることができると言う。飛んできた個体を手に乗せて眺めていると本当にきれいな光沢をしていて、よく見ると僕のすぐ後ろの大きなコナラの樹形がコガネムシの背中に映っていた。今日はこのオオセンチコガネの他に、センチコガネも見ることができた。Photo:2009/10/12 @こんこん山、栗東市、滋賀県

2009年10月11日日曜日

第百五十五夜/枝になった虫

 昆虫の世界はつくづく不思議だ。なぜこれほどまでに自分の姿を植物に見立てることができるのか。今夜のエダナナフシはその最高峰だと思う。この虫は成虫も幼虫も樹木の枝になりきってベジタリアンで、体の動きも緩慢で最低限しか動かさない。もっとも動く枝があればそれは怪しい。成虫の体だけが植物になりきっているかと思えば、なんと卵は植物の種そっくり(ラグビーボール型で縦にしわが入っている)である。さらに不思議なことは、平地や暖地では主に有性生殖を行い、山地や寒冷地では主に単為生殖(雌だけで産卵すること)を行っていると考えられる。母親は枝に止まって卵をぽろぽろと空中から地面に落下させる(種を蒔くって感じ)。以前、飼った時に飼育箱の底に草の種が落ちていた・・・と思ったのが卵だった。実は動物でも同じ様な生きものがいる・・・南米に棲むナマケモノ。こちらはほ乳類だから雌雄いるが、ベジタリアンで、体の筋肉も極力まで落として木の枝にぶら下がり自然の風景にまぎれていると言う。あまりにも筋力が無いから木の上ではぶら下がっている、地上部では4本の手足で体を支えられずぺしゃんこになって這いずり歩く。しかし水中では重力がかからないからうまく泳ぐ、ただし極めてゆっくりと。自分の糞は、自分がぶら下がっている木の根本にする。ほ乳類であれ、昆虫であれ同じ様な生活形態が森の中でされていることも不思議なことだ。写真は、コナラの葉を食べるエダナナフシ、秋のナナフシはなんとなく枯れ枝のようだ。
Photo : 2009/09/30 @蓼科、長野県

2009年10月9日金曜日

百五十四夜/ジョロウグモ

 単純なものである、「日本のクモ」という優れた生態写真の図鑑を入手したとたんに、クモのことを知りたくなる、もしくはクモの姿が目につく様になる。まあこの逆かもしれないが、いずれにしてもクモの存在が気がかりである。写真は、ジョロウグモという名のよく目にする大型の種類、ちょうどクモがミツバチを捕らえたところ。クモは獲物が巣にかかり暴れるとその振動を感じて糸でがんじがらめにしてしまう。数えるとミツバチは全部で5頭。大きなクモの左横には小さなクモも見える。こちらは雄クモ、♀(雌)と♂(雄)では大きさに母と赤ちゃんの差ほどある。雄クモは、雌の巣に居候しているようで不用意に動けば食べられてしまうのか、巣を揺らさない様にそろりそろりと慎重に移動していた(・・・気がする)。Photo:2009/10/01 @蓼科、長野県

2009年10月8日木曜日

第百五十三夜/思い出せないコアシナガバチ

 困ったものだ、出張中の写真を整理しているとコアシナガバチの写真が数カットあった・・・さてどこでいつ撮影したのやらさっぱり記憶が無い。写真の前後を見るとフィールドワークの最中らしい。さらに記憶をたどるとどうも休憩中に飲んだジュースの匂いにつられてハチがやってきた・・・気がする。きっとそれであっていると思うが、やっぱりこわいものだ。徹夜明け・仕事に夢中とはいえ、虫が現れると知らずのうちに写真を撮っていることがこれで判った。コアシナガバチは小型で体色がきれい。ジュースの匂いに誘われて向うからやって来る時はとてもおとなしく、観察するにはもってこい。Photo:2009/09/29 @蓼科、長野県

