2008年9月28日日曜日

第二十四夜/渡りをする蝶・アサギマダラ

ちょうど2年前のこの頃、知っている方から庭に見たことも無い蝶がいるからすぐに見に来てと言われいってみると、庭木にとまっていたのがこの蝶。名前は「アサギマダラ」と言う、「浅葱色(浅黄色、あさぎいろ)のマダラ蝶」の意味。体はマダラチョウの仲間の特徴であるマダラ模様を持ち、翅の薄緑色の部分は半透明で鱗粉がなく透けてみえる。この仲間は南方系の蝶で日本ではこのアサギマダラ以外は南西諸島までいかないといない。この蝶は秋になると越冬の為に南西諸島に向けて渡りをすることで知られている。この時も渡りの途中の休息だったと思う。この写真の後、翅裏に場所と日付、イニシャルをマジックで書いて放蝶した。これから10月中頃まで渡りが続く、秋晴れの日にこの小さな蝶の渡りを想像するのもいいものでしょ。アメリカ大陸ではこの蝶の仲間・オオカバマダラがカナダやロッキー山脈の広い地域から越冬のためにカリフォルニアやメキシコの限られた地域まで渡りをすることで知られている。【2008/09/28】
Photo:アサギマダラ(♂)=後翅の下にこげたような茶色の斑紋が♂の目印(このような雄雌の違いを示す模様や紋を性斑(せいはん)と呼ぶ)。旅疲れかちょっと元気がないようだった。

2008年9月27日土曜日

第二十三夜/時期遅れのアブラゼミ












 京都御苑の森の中を散歩していると園路の真ん中の小さな孔に何かが引っ込んだ。近づくと孔の中にはセミの幼虫が外の様子をうかがっている。時々頭を出して周りを見ている。人が近づくと孔の奥のほうに隠れる。セミは羽化のために地表面まで孔を掘って来たけど、なんとそこは園路のど真ん中だったという訳。孔の際で静かに待ってみた。地面の振動も影響するようでかすかな振動で出て来ない。さらに待つこと数分、セミの幼虫は孔から出始めた。途中で体のどこかが引っかかって上手く抜け出せない。こうなればもう孔には戻れない、身をくねって脱出を試みている、スポッと抜けたかと思うと勢い余って背中からひっくり返ってしまった。気を取り直し、周りを見渡し今度は近くの木まで走り始めた。結構、よく周りの様子が見えているらしい。セミには気の毒だが笑えるシーンだった。もうセミの声はぜんぜん聴こえない、このセミはたして大丈夫なんだろうか。【2005/09/27】
Photo上から順番に:
1)大丈夫かな?
2)今だ!よし出るぞ!
3)よいしょ、よいしょ、
4)よいしょ、もう一息、
5)出た!こてん!あれっ?
6)あそこに木がある急げ! 
アブラゼミ(♀)@京都御苑

2008年9月26日金曜日

第二十二夜/目玉模様はヒカゲチョウ

昼食を済ませ、ふと店の外を見ると外テーブルのイスに一頭のチョウがとまっていた。天気は雨上がりで気温も低い、普段は元気で写真を撮るにも近づきにくいヒカゲチョウも今日ばかりは動きが鈍い。このチョウは花には来ずにもっぱら樹液や腐った果実、時にはカエル等の死骸(しがい)に集る。樹皮や地面では目立ちにくい翅色もプラスチックのイスではさすがに目立つ。ヒカゲチョウの仲間は地味ではあるが、翅の目玉模様(めだまもよう)がそれぞれ種類ごとに違って面白い。このチョウの仲間は、後翅(うしろばね)の目玉模様がピンセットでつまんだような形に無くなっている個体を良く見かける。これは捕食者(ほしょくしゃ)の鳥がこの目玉模様の部分をねらって来るからと言われている。しかし見ようによっては二つの目がこちらを見ているようでもある。いずれにせよこのチョウを見つけた鳥は、この目玉を見て何かを考えるだろう。この個体は翅の鱗粉(りんぷん)が薄くなっているが、幸いまだ大丈夫なようだ。【2008/09/26】
Photo:ヒカゲチョウ(ナミヒカゲ)@滋賀県近江八幡

