2012年8月31日金曜日

第四百夜/夕焼けのイトトンボ

 滋賀県近江八幡市の西の湖に流れ込む蛇砂川の河川敷に沢山のアジアイトトンボ(Ischnura asiaticaを見る。イネ科の草地を見ると葉間が10cmにも満たない空間もミリ単位で上下左右前後にホバリングをしつつ移動している。飛んでいる時は翅が見えないのでまるで緑色の極細の爪楊枝が宙に浮かんでいる様に見える。葉先で休むもの、餌を捕らえるもの、雌を見つけて求婚するもの、その姿は見ていて飽きない。雄が雌を見つけると求婚するが雌に気がない時、雌は尾先(腹部先端)を曲げて拒否する行動も見れた。ふられた雄はけっしてくじけたりせず、すぐさま別の雌を探しに行くのだった。写真のアジアイトトンボは雄で、夕日に翅が赤く染まる。Photo:2012/08/31 @蛇砂川、近江八幡市、滋賀県

むしの気持ち:私達の仲間は体の紋様が微妙に違ったり、同じ種類でも成長するごとに色が変化したり、雄と雌とで違ったり、なかなかどれが○○トンボだとか決めるのは難しいようなんですが、そんなこと知ったことではありません。なんせ私達は私たちなんですから。飛ぶのが上手いって・・・人間が造った落ちる飛行機とは訳が違います、こんなに小さくって高性能のヘリコプターって人間は造れないでしょ? 当たり前でしょうね。ここまでなるのにどれだけ・・・何千年かかっただれも知りません。それと私たちだって夕日ぐらい愛でますよ、ああ今日一日終わったんだなって、ぐらい思いますね。

2012年8月29日水曜日

第三百九十九夜/黒いヒカゲチョウ

 ヒカゲチョウの仲間って、セセリチョウと同様に蝶と言うよりも蛾的な扱いを一般的に受けているかもしれない。確かに色彩的は、けっして華やかな感じではない。また人目につく花なんかにはあまりこない。むしろ日陰者と言った風情である。でも見れば見る程味わい深い紋様を持っている魅力的な蝶である。写真のクロヒカゲ(Lethe dianaも同様で、翅の表なんか黒褐色で、紋様も光沢もない黒っぽい地味なチョウ、またチョウには珍しく暗いところが好きで、日陰の地面にとまっていることや暗い林内を飛んでいることが多い。そんな地味なクロヒカゲの裏翅(後翅)にある目玉紋様の縁取りは見る角度によって深いブルーから紫色の不思議な光を放つ。クロヒカゲに近い種のヒカゲチョウ(Lethe sicelis)は、第三百七十二夜(2012年7月22日)をご覧下さい。Photo:2012/08/24 @神戸市立森林植物園、神戸市

2012年8月28日火曜日

第三百九十八夜/クマゼミ

 お盆が過ぎてすっかりセミの主役は、ツクツクボウシに変わっていしまった。 地面には、アブラゼミ、クマゼミの死骸が目立つ。1ケ月近く鳴き続けてきたこのクマゼミ(Cryptotympana facialisも後わずかで命を閉じることになるのだろう。今年の猛暑はいかがでしたか? きっと「最高の夏だった」と答えるだろうな。Photo:2012/08/28 @京都御苑、京都市

2012年8月27日月曜日

第三百九十七夜/キボシカミキリ

 子どもの頃は、カミキリムシと言えば写真のキボシカミキリ(Psacothea hilarisかゴマダラカミキリ(濃いブルーに白い斑紋)、どちらも家の近くで見ることが出来た。キボシは、ゴマダラより小振りだがスマートで触覚が長いので好きだった。最近、両種とも街中で見なくなったのは幼虫の食樹であるイチジクやクワが身の回りから減っているからだろう。今年も店頭にイチジクが並び始めた、これを見ると木や葉の独特の香りを、そしてカミキリムシも思いだすという訳だ。Photo:2012/08/26 @京都府立植物園、京都市

