2009年10月7日水曜日

第百五十二夜/葉っぱに真似る幼虫

  トンボ池で虫の解説をしている時に葉裏のイモムシを発見、ウワミズザクラの葉を食べるモモスズメの幼虫(スズメガの仲間)。これはなかなかいいタイミングに現れてくれた。近づくと人の気配に気づき、頭の部分を精一杯細くしてじっとし始める。なんどもなんども見ているうちにあることに気づく。しっぽに見える部分は、葉の「葉柄(ようへい)」(葉と枝をつなぐ部分)、体の模様は「葉脈(ようみゃく)」、皮膚のざらざら感は「鋸歯(きょし)」、さらに頭を細くすることによって「葉の先端」になりきろうとしているかのようだった。つまり「擬態」=葉っぱに見せることで捕食者から身を守ろうとしている。この解説を聞いていた女性方も最初は恐る恐る見ていたが、僕が触り始めると、興味が湧くのか一人二人と触り始める。「意外にざらざらやん、しっぽは硬いし〜」なんて言っている。そのうちみんなが触るのでスズメガの幼虫もじっとするのを止めて再び葉を食べ始めてしまった。一見気持わるい部類の昆虫も、それを知ることによってなんとなく許容できる関係ができる。つまり相手を知らないことからくる恐怖や不信感が虫嫌いを生み出す。もっともこれは人間の世界でもそうかもしれない。トンボ池の一般開放でここにやって来る人たちは、世間では十分に生きもの好きの部類に属されるだろうから、この許容はもともと幅広いのだろう。そして判っていても避けるのは、「原体験」そして「本能」からくる心理なのかな。ちなみにこの幼虫は、野鳥のヤマガラの好物と西台先生に教えて頂いた。スズメ大の鳥にとっては食べごたえありそうだ。注:写真下の絵は、サクラの葉を半分に丸めてみた時の絵です。なんとなくスズメガの幼虫に似ていませんか?Photo:2009/10/03 @トンボ池・京都御苑 
注:成虫の写真は「第九十三夜」をご覧下さい。

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