2008年9月25日木曜日

第二十一夜/路上で拾ったコシボソヤンマ

交通事故(?)で死んだトンボを拾った(鴨川の近くの横断歩道上)。オニヤンマをずっと小さくした様なトンボだが、すこしずんぐりとした体つき、胸と腹(しっぽの部分)の間のくびれが特徴的。車にひかれて腰つきがおかしくなったのではない。これがオリジナル。調べてみると「コシボソヤンマ」とすぐに判った。川辺を飛んでいたらきっと見つからない、気づかなかっただろう、生きていたらさぞきれいだろうと思う。鴨川にはこんなトンボもいるんだ。【2008/09/25】

2008年9月23日火曜日

第二十夜/クロアゲハ

前回、キアゲハ(第十三夜)を紹介した後に「黄色の次はやっぱり黒色かな」と思っていたら、ナガサキアゲハ(第十七夜)の後に「クロアゲハってどんなの?」との問合せをいただいた。せっかくなので紹介しておきます。これがクロアゲハ(夏型♀)、以前に羽化したばかりの個体を道ばたで見つけたもの。後翅の先に尾っぽのようなところ(尾状突起)がナガサキアゲハとの違い。(でもこれは日本での話し、お国が変わればナガサキアゲハにも尾っぽが出たり、クロアゲハの尾っぽが無くなったりします)「クロ」といっても見る角度から翅の色が違って見えたり、写真のように白い部分があったり、赤い紋の大きさが変わったりなかなかきれい、むしろキアゲハよりもずっとハデな(彩りがゆたか)感じがする。特に写真のように羽化したばかりの個体は見とれるばかりの美しさ。林縁や少し暗い林間を緩やかに飛ぶ。【2008/09/24】

第十九夜/森に住む貝・キセルガイ

京都御苑には、迎賓館のすぐ北側に「母と子の森」と言う場所がある。少し小高くなった場所に大きな木が地面に置かれている。倒木は、昆虫やキノコに食べられ長い時間をかけて土に帰っていく。これは自然の仕組みを知るための大切な展示物である。ぼろぼろになった表面を見ると長さ1cmぐらいの細長い貝が沢山いた。朽木を食べている。これは陸産貝:りくさんがい(または陸貝:りくがい)と呼ばれる貝の仲間、カタツムリも同じ仲間。写真の小さな貝は、キセル(タバコを吸う道具)に形が似ているから「キセルガイ」と呼ばれる。キセルガイといっても何種類もいる、詳しい名前は判らない。ここ京都御苑には、10数種類の陸産貝が棲んでいるというがその名前も生活の様子もくわしいことは判らない。この小さな彼らは移動が苦手、環境の変化も苦手、だから彼らにとってここの一本の倒木は大きな世界、産まれてから死ぬまでここを出ることも無いかも知れない。これからはこの小さな生きものを気にかけて歩こうと思った。【2008/09/23】
Photo:2008/09/23 @京都御苑・母と子の森

2008年9月21日日曜日

第十八夜/ツチガエル

雨後のしっとりとした京都御苑の自然環境を見て歩いた。樹林に囲まれた池でツチガエルを見る。何年ぶりに見ただろうか、昔は家の回りの雨樋の桝やドブみたいな場所にも何処にも沢山いたのにいつの間にか姿を消してしまった。その頃は土の地面も、雨が降ればあふれる溝もあちこちにあった。家のすぐ近くでいくらでも採れた。家が建ち変り、地面が舗装されて、雨水はすぐに道路の下に消えるようになってしまった。カエルも消えてしまった。イボガエルとも呼んだ記憶がある(触ってもイボなんて移らないのに)。御苑の池のカエルたちは、水辺の周りの草地にたくさんいた。踏みつけないように注意して歩く。草地には餌となる小さな昆虫も沢山いた。彼らにはもうすぐ冬眠と言う作業が待っている、今のうちに沢山食べておかなければいけない。今日は、渡りをするフクロウの仲間・アオバズクの若鳥も見ることが出来た。こちらはもうすぐ南の国に渡ると言う大きな試練が待っている。今日の御苑は、大文字山の借景と低く流れる雲そして近景の赤松林の風景がひときわ美しかった。【2008/09/21】
Photo:@京都御苑・トンボ池

