2010年10月15日金曜日

第二百五十一夜/クツワムシ


 今日は京都御苑を散歩中に大きなキリギリスの仲間:クツワムシ(♀ Mecopoda nipponensis)を見つける。この虫はめったに昼間であわない、夜行性で昼間は草陰にそっといるだけ、夜に歩くことはめったに無いので夜しか鳴かない虫の場合はその存在が判らない。今回は全くの偶然、クロコノマチョウの終齢幼虫を見ている時に足元にいただけのこと。近づいてもほとんど動かない。♀の個体で産卵管が太くてまっすぐなのが特徴(写真下)、産卵前なのかお腹はパンパンに膨らんでいた。クツワムシの「クツワ」とは、馬のたずなを引くために馬の口にくわえさせる金属の棒のことで、これが馬の動きとともにガシャガシャと音を立てる。その音とこの虫の「ガチャガチャ・・・」という鳴きが似ているのが名前の由来。子どもの頃、父親がこの虫を沢山とってきた、その夜はその鳴きのあまりのうるささで眠れなかったことを想いだす。さてこのクツワムシ、大型で体高が高く、ずんぐりとしたその体の側面積は日本のキリギリス中最大、体重もずっしりと重い。生息地の条件もあっても環境破壊に弱く、各地で減少と個体群毎の絶滅が進み、また一旦破壊された環境がその後回復しても他地からの個体群の回帰がなかなか進まないという。このような大型の昆虫が京都御苑の草地に生息しているということは自然が残っているというよりも、いかに緻密な草地管理がされているかと言うことに他ならない。実際にここの草地には多くの草地生物が棲息しているので年一度の刈り取りしか行われていない。御苑を歩くとそんなほったらかしに見える草地が芝生広場の隣に残っていたりする。これはけっして刈り残したからではなく、意図的に残してあるのだ。きっと今夜も「ガチャガチャ・・・」賑やかなんだろうか。Photo:2010/10/15 @京都御苑、京都市

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