2012年8月26日日曜日

第三百九十六夜/多くの目玉を持つ蝶

 植物園に行くが、意外に昆虫は少ない。キボシカミキリ、ギンヤンマ、ウスバキトンボ、ナミアゲハ、クロアゲハ、キチョウ、ムラサキツバメ、ヤマトシジミ、ツマグロヒョウモン、イチモンジセセリ、そしてこのヒメウラナミジャノメ(Ypthima argusこのジャノメチョウは日本全国、春から秋の中ごろまで、いつでもどこでも出会える。幼虫が人の生活域にあるイネ科のススキ、チヂミザサなどを食草とするためだろう。そんあこともあって多くの写真を撮っていない。今日も満足な写真でない。この蛇の目紋は後翅裏に5つあるが、まれに6つから8つほど持つ個体もおり、そのため「argus」という学名を付された。argusとはギリシャ神話の神で、100の目を持つ巨人アルゴスに由来する。つまりいっぱい目玉紋様を持つと言う意味である。Photo:2012/08/26 @京都府立植物園、京都市

2012年8月25日土曜日

第三百九十五夜/翅が退化したフキバッタ

 面白いバッタを見つける、立派に成虫なのだが背中の翅は無いも同然、退化してしまっている。翅がないからもちろん飛ぶ事は出来ない。このバッタはフキバッタと呼ばれる仲間で、飛べないために地域移動が限られ個体差が激しくなったという。フキバッタは日本に26種、バッタの事は右も左も判らない、地域や体の特徴から数種に絞り込むと写真のフキバッタはヤマトフキバッタ(Parapodisma setouchiensisだろうか。名前は、フキを好んで食べることからついたが、もちろん他に植物全般の葉を食べる。Photo:2012/08/23 @六甲高山植物園、神戸市

2012年8月24日金曜日

第三百九十四夜/獲物を狩るのも命がけ?

 植物園の園路で見つけたオオモンクロベッコウ(Anoplius samariensis。このハチはベッコウバチの仲間で大きなクモに麻酔をかけ捕獲し、地面にあけた孔に運び入れ、卵を産む習性を持つ狩蜂の仲間。大きなクモ(写真のクモはアシダカグモの仲間)を狩るので、蜂も飛んで獲物を巣孔まで運ぶ事は出来ない。獲物のクモは、草むらなんかにいる。たとえ獲物を捕らえたからいっても巣孔までは草や枯れ枝、小石等の障害物を乗り越えていかねばならない。今日は獲物を捕らえ巣孔に運び入れようと園路を歩いていたところをタイミング悪く管理車にひかれてしまったようだ。それを見つけたのがアリ達。獲物を狩るのも命がけなのである。この蜂は、真っ黒の体に大きな2対のオレンジ色を腹背面にもつ。Photo:2012/08/24  @神戸市立森林植物園、神戸市

2012年8月23日木曜日

第三百九十三夜/オナガアゲハとオニユリ

 クロアゲハに似るが体も、翅も細いオナガアゲハ(Papilio macilentusオニユリを訪れた。後翅の長さがそう思わせるのか、花を訪れ飛ぶ姿はクロアゲハよりもずっと緩やかに流れるようで美しい。斜面地に咲くオニユリの間を縫う様にして飛ぶ姿は本当にきれいだ。山地では珍しくないが平地ではあまり見る事の出来ない黒い色のアゲハチョウ。インターネットのウィキペディア・フリー百科事典に掲載されている「オナガアゲハ」の写真はまぎれもない「ジャコウアゲハ」、この手の基本的な間違いが多くて困る。写真のオナガアゲハは♂。Photo:2012/08/23 @六甲高山植物園 神戸市

2012年8月22日水曜日

第三百九十二夜/キジの若鳥

 川沿いの路で足元の草むらから飛び出たのはキジ(Phasianus versicolorの若鳥だった。メス2羽、オス1羽の3羽。すっかり親程の大きさと紋様になっているが、その表情はまだあどけない。すぐに草むらに飛び込むもの、こちらの様子をずっと見るもの、これも個性だろうか。この辺りは今春からキジのペアをいつも見た場所。無事子育てを果たしたようだ。Photo:2012/08/22 @蛇砂川、浅小井、近江八幡市、滋賀県

2012年8月21日火曜日

第三百九十一夜/ハチに見えますか?

