2011年2月17日木曜日

第二百七十一夜/オカヨシガモ

 ヨシの茂る水路を気持ち良さげに泳ぐカモ達。少しスレンダーなボディ、地味なカモがやって来た。このカモ、オカヨシガモという(写真は♂)。雄雌共にあまり特徴がないのですぐに見過ごしてしまう。水面に映るヨシのなかを泳ぐ姿はとても綺麗だった。Photo:2011/02/17 @浅小井、近江八幡市、滋賀県

2011年2月15日火曜日

第二百七十夜/五位鷺(ゴイサギ)

 普段なら夜行性の上、警戒心の強いゴイサギ(*)が真っ昼間にしかも人が近づいても逃げる気配もなく池に架かる端のたもとにたたずんでいる。側を通る人は「なれているのね」なんて言いながら写真に収めていくのだけれど、よくよく見れば生気がない。本来なら真っ赤に目立つ虹彩(目の白目の部分)も濁っている、目もどこか落ち込んで見える、ゴイサギの特徴でもある2本の白い冠羽(頭の飾り羽)も一本しかない、さらに見ると背中の一部の羽がなくなり、周りの羽がべっとりと汚れている。このゴイサギの冠羽の特徴からちょうど一週間前に写真に収めた個体と同じだった。一週間前は元気なようだったが、その頃からなにか体に不調があったことも想像できる。そしてこの一週間満足に餌も食べていないのかもしれない。一体このゴイサギの身に何が有ったのだろうか。背後からオオタカの一撃を喰らい、逃げてきたのか? なんとか元気になって欲しいと心から願う。

*ゴイサギ:サギ科の鳥。全長58センチくらい。頭と背が緑黒色、翼は灰色、顔から腹は白く、頭に2本の飾り羽がある。幼鳥を星五位(ほしごい)、成鳥を背黒五位(せぐろごい)ともよぶ。夜行性で、水辺で魚・カエルなどを捕食。名は、醍醐(だいご)天皇の命によって捕らえようとすると素直に従ったので、五位を授けられたという故事に由来。
Photo:2011/02/15 @九條池、京都御苑、京都市

その後のゴイサギ:この写真を撮った夕方、近くの水路で力なくたたずみ、翌日別の水路で死んでいたことを知人から伝えられた。時勢がら死体は保健所に届けられ、インフルエンザの検査がされたそうだ。検査は陰性。その後、死体がどのような処分をされたかわからない、おそらくその亡がらは別の生きものの血となり肉となる野生の生きもの本来の最期とはならなかっただろう。一羽のゴイサギに起こった事件、それがもとで餌を採れず、加えて積雪に勝てなかったのか。自然界ではごく日常的な出来事、ならばこそせめて草むらで死なせてやりたかったなと思うのである。(2011/02/17)

2011年2月5日土曜日

第二百六十九夜/葦原のホオジロ

 琵琶湖の内湖/西の湖のヨシ原を歩く。今日は(も)ハイイロチュウヒ(タカの仲間)をカメラに収めようと沢山のバーウォッチャーが土手沿いに並んでいた。人を避けてヨシ原のなかに入ってみた。背丈3mを越すヨシ原に足を踏み入れるとまるで迷路の様、遠くの山を目印にしないかぎり迷ってしまうだろう。時々、ヨシ刈りで出来たぽっかりとした空き地が現れる。そんな見通しの悪い場所ならではの出会頭系接近遭遇ってあるもんだ。ヨシ原を曲がったとたん地表から2m程度の高さでハイイロチュウヒがこちらに向かってきたのだから。互いの距離は5mほど、残念なことにカメラに三脚につけていたからさすがに写真は撮れなかった。ハイイロチュウヒも驚いて急上昇。しかし肉眼でしっかりとその姿は見せてもらった。2度目の出会いを期待したが、その後はこんなラッキーな出会いは無かった。周りのヨシ原に耳を澄ませば、パチパチと周囲から音がする。ホオジロ(写真)の群れが草の種子やヨシの茎を割る音だった。Photo:2011/02/05 @西の湖、近江八幡市、滋賀県

