2009年10月11日日曜日

第百五十五夜/枝になった虫

 昆虫の世界はつくづく不思議だ。なぜこれほどまでに自分の姿を植物に見立てることができるのか。今夜のエダナナフシはその最高峰だと思う。この虫は成虫も幼虫も樹木の枝になりきってベジタリアンで、体の動きも緩慢で最低限しか動かさない。もっとも動く枝があればそれは怪しい。成虫の体だけが植物になりきっているかと思えば、なんと卵は植物の種そっくり(ラグビーボール型で縦にしわが入っている)である。さらに不思議なことは、平地や暖地では主に有性生殖を行い、山地や寒冷地では主に単為生殖(雌だけで産卵すること)を行っていると考えられる。母親は枝に止まって卵をぽろぽろと空中から地面に落下させる(種を蒔くって感じ)。以前、飼った時に飼育箱の底に草の種が落ちていた・・・と思ったのが卵だった。実は動物でも同じ様な生きものがいる・・・南米に棲むナマケモノ。こちらはほ乳類だから雌雄いるが、ベジタリアンで、体の筋肉も極力まで落として木の枝にぶら下がり自然の風景にまぎれていると言う。あまりにも筋力が無いから木の上ではぶら下がっている、地上部では4本の手足で体を支えられずぺしゃんこになって這いずり歩く。しかし水中では重力がかからないからうまく泳ぐ、ただし極めてゆっくりと。自分の糞は、自分がぶら下がっている木の根本にする。ほ乳類であれ、昆虫であれ同じ様な生活形態が森の中でされていることも不思議なことだ。写真は、コナラの葉を食べるエダナナフシ、秋のナナフシはなんとなく枯れ枝のようだ。
Photo : 2009/09/30 @蓼科、長野県

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