2012年7月1日日曜日

第三百六十夜/謎解きの幼虫(蛾)

 5月にテングチョウの幼虫をフィールドから採集してきてその成長を写真に収めた。その時採取したエノキの一枝に一緒に紛れ込んだ2頭(匹)の鮮やかな緑色の青虫がいた。但し、これはテングチョウの幼虫ではなく蛾の幼虫である事は判っていた、やがてテングチョウが蛹になり、羽化した後もその青虫は蛹になる気配がなかった。あいかわらずエノキの葉を食べ続けた。
 テングチョウが羽化(5月30日頃)し、その1週間後(6月7日頃)に繭を作り蛹になった。そしてその繭から茶色の地味な蛾が6月27日に羽化した。幼虫を見ても種類が判らなかったがこれで同定できる。その蛾は「モクメクチバ(Perinaenia accipiter)」、2ケ月半に及ぶ謎解きがようやく終わった。この蛾の翅は、アオバズクの食痕から見つかることがある。Photo:2012/06/30 @京都市

2012年6月28日木曜日

第三百五十九夜/虫こぶ〜究極の「衣食住」

果実のような、葉のような、なんとも得体の知れない塊を樹木の葉によく見る、どことなく植物の様でもあるが違う気がする、やはり気持ち悪い。だから存在は知っていてもそこには何かが潜んでそうで子どもの頃から苦手だった。長い間、見て見ぬ振りをしていた気がする。これは「虫えい・虫瘤(英: gall)」と呼ばれるものだ。ところが最近、糞虫の研究者であるT先生からいろいろな虫瘤のお話を伺う様になると、逆に興味が湧いてきた。よく知らないことが、身を遠ざける気持ちを生み出していた事が判る。
先日は写真の「エゴノネコアシ」と言う虫瘤を教えて頂いた。エゴノキの枝先に小さなモンキーバナナ型の実のような物体がついている。エゴノネコアシとはよく言い当てた名を付けたと思う。実はこの中には「エゴノネコアシアブラムシ(Ceratovacuna nekoashi」(←学名にまで「ネコアシ」ってついている)というアブラムシが入っていて、植物の内部に卵を産み付けることによって、植物組織が異常な発達を起こしてできるという。だからこの虫瘤を割れば中からぞろぞろとアブラムシが出てくる。興味深い事には、アブラムシがエゴノキに入らないと出来ないらしい。
他の樹木でも虫瘤はできるが、ある特定の昆虫(アブラムシやハチ、ハエなど)または細菌が、それにあった特定の植物に入らないと出来ないらしい。まったく不思議な関係である。昆虫はこの中にいれば食も保証され、外敵からも身を守れる、これは虫達にとって究極の「衣食住」ではないか! さて一方、体内(枝・葉内)に入られた植物にとってのメリットはなにかあるのだろうか・・・。Photo:2012/06/26 @京都御苑

2012年6月26日火曜日

第三百五十八夜/カメムシの幼虫

 何でも子どもはかわいいものである。やはり体つきが凝縮された「子ども体形」がそうおもわせるのか。一般的に嫌われ者のカメムシ(写真=クサギカメムシ Halyomorpha halys )だってご覧のとおりなかなか愛おしい。真ん中の白い球が卵全部で26個あるようだ、卵の上にとまる赤いのが1齢幼虫(1匹)、うじゃうじゃいるのが2齢幼虫(17匹)。全部兄弟だから2齢幼虫になったばかりだろう(1齢が脱皮すると2齢になります)。卵の個数に比べ幼虫の数が8匹足りない、近くにいるのか、それともクモにでも食べられてしまったか? 彼らにとってまわりには天敵ばかりで兄弟で「うじゃうじゃ」いるのが一番安全なのだが、大きくなるにつれ徐々にまわりの草地に散らばっていく。Photo:2012/06/26 @京都御苑、京都市

2012年6月24日日曜日

第三百五十七夜/ヌートリアの餌付けは OK?

