2010年10月30日土曜日

第二百五十六夜/冬のバッタ・ツチイナゴ

 写真はツチイナゴというバッタ、独特の模様がある褐色の綺麗なバッタである。体型や大きさはトノサマバッタやクルマバッタに似ているが、全身が褐色で、細かい毛が生えている。複眼の下には、涙後のような茶色の模様。このバッタの一番の特徴は、成虫期の大半を過ごす季節が冬なこと。枯れ草ばかりの季節環境だから、体色が保護色。バッタの仲間では唯一、成虫で越冬が出来るが、やはり寒さは苦手らしく、なるべく日当たりが良く暖かい環境に身を置いて冬をやり過ごしているのが実態である。Photo:2010/10/29 @京都府立植物園

2010年10月20日水曜日

第二百五十五夜/アオゲラの羽

 写真は樹林の中に鳥の羽根が散乱する事件現場。羽根は緑色が綺麗である。はたしてこの羽根の持ち主の身に何が起きたのか。羽根を集めるうちに一枚の小さな黒い羽根を見つける、羽根の先端は血が付いた様に赤い・・・これで正体が判った。キツツキの仲間「アオゲラ」である。オオタカがアオゲラを襲った現場だろう、近くに2ヶ所同じ様に羽根が散乱した場所があった。全部の羽根を集めると頭部と胸部そして左右の風切り羽根の一部であることが判った。他の羽根を近くに探すが見当たらない、安全な場所まで運んだのだろう。さて当のアオゲラなのだが、最近この近くに2羽がやってきたとの情報がある。鳥の写真を撮っている人たちはこの2羽の写真を撮ろうと頑張っている。この2羽のうちの1羽なのだろうか?オオタカにとってはそんなこと関係ない。獲りやすい獲物がいれば相手はかまわないのである。しかし人間世界は違って「せめていっぱいいるドバト獲ってよ〜」と声が聞こえてきそうである。Photo:2010/10/20 @京都御苑、京都市

2010年10月19日火曜日

第二百五十四夜/どこに隠そうかな?

 鳥に関しての原稿につける写真を鳥に京都御苑に行く。今回の対象は「カラス」の行動。こんな時に限ってカラスがいない。いてもこちらの心を見透かすかのごとく写真を撮らせない。やっと見つけた一羽のカラス(ハシボソガラス)。双眼鏡で見ていると様子がおかしい・・・回りをずいぶんと気にしている。地面からなにかつまみ上げた・・一枚のビスケットだった。そこには少し前に親子が寝転んでいた芝生。きっと地面に落ちていたビスケットを発見したのだろう。これはごちそうである、しかし食べる気配がない。きょろきょろと回りを見渡し、くわえたまま歩いて時々立ち止まる、この繰り返し。多分、すぐに食べないでどこかに隠しておくつもりなのだろう。見ていると大変に面白い。どこに隠すかと見ていると、散歩のイヌがやってきた。カラスはくわえたまま木の枝に飛びうつり、なおもきょろきょろと回りを伺っている。イヌなんかだったらその場ですぐに食べてしまう、やはりなかなかの知恵ものである。Photo:2010/10/19 @京都御苑、京都市

2010年10月18日月曜日

第二百五十三夜/コゲラ

 時折「ギー」と言う一声が頭の上から聞こえてくる。そこに何がいるのか判っている。でもその姿はなかなか見えないものだ。小さな体で木の幹を上へ下へ、左へ右へせわしなく這い回っているから。日本で一番小さなキツツキ「コゲラ」がその正体。もちろん木を突いて幹の中に潜む昆虫等を食べるが、多くの場合、幹に付くコケや樹皮の間の昆虫やクモを食べている。体がい小さい分、食料も少なくて済む、町中の公園にもその程度の生きものは棲んでいる。巣孔をあけるにもさほど太い木も必要ない・・・だから街中でも見ることが出来るのだろう。この日はサクラの枯れ枝が作った穴を執拗に突いていた。よほどおいしい虫が沢山いたのだろう。これからの季節、シジュウカラなどの小鳥の群れに入り行動する。Photo:2010/10/18 @京都御苑、京都市