 今日は興味深い昆虫に出会う。一見、アシナガバチかスズメバチにみえるのだが触覚や翅の感じが微妙に違う。よく見るとやはり違う。この昆虫はスカシバガの仲間のコシアカスカシバ(Scasiba scribai、ガの仲間だからけっして刺したりはしない。・・・といっても普通の人はいくら見てもやっぱり蜂に見えて怖いのだと思う。「ぎゃっ!」と一言、後ずさりして近づこうとも、ましてやじっくり見ようとも思わないだろう。このような他者に自分を似せる事で身を守ることを擬態の一つ「標識的擬態=警告色をもった生物にまねて捕食者・外敵をだます」という。はたして彼ら自身はどうなんだろうかと思う。それは他者、特に人間が勝手に言っている事できっと彼ら自身は、ハチのことはどうでも良く、「どうですかかっこいいでしょう?」自分が一番と思っているに違いない。「そうです君はすてきな紋様だよ」と僕も思うのだ。Photo:2012/08/21  @京都御苑、京都市

2012年8月19日日曜日

第三百九十夜/ゴキブリとムカデ

 夜の京都御苑を歩く・・・と言うのも、近くを歩いていると御苑の森からアオバズクの鳴き声が聞こえ、それに誘われたからだ。もうしばらくすると渡りの季節なので鳴き声も聞けなくなるので今年の聞き納めになるかもしれない。御苑から周囲の歩道に戻る、この歩道には、夜間ずいぶんたくさんのゴキブリがぞろぞろと歩いている。ゴキブリにもお目当てのものがあるのだろうが、このゴキブリを狙う生きものもいた。トビズムカデ(Scolopendra subspinipes mutilans)がゴキブリを捕らえて食べていた。ムカデは顎肢に毒腺を持ち、この毒を用いて昆虫などの動物を捕食する。このトビズムカデは、体長が普通8~15cmで希に20cm近くにもなる、日本産ムカデの中では最大級。写真で体節を数えると全部で23節あった、その各節からそれぞれ1対の突起が出ている。一番先の節(頭)には「触覚」、2番目には「顎肢」(=がっちり獲物をくわえているのが写真で判る、ここに毒腺がある)、3〜22番目は「歩肢」、一番最後の23番目は「尾脚」があった。ムカデを感じで書くと「百足」となるが実際は46足である。このムカデ、目つきも鋭く、大きな顎を持っている、見るからに危なさそうである。ちょっかいを出すのは止めよう。Photo:2012/08/19  @京都御苑、京都市

2012年8月18日土曜日

第三百八十九夜/ご先祖様の使い・ウスバキトンボ

 今日の夕立は、すごい雷雨と強雨だった。近くの草地で雨宿りのウスバキトンボ(Pantala flavescens)♂を見つける。このトンボは、全世界の熱帯・温帯に広く分布するトンボで、日本では夏から秋にかけて全国でどこでもみられる。「赤とんぼ」に似ているが赤とんぼの一種ではない。水辺から遠く離れて飛び回るので、街中でも目にする機会が多く、日中はほとんどの個体が飛び回っている。これはあまりはばたくこともなく、広い翅で風を捉え、グライダーのように飛ぶことができ、長時間・長距離の飛行ができるため。体の割に足はキャシャで草木の枝や葉先に翅面を上に向けて止まらず、写真のようにぶら下がる様に止まる。ウスバキトンボは寒さに弱く、幼虫は水温4℃で死滅するといわれる。毎年日本で発生する個体群は、東南アジアからの飛来に加え、八重山諸島で幼虫越冬したものが春先に成虫になり、世代交代を繰り返しながら、季節の移ろいとともに日本を北上してゆく。そしてほとんどの地域では越冬できずに死滅する。お盆の頃に成虫がたくさん発生し、ふわふわと飛び続ける彼らを「ご先祖様の使い」つまり「精霊とんぼ」とうまく言ったものだ。Photo:2012/08/18 @近江八幡市、滋賀県

2012年8月17日金曜日

第三百八十八夜/ハスの花

ハス・蓮(Nelumbo nuciferaの花びらが一片、二片と散りつつある。ちょうどこちら側半分が落ちて理科の教科書にでも出てきそうな「花の構造断面」というような状態になっていた。茎、花びら、おしべ、めしべ(結実しているけど)のつき方がよくわかる、手前には葉まである。ハスはインド原産のハス科多年性水生植物、花を「蓮華」(れんげ)といい、仏教とともに伝来し古くから使われた名である。 また地下茎の「蓮根」(れんこん、はすね)や実は、野菜や生薬として利用される。茎からは繊維が採れ、葉は料理に使い、お盆の行事には欠かせない。全草が古くから利用される植物。ここで新しく疑問、花びらの数は何枚あるのか。Photo:2012/08/17  @京都御苑、京都市