 鴨川でこんなシーンに出会った(写真上)。子ども達がパンを与えるのは巨大ネズミのヌートリア(Myocastor coypus、川岸からパンを求めて上陸し、子どもが手から差し出すパンを食べている。付近をみるとこの大きなネズミが1、2、3、4・・・全部で10頭、大きな個体が2頭(鼻先から尾の付け根までが約45cm程度)、それ以外の8頭は一回り小さく鼻先が白い、今年の子どもらしい(鼻先から尾の付け根までが約30cm程度)。家族の一群のようである。パンを与えていた(人間の)子どものお母さんに聞くと、ここのヌートリアは3年程前から居て、今来ている子どもネズミ達はこの前までは15〜20cmほどだったと言う。子ども達が与えるパンをもらいにくるのは、ネズミばかりではなくハトやカモ(実際は合鴨)、コイもいるがなかでもこのネズミ達は特に慣れている様子で鳥達は遠巻きに餌のおこぼれを狙っている。ヌートリアはさほど視力がよくないらしく、カメラを構えているとレンズに鼻先が触れんばかりに、においを嗅ぎにやってきた(写真下)。
 自分が子どもの頃、動物に餌を与える事は楽しいと感じた、また餌を食べる彼らをかわいいと思った。だから餌を与える人間側の気持ちも理解できるが、人間の子ども達が「ヌーちゃん」と呼ぶネズミの子ども達、今後彼らは人から餌を与えられることを習慣とする。餌を与えられることで繁殖頭数も増加するだろう・・・いずれ新しい問題が起こる事は明らかだと思う。Photo:2012/06/24 @鴨川、京都市

ヌートリアの話題:
第百八十二夜 2010年1月11日
第二百四十七夜 2010年9月24日

*1:原産地:南アメリカの中・南部(チリ、アルゼンチン、ウルグアイ、パラグアイ、ボリビア、ブラジル南部)。日本には1907年に上野動物園に初めて 輸入された。その後、1939年(昭和14年)に軍用の毛皮獣として150頭が輸入された。第二次世界大戦中は、防寒用の毛皮を採り、肉は食用とするため に多数飼育されたが、第二次世界大戦が終わると需要がなくなり、放逐されたり屠殺されたりした。生き残ったものが野生化し、各地で帰化した。毛皮はカワウ ソのように上質で、カワウソの毛皮と称して売買されたため、カワウソのスペイン語<ヌートリア>がまちがってこの動物の呼び名になったという。

2012年6月23日土曜日

第三百五十六夜/アオサギ

 アオサギ(Ardea cinereaがヒナを育てていることを聞いて早速、見にでかける。神社の境内のエノキの梢に巣はあった。双眼鏡で見るとヒナが2羽いる。小枝で造られた巣は決して精巧で強固とは思えない、よく台風の風雨の中で持ちこたえたものだと思う。巣は1つでサギが造るコロニー(集団の営巣場所)にはなっていない。周囲にはカラスも多い、親鳥の姿は見えないがどこかで見張ってるのか、それともヒナが大きく育つのにはなにか秘密があるのだろうか。写真のヒナは下から見上げているためにへんな写り方をしているが、クチバシの下側〜喉が黄色く写っている。Photo:2012/06/22  @京都市内

2012年6月22日金曜日

第三百五十五夜/ミズイロオナガシジミの産卵

 京都御苑にミズイロオナガシジミ(Antigius attiliaが確認されたと聞いたのは昨年だった。ミズイロオナガシジミは、ゼフィルスと呼ばれるミドリシジミの仲間で、決して珍しい種類ではないのだが子どもの頃はこれを捕虫網に収め、標本にする事でゼフィルスの世界に一歩踏み込んだと満足だった。よりきれいな個体(翅に一つの傷もない)を手に入れるために冬の雑木林に入り、卵を採集し成虫まで育てた数は楽に百を越えたと思う。そんな蝶なので是非見てみたいと探したがダメだった。はたして以前からこの森にいたものなのか、自力で近くの山から飛んできたのか、それとも誰かが放蝶したものか・・・不思議に思った。
 この情報は今年になってまた入ってきた。早速いそうな場所を探しているとアベマキの小枝から小さな白いシジミチョウが飛び出した、まさしくミズイロオナガシジミ。さらに観察するとこの個体は♀で、アベマキの小枝の上を歩き出した。経験的にこの行動は産卵場所を探していると直感した、しばらくすると腹部の先端を直径8mm程の枝にある古芽の窪み(2年前の葉が落ちた跡)に押し付け始めた。産卵が始まった。産卵は1分程で終わる。すると今度は観察している僕のソデの辺りに止り歩き出した・・・見ていると腹部を曲げてまさに産卵行動(写真上)・・・これは良くない、かるく振り払う。彼女は近くのアベマキに移り小枝を歩き新しい産卵場所を探している、よほど産卵がしたいらしい。
 産卵直後の卵(写真下=葉痕の真ん中の白いもの)は、ごま粒程度の大きさで、やや緑色を帯びたつややかなものだった。その後、近くの枝で計3個の卵を見つける、それ以外に今年春にふ化した卵痕のようなものも見つける。この卵はこのまま夏・秋・冬を越し、来年の新芽の季節に幼虫がふ化し、梅雨頃に成虫となり再びこの木のまわりを飛び回る。どのような経緯でここに来たかは判らないが、この様子だと来年も観察できる。Photo:2012/06/20 @京都御苑