2009年10月7日水曜日

第百五十二夜/葉っぱに真似る幼虫

  トンボ池で虫の解説をしている時に葉裏のイモムシを発見、ウワミズザクラの葉を食べるモモスズメの幼虫(スズメガの仲間)。これはなかなかいいタイミングに現れてくれた。近づくと人の気配に気づき、頭の部分を精一杯細くしてじっとし始める。なんどもなんども見ているうちにあることに気づく。しっぽに見える部分は、葉の「葉柄(ようへい)」(葉と枝をつなぐ部分)、体の模様は「葉脈(ようみゃく)」、皮膚のざらざら感は「鋸歯(きょし)」、さらに頭を細くすることによって「葉の先端」になりきろうとしているかのようだった。つまり「擬態」=葉っぱに見せることで捕食者から身を守ろうとしている。この解説を聞いていた女性方も最初は恐る恐る見ていたが、僕が触り始めると、興味が湧くのか一人二人と触り始める。「意外にざらざらやん、しっぽは硬いし〜」なんて言っている。そのうちみんなが触るのでスズメガの幼虫もじっとするのを止めて再び葉を食べ始めてしまった。一見気持わるい部類の昆虫も、それを知ることによってなんとなく許容できる関係ができる。つまり相手を知らないことからくる恐怖や不信感が虫嫌いを生み出す。もっともこれは人間の世界でもそうかもしれない。トンボ池の一般開放でここにやって来る人たちは、世間では十分に生きもの好きの部類に属されるだろうから、この許容はもともと幅広いのだろう。そして判っていても避けるのは、「原体験」そして「本能」からくる心理なのかな。ちなみにこの幼虫は、野鳥のヤマガラの好物と西台先生に教えて頂いた。スズメ大の鳥にとっては食べごたえありそうだ。注:写真下の絵は、サクラの葉を半分に丸めてみた時の絵です。なんとなくスズメガの幼虫に似ていませんか?Photo:2009/10/03 @トンボ池・京都御苑 
注:成虫の写真は「第九十三夜」をご覧下さい。

2009年10月6日火曜日

第百五十一夜/ハチみたいなハエ=ホソヒラタアブ

 今夜の虫は、ハチをまねたハエ、ホソヒラタアブ(ハナアブ科)。体の虎模様はミツバチにそっくり、でもよく見ると触覚や口の形が違う、翅も左右2枚しか無い。体色を黒くするとハエである・・・そう、アブはハエの仲間である。ハナアブにこの模様が多いのは、毒をもっていないアブがハチに似せて身を守っているからだと言われている。つまり同じ花の蜜を吸うミツバチに似ることによって効果的に身を守ることができると言う訳。このホソヒラタアブは飛ぶのがとてもうまく、空中で停止したり(ホバリング)、交尾も空中で行なう。成虫は花の蜜を吸うが、幼虫はウジ虫型で草木の葉上でアブラムシを食べる。写真の花はミゾソバ。Photo:2009/10/03 @トンボ池、京都御苑

2009年10月5日月曜日

第百五十夜/コバネイナゴ

 人の気配も、カメラのレンズにもまったく動じずキショウブの葉を食べるコバネイナゴ。耳を近づけるとボリボリボリとかすかな音も聞こえてくる。Photo:2009/10/03 @トンボ池・京都御苑

2009年10月4日日曜日

第百四十九夜/月に鷺(さぎ)

  昨夜は中秋の名月、なかなか見事な満月。一夜明けて今日、仕事帰り見た夕日で稜線がくっきりと強調された比良山系の山並み(琵琶湖の西岸)と安土・きぬがさ山の上空に昇った月も見事だった。すっかり日もくれ月が高く昇った中、僕たち人間にはとても出来ないが、水鳥達にはよく見えるのだろう鷺の群れが川瀬や水田で魚を捕っていた。
写真上:切手の名作「月に雁(かり)」(発行:1949年趣味週間)には及ばないが、満月のしたのアオサギはなかなか絵になっていた、水田のなかに点々とたたずむのがアオサギ・・・ただし写真には難しすぎ。写真下:川瀬で魚を捕るサギ達(コサギ、ダイサギ)。Photo:2009/10/04 @白鳥川・近江八幡市

2009年10月3日土曜日

第百四十八夜/セスジツユムシ


 今日は京都御苑のトンボ池・秋の一般開放日(10月2日、3日)。トンボ池の周辺の草地には、沢山のセスジツユムシが見られた。この間まではその幼虫もなかなか見ることが出来なかったのに今日は成虫がずいぶんと目についた。数多くいた成虫の中でひときわ目立ったのが、写真(上)の褐色型のセスジツユムシ(この個体は♂)。黄色味が強い褐色型なので緑の葉上では目立つ。普通の緑色型は写真の下の個体。但し、この個体は背中の筋が緑色なので♀。雄の背中の筋は、褐色だからすぐに判る。セスジツユムシは後ろ脚を思いっきり伸ばし、前のめりになってよく葉に止まっている。さてこのポーズ、何か訳でもあるのだろうか。Photo:2009/10/03 @トンボ池、京都御苑

