2011年2月15日火曜日

第二百七十夜/五位鷺(ゴイサギ)

 普段なら夜行性の上、警戒心の強いゴイサギ(*)が真っ昼間にしかも人が近づいても逃げる気配もなく池に架かる端のたもとにたたずんでいる。側を通る人は「なれているのね」なんて言いながら写真に収めていくのだけれど、よくよく見れば生気がない。本来なら真っ赤に目立つ虹彩(目の白目の部分)も濁っている、目もどこか落ち込んで見える、ゴイサギの特徴でもある2本の白い冠羽(頭の飾り羽)も一本しかない、さらに見ると背中の一部の羽がなくなり、周りの羽がべっとりと汚れている。このゴイサギの冠羽の特徴からちょうど一週間前に写真に収めた個体と同じだった。一週間前は元気なようだったが、その頃からなにか体に不調があったことも想像できる。そしてこの一週間満足に餌も食べていないのかもしれない。一体このゴイサギの身に何が有ったのだろうか。背後からオオタカの一撃を喰らい、逃げてきたのか? なんとか元気になって欲しいと心から願う。

*ゴイサギ:サギ科の鳥。全長58センチくらい。頭と背が緑黒色、翼は灰色、顔から腹は白く、頭に2本の飾り羽がある。幼鳥を星五位(ほしごい)、成鳥を背黒五位(せぐろごい)ともよぶ。夜行性で、水辺で魚・カエルなどを捕食。名は、醍醐(だいご)天皇の命によって捕らえようとすると素直に従ったので、五位を授けられたという故事に由来。
Photo:2011/02/15 @九條池、京都御苑、京都市

その後のゴイサギ:この写真を撮った夕方、近くの水路で力なくたたずみ、翌日別の水路で死んでいたことを知人から伝えられた。時勢がら死体は保健所に届けられ、インフルエンザの検査がされたそうだ。検査は陰性。その後、死体がどのような処分をされたかわからない、おそらくその亡がらは別の生きものの血となり肉となる野生の生きもの本来の最期とはならなかっただろう。一羽のゴイサギに起こった事件、それがもとで餌を採れず、加えて積雪に勝てなかったのか。自然界ではごく日常的な出来事、ならばこそせめて草むらで死なせてやりたかったなと思うのである。(2011/02/17)

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