2012年6月21日木曜日

第三百五十四夜/オオアオイトトンボ

 なかなかかっこいいイトトンボ、その名はオオアオイトトンボ(Lestes temporalis。前を見据える精悍な面構え、いつでも獲物を見つけ飛び出せる準備の脚部と翼(翅)。体の色は金属的な光沢をたたえる深い碧に輝いていた。大型のヤンマの仲間もかっこいいが、イトトンボの一見、華奢に見える体とは全く違う精悍さに驚く。僕はこちらの精巧さに惹かれるのである。このイトトンボ、水際に生育する樹木の水面上に張り出した枝の生きている樹皮下に卵を産みつける興味深い生態を持っている。Photo:2012/06/20 @京都市

2012年6月20日水曜日

第三百五十三夜/モリアオガエルのオタマジャクシ

 昨日の雨でモリアオガエルの卵塊(泡)が柔らかくなり、オタマジャクシが水面に落下する瞬間を期待して、卵塊を観察する。双眼鏡で見ると泡の中でオタマジャクシの陰が動いている。少しずつ下に移動し下に出来た泡の先端から時折、オタマジャクシが1.2m下の水面に落下するのが見える。三脚を据え、望遠レンズで落下の瞬間をとらえたくて粘る・・・やっと撮れたのがこの一枚。泡から頭を出したオタマジャクシは一息ついた次の瞬間、さすがカエルの子であるピョンと跳ね水中へと落ちていった。次なる瞬間=「卵塊の下の空中で体をくねらせるシーン」を撮ろうと粘るが今日は時間切れ。泡の左上の白ごまのような粒が卵、これはもうふ化しないだろう。Photo:2012/06/20 @京都市

2012年6月19日火曜日

第三百五十二夜/白いイトトンボ

 水際の草地から白いイトトンボがフワフワと飛び出てきた。羽化して間がないモノサシトンボだった。翅も体も白く柔らかそうだが、唯一眼部だけが色を持っている。セミもトンボも羽化直後なのに複眼部だけはちゃんと色がついていて、周辺の様子がよく見えるようである。彼らにとって羽化する時が一番危険な状態である、そのような状況のなかでもさまざまな判断が出来る様に目だけはすっかり機能していると言われている。Photo:2012/06/12 @京都御苑

2012年6月18日月曜日

第三百五十一夜/蛇の目を持つ蝶

 やっと梅雨らしいお天気となってきた、梅雨と言えば「傘」が手放せない季節である。こんな少し薄暗く湿っぽい季節に似合うのがジャノメチョウの仲間。
 写真は「ヒメジャノメ」(姫蛇目、学名 Mycalesis gotama)。薄暗い下草のなかを消極的に飛んでいる。消極的というのはあまり連続して飛ばないと言う事、けっして飛ぶのが嫌だとか苦手と言う訳ではない。このジャノメチョウの仲間の特徴は、翅の紋様に蛇の目(じゃのめ)を持つものが多い。この蛇の目とは、名のごとくヘビの目から名づけられた同心円を基調にした模様のことである。
 僕が学生の頃は、ジャノメチョウの仲間は「ジャノメチョウ科」として科を与えられていたが、最近では「タテハチョウ科ジャノメチョウ亜科」に属するチョウの一種となっている。
 この蝶の仲間は、薄暗いところを好むのと、茶色の地味な体色などから間違って部屋に入ろうものなら「蛾だ!」なんて新聞紙ではたかれるか、すぐさま追い出されるが、そもそも蝶と蛾の区別なんて明確に出来ないのである。大変に気の毒である。

  他にも「蛇の目」と言う言葉は、よく耳にする。例えば、使った事は無いけれど、蛇の目傘、ジャノメミシン 。
  ウィキペディアで調べてみると・・・・
蛇の目傘:畳んだ状態が細身の和傘である。本来は蛇の目に見えるように紙を張り付けたものをいった。
蛇の目の砂:相撲で、土俵際の判定のために整備される土俵のすぐ外に撒かれる砂のこと。かつて土俵が2重であったときの名残である。 蛇の目猪口:酒や醤油の品質を確かめるために用いられる猪口には、濁りをみるために底に青色の輪の模様が入っている。利き猪口ともいう。
蛇の目紋:正式には弦巻紋(つるまきもん)と呼ばれる日本の家紋の一種である。