2011年1月26日水曜日

第二百六十八夜/チョゲンボウとカラス

 今日は、ハヤブサの仲間のチョゲンボウの姿を頻繁に見ることができた、しかもつがいだった。写真の個体(左側)は♀で、貯水塔に止まり♂が飛び去った方に時折、鳴いている。♂を呼んでいるのだろうか。しかし残念ことに鳴き声に反応したのはカラスだった。チョゲンボウ(写真の左側)を見つけてすぐ隣の柱に止まって様子をうかがっている、その距離2m。
体の大きさはカラスの方がずっと大きいので、カラスがチョゲンボウに襲われるということは無いだろう。なぜ至近距離で、一羽でやってきたのか興味深い、これは外敵として注意(*1モビング)しているのか、単にこの鳥に興味が有ったのか。カラスは鳴かずちょっかいも出さず、すぐ側でチョゲンボウを観察しているだけである。10分ほどこの状態が続く、さすがに居心地が悪くなったのかチョゲンボウがすぐ側の木の梢に移ると、カラスは「なんだつまんない」と言いたげに別の方に飛んでいってしまった(カラスの行動はおもしろい)。冬の田畑ではこのチョゲンボウの狩りのシーンを時折見ることが出来るが、今日はだめだった。Photo:2011/01/25 @浅小井、近江八幡市、滋賀県

*1 モビング(擬攻撃):タカ類やフクロウ類、カラス類などが現れると、小鳥が群れを作ってつきまとい、それを追い払う行動をとることがあります。こうした行動をモビングと呼びます。この行動は実際の攻撃ではなく、嫌がらせをして追い払うのが目的です。カラス類は小鳥のモビングを受けることもありますが、一方、ノスリ・オオタカなどのタカ類に対してモビングを行います。時には数十羽がタカの回りの飛び交うこともあり、観察者にタカの存在を教えてくれます。

2011年1月21日金曜日

第二百六十七夜/ダイサギと言う名の白鷺

 僕たちは、ごく普通に白い鷺を見て「白鷺」と言ってしまうが、白鷺と言う種の鳥はいない。今の季節、琵琶湖界隈でよく目にする「白鷺」はダイサギ。車窓から見ている分には餌を獲る光景も見れる、さらによく見ようと車から降りるまではいい。いざ写真を撮ろうとカメラを見せたらあら不思議、大きな体をふわっと浮きあげて、さーっとあっちの岸辺まで軽々と飛び去ってしまうのだ。なかなか悔しい思いをする。関西なら「白鷺」と言えばコサギ、チュウサギ、ダイサギ、アマサギぐらいを覚えておけばいいだろう。今の季節はコサギ、ダイサギ。チュウサギ、アマサギは夏鳥として渡ってくる。Photo:2011/01/20 @守山、滋賀県

2011年1月20日木曜日

第二百六十六夜/シロハラ

 雪日はさすがの冬鳥たちも寒そうだ。府立植物園の樹林地を歩いているとすぐ近くの茂みからウグイスの地鳴きのような声が聞こえる、慎重に近づくがいっこうに見つからない。思い込みとは怖いもので、鳴き声をたよりにウグイスのいそうな地際ばかりに目を凝らしていた。見つからない・・・・ふと見上げると手が届きそうな場所にシロハラが一羽休んでいた。写真を撮ろうにも近すぎて撮れない。静かに後ずさりしながらやっと写すことが出来た上の写真はノートリミング(ピントが甘いのは暗くて手ぶれを起こしたから)。逃げる様子も無い、実に寒そうに見える。しばらくして子どもたちが声を高らかに走ってやってきた、さすがにこれには我慢できず飛び去ってしまった。Photo:2011/01/16 @京都府立植物園