2008年9月19日金曜日

第十七夜/南から来たナガサキアゲハ

近年、南から生息域を広げてくる昆虫が多い。人為的に生息域を広げた訳ではなく、自らの力で風に乗り、海を越え、あるいは陸地伝いに転々と棲み場を広げて来た。先に紹介したツマグロヒョウモンのようにこの黒い大型のアゲハチョウも同じ。10年近く前から関西でも目につくようになり、今では確実に生息している。もともといた大型の黒いアゲハチョウ=クロアゲハは林縁もしくは林間の少し暗い・涼しい場所を好んで飛ぶのに対して、このチョウは夏の暑い日に炎天下を飛ぶことで目にすることが多い。例えば夏の学校のグラウンドを横切る黒いチョウをみればおそらくこのナガサキアゲハだろう。一見、クロアゲハに似ているが、後翅の端部が長くなっている(尾状突起といいます)クロアゲハに対して、こちらは端部が丸く、尾っぽのようなものが無い。雄の裏翅の基部には赤い紋がある、雌は後翅に白と赤い紋があるので簡単に区別がつく。写真の個体(ナガサキアゲハ♂)は、羽化時のトラブルだろうか、失敗し前翅が十分に伸びきらず硬化してしまった、残念ながら飛ぶことは出来ない。草むらを歩いていたためせっかくの美しい翅もぼろぼろになっていた。【2008/09/20】
Photo:@近江八幡

第十六夜/蚊に刺されると本当に痒いか?

仕事をしていると一匹の蚊がしきりにやってくる。気がついたら左腕にとまって血を吸おうとしているではないか。蚊の写真は無かったので血を吸わせる代わりにワンショット。一旦、口先を皮膚に刺せば、少々こちらが動こうが平気で吸ってる。右手でカメラを構えながら、吸い始め(多分)から吸い終わりまでの時間を計ると約4分。蚊のお腹は真っ赤に透けている。お腹いっぱい血を吸って体が重くて満足に飛べない。当の僕はと言うとほとんどかゆみを感じない。これは蚊の吸血の満足度によるものらしい。蚊は人の皮膚に口先をさした時に血が固まらないようにダ液をまず注入する。そして血を十分に吸ったあとは最後に自分が出したダ液さえも吸い取ってしまうらしい。実はこのダ液がかゆみを起こす原因と言うのだ、つまりダ液が残らなければかゆみも出ない。だから蚊がお腹いっぱい吸血して満足するほどかゆみはない。一度、お試し下さい。ちなみに実験によるとO型の人の血をもっとも好むらしい。さて、僕の血をたんまり吸った蚊は一晩、シャレーならぬ「シャーレ」と言うガラスのお宿にお泊まり頂いた。今朝、容器をみると底のガラスに卵がいくつも産んであった。彼らは吸血して初めて産卵することが出来るということが判る。写真の蚊はヒトスジシマカ、もちろん雌。雄の蚊は吸血はしない。【2008/09/19】

2008年9月18日木曜日

第十五夜/コクワガタとキノコ

今日は仕事で京都御苑の自然環境(キノコ類と昆虫類を重点的に)を見てあるいた。時間をかけて歩くと多くの生きものの気配を感じる。最後に今日のテーマに相応しい、つまりキノコ×コクワガタのツーショット・シーンに出会う。なんだが出来すぎた演出でもあるが本当の話し。エノキの大木の根元(地表から10cm程度)にナラタケモドキが生えて、その中にきれいなコクワガタの♂が頭を突っ込んでいた。果たしてコクワガタがキノコの粘液を食べていたのかどうかは判らないが、その様子は樹液を吸っているそれと同じだった。樹液以外にこんなものにもやってくるとは初めて知った。手でコクワガタを採ろうとするとポトリと地面に落ち、あわてて落葉に潜り込んでいった。これもまったく普段と変わらない行動だった。【2008/09/18】
Photo : 写真では見にくいが、キノコと樹皮の間にコクワガタのつややかな黒い背中が見える。2008年9月18日@京都御苑