・・・と言う訳でこの蝶、けっこう和のテイストに満ちている気がする。
Photo:2012/06/12 @京都御苑

2012年6月17日日曜日

第三百五十夜/カラスとドングリ

 今日、またカラス(ハシボソガラス)の賢さを一つ知った。二羽のハシボソガラスがなにやら探し物をしていた。隠した食べ物を探しているのかと観察していると、丸いものをくわえた。双眼鏡で見ると「チョコボール」、なかなかいいものを拾ったと思った。すぐに食べずにチョコボールをくわえてしばらく歩く。今度はそれを脚に挟み、クチバシで割っている。(写真上)なかなか苦労しているが、ようやく中身を食べる。チョコボールなら割らずに食べれるはずである・・・? この行動を何度か繰り返す。
いくらラッキーとは言え、チョコボールがそんなに落ちてはいないだろうとさらに観察、食べていたのは「チョコボール」でなく「ドングリ」だった。食事中のカラスには悪いがその場所を見に行った。なんとそこにはドングリ(アラカシの実)の殻が沢山落ちている(写真下)。驚いた事には、カラスは地表に浮き出た木の根に止まり、木の根の窪みにドングリを入れて=安定させてクチバシで割ったようである。丸く小さなドングリを足で挟むのは容易ではない。そこで木の窪みを利用したのだろう。脚で木の実を挟み割る事は他の鳥でも知られている。しかしこのカラスがこの木の根を「特別な場所」として日常的に利用し実を割っていたとなると、これは「道具に近いもの」を使っていると言ってもいいだろう。次回はこの「特別な場所」でカラスを待つ事にしよう。Photo:2012/06/17 @京都御苑

2012年6月16日土曜日

第三百四十九夜/アオバズクの子育ての季節

 アオバズク(青葉木菟、Ninox scutulata)の子育ての季節に入った。松の洞を巣孔に選んだカップルの♂が近くの枝で見張りをしている。外敵のカラスやオオタカに背後から狙われない様に、背と頭の上には松の枝が多く込み合い、かつ巣孔と周囲を良く見れる場所を選んでいることが判る。この♂は胸のストライプがくっきりと太くなかなかかっこいい。
 さて今年のふ化はいつ頃か? ヒナが孵れば見張りに加え、今以上に食べ物集めがものすごく忙しくなる。Photo:2012/06/16 @京都市

2012年6月15日金曜日

第三百四十八夜/ヤゴの脱け殻

ヤゴ(トンボの幼虫=水蠆)とはトンボ目(蜻蛉目)の幼虫を指す通称(俗称)。水際の草地にヤゴの脱け殻をよく目にする季節になった。脱け殻には背中に開いた小さな割れがある、まるでファスナーか何か付いている様にきれいにあいている。この背中に開けた小さなスリットから新しい体を滑り出し、羽を伸ばし、大きなトンボが現れる。つくづく不思議な構造だと思う。トンボは蝶やカブトムシの様な蛹(さなぎ)の時代がなく、「卵→幼虫→成虫」のように姿を変態させていく。だから基本的には、幼虫と成虫の体の作りには大きな変化は無い。
さてトンボ類は化石として出土し、その歴史は3億年前に生息していた古代トンボ=メガネウラ(日本語ではゴキブリトンボともいう)まで遡り、昆虫の仲間では古くからいる生きものなのである。この仲間で現在知られている限りで史上最大の昆虫「メガネウロプシス・アメリカラ」は翅開長760mm(約30インチ)もあったと言われている。現在はこんな巨大なトンボはいないが、体の構造も、生態もさほど変わっていないはずである。小さなヤゴの脱け殻でさえも、すごく精巧な構造に驚くのだから、この古代トンボ=メガネウラの脱け殻はさぞかし立派で、持ち応えのあるものだろう。現代のトンボの様に俊敏に飛ぶ事ができなかったようだが、生きた個体が飛んでいてもたやすく捕虫網に入らない、巨大な魚を捕るような強靭で大きなネットか投網が必要になるな〜。
ちなみにこの巨大トンボ・メガネウラは「風の谷のナウシカ」の腐海のシーンで「大王ヤンマ」(森の見張り役)として登場していた。写真のヤゴは「マルタンヤンマ」と思われる。Photo:2012/06/12 @京都御苑

2012年6月13日水曜日

第三百四十七夜/アリの高速道路?