2011年1月19日水曜日

第二百六十五夜/鵺(ぬえ)とトラツグミ

 「鵺(ぬえ)の鳴く夜は恐ろしい」は、作家・横溝正史『悪霊島』(あくりょうとう)の映画のキャッチコーピーで記憶に残っている。これは薄暗い森の中から、また夜中に聞こえてくる細い不気味な声の正体が架空の生きもの=鵺(ぬえ)または鵺鳥(ぬえどり)の鳴き声として、気味悪がられることがあったからだ。しかしその声の正体は、この写真の不思議な雰囲気をもつトラツグミ。名は「虎模様のツグミ」からつけられている。明るいところに滅多なことでは現れず、多くの場合薄暗い森やその林縁が生活場所。シダの茂る林中を、するするする・・と音を立てずに歩き、時々立ち止まってじっとしている。地面の落ち葉にクチバシを入れて、聞き耳を立てている。ある時はお尻をふりふりする。多分、この鳥が起こす振動で反応する土中の昆虫やミミズの音を聞いているのかもしれない。派手さもカワイさも無いが、なかなかいい存在感を感じさせてくれる鳥である。Photo:2011/01/16 @京都府立植物園

2011年1月18日火曜日

第二百六十四夜/アオジ


 冬鳥の中には人への警戒心が弱いものも少なくない。そんな小鳥は羽の様子や顔の表情もよくわかり、こちらが不用意に動きさえしなければ長時間観察することが出来る。写真の小鳥も同様で、2m程まで近づくことができた。こちらとの距離が2mを切ると3m程向こうに行ってしまう。種名を「アオジ」というスズメ程の大きさの鳥である。地面で草木の種をついばむことに余念がない、がその動作は絶えず体の向きを変え、ついばんだ種を食べている時は地面から頭を上げて周囲を見ている。これは一羽で行動する小鳥がもつ共通の動作のように思える。少ない植物の種子をついばむには単独のほうがよいのだろう、しかし単独行動のリスク、つまり外敵を察知しずらい。餌を群れでついばみ外敵に対しての防御をするか。それぞれの小鳥たちの活きるための力を見る気がする。Photo:2011/01/16 @京都府立植物園

2011年1月16日日曜日

第二百六十三夜/青い鳥・其の二

 今年二度目の積雪日。こんな日、生きものたちがどのように過ごしているか見ようと植物園へ出かける。日曜日なのだか雪の為に来園者とほとんど出会わない。おかげで数種類の冬鳥をゆっくり見ることが出来た。さすがに鳥たちも寒さでまんまるになっている。写真は、ルリビタキ♀(脇のオレンジ色が強目なので若い♂かもしれない)。杭の上に止まりながら時折地面に降りて餌をついばんでいた。Photo:2011/01/16 @京都府立植物園

2011年1月11日火曜日

第二百六十二夜/ルリビタキは幸せの青い鳥か?

 冬を越すために渡りの途中で立ち寄る小鳥、春までとどまる小鳥。冬鳥の顔ぶれも落ち着いてきた。そのような小鳥の中にとても臆病な種や個体、逆に人間を警戒しない種や個体がいて興味深い。今日、出会ったルリビタキは他の小鳥よりも人見知りしない種類だが、写真の個体はとりわけ馴れ馴れしい。それというのも野鳥の写真を撮っている方々が餌付けをしているから。人気の個体ほど餌をもらえるので近くまでやってくる。そしてこちらを見て餌を催促するような声まであげるのだ。僕は野生の生きものへの餌付け行為は控えるべきと考える。しかし当の僕も子どもの頃、餌を与えていろいろな生きものを見てきた。だからあまり偉そうなことは言えない。
 幸せの青い鳥・・・このような小鳥が近くにやってくる、見ることはすばらしい。それ以上にこの小鳥が自由に暮らす森がここにあること、そしてこの森で時間を過ごせることが幸せと思えることが本当に幸せなんだろうなと・・・わかったようなわからないようなことをこの鳥を観ていて思った。このルリビタキ、一見きれいでかわいいのだが、よく見るとその目はやっぱり野生。写真の個体は♂。Photo:2011/01/11 @京都御苑、京都市

2011年1月9日日曜日

第二百六十一夜/百舌鳥

 雪の河川敷を歩くとモズ(♂)が一羽、柳の枝から草むらに目を凝らしている。視点の先にはカシラダカの小群が草の種を食べていた。カシラダカを狙っているのか、他のものを探しているのかわからない。しばらく観察していると別の木に移り、同じように草地に目を凝らす。時折、地面に降りるものの獲物はいないらしい。動物性の餌を食べる鳥たちによってこの季節を乗り越えるのも楽じゃない。Photo:2011/01/08 @蛇砂川、浅小井町、近江八幡市、滋賀県