2008年9月17日水曜日

第十四夜/草地に紅一点・ベニシジミ

キアゲハに続いて今夜はベニシジミ。このチョウも日本列島の山地平地を問わずにどこでも見られる。あまりに普通に見ることができるので他の虫なら気にも止めないが、このチョウの場合つい立ち止まってしまうほどなかなか可愛い。緑の草むらの中でも紅色が映える。生きものの写真を撮っていると雑誌であろうと電車の吊り広告やポスターであろうとそこに生きものが写っていると気になって仕方が無い。そんな写真をじっくり観察しているといろいろな場面が見えてくる。写真の背景、写真家の息づかいまでもが伝わってくる。しかし最悪なのは、捕まえた虫を花や葉っぱにとまらせて(置いて)撮った写真。だいたいそんな写真はごまかしを隠すために上からべったーと撮っている。見分けるためにいくつかポイントがある。例えば生きているチョウの正しい姿勢の特徴は、触覚がピンと上を向き、ちゃんと体が脚で支えられている。目が生き生きとして姿勢がいい。これは翅がぼろぼろになってとしても同じ。今までで一番最悪だったのは背中のまん中に虫ピンを抜いた孔があった(これは大胆にも標本を花において撮っている)。こんなのもあった、翅に指でつまんだ跡(鱗粉が指紋でとれていた)が残っている。半殺しのチョウを絶対に来そうにない花の上にとまらせたものもあった。(こんなふうに写真を見るのも普通じゃないと思うが)こんな写真をみるととても不愉快である。最近では、パソコンで合成したものも少なくない。野生の昆虫と言うものは、どのようなものでも死んでしまうと驚くほど早くその美しさを失ってしまう。野生に生きてこそ魅力的なのだ。【2008/09/17】

2008年9月16日火曜日

第十三夜/キアゲハ(黄揚羽)

家でパセリやニンジンをうえているとキアゲハの幼虫(黄色と緑のシマシマもよう)が見つかる時がある。このキアゲハ(黄揚羽)、アゲハチョウ科のなかではもっとも多くの国で見ることができる。これは食べる草がセリ科のしょくぶつで、そのぶんぷが広いからだろう。アゲハチョウの仲間はミカンの仲間の植物を食べるものがおおいのですが、ミカンは寒い地方ではそだたない。ヨーロッパでは、日本のナミアゲハはいなくて、このキアゲハが「ナミアゲハ」と呼ばれている。英語の名前は「Swallow Tail」(ツバメのしっぽ)、後ろバネのとくちょう(これを「尾状突起=びじょうとっき」と言います)からつけられたもの。はねをひろげると、ふちの黒いおびと青と赤のスポットもようがきれい。【2008/09/16】
Photo : 木陰で休むキアゲハ(夏型♀)、おそらく羽化したばかりの個体。(2007/8@京都・木津町)