 地面に埋め込まれた園路の鉄製の縁(まわりの土と園路をくぎるための縁)の上に行列を作る小さなアリ(アミメアリ?)を見つける。まわりの地面や園路には枝葉や小石がたくさんあるので小さなアリにとって大きながれきの中を歩くようなもの。鉄の縁はまっすぐで平らである、この上を歩けばスムーズだと言わんばかりにものすごい速度で歩いている(走っている?)。
 一昨日(6月11日)、新聞で「JR東日本・山形市の高瀬―山寺駅間でカモシカをはね、車両点検のため一時停止。運転を再開した45分後今度はツキノワグマをはねた」と言う不幸な事故を知った。辺りは山間部で近くには「熊ヶ根駅」と言う名の駅もあるから、もともと野生動物の大変多い地域なのだろう。きっと事故にあった野生動物は、日常の道として草むらやヤブ漕ぎを避けすっきりとした線路を利用していたに違いない。この日の朝はそこに運悪く電車が来てしまった、または地形的に逃げるタイミングを逃したか、ひょっとすると雨が降っていて電車がやってくる音に気付かなかったのかもしれない。短時間の間に大型動物2頭の事故は偶然ではないだろう。新聞記事からいろいろなことを思った。
 さて今日のアリだって、でこぼこの地面を歩くよりは鉄の一本道を歩く方がずっと楽なのである。Photo2012/06/13 @京都御苑

2012年6月4日月曜日

第三百四十六夜/逆さ一輪挿し・コガタスズメバチの巣

イヌツゲの垣根の中にぶら下がる「逆さ一輪挿し」。これはコガタスズメバチの女王蜂が最初に作り上げる巣。高さ12cm、直径5cm程で細い首を下に向けている。削り取った樹皮と唾液で練られ、形作る巣は本当に陶器のようでもある。雨が直接当たらない様に、他者から見つからない様に、巣が大きくなっても下の枝に当たらない様に、本当に具合の良い場所に作られる事に感心する。この巣には既に卵が産みつけられているのか判らない。昨日は時々、出入りを見るが今日は全く出入りを確認していない。Photo:2012/05/27 @京都御苑、京都市

2012年6月2日土曜日

第三百四十五夜/ナミアゲハを見る不審者?

 今日はどこにでもいるナミアゲハなんですが、よく見ると地味ではあるがけっこうきれいな蝶である。この蝶を見ると必ず 日高敏隆先生の「チョウはなぜ飛ぶか」(日高敏隆選集 I )を思いだす。ナミアゲハの♂にとって白黄色と黒のシマの紋様が♀の存在を判断する大切で魅力的なサインなのである。
 実はこの写真の向こう側(樹木の向こう側)には中学校の体育館がありちょうど学生がバレーボールの練習をしていた。僕が蝶の写真を撮っていたところ、それを少し離れて見ていた知人から「不審者扱いされるぞ」って注意されたのだ。なにが問題か判らなかった、それは生徒の写真を盗み撮りしているのと間違えられるというだ。大人が虫に興味を持つことはそれだけでも不審者的に思われそうなのに、加えて背景までもが問題となるとは本当困ったものである。Photo:2012/06/02@守山、滋賀県

2012年5月30日水曜日

第三百四十四夜/樹液を吸うコゲラ

 オオスズメバチが大アゴで傷つけたコナラの樹皮からしみ出す樹液を吸いにやってきたコゲラ。樹液にやってきた昆虫がお目当てと思いきや、虫には見向きもせず樹液を吸っている。鳥だって甘いものには目がないのである。だから目の前にいるシロテンハナムグリなんて石ころ同然の無視である。そのような状況の中でも唯一気にする虫はスズメバチのようだ、実際にスズメバチがやってくると威嚇はするが実力ではスズメバチのほうが強いらしく飛び去ってしまった。もちろんハチがどこかへいけばまた樹液にやってくるのだ。Photo:2012/05/30 @京都御苑

2012年5月29日火曜日

第三百四十三夜/オオスズメバチは偉いのである

 人って生きものを見るとなんだかんだ・・・例えばこのスズメバチを見ると危ないだの、怖いだの好き勝手なことを言うが、よく見ると彼らだった必死に生きているし、彼らのお陰で他の多くの生きものが恩恵を受けることもある。写真のオオスズメバチは、コナラの樹皮を強靭な大アゴで傷つけしみ出す樹液を食べている(吸っている)。
 このスズメバチが樹皮を傷つけるお陰で、シロテンハナムグリやサトキマダラヒカゲ、ゴマダラチョウ、多くのアブやハエ、そしてコゲラまでもやってきて甘い樹液にありつける。一見すると大きな顔をして偉そうに樹液をなめているのだが、彼らにしてみれば自分たちの特権なのである。Photo:2012/05/29 @京都御苑

2012年5月24日木曜日

第三百四十二夜/モリアオガエル

今年のモリアオガエルの産卵は例年に比べ少し遅いようである。鳴き声は時々聞こえるので、丹念に水際を探せば見当たるはず・・・ようやく水際のコケの中から顔を出す個体を見つける。頭だけを出して休息している、眠たそうな面持ちである。これから産卵シーズン、さて今年はどのぐらいの卵塊を見ることが出来るか楽しみである。Photo:2012/05/24 @京都市