2011年1月8日土曜日

第二百六十夜/雪中のアオスジアゲハ蛹

 樹木調査中に雪景色の中、モミジの枝先に新緑を見た。モミジの紅葉に新緑だから虫屋としては直感的に注目すべきものと感じる。角度を変えてみるとまぎれも無いアオスジアゲハの蛹である。空にすかしてみるとその透明感のある緑がとても美しかった。Photo:2011/01/08 @浅小井町、近江八幡市、滋賀県

2011年1月1日土曜日

第二百五十九夜/謹賀新年・雪に思うこと

 今冬初めての降雪、さっそく日常のフィールドでもある京都御苑に出向く。積雪は10cm少し。これだけの降雪は久しくなかった。樹林地を歩くもほとんど生きものの気配はない。時折、カラスやヒヨドリが飛び去る。この降雪で命を落とす鳥もいるだろうなと思いながら、頭上から落ちてくる雪や小枝に注意し歩く。時折、近くで遠くで枝の裂ける音のすぐ後に大きな音をたてて落枝が地面の落ちる。街中の樹林は降雪に弱いらしく、大きく水平に張り出した枝は地面に触れるように垂れ下がり、頭上の大きな枝は雪の重さに絶えかねて裂けてしまう。雪で出来た幹の傷は新しい生きものの住まいとなり、落枝も同じになるだろう。山間では、積雪で多くの若い鹿が死ぬだろう、そしてこれも他の生きものの糧となる。雪は新しい命を生み出すことにつながる。Photo:2011/01/01 @京都御苑

2010年11月30日火曜日

第二百五十八夜/エナガの群れ

 京都御苑もすっかり秋も深まり北から渡ってきた冬鳥たちの数も増えた。雑木の梢では冬場、小鳥達の群れも観察できる。枝先や樹皮、葉っぱの中からしきりに餌をついばむ光景も観察できる。頭の上に小さな小鳥の群れがやってきた。見上げるとエナガがこちらを見下ろしている。一年中見ることができる鳥だが、樹木の葉がないことも手伝って冬場は特によく見れる。人を恐れることはないのだが、あまり地際には降りてこないので写真はおのずとお腹ばかりになってしまう。エナガとは、尾羽を「柄」たとえ、その尾羽が長いことから名前「柄長」がついている。たしかに尾羽の長さは体と同じほどある。体長12.5-14.5cm、体重5.5-9.5gぐらい。体長は長い尾羽の先までの長さを含むので、実際に見た印象はスズメよりずいぶん小さい。くちばしと首が短く丸っこい体に長い尾羽がついたかわいらしい小鳥である。Photo:2010/11/30 @京都御苑

2010年11月3日水曜日

第二百五十七夜/ぬいぐるみのようなガ・アカエグリバ


 銀色のハスの枯葉に、枯葉が一枚、一体これはなんだ? ぬいぐるみのような、古代魚のような、未知の生きもののような風貌。さらに目(複眼)をみるとこっちの目が回りそうな模様、カメレオンのような・・・この生きものは、「エグリバ」(=翅の一部がえぐられてる様に見える)というガの仲間の「アカエグリバ」の成虫。見れば見るほど翅の模様は枯葉そのもの、葉柄も葉脈もある、虫食ったような跡もある。見事! Photo:2010/11/02 @京都御苑、京都市

2010年10月30日土曜日

第二百五十六夜/冬のバッタ・ツチイナゴ

 写真はツチイナゴというバッタ、独特の模様がある褐色の綺麗なバッタである。体型や大きさはトノサマバッタやクルマバッタに似ているが、全身が褐色で、細かい毛が生えている。複眼の下には、涙後のような茶色の模様。このバッタの一番の特徴は、成虫期の大半を過ごす季節が冬なこと。枯れ草ばかりの季節環境だから、体色が保護色。バッタの仲間では唯一、成虫で越冬が出来るが、やはり寒さは苦手らしく、なるべく日当たりが良く暖かい環境に身を置いて冬をやり過ごしているのが実態である。Photo:2010/10/29 @京都府立植物園