2008年9月15日月曜日

第十二夜/窮蛇毒を吐く・ヤマカガシ

秋になると多くの生きものたちは冬の準備に入る。特に越冬する生きものは今の時期たっぷりと食べておかないといけない。秋には虫も増える、それをカエルやトカゲが狙ってる、その背後ではヘビが彼らを狙ってる。今回は今の時期、田んぼの周りで良く見かける蛇の話し。ヤマカガシという小ぶりで、きれいで、おとなしい蛇。ちょうど後頭部から顎下にかけて黄色い模様が特徴。普段はおとなしいが、ちょっかいを出すと首の辺りの黄色い部分を膨らませる。これは「警告色」ここを注意しろよと言ってる。実はこの蛇は猛毒を持っている。毒牙は口の奥にあるのでよほど深く噛まれない限り問題でないと言われるが危険度は変わらない。それ以外にも首から顎にかけての皮膚から毒を出す、猟犬がこの部分を噛んでたびたび昇天する事故があると言う。さらに怖いのは危険が迫ると口から相手の目をめがけて毒液を飛ばすという離れ業も持ってる。写真を撮った時も、首周りを一段と膨らませた後は鎌首を持ち上げた。くわばらくわばら。これ以上の接写は避けよう。「窮蛇毒を吐く」だ。出会う機会もマムシよりずっと多い。きれいな蛇にも毒があるので注意が必要。
  数年前、児童館に勤める友人が「子ども達ときれいな蛇採ってきたので飼い方を教えて」と頼まれて言ってみると、水槽にこの蛇の子どもが2匹入っている。沢山の子ども達が水槽を囲んで見ていた。生まれてさほど日が経っていないのだろうか、体長は割りばしよりも少し長いぐらい、とは言え万が一子ども達が蛇を持った手で目でもこすったら失明しかねない。説明をすると児童館職員である彼は驚いた「今から裏の草むらに逃がしたい」。しかしそれはあまりに勝手過ぎ、採ってきた人間の責任上、週末を待って元いた場所に放すようお願いした。子ども達には、このきれいで愛らしいベビー蛇を飼ってみたい気持は理解出来るが、餌の問題(小さなカエルは手に入らない)と毒蛇と言う二つのことを説明し、諦めてもらうしかなかった。人間の子ども達と子ヘビにとって少し騒がしくも、貴重な数日間の交流体験でした。【2008/09/15】
Photo下:上から見ると首筋の膨らみが判る。(2007年9月@新潟・川西町)

2008年9月13日土曜日

第十一夜/オニヤンマの産卵

今頃、里山に行けばきっとオニヤンマの産卵に出会えるだろう。写真は数年前、稲刈りに田舎に出かけた時に写したもの。田んぼ道を歩いていると、前から飛んできたオニヤンマが道脇の水路に急降下した。水路は幅・深さ共に75cmぐらいの狭いもの、周りからは草が生い茂ってよく見えない。そこで僕も水路に降りてみた。さて中に降りてはみたが人間にとって身動きするのも一苦労。そんな僕を横目に草が茂る狭い水路の中で大きなトンボがホバリングしながら行ったり来たり。普段は高速で直線的に飛ぶオニヤンマもこんな器用に飛べるんだと感心する。オニヤンマは産卵場所を探していた。しばらくすると体を垂直におこし、一定のリズムでお尻を上下に水底の砂に差し込んで産卵を始めた(水深約3cm)。大きなトンボの産卵場所としてはあまりにも狭いが、確かにオニヤンマのヤゴはこんな場所で沢山見つけることができる。水田と林との間に流れる細流、比較的緩やかな流れを持ち、底が砂地でないといけない。ただし水深はさほど必要ではない(5cmあれば十分)。産卵を見ている時は気づかなかったが、後で写真をみると柴栗(野生のクリ)が一個写っていた。まさにオニヤンマの棲む環境を表している。樹木が上部に枝を延ばす山際の砂底の細流。成虫はこんな場所を縄張り(テリトリー)に持ち、細流にそって一日になんどもなんども往復する。写真の写りは良くないが、産卵場所の環境をよくあらわしているのでこの一枚を選んだ。さて産卵をみた後、水路底から田んぼ道に上がった。僕はそこの近くに違う生きものを見つけた。ちょうどマムシが一匹ひなたぼっこしていたのだ。考えてみればマムシもこんな里山環境に棲む生きものなんだと・・・先にマムシに気づかないでよかった。やれやれ。【2008/09/13】

2008年9月12日金曜日

第十夜/ヤモリのやっちゃん

道を歩いていると何かの視線・声を感じるときがある。それは鳥であったり、虫であったり、時には植物であったりする。たぶん知らず知らずのうちに自分も彼らを探しているのだろう。だから電車に乗っても車窓からいろいろな姿や声が伝わってくる。「絶対音感」があるように「絶対むし感」みないなもの?。今日の視線は桜の木からやってきた。桜の幹に開いたウロの中にはヤモリが一匹。見れば見るほど不思議な目でこちらを見ている。ウロの中のヤモリには写真を撮る外の僕がどんな風に見えるんだろう。かつて家の台所にヤモリが一匹棲みついていた。「やっちゃん」と名付けられたヤモリは炊飯器の底側が暖かいので一年中そこにいた。ある時、僕はそいつを捕まえて飼った。餌を沢山与えてるのに日ごとに痩せていった。悲しかった。ヤモリがどれだけの虫を毎日獲ってくれていたのか初めて知ったのだった。【2008/09/12】