2012年8月16日木曜日

第三百八十七夜/コナラシギゾウムシ

 お盆を過ぎると雑木林もすこしづつ秋の気配を感じる様になる。雑木林の秋と言えばドングリ。このドングリに卵を産みつけるシギゾウムシと呼ばれる甲虫の仲間がこれから忙しい季節となる。ドングリは「堅果(けんか)」と言われる、熟して大きくなるととても堅くなる。コナラシギゾウムシ(Curculio dentipesは、ドングリがまだ緑色で完熟しない頃に「殻斗(かくと)」(つまりドングリの帽子の部分)の部分(殻斗に覆われているドングリの外皮は柔らかい)から口を錐の様にして孔を開け、産卵管を差し込んで卵を産みつける。ドングリの中で孵化した幼虫は実を食べて育ち、外に出て土中に潜り越冬した後に蛹化・羽化する。クリを食べた時に中からなにやら虫の幼虫が出てくる事があるが、あれはこのゾウムシの仲間(クリシギゾウムシ)。Photo:2012/08/15 @京都御苑、京都市

2012年8月15日水曜日

第三百八十六夜/昼間の羽化・アブラゼミ

 夏の御苑は人の話しも聞こえない程のセミの声。ニイニイゼミ、アブラゼミ、クマゼミ、ツクツクボウシ、ヒグラシと全て出そろった。普通は捕食者に見つかりにくい夜間に地上に現れ羽化する蝉も今日は明るい時間に見ることが出来た。羽化したばかりのアブラゼミ(Graptopsaltria nigrofuscataの体は透き通るような白さで、時間が経つとゆっくりと褐色の色味がついてくるが、複眼だけは最初から黒々としており十分な視力を持つと言われる。セミは短命と言われるが、実際は6年から7年間の幼虫期+3週間程度の成虫期、これは決して短命ではなく昆虫としてはむしろ長命である。
 小学3年生の頃、このアブラゼミを沢山捕らえて、複眼と単眼のそれぞれまたは両方にバンソコウを貼り(つまり目隠しをする)、放す実験(ほとんどイタズラ)をした。予想は大きく外れ、複眼にバンソコウを貼ってもセミはちゃんと飛んでいってしまうが、単眼に貼ると無茶苦茶な方向に飛んでいってしまうのだった。時には空高く舞い上がったかと思うと地上に向かってまっすぐに飛んできて地面に激突してしまうのだった。大変な殺生をした。アブラゼミを見るといつもこの時の事を思いだす。Photo:2012/08/15 @京都御苑、京都市

2012年8月14日火曜日

第三百八十五夜/ゴマダラチョウの終齢幼虫

 ゴマダラチョウ(Hestina japonicaの終齢幼虫がエノキの下のアオキの葉上にいた。本来ならエノキの葉上に糸を吐いて台座を作り、そこに止まっているはずである。昨夜から今朝にかけての強雨を避けて下に降りたとは考えれず、きっと強雨に打たれ落下してしまったのだろう。なにはともあれ無事で何より。このまま無事なら後1週間もすれば蛹になるだろう。Photo:2012/08/14 @京都御苑、京都市

2012年8月13日月曜日

第三百八十四夜/アカハナカミキリ

 北海道の朝の散歩では、いろいろな生きものに出会った。その中でも必ず出会ったのがアカハナカミキリ(Aredolpona succedanea)、全身が茶色がかった赤色のやや小さめのカミキリムシでちょうど発生のシーズンだったこともある。真夏の林に多く、白い花に集まったり、山道を横切って飛んだりするのだがここの公園ではアジサイの葉上に集まっていた。1、2頭がふわーっと飛来して、何頭もになり、やがて1、2頭とふわーっとどこかへ飛び去っていく。朝の集会にでもやってきた感じである。
これで北海道の生きもの話はひとまずお休み。Photo:2012/08/08  @白樺緑地、石狩当別、北海道