2010年10月20日水曜日

第二百五十五夜/アオゲラの羽

 写真は樹林の中に鳥の羽根が散乱する事件現場。羽根は緑色が綺麗である。はたしてこの羽根の持ち主の身に何が起きたのか。羽根を集めるうちに一枚の小さな黒い羽根を見つける、羽根の先端は血が付いた様に赤い・・・これで正体が判った。キツツキの仲間「アオゲラ」である。オオタカがアオゲラを襲った現場だろう、近くに2ヶ所同じ様に羽根が散乱した場所があった。全部の羽根を集めると頭部と胸部そして左右の風切り羽根の一部であることが判った。他の羽根を近くに探すが見当たらない、安全な場所まで運んだのだろう。さて当のアオゲラなのだが、最近この近くに2羽がやってきたとの情報がある。鳥の写真を撮っている人たちはこの2羽の写真を撮ろうと頑張っている。この2羽のうちの1羽なのだろうか?オオタカにとってはそんなこと関係ない。獲りやすい獲物がいれば相手はかまわないのである。しかし人間世界は違って「せめていっぱいいるドバト獲ってよ〜」と声が聞こえてきそうである。Photo:2010/10/20 @京都御苑、京都市

2010年10月19日火曜日

第二百五十四夜/どこに隠そうかな?

 鳥に関しての原稿につける写真を鳥に京都御苑に行く。今回の対象は「カラス」の行動。こんな時に限ってカラスがいない。いてもこちらの心を見透かすかのごとく写真を撮らせない。やっと見つけた一羽のカラス(ハシボソガラス)。双眼鏡で見ていると様子がおかしい・・・回りをずいぶんと気にしている。地面からなにかつまみ上げた・・一枚のビスケットだった。そこには少し前に親子が寝転んでいた芝生。きっと地面に落ちていたビスケットを発見したのだろう。これはごちそうである、しかし食べる気配がない。きょろきょろと回りを見渡し、くわえたまま歩いて時々立ち止まる、この繰り返し。多分、すぐに食べないでどこかに隠しておくつもりなのだろう。見ていると大変に面白い。どこに隠すかと見ていると、散歩のイヌがやってきた。カラスはくわえたまま木の枝に飛びうつり、なおもきょろきょろと回りを伺っている。イヌなんかだったらその場ですぐに食べてしまう、やはりなかなかの知恵ものである。Photo:2010/10/19 @京都御苑、京都市

2010年10月18日月曜日

第二百五十三夜/コゲラ

 時折「ギー」と言う一声が頭の上から聞こえてくる。そこに何がいるのか判っている。でもその姿はなかなか見えないものだ。小さな体で木の幹を上へ下へ、左へ右へせわしなく這い回っているから。日本で一番小さなキツツキ「コゲラ」がその正体。もちろん木を突いて幹の中に潜む昆虫等を食べるが、多くの場合、幹に付くコケや樹皮の間の昆虫やクモを食べている。体がい小さい分、食料も少なくて済む、町中の公園にもその程度の生きものは棲んでいる。巣孔をあけるにもさほど太い木も必要ない・・・だから街中でも見ることが出来るのだろう。この日はサクラの枯れ枝が作った穴を執拗に突いていた。よほどおいしい虫が沢山いたのだろう。これからの季節、シジュウカラなどの小鳥の群れに入り行動する。Photo:2010/10/18 @京都御苑、京都市

2010年10月17日日曜日

第二百五十二夜/アオサギの若者

 そろそろ御苑にも冬鳥がやって来た。池にはマガモがずいぶんと休んでいる。来園者の中にはこのカモ達に餌をあげる人も少なくない。もちろん餌はたいていパンだけど。鴨と鯉がひしめく水面にパンを投げる人を見ると、遠くにいたアオサギの若鳥が近くに舞い降りた。人を怖がる気配もない。カメラをむけてもおかまいなしだ。彼(彼女?)のお目当ては水面のパン・・・だけど脚が届かない水深だから、近くにパンが流れてくるのを待つしかない。もちろんそんなことはあり得ない、そのまえに鯉が食べてしまうから。でも偶然に風で近くに飛んでくる時がある。そんな時はすかさずパクり・・・以前もアオサギがパンを食べるのを見た。これは驚いた。サギは動物食のはず、餌が獲れないとパンで空腹を満たすのか。このアオサギは今年生まれの若鳥・・・新しい食習慣は若者から?さてパンの味をしめたこの若鳥が今後どんな習慣を身につけるのか興味深い。よく見ていると餌を獲る前に一瞬、瞳孔が小さくなる、一見クールな彼だけど表情も結構豊かである。Photo:2010/10/17 @九条池、京都御苑、京都市