2008年9月10日水曜日

第九夜/モリアオガエル

 虫が続いたので今夜は虫を食べるモリアオガエルの話し。このカエルは大人の手の平の1/4から1/2ぐらいの大きなアオガエル、オタマジャクシの時期は水中生活だが、カエルとなってからは水辺近くの樹上で暮らす、水にはほとんど入らない。そして産卵の頃だけ水面近くに降りてきて、張り出した木の枝に泡に包まれた卵塊を産みつける特異な生態。このカエルが近年まで近所のお寺・黒谷さん(黒田光明寺)の池に産卵にきていた。一昨年、その蓮池が新しくコンクリートで防水整備がされた。池には新しく蓮鉢が沈められ、鯉も放された。また一つ、この興味深いカエルの居場所が無くなった。泡に包まれた卵を木の枝に産みつける特異な生態が間近に見える場所だっただけに残念。たとえ産んだとしてもそのオタマジャクシが生き残ることはもう出来ない。このような場所での鯉の存在はカエル、イモリやトンボなどにとってブラックバスにも勝る脅威なのである。京都府立植物園の小さな小川でも木の枝に卵塊を見つけた。この細流ではアメリカザリガニが待っていた。このカエルを天然記念物指定する自治体も多い。【2008/09/10】
Photo:2009年6月23日撮影 注:以前掲載の写真は、シュレーゲルアオガエル(♀)と同定を訂正しました。よって写真はモリアオガエル(♂)に訂正しました。【2009/07/07】

2008年9月9日火曜日

第八夜/名も知らないハエ

散歩の時に出会ったハエ。喫茶店でお茶を飲んでいると横の壁に止まった。僕の目も止まってしまった。なんとなく目も会ってしまった。なぜなら、ハエと一言でいってもその「口」が面白い形だったから。見れば見るほど不思議な形、実に独創的、しかも愛嬌がある。蝶の場合は螺旋のストロー状の口を持っている。このハエはストローをそのままくわえたままの感じ。どうしてこんな形に進化したのだろうか、どんな生活をしているのだろうか、なにも知らない。テレビでは今日も自然系の番組でいろいろな「他国の生きもの」を紹介している。それにも決して負けないと思った。ただこいつは「日本にいる地味なハエ」なだけ。このハエは、写真を一枚だけ撮らせてくれただけで飛び去ってしまった。もう少し見ていたかった。このハエを見つけたのは、ちょうど2年前の今頃、京都・銀閣寺の近くだった。それから二度と会えない。名前もまだ判らない。生きものってやっぱり不思議である。彼らは喫茶店で騒いでる人間を見て「不思議ないきものだな〜」って思ってるんだろうな。【2008/09/09】

追記:種名判明! 見る人に見て頂くとすぐ判った。「クチナガハリバエ(アシナガヤドリバエ亜科)」すぐに判るはずである、一属一種らしい。これはやはり変わってる。幼虫はコガネムシの幼虫に寄生する、成虫は花の密を吸うために口がこのようなストロー状に特化したようだ。調べるうちに、日本産ヤドリバエ科は現在約450種が記録されており、まだ未記載の種類が沢山ある、実際はその2倍は居るのではないかと言われている大きなグループだった。ハエも深いな〜。さて、次はどうやってこのハエがコガネムシの幼虫に寄生するのか知りたくなる。でもこの分野に足を踏み入れると大変なことになる。