2012年5月22日火曜日

第三百四十一夜/メジロを前から見る

 今の季節、ちょっと樹々があるところにいけばさまざまな鳥の囀り(さえずり)を聴くことが出来る、なかでもメジロは小さい体から驚く程の声量を出して囀っている。特に江戸時代からメジロは鳴き合わせる(競争)道楽の対象となってきた、もっとも近年ではそんな遊びもできないが。その囀りは「忠兵衛・長兵衛・忠長兵衛!」とか「チルチルミチル・チルチルミチル!」と例えられている。さて、この身近な野鳥・メジロのことを今まで書いていなかった。よくよく考えればメジロの写真データはPCのトラブルで消えたからだった。そこで写真に収めようとしても収まらないのが自然の生きもの。しかたなく満足でないが先日に撮ったものを眺めて気付いた、それはメジロの正面写真である(頭から尾までがほぼ一直線にならんだ状態)。正面から見るとなんて円形に近い体なんだと・・・早速、円定規で真円を描いてみる(写真の赤い線)となんと驚くばかりにピッタリ!もちろん写真を加工してなんかいません。考えれば飛行機の動体も真円、これが空を飛ぶ生きものの空力構造なんだろう。メジロのくちばしに付いているのは「よだれ」「鼻水」なんかではありません餌です。写真の画像が悪いのは拡大のせいです。Photo:2015/05/22 @京都市

2012年5月20日日曜日

第三百四十夜/テングチョウの幼虫

訳あってテングチョウの説明を数日後にすることになった。フィールドのエノキでは沢山の幼虫を見つけていたが日に日にその数が減っていく、見ているとスズメやメジロが獲っていくことが判る。このままでは説明時にすっかりいなくなってしまうことが予想できたので5頭の幼虫を自宅に持ち帰った。これらを手持ちのエノキの苗で育てる事にした、持ち帰った幼虫はほとんど終齢幼虫、エノキの葉を食べ尽くし数日後にはすべて蛹となった。そして・・・予想した通りフィールドの幼虫は全ていなくなった。テングチョウの説明は幼虫と成虫の写真と実物の蛹ですることにした。Photo:2012/05/20 @京都市

2012年5月16日水曜日

第三百三十九夜/羽蟻を食べるカラス


 京都御苑で葵祭を観た後、園内を散歩。マツの切り株の上でハシブトガラスがなにやら熱心に食べている。こちらでもあちらでも同じような個体がいる。これは何か訳がありそうだと近づく と・・・ご覧のような状況だった(写真下)。なにか細かなものが切り株を覆い尽くしうごめいている、その中でハシブトガラスがクチバシを切り株の面に平行 になるように・・・例えるならスプーンでビンに残ったジャムをそげ落す様に・・・ 飛び出そうと切り株から出てくる羽アリ(ヤマトシロアリ)を食べている(写真上)。テレビの自然系の番組を見ているようだ。
「濡れ手に粟」という言葉があるが状況はそのもの、クチバシで集めた羽アリを団子にして食べている。口に中には相当量の羽アリ団子が入っているようで喉がぱんぱんに膨らんでいる。カラスにとって羽アリは、大変においしいようで2mほど近くで観ていてもいっこうに止める事はしなかった。軽い羽アリはわずかな風でフワフワと舞い上がり、観ているこちらにも飛んでくる、目にも口にも入りそうだ。
 シロアリの羽アリが飛び立つには、いろいろな気象状況が一致しないと起こらないようである。この日も羽アリの発生はわずかな時間だった、人が観てようとカラスはこの時間を逃す訳にはいかないのである。
 シロアリは数万から数百万頭の単位でコロニー(巣)を形成し、女王蟻と王蟻を中心とした高度な社会生活を営んでいる。役割分担に応じたそれぞれの形態があり、これを階級(カースト)と呼ぶ。ヤマトシロアリの場合、4月中旬から5月中旬の雨が降った翌日などの気温が上がり蒸し暑くなった無風の日の午前中に飛び立つらしい。飛び出した羽蟻は地面に落ちるとすぐに自ら羽を切り落とし、そして雌が誘引物質を出し、雄が寄ってきたところでつがいになり新しい巣を作る。まさに前日の15日は雨天で葵祭が翌日16日になった。気温も上がり、風もほとんどなかった、飛び出す条件がそろったようだ。カラスにとっては「花より団子」・・・この一年の中でも、超旬の食べ物を味あわずにはいられないのだ。このカラスも興味深いが、切り株には 巣立とする羽アリを見送る様に白い働きアリが出てきていた。働きアリは白く、か弱い感じの体つきで枯れ木で孔を掘って暮らすに適した形態、羽もないので飛ぶ事は出来ない。なのに切り株の上まで出てきている。彼らには彼らの感情とか意識があるんだろうなとつくづく思う。人間がそれを感じる能力がないだけでね。図らずもカラスの話題が続いてしまった。メジロやツバメの巣を襲うカラスは憎い存在だが、やっぱり面白い生きものである。Photo:2012/05/16 @京都御苑