2010年10月15日金曜日

第二百五十一夜/クツワムシ


 今日は京都御苑を散歩中に大きなキリギリスの仲間:クツワムシ(♀ Mecopoda nipponensis)を見つける。この虫はめったに昼間であわない、夜行性で昼間は草陰にそっといるだけ、夜に歩くことはめったに無いので夜しか鳴かない虫の場合はその存在が判らない。今回は全くの偶然、クロコノマチョウの終齢幼虫を見ている時に足元にいただけのこと。近づいてもほとんど動かない。♀の個体で産卵管が太くてまっすぐなのが特徴(写真下)、産卵前なのかお腹はパンパンに膨らんでいた。クツワムシの「クツワ」とは、馬のたずなを引くために馬の口にくわえさせる金属の棒のことで、これが馬の動きとともにガシャガシャと音を立てる。その音とこの虫の「ガチャガチャ・・・」という鳴きが似ているのが名前の由来。子どもの頃、父親がこの虫を沢山とってきた、その夜はその鳴きのあまりのうるささで眠れなかったことを想いだす。さてこのクツワムシ、大型で体高が高く、ずんぐりとしたその体の側面積は日本のキリギリス中最大、体重もずっしりと重い。生息地の条件もあっても環境破壊に弱く、各地で減少と個体群毎の絶滅が進み、また一旦破壊された環境がその後回復しても他地からの個体群の回帰がなかなか進まないという。このような大型の昆虫が京都御苑の草地に生息しているということは自然が残っているというよりも、いかに緻密な草地管理がされているかと言うことに他ならない。実際にここの草地には多くの草地生物が棲息しているので年一度の刈り取りしか行われていない。御苑を歩くとそんなほったらかしに見える草地が芝生広場の隣に残っていたりする。これはけっして刈り残したからではなく、意図的に残してあるのだ。きっと今夜も「ガチャガチャ・・・」賑やかなんだろうか。Photo:2010/10/15 @京都御苑、京都市

2010年10月4日月曜日

第二百五十夜/今や普通種のムラサキシジミ

 生きものの話を書いて今夜で二百五十話になった、日本にいるチョウ類が約240種類だからやっとそれに達したわけだ。さてこのチョウ類だが小学生の頃、昆虫採集にどっぷりのめり込んでいた頃は、テングチョウ、マダラチョウ、ジャノメチョウの仲間はちゃんと「科」として分類されていたが近年はその科が廃止され「タテハチョウ科の亜科」として扱うことが多くなった。和名まで変わった種さえある。その種名、科名の変化もあるのだが昔は珍しかった種が今は極めて普通種となったものも多い。写真のムラサキシジミもその一つ。子どもの頃、是非に採集したいといろいろな本や、学校の理科室にあった標本の採集地を参考に探したが結局見つけることは出来なかった。ところがどうだ、今ではごく普通種となってしまった。ムラサキツバメ(これも以前は珍しかった)を探そうとしていると、このムラサキシジミが両手の指をもっても数えきれないほど現れた。いっぱいいるのだから放っておけばいいのに目の前に現れるとつい目で追って、写真に収めてしまう。特に京都御苑では低い生垣にアラカシが使われているので手元の高さで観察できる。さて、かつて珍しかった種を見ることが出来るようになったっと言っても、全体の約1/4種のチョウたちが絶滅の道を歩んでいる現実がある。今、多く見られるからといって将来の保証はどこにも無い。写真に個体は♀。Photo:2010/10/04 @京都御苑、京都市