2008年9月7日日曜日

第七夜/南からやってきたツマグロヒョウモン




緑が消えると滅んでしまう生きものがいるなかで、街の中でも増える蝶がいる。アスファルト舗装の隅間に生えるカタバミを食草とするヤマトシジミ、街路樹のクスノキを食樹とするアオスジアゲハ、そして今日見つけたツマグロヒョウモン。この蝶は、黄色と黒色のまだらの美しいタテハチョウの仲間。名前の由来「ヒョウモン=豹紋」はこの蝶の仲間の特徴である翅の模様から、また「ツマグロ」とは雌の前翅の角部が黒くなっていることから。ヒョウモンチョウの仲間は北方系のものが多い中で、日本では唯一の南国生れの種。この蝶に初めて出会ったのは今から30数年前の夏休みのこと。道ばたで見慣れない蝶を見つけ、目を疑った。それは図鑑を見なくとも翅の特徴からすぐに種類は判った、元来は亜熱帯地域に棲む蝶、そんな蝶が飛んでいる・・。もちろんその時はどうすることもできずに蝶が飛び去るのを目で追うばかり。しかし翌年は、ラッキーなことに市内のあちこちで成虫を見つけ、幼虫まで採集することができた。南方系の蝶は時として台風などの風に乗り、本来の生息地から遠く離れた場所まで「迷蝶」としてやってくる。多分、この蝶も最初はそうだったに違いない。しかし自然のいたずらとは言え、これほど短期間に増えることは何か理由があるはず。競争相手がいないか、よほど環境に恵まれたか。これは幼虫を飼育してすぐに判った。飼育は非常に簡単で、スミレの仲間ならなんでも食べてくれた。庭に植えてあったパンジーもすっかり丸裸。食草が簡単に入手できたこともありこの時は、100頭程の幼虫を成虫まで無事育て上げることができた。蝶の食生活が都市の園芸ブームに支えられていることは確かだった。例えば公園や学校の花壇で、成虫は各種の花を蜜源、幼虫はパンジーを食草として利用できる。都市の温暖化と園芸ブームを追い風に、耐寒性の強い個体が北へ生息場所を延ばしていく。結果として少し前まで、珍しかった蝶だが今ではすっかり普通に見られるようになった、平成11年には長野県・伊那谷でも越冬する幼虫が確認された。考えるとその頃から都市の温暖化は確実に始まっていたのかも知れない。今日見つけた幼虫たちは、道路の端に生えている数株のスミレの葉を十数匹で食していた。この勢いだと後、数日もたないだろう。それまでにこの幼虫すべてが蛹になることは難しい。多くの幼虫は新しいスミレを求めて焼け付いたアスファルトの道を歩くのだろう。身をかがめて幼虫の視野で周りを眺めるとまったく緑もうかがえない。こんな僕たちの足下に広がる過酷な環境の中で生き延び、増えようとする昆虫に命のたくましさを感じる。今でもツマグロヒョウモンを見ると最初に出会った時のことを思い出す。特に印象的だったのが蛹の体、きれいな茶色の体に付く不思議な輝きの金色の斑紋にいつまでも見とれていた。彼らも「外来種」と言えるが、自らの力で勢力を延ばしてきた。世間で問題になっている外来種とは大きな違いだ。【2008/09/07】
Photo上:スミレを食べる幼虫、真っ黒な体にオレンジ色の線と棘状の突起を持つ。いかにも毒々しいルックスだか毒はない。おかげで誰も手を出さない。場所:烏丸丸太町
Photo中:♂の成虫、市内の園芸店の店先にて。
Photo下:♀の成虫、大通りに面したバス停横の花壇にて、花はアベリア。2008/09/18@京都市中京区

2008年9月6日土曜日

第六夜/ルリタテハ

朝起きてみると黒いハギレ?大きなゴミ・・・?が天井に。久しぶりに見る蝶、ルリタテハ(タテハチョウの一種)だった。翅をみると結構痛んでいた。写真の蝶の翅の縁がギザギザなのはオリジナル。この蝶は小学生の頃、近くの墓地の境内周辺から幼虫を持ち帰りよく育てたのでお馴染み。幼虫時期はサルトリイバラとホトトギスを食べて育つ、どちらも山辺に生えるユリ科の植物。成虫は、花の蜜には来ずに熟し柿や樹液などにやってくる。翅裏はほとんど木肌か朽木とかわらない模様。いくら優れた保護色でも白い天井に止まっていると目立つ。彼らには似合わない場所だ。逆に翅表はと言うと止まっている時に瞬間的に見せる藍色と水色の帯がきれいだ。天井からそっと手のひらに囲むようにして捕らえる、庭に放すとすごい勢いで飛び去った。止まっている時は簡単に捕らえることができるが(もちろん捕虫網で)、飛んでいる時はなかなか捕らえることは難しい。もしこの蝶が休んでいる場面に出会って、その時、蝶があなたに驚いて飛び去っても、同じ場所に戻ってくる習性が有るので少し待てばもとの場所に止まってくれる。【2009/09/06】