2012年8月12日日曜日

第三百八十三夜/コキマダラセセリ

 朝の散歩で関西ではあまり平地で出会わないセセリチョウを見つける。コキマダラセセリ(Ochlodes venatus (写真の個体は♀)茶褐色の黄色い斑紋がきれいだ。斑紋が似た種でキマダラセセリという種もいる、こちらに対して「コ=小」と名につくが大きさは変わらない。Photo:2012/08/08  @白樺緑地、石狩当別、北海道

2012年8月11日土曜日

第三百八十二夜/ヒラタシデムシ

 積丹半島の岬では沢山のヒラタシデムシ(Silpha paerforata(=北海道特産種、本州に生息するよく似た種はオオヒラタシデムシという)がいた。むしろ甲虫と言えばこれしか目にしなかった、特に岬の頂きにいたる遊歩道で多く見る。なかでも歩行者によって踏まれつぶれたカタツムリを3頭仲良く食べているものを見ていると面白かった。左下の個体がメスで、他の2頭はオスのようだ。食事を終えた2頭のオスは交互に下のメスに交尾を迫るのだが、メスはいっこうに相手にせずカタツムリを食べる事を止めない、やがてオス達は交尾をあきらめさっていくのだが、メスはまだなおカタツムリを食べ続けていた。卵を産むためにはオスより多くのエネルギーが必要なのだろう。この様子を見ているとなんと無防備な昆虫であるのか、しかしこいつをつかむとお尻から大変に臭い液体を出すのでだれも相手にしないようだ。きっとこの辺りの動物はこのことを知っているんだろうな。やたらとどこでもぞろぞろ歩いている。
  シデムシの仲間は動物の死体に集まり、それを餌とすることで有名な甲虫。名前の由来は、死体があると出てくるため、「死出虫」と名づけられたことによる。また、死体を土に埋め込む習性をもつものもあるため、漢字では「埋葬虫」と表記することもある。Photo:2012/08/07  @積丹半島、北海道

2012年8月10日金曜日

第三百八十一夜/突然の出来事・チゴハヤブサ

家の裏の公園に朝の散歩。キィ・キィ・キィ・キコ・キコ・キコ・・・・興奮した鳴き声と共にすごい勢いでタカが飛んできた。小鳥が高木の込み入った枝の中に逃げ込んだ、獲物の小鳥を追ってきたようだ。タカは小鳥が逃げ込んだ樹のまわりを勢い良く旋回し始めた。そのタカは、チゴハヤブサ(Falco subbuteoだった。数回旋回を繰り返し、枝先に瞬間止まったかと思うと、やって来た反対の方向に飛び去った。結局、この狩りは失敗のようだった。この間10秒に満たない出来事だっただろう。チゴハヤブサがくるまでは小鳥のさえずりで賑やかだった森もこの時ばかりは、静かになりチゴハヤブサの鳴き声だけが際立った。チゴハヤブサが飛び去った後は元のさえずりで賑やかな森に戻った。
  チゴハヤブサを見たのは初めて、もちろん狩りも初めてだ。なんだか実際にあったのかどうかも確信できないぐらいの突然の出来事だった。写真はこの2枚だけ、不満足だが良しとしよう。写真上:瞬間、梢に止まる。写真下:鳴きながらすごいスピードで梢を旋回している、小鳥が飛び出てくるのを狙っているのだろう。翼は細く、完璧に揃った尾羽がきれいだ。Photo:2012/08/07 @白樺緑地、石狩当別、北海道

2012年8月9日木曜日

第三百八十夜/タカネトンボ

 積丹半島からの帰り道、路面に2種のトンボを見つける。両者とも車との接触で落ちていた。1種はオニヤンマ、ヒックリ返っていたものを路面から拾い上げると元気に飛び去った。車と接触して脳しんとうでも起こしていたのだろう。もう1種がタカネトンボ♂(Somatochlora uchidai、胸部が金属的な緑色に輝く美しいトンボである。他に多数の蝶やメジロの事故死体もあった。メジロは事故直後の様、外傷はないきれいな羽をじっくり観察した後、近くの森の林床にそっと置いてきた。他の生きものの大切な糧となる事間違い無し。Photo:2012/08/07 @積丹半島、北海道

