2012年5月16日水曜日

第三百三十九夜/羽蟻を食べるカラス


 京都御苑で葵祭を観た後、園内を散歩。マツの切り株の上でハシブトガラスがなにやら熱心に食べている。こちらでもあちらでも同じような個体がいる。これは何か訳がありそうだと近づく と・・・ご覧のような状況だった(写真下)。なにか細かなものが切り株を覆い尽くしうごめいている、その中でハシブトガラスがクチバシを切り株の面に平行 になるように・・・例えるならスプーンでビンに残ったジャムをそげ落す様に・・・ 飛び出そうと切り株から出てくる羽アリ(ヤマトシロアリ)を食べている(写真上)。テレビの自然系の番組を見ているようだ。
「濡れ手に粟」という言