2008年9月5日金曜日

第五夜/北へ向かえ〜旅するウスバキトンボ


街の芝生の広場や畑や水田など開けた緑地にトンボの群れが目立つようになってきた。ふわふわ(ゆるゆる?)と風に乗り飛び続けている。なかなか枝に止まらない。一見、赤とんぼ(アカネ)のようだがこれは、ウスバキトンボ(薄羽黄とんぼ)、分類上では別の仲間。寒さが苦手で関東あたりでも越冬ができない。そのため毎年、東南アジアから(約1ヶ月で成虫になれる成長を活かして)世代交代を繰り返しながら、風に乗ってどんどん北上していく。全トンボ類のなかでもっとも分布の広いといわれる種類。(特にお盆頃におびただしい数が発生するので「精霊トンボ」とも言われる。)毎年、南から命をつないで北に向って旅する、秋には逆に南に向って子孫を残すこと無く命を絶っていく、なんとも寂しい気がするがこの小さな昆虫の力に感動する。地球の温暖化に伴い越冬の地も北上し、ますます北に向うのだろう。かれら一匹一匹が自分の子孫を残そうする旅に気候変動が追い風となってきた。【2008/09/05】
Photo上:風に乗り飛び続けることに適した体の構造、体の割に大きな翅を持っている、体の割にきゃしゃな脚なので枝に止まるのも上面に止まらず重たそうにぶら下がっている。
Photo下:胸から腹(尾)にかけての模様はなんだか美しい虎皮のようだ。

2008年9月4日木曜日

第四夜/オオスズメバチ



ニュースを見ていると、「9月3日、新潟県小千谷市の寺が全焼・スズメバチの逆襲」とあった。原因は「住職がスズメバチの巣を焼き払おうとし、竹の棒の先に火を付け、寺の食堂の押し入れ内にあったスズメバチの巣を焼き払おうとした。しかし、スズメバチの逆襲に遭い、火が付いたままの棒をその場に投げ捨てて避難。その間に火が寺に燃え移った。」という。なんとも笑えない話だ。さてこのスズメバチ、身近な昆虫の中では圧倒的な力を持っている。あくまでも肉食(でも樹液は大好き)、破壊的で、防衛的で、見るからに恐ろしい。巣も地中から、崖、樹上、軒下、天井裏と雨をしのげる場所なら何処にでも造る。なるべく関りたくない、いや絶対に関りたくない。しかし、こんな昆虫も自然界の中で捕食者として他の昆虫が増えることを調整している。また死んだ後は、他の昆虫の栄養源ともなる。ここに正しい命の循環がある。一方、人間によって薬剤で個体群とその巣を破壊されることは、ハチにとって壊滅的なダメージを受けてしまう。このような形で自然のなかでの大きな役割を担っているハチが不在になることはどこかでバランスを失うことに他ならない。例えば、農作物に害を与える昆虫の増加などの影響が出ているはずである。やはり僕たちは蜂たちのことをもう少し知る必要がある。人間がいたずらに刺激しなければ、彼らだって決して攻撃することはないからだ。彼らも無駄な戦いは避けたい。なぜなら自然の中では成虫までなるのに大変なコストがかかっている、そのものを失うことは個体にとっても、群れにとっても大変に不経済な行為だからだ。彼らの戦いはあくまでも、食料を得るため、自分自身もしくは巣を守る時にだけにされる。
Photo上:草むらで餌を探す個体(オオスズメバチ)。飛んでいるときは空気抵抗を減らすために体に脚を密着させている、触覚(アンテナ)はピンと前方を向いている. なかなか愛嬌がある。
Photo下:死んでアリに運ばれる個体。よく見ると戦いに敗れたのか毒針が出たままだった。【2008/09/04】