2009年9月20日日曜日

第百四十七夜/手負いのスズメバチ

 お墓参りに出かける。墓地に続く道に一頭のスズメバチ、同じところをぐるぐると歩き回っていた。左の側全ての翅と脚のほとんどを失っていた。こうなると飛ぶことも歩くことも満足にできないハチは、しかたなく右側ばかりを動かすから左回りになってしまう。それでも一生懸命に歩こうとする、時々右前脚と口で触覚の手入れも怠らない。最強のハチにこれだけダメージを与えたものは何者か? Photo:2009/09/20 @黒谷光明寺、京都市左京区

2009年9月17日木曜日

第百四十六夜/アカスジカメムシ

 カメムシの仲間は、形も面白い、色もきれいなものが多いのに・・・どうも過小評価されるきらいがある。そればかりか「不快生物」のレッテルを貼られている。その訳は、多分「臭い!」の一言だろうな。しかしカメムシに代わって弁護するならばそれは「あなたがちょっかいを出す」からである。しかも実体験としてカメムシの匂いを嗅いだ人はいるのかな?つまり多くの場合は、「カメムシ=臭い」のイメージが「ウワサ」として伝えられるようだ。(東南アジア料理で欠かせないパクチー=コリアンダーの香りと大差ない)さて今日はそんなことは忘れて、アカスジカメムシを観てみよう。頭の先からお尻の先までまっすぐに通った黒と赤のストライプが実にシャープなデザインできれいである。だれがデザインしたのか聞きたいところである。まあっ「ピエロ」と言われればそれも近いが、実にしゃれたデザインだと思う。このしゃれたデザインは日本の本州で見られるカメムシ・ベスト3にはいる。秋なるとセリ科の植物の花穂や、種子の汁を吸っている場面がよく見られる。写真はフェンネルの花にやってきたアカスジカメムシ(上が成虫、下が幼虫)。ちなみにカメムシをつかむ時には、お腹(お尻)ではなくて肩部の出っ張りを両側からつまむとけっして臭くはありませんよ。Photo:2009/09/14 @京都府立植物園

2009年9月16日水曜日

第百四十五夜/ルリタテハの親子


 2枚の写真、どちらもルリタテハである。これを見て親子と思うだろうか、幼虫だけを見ているとなかなか連想できないだろう。実際には、この間に「蛹」という時期があって、ここで劇的に変化する。パッと見は、蛹から成虫に脱皮(羽化)するシーンが見応えあるがのだが、実際は蛹をみるとすでに体の表面は、複眼や触覚、脚や翅の形がすでに表面に現れているので、一番の大きな変化は「蛹化(幼虫が蛹になること)」ということになる。この時の「変身」はいつ見ても密かに劇的で不思議だなと感じる。
ルリタテハの幼虫は、写真のとおり立派な毛虫(・・・というよりトゲムシ)である、食草はサルトリイバラ、ホトトギス、ユリ類。
写真(上):ホトトギスを食べる終齢幼虫。写真(下):杭先で縄張りを見張る成虫。Photo:2009/09/14 @京都府立植物園

2009年9月14日月曜日

第百四十四夜/オンブバッタと睡蓮

 植物を調べに府立植物園に出かける。地下鉄の駅を出ていつものコースで園内を歩く。小さな池に時期外れのスイレンの花が一輪、近寄ってみると出来すぎたシーン。ピンクの花にオンブバッタが2頭、上は小さな成虫♂、下には大きな幼虫♀がいた。これは誰かのイタズラか、それとも偶然か。Photo:2009/09/14 @京都府立植物圏

2009年9月13日日曜日

第百四十三夜/幼虫から蛹へ(ツマグロヒョウモンの前蛹)

 ふと立ち寄った道ばたで一休み、まわりにはこれといった虫も見当たらない。田んぼの水路をのぞくとちょうど目の前の草に毛虫が一匹ぶらりとさがっている。これはツマグロヒョウモンの前蛹(ぜんよう)、つまり幼虫が蛹になる前の状態。このあと幼虫は脱皮して蛹となる。このようにぶら下がった状態の蛹を「垂蛹(すいよう)」といい、アゲハチョウの様に枝や壁に垂直にとまり背中にまいた糸で体を支えた蛹を「帯蛹(たいよう)」という。この幼虫、今夜には蛹化(幼虫から蛹への脱皮)するに違いない。ヒョウモンチョウの仲間の蛹は、淡い褐色の体に金属的な光をもつスポット模様がありとても不思議で美しい。Photo:2009/09/13 @坂本、滋賀県 
注:成虫は「第七夜」をご覧下さい。