2012年5月10日木曜日

第三百三十八夜/マヨネーズとハシボソガラス

カラスと言う鳥は、ほんとうに観ていて飽きない。今日のカラス(ハシボソ)は草地に飛来したかと思うと草の根元からビスケットぐらいの白い四角いものをクチバシで拾い上げた。これはあらかじめ隠してあった食べ物だろう。カラスは食べ物を木のウロや、草むら、時には線路敷きの砂利の下に隠す「貯食」という習性がある。もちろん隠した食べ物はちゃんと後で食べるのである。
写真のカラスはその白いものを脚で押さえてしきりにクチバシで何かしようとしている。しばらく経ってようやく、中身を食べ始めた。クチバシは真っ白に汚れている。やがて満足したように小さなゴミを残し、近くの木に移りクチバシをきれいにし始めた。
さて、何をいったい食べていたのか?僕はカラスがいた場所に行った・・・それはお弁当に付いている「マヨネーズわさび風味」とプリントされた小袋だった。マヨネーズの小袋は隅が三角形に切り取られ、あのクチバシでどうやって食べたかと思う程すっかり内容物が無くなっていた。先ほどまで僕がカラスを観察していたが、今はカラスが僕を観察している。空になった小袋を拾い上げる人間を観てカラスは何を思っているのだろうか?僕はこの小袋をもとあったように置きその場を立ち去った。きっとカラスはもう一度、この小袋をつまみ上げ、「???」と思うのだろうな。
夜中なのに先ほどからカラスが 騒いでいる・・・とこの後「ドンッ!」0時20分地震だ。京都南部震度3。地盤の微妙な揺れは、木の根から幹に伝わり、カラスが寝ている枝に伝わる。この地盤の揺れを察知して騒いだのだろう。カラスは本当に興味深い生きものである。Photo:2012/05/08 @京都御苑、京都市

2012年5月7日月曜日

第三百三十七夜/巣立ちのモズ

 仕事先でモズがしきりに警戒の鳴き声をあげは始めた。今の季節だから近くに巣でもあるのだろうと遠ざかった時に横から巣立ちビナが飛び立った。十分に飛べるのだがまだまだ自由にとは行かずに、このあと横の茂みに逃げ込んだ。ヒナは全部で3羽だった。親鳥が警戒の鳴き声をあげると近くのキンモクセイの刈り込みに逃げ込みじっとしている。この近くで巣をかけていたのだろうか、数本の込み入った樹木のまわりから離れようとしない。近くでは親鳥が子ども達の居場所と外敵の侵入を見張っている。ヒナ鳥の大きさは、親鳥とほとんど同じで、尾羽を上下に動かす仕草もすっかりモズらしい、ただ尾羽の長さは親の1/3ほどでまだかわいい。観察していると近くのケヤキの木にカラスが巣をかけている。どうも親鳥の警戒は僕よりもむしろカラスかも知れない。カラスの巣の近くではムクドリも見張りをしていたから彼らも近くに巣を持っているに違いない。この季節、モズやムクドリにとって卵や子どもを襲うカラスの存在が一番の脅威に違いない。Photo:2012/05/07  @近江八幡、滋賀県

2012年5月6日日曜日

第三百三十六夜/ノコギリクワガタの初もの

滋賀県栗東の里山で森の整備に行く。参加者のTさんが腐った切り株を動かしたら中から現れたのが小振りのノコギリクワガタ(♂)。今の時期に成虫と言う事は、昨年春に蛹から羽化したものがそのまま一年を朽木内で過ごした新成虫である。外に出て樹液に来るのはもう少し先だと思う、写真を撮った後、再び朽木に戻しておいた。この個体を見て子どもの頃よく捕まえたのはこのタイプの小型ばかりだったことを想い出す。牛の角のような湾曲する大アゴを持つ個体は、ほとんど採れなかった。成虫の大きさを決定するのは、幼虫時の環境と言うけれど地域的な特徴もあるだろう。Photo:2012/05/06 @栗東市、滋賀県

2012年5月5日土曜日

第三百三十五夜/街に舞うトビ

  京都の東山連山を代表する大文字山に登る。山頂からはトビが風に乗り空中で停止するのが間近に見える。風に流されたかと思うと上手く気流に乗り上へ下へ、急降下をしても再びももとの空間に戻ってくる・・・トビの尾羽は体(左右の翼)に対して直角になるほど自由に舵をきり、左右の翼と首でも微妙に体重移動をしているように見える。観ていてまったく飽きることはない。時間を忘れて観てしまった。時々、カラスが追いかける、無風なら勝ち目もあるが、こんな強い風に乗るトビにはかなわない。シジュウカラ、キビタキ、アオゲラの声を聞き、ツミと思われる小型のタカの姿も見れた。Photo:2012/05/05 @大文字山、京都市