2010年10月17日日曜日

第二百五十二夜/アオサギの若者

 そろそろ御苑にも冬鳥がやって来た。池にはマガモがずいぶんと休んでいる。来園者の中にはこのカモ達に餌をあげる人も少なくない。もちろん餌はたいていパンだけど。鴨と鯉がひしめく水面にパンを投げる人を見ると、遠くにいたアオサギの若鳥が近くに舞い降りた。人を怖がる気配もない。カメラをむけてもおかまいなしだ。彼(彼女?)のお目当ては水面のパン・・・だけど脚が届かない水深だから、近くにパンが流れてくるのを待つしかない。もちろんそんなことはあり得ない、そのまえに鯉が食べてしまうから。でも偶然に風で近くに飛んでくる時がある。そんな時はすかさずパクり・・・以前もアオサギがパンを食べるのを見た。これは驚いた。サギは動物食のはず、餌が獲れないとパンで空腹を満たすのか。このアオサギは今年生まれの若鳥・・・新しい食習慣は若者から?さてパンの味をしめたこの若鳥が今後どんな習慣を身につけるのか興味深い。よく見ていると餌を獲る前に一瞬、瞳孔が小さくなる、一見クールな彼だけど表情も結構豊かである。Photo:2010/10/17 @九条池、京都御苑、京都市

2010年10月15日金曜日

第二百五十一夜/クツワムシ


 今日は京都御苑を散歩中に大きなキリギリスの仲間:クツワムシ(♀ Mecopoda nipponensis)を見つける。この虫はめったに昼間であわない、夜行性で昼間は草陰にそっといるだけ、夜に歩くことはめったに無いので夜しか鳴かない虫の場合はその存在が判らない。今回は全くの偶然、クロコノマチョウの終齢幼虫を見ている時に足元にいただけのこと。近づいてもほとんど動かない。♀の個体で産卵管が太くてまっすぐなのが特徴(写真下)、産卵前なのかお腹はパンパンに膨らんでいた。クツワムシの「クツワ」とは、馬のたずなを引くために馬の口にくわえさせる金属の棒のことで、これが馬の動きとともにガシャガシャと音を立てる。その音とこの虫の「ガチャガチャ・・・」という鳴きが似ているのが名前の由来。子どもの頃、父親がこの虫を沢山とってきた、その夜はその鳴きのあまりのうるささで眠れなかったことを想いだす。さてこのクツワムシ、大型で体高が高く、ずんぐりとしたその体の側面積は日本のキリギリス中最大、体重もずっしりと重い。生息地の条件もあっても環境破壊に弱く、各地で減少と個体群毎の絶滅が進み、また一旦破壊された環境がその後回復しても他地からの個体群の回帰がなかなか進まないという。このような大型の昆虫が京都御苑の草地に生息しているということは自然が残っているというよりも、いかに緻密な草地管理がされているかと言うことに他ならない。実際にここの草地には多くの草地生物が棲息しているので年一度の刈り取りしか行われていない。御苑を歩くとそんなほったらかしに見える草地が芝生広場の隣に残っていたりする。これはけっして刈り残したからではなく、意図的に残してあるのだ。きっと今夜も「ガチャガチャ・・・」賑やかなんだろうか。Photo:2010/10/15 @京都御苑、京都市

2010年10月4日月曜日

第二百五十夜/今や普通種のムラサキシジミ

 生きものの話を書いて今夜で二百五十話になった、日本にいるチョウ類が約240種類だからやっとそれに達したわけだ。さてこのチョウ類だが小学生の頃、昆虫採集にどっぷりのめり込んでいた頃は、テングチョウ、マダラチョウ、ジャノメチョウの仲間はちゃんと「科」として分類されていたが近年はその科が廃止され「タテハチョウ科の亜科」として扱うことが多くなった。和名まで変わった種さえある。その種名、科名の変化もあるのだが昔は珍しかった種が今は極めて普通種となったものも多い。写真のムラサキシジミもその一つ。子どもの頃、是非に採集したいといろいろな本や、学校の理科室にあった標本の採集地を参考に探したが結局見つけることは出来なかった。ところがどうだ、今ではごく普通種となってしまった。ムラサキツバメ(これも以前は珍しかった)を探そうとしていると、このムラサキシジミが両手の指をもっても数えきれないほど現れた。いっぱいいるのだから放っておけばいいのに目の前に現れるとつい目で追って、写真に収めてしまう。特に京都御苑では低い生垣にアラカシが使われているので手元の高さで観察できる。さて、かつて珍しかった種を見ることが出来るようになったっと言っても、全体の約1/4種のチョウたちが絶滅の道を歩んでいる現実がある。今、多く見られるからといって将来の保証はどこにも無い。写真に個体は♀。Photo:2010/10/04 @京都御苑、京都市