2010年9月29日水曜日

第二百四十九夜/クロコノマチョウの2齢幼虫

 ススキの葉にクロコノマチョウの幼虫(2齢)を観る。葉の左側には卵跡が白く残り、ちょうど11個がここに産卵されたことがわかる。さて白い跡はあっても卵殻がない・・・これはふ化した幼虫(1齢)が食べてしまうから。若齢幼虫は産まれた集団で行動を共にし、やがて個別の行動となる。この若齢幼虫の集団は全部で5頭、あとの6頭の姿が見当たらない。はやくもクモ等に食べられたか、脱皮に失敗したかだろう。写真ではわかりづらいが頭には左右に小さなツノ状の突起があり、赤ちゃん鬼といった面持ちである。クロコノマチョウの幼虫は、ススキやジュズダマ、ヨシなどを食草とする。Photo:2010/09/28 @京都御苑。京都市

2010年9月28日火曜日

第二百四十八夜/ススキの葉陰からのぞく虫

 草むらでクロコノマチョウの幼虫を探している時に、ススキの葉軸の中に潜んでこちらをうかがう泡吹き虫(アワフキムシ)の一種を見つけた。ゴルゴ13のようなクールな目つきがなかなかイカしている。幼虫時代は身を守るために自分のおしっこ(排泄物)をあわ立てた泡状の巣のなかにいるが、成虫になると写真のように立派(?)なセミ状の体形となる。これからわかるようにこの虫はセミの仲間。幼虫時代のように成虫になった今は逃げも隠れもせず、危険が迫ったらジャンプ一発、すこい速さで逃げ切ってしまう。Photo:2010/09/28 @京都御苑、京都市

2010年9月24日金曜日

第二百四十七夜/生きるも死ぬも大切・ヌートリア


 鴨川に架かる橋(丸太町)を渡っていたらかすかに生きものの腐敗臭がした。周りの道路を見るがそんなものはない。ふと橋から下の川を見ると30mほど離れたところに魚のような形をした物体。形からオオサンショウウオの死体と思い、橋を降りて河原に行く。不思議と近くでは腐敗臭は少なく、風向きで30m以上離れた橋上に匂いが流れているようだ。さて、この死体は巨大なヌートリア(巨大なネズミ)だった。全長90cmはあるだろう、頭部が背骨で骨盤・尾骨につながった状態でねじれている、その他は前脚が一本のみ。かろうじて骨が皮でつながった状態で肉部はほとんどない。口部には特徴のあるオレンジ色の湾曲した大きな歯が見える。鴨川では、この近く(二条大橋付近)で一頭だけ生息を確認している(第百八十二夜・2010年1月11日)。今回の死体はこの個体か、それとも別の個体か。先日の豪雨時に上流から流されて来たのかもしれない。水中にある時は魚などの水生生物に、河原にある時はカラスやトビの餌になったに違いない。生きるのも大切だけど、生きている以上は死ぬことも大切なんだなと思う。Photo:2010/09/24 @鴨川、丸太町、京都市

2010年9月21日火曜日

第二百四十六夜/コガタコガネグモ

 クモを見るとたいていの人はギャーッと言うか、顔を背ける。なんとなくその気持ちは解る。でもよく見ると面白く不思議な生きものではある。今日見つけたのはコガネグモ。網の中心にいるのだが写真を撮ろうとするとすばやく網から飛び下り草むらに隠れてしまう。数分後にみるとちゃんと元のところに止まっている。これを何度も繰り返すもいっこうに背中の模様を見せてくれない。我慢できずにさらに追いかけると今度は地面にへばりついたまま動かない。なんとなく普通のコガネグモと動きが違う。まあ背景は悪いが背中の模様がちゃんと判った。背中の模様は不思議な網目状、よく見るとお尻の先から糸が出ているのがわかる。クモは逃げながらも糸を出し続けるので、もといた自分の網(巣)に迷わずに戻ることが出来る。夜、この背中の模様とこのクモの行動をもとに調べると「コガタコガネグモ(♀)」であることが判った。このクモの「網から飛び下り草むらに隠れてしまう」がヒントとなった。やっぱり生きているものを見ることが大切なんだと思う。Photo:2010/09/21 @京都御苑