2009年9月12日土曜日

第百四十二夜/ハシブトガラス

 バス停留所のそばの路面に一羽のハシブトガラス。カラスの目当ては車に引かれたドバトの死骸。普段、ゴミをあさる時のカラスの「家畜的」な安定感(?)や図々しさはなく、すごく「野性的」でまわりをとても警戒している。これは車が来る路面だからと言う訳では無いようで、この時のカラスは自然環境の中でこのような生きものの死骸も処理してくれるスカベンジャーとしての野生の本能が出たかんじ。結局、この一枚しか写真を撮らせてくれなかった。Photo:2009/09/12 @熊野神社、京都市

2009年9月11日金曜日

第百四十一夜/黒いキリギリス

 仕事帰り、車の運転を一休み。こんな時、休む場所は田んぼの畦に面した場所や川沿いに限る、いろいろな生きものに出会えるから。小さな池があったので水際を見ていたら黒いキリギリスが飛出した。全身が黒褐色いヒメギスだった。特徴は、黒褐色の体に胸部の後方の白線のふちどり。翅は普通は短いが、長いものもいるらしい。よく見ていると普通のキリギリスよりひとまわり小さく、逃げるときは力強く跳ぶというよりも草に中を歩いていた。キリギリスの仲間は植物の葉を食べるほか、前脚に鋭いトゲを沢山もっていて昆虫なども捕らえてよく食べる。キリギリスもトンボも脚のトゲがよく発達している、これにはやっぱりちゃんと役割があるのだ。この個体は、草刈り鎌(かま)のような形の産卵管を持っているので♀。Photo:2009/09/11 @途中、滋賀県

2009年9月9日水曜日

第百四十夜/イチモンジセセリ

 部屋に入って来て蛾だといって女性達に騒がれるのが、たいていこのイチモンジセセリ。確かにセセリチョウの仲間は、翅の色は褐色系で、体のまわりには細かな毛が多い、しかも複眼の位置、触覚の形や、口吻のつき方がどことなく蝶離れしている。どことなくぬいぐるみのようでもあり、なかなか可愛い。さて、ここまで書いて気づいた・・・イチモンジセセリは「第二十八夜(2008年10月3日)」に紹介済みだった。しかたがない、好きなチョウの写真は多くなるのだから。ぴかぴかの蝶も、奇妙な形のバリバリの甲虫もいい、だけどセセリチョウはこれで見ていて飽きないし、小さな頃から見慣れた蝶だからかほっとする。なかなか味があっていいのだ。Photo:2009/09/07 @蓼科、長野県

2009年9月8日火曜日

第百三十九夜/クジャクチョウ


 仕事で訪れた長野県・蓼科の高原でひときわ目立っていたのが写真のクジャクチョウ。鳥のクジャクの尾羽の目玉模様に似た模様を持つ。翅の裏側は、木肌にも似た濃褐色の模様だが表はご覧の通り、なかなか魅力的。高原には沢山のアザミが咲いていた、上の写真のように一つの花に、クジャクチョウ、イチモンジセセリ、ハサミムシが蜜を吸いに来ていたものもあった。まあ仲良くと言うよりも、互いに気にせずと言ったところのようだ。変わりやすいお天気の中、だれもが晴れ間をぬって蜜を吸うことに余念がない。Photo:2009/09/05 @蓼科

2009年9月2日水曜日

第百三十八夜/角を持ったカメムシ

 ゾウ、ウマ、カメ、テング、ノミ、シャチ、シギ、スズメ、ツバメ、カラス・・・虫には多くの動物の名前がついている。その理由は、形だったり、色だったりする。今日の虫はウシカメムシ、「亀」にくわえて「牛」と名前に付く。両肩の角によく似た突起物は、黒々と光沢をもち見るからに硬そうで鋭く、かっこいい。カブトムシぐらいの大きさなら誰もが先を競ってとるに違いない・・・が、残念なことにテントウムシほどの大きさしかない。しかもカメムシと聞いて誰もが興味を示さない。Photo:2009/09/01 @京都御苑、京都市