2012年8月8日水曜日

第三百七十九夜/ミサゴ

 積丹半島の話のつづき。海にそそり立つ半島の突端から海側をみると眼下に岩の尖塔が見える。その切り立った尾根に2羽のミサゴ(Pandion haliaetusを見つける。(写真中央の岩稜上の草地に2羽が見える)写真には写っていないがすぐ右にも尖塔があり、その頂きには巣があった。巣には一羽のヒナ鳥が見えた。おそらく写真の2羽は親鳥で、巣にいるのは巣立ち可能なヒナ鳥と思う。両者はしきりに鳴き声を交わしていた。別の岩島の頂きにはハヤブサが居た。愚かだった、身軽に歩こうと車に望遠レンズを置いてきてしまったのだ。取りに戻るには時間的余裕が無かった。時間の許すかぎり双眼鏡で眺めていた、ハヤブサは飛び去り、ミサゴはいっこうに動く気配が無く鳴き声だけ響いていた。
 さてこのミサゴの英名は「Osprey」最近よく聞く名前である、本物のOspreyはあの鈍重なデザインの機体ではなく、すごくきれいな海鷲で、急降下し水面近くで脚を伸ばし両足で獲物(おおくは魚)を捕らえる。Photo:2012/08/07 @積丹半島、北海道

2012年8月7日火曜日

第三百七十八夜/ハヤシミドリシジミ

 私用で北海道を訪れた。限られた時間のなかではあったが積丹半島に行って来た。半島を形づくる斜面は、風雪・波の浸食で海側はとても急峻で尾根から海岸まですっぱりと切れ落ちている、一方反対側(つまり陸地側の斜面)は比較的なだらかな斜面がひろがる。斜面は一面ササ類に覆われ、風雪の影響を強く受ける上部斜面ではカシワの疎林が広がる。今回、ここを訪れた僕の目的はこのカシワ林にあった。カシワ林は海側からの風雨を避ける様に低く、地面を這う様に成長している。枝高さは地表から0mから高くてもせいぜい3.0m程度。観光用の園路を外れ尾根までの道沿いに何本ものカシワを見ながら歩く。やっとお目当てのハヤシミドリシジミ(Favonius ultramarinusを見つける。不思議な事でなにが彼らをそうさせるのか、ある一本のカシワには十数頭のハヤシミドリシジミが居た、隣の木には一頭もいないのにである。遠くの木にもいくらかのミドリシジミが飛ぶのが見えるがそれほど多くはない。斜面地のササは胸辺りまで成長し、足元の不安定さに加えて、地面にはアリがおそろしくいる。夕方になるにつれ風も吹き出し、写真を撮るのは悪条件となってしまった。ミドリシジミも葉の間に隠れる様に休んでいた。写真はあきらめ時間の許すかぎり双眼鏡での観察とした。ここ積丹半島では、ハヤブサ、ミサゴの営巣、ハリオアマツバメなどゆっくり見る事が出来た。Photo:2012/08/07 @積丹半島、北海道

2012年8月6日月曜日

第三百七十七夜/エゾアカゲラ

 私用で訪れた北海道。旅に出た時は必ず近くの森まで朝の散歩をする事にしている。森や川を見るとその土地の歴史や自然生態が判る。今回もお決まりの朝の散歩。今日はまず最初に公園でキツツキの鳴き声に出会う。鳴き声をたどるとエゾアカゲラ♂(Dendrocopos major(エゾアカゲラ:北海道で繁殖するアカゲラの亜種)がいた、近くに別個体(♀)もいたので彼らはペアだろう。さらに探すと近くの木に新しそうな巣孔を見つける。時期的には繁殖は終わっているのでこれは今年の営巣孔と思う。それにしても家裏の公園でアカゲラの繁殖が見れるとは羨ましい環境である。Photo:2012/08/06 @白樺緑地、石狩当別、北海道

2012年8月3日金曜日

第三百七十六夜/ムラサキシジミ

 夏真っ盛りである。こんな季節には樹木の新芽は伸びないものである・・・がここは少し違う。定期的にアラカシの生垣が手入れされているので、その度に樹木は新芽を延ばす。いわば人為的に樹木の成長がかく乱がされている。そんな人為的なかく乱をうまく利用する生きものも多い。ムラサキシジミ(Narathura japonicaはアラカシの新芽に産卵をする、常に新芽が見つかるために繁殖が容易となるので個体数は多い。新芽にはアブラムシも多い、このムラサキシジミはアブラムシが出す甘い汁を吸っている。Photo:2012/08/03 @京都御苑