2010年9月20日月曜日

第二百四十五夜/コオニヤンマ・風変わりなヤゴ

 買い物がてら自宅近くの鴨川に散歩にいく。少し前の豪雨で中州に発達していた草むらはすっかり流され河原となり、あたらしい生きもののの住処ができたので一度じっくりと観てみたかった。河原には早くも新しい植物が成長し、その水際ではオイカワの稚魚が群れている。川岸で水中の小石を一つひとつめくり上げるとカワゲラやトビケラの幼虫が見つかった。中には風変わりなコオニヤンマのヤゴ(写真)も沢山みつかる。いく匹か捕まえているうちに気付く、そのヤゴの大きさがまちまちなことに。写真のヤゴは、体長(脚を含めず)8mmほど、中には体長30mmほどの大きな個体もいる。大きさの異なるヤゴが同時期に見つかるということは、このトンボの幼虫時代は単年以上必要ということ。大きな個体は来年の初夏に羽化するだろうが、この小さなヤゴは早くとも2年後の羽化となるだろう。羽化までに豪雨・濁流のような大変な場面に遭遇するだろうが、小さなヤゴがそれをやり過ごすことに驚く。コオニヤンマのヤゴは、水中ではひらりひらりとまるで枯れ葉が舞うように泳ぎ逃げていく。名前にオニヤンマと付くが、オニヤンマの仲間でも、ヤンマの仲間でもなく、サナエトンボの仲間である。成虫の複眼の位置と、幼虫の口部の形状でそれと判る。Photo:2010/09/20 @鴨川、丸太町、京都市

2010年9月18日土曜日

第二百四十四夜/オンブバッタ

 秋になると俄然増えてくるオンブバッタ。たいての植物は食べるようで、植木鉢でも庭でも、都市部から田舎までどこにでもやってくるのだから不思議な昆虫だと思う。名前のとおりメスはいつも背中にオスをおんぶしている・・・本当のところはオスが勝手にしがみついてのだが。この状態はバッタ類の交尾の際に観察されるが、他のバッタ類がすみやかに離れるのに対し、オンブバッタは交尾時以外でもオスがメスの背中に乗り続けている。メスは、オスを背中に乗せて葉っぱをもぐもぐ食べている、さてオスはいつ葉っぱを食べているのだろう。このバッタ、ちゃんと翅を持っているのに全く飛ばない、宙に投げ上げても飛ぶどころか、翅も出さずにそのまま地面に落ちてくる。移動はもっぱらジャンプ。Photo:2010/09/18 @近江八幡市、滋賀県

2010年9月15日水曜日

第二百四十三夜/ウラギンシジミ

 修学院離宮の門前で知人と待ち合わせ。時間まで近くを散歩。そこにタイミングよくやって来て翅を開くウラギンシジミ(♂)。名のとおり翅の裏側は脚の先まで銀白色の鱗粉と細毛で覆われている。この蝶が飛ぶと翅裏の銀白色がチラチラと良く目立つが、いったん本来の生息環境である常緑樹(照葉樹)の樹冠部(常緑樹の葉は陽光が当たるとキラキラ光る)を飛ぶとこの「チラチラ」が保護色になる。昔は分類が「ウラギンシジミ科」だったが今は「シジミチョウ科」になっている。Photo:2010/09/15 @修学院離宮、京都市

2010年9月14日火曜日

第二百四十二夜/ササグモ

 クモは苦手だった・・・基本的には今も苦手である。なぜ苦手か、脚が8本とか、目がいっぱいあるとか、動くのが速いとか、色が綺麗でないとか、糸を吐くとか・・・いろいろあるけどつまるところは「よくわからない」から。何事も理解しようとする気持ちで新しい展開が産まれるはず。まずはこの苦手をクリアーしようとササグモとかハエトリグモの辺りから見てみようと思っている。葉の上でツマグロオオヨコバイをくわえたササグモを見つけた。このクモは糸の巣は造らず、獲物を待ち構える「待機型」。獲物を見つけるとぴょんと飛びついて捕らえる。その俊敏さが取り柄で、逃げる時もジャンプして素早い。脚のついている沢山の針状の突起物は獲物を捕らえる時に役立つことが想像できる。Photo:2010/09/14 @京都御苑、京都市