2012年5月2日水曜日

第三百三十四夜/エノキの虫こぶ

 エノキの新葉にテングチョウの幼虫を探している時に不思議なものを見つけた。葉の表面にドングリのような形の緑色した「こぶ」である、これは「虫こぶ(虫瘤)」と呼ばれるもので、植物の内部に昆虫が卵を産み付けることによって、植物組織が異常な発達を起こしてできるこぶ状の突起のこと。虫癭(ちゅうえい)とも言う。虫こぶは、昆虫の種類と樹種(樹木の種類)の関係が強いようで、どれでもいいと言う訳ではなさそうだ。
 ある特別の関係が必要。今日、見つけた虫こぶの場合=「(植物名)+(部位)+(形状)+フシ」→「エノキ+ハ+トガリ+タマ+フシ」と呼ばれる。この虫こぶの中には、エノキトガリタマバエの幼虫が入っているはずである。この虫こぶは、もう少しすると、葉から脱落して下に落ちてしまう(写真の葉上には2個が並ぶが、葉の中ほどに既に落ちてしまったと思われる丸い痕跡がある)。幼虫は、地上におちた虫こぶの中で、来年の春まで過ごし蛹になり、3~4月に成虫になって虫こぶから出て、エノキの新芽に産卵する。どんなハエか知らないが、全く不思議な生活である。Photo:2012/05/01 @京都御苑、京都市
参考文献:日本原色虫えい図鑑 湯川淳一、桝田長 編著 全国農村教育協会

2012年5月1日火曜日

第三百三十三夜/これでもガの仲間

草地を低く、草葉を縫う様にしてハタハタ・フワフワと小さな虫が飛ぶ。目立つのはその虫の白く長くしなやかな触覚。体長の3倍はありそうなヒゲのためにバランスが少々悪いようだ。ようやく葉に止まる。まぎれも無く小さなヒゲナガガの仲間。調べるとクロハネシロヒゲナガ(ヒゲナガガ科)、種名が読みにくいので・・・クロハネ・シロ・ヒゲナガ(ガ)と区切ると判りやすい。写真は長く立派な触覚(ヒゲ)を持つ♂の個体だが、♀の個体の触覚はもう少し短く、根元が黒く太い。名前の由来は体の特徴の「黒い翅+白い+長いひげ+蛾」より・・・とはいってもこの黒い翅に光があたると一瞬きらりと緑紫のような微妙な色にひかりきれいだった。最初の一頭に気がつくと、辺りの草地に沢山飛んでいることに気付く。ただし全部♂で、彼らはもうすぐ羽化するであろう♀を探し待っているに違いない。果たしてどんな生活をしているのだろうか。Photo:2012/05/01 @京都御苑、京都市

2012年4月25日水曜日

第三百三十二夜/セアカクロキノコバエ

  すっかり暖かくなって樹林地では、ハグロケバエがわんわんと飛び出している。羽化した個体が地面を歩き、梢ではフワフワと舞っている。同じようなケバエが葉に止まっている。こちらは体が赤い種類と思い写真を撮る。最初は気付かなかったのだが頭部の大きさ、触覚の形状でケバエでない事に気付く。体つきは、ガガンボの様でもあり、チュウレンジバチの様でもある。小さな頭部に鮮やかな橙赤色の体、黒い翅が特徴的で触覚と脚が長い。調べるとセアカクロキノコバエと判った。名前から想像できる様に幼虫はキノコ類の菌糸を食べると推定されている。普段は出会っても素通りしてしまうような虫なのだが、ケバエを観ていておまけのごとく気がついた。一度見ると興味が向かう。Photo:2012/04/24 @京都御苑、京都市

2012年4月24日火曜日

第三百三十一夜/テングチョウ

 今日はTシャツ一枚で過ごせる程の暖かな一日。ツマキチョウ、モンシロチョウ、キチョウ、キタテハ、ナミアゲハ、テングチョウなど元気に飛んでいた。エノキの枝先の新芽はすっかり開き始め、そこには産卵をしようとテングチョウが行ったり来たり。ゴマダラチョウの幼虫もそろそろ落ち葉の下から枝先に登りはじめる頃だろうと思う。里ザクラの花も満開、ウワミズザクラとコナラも開花し始めた。テングチョウは今日で3回目の登場です。Photo:2012/04/24  @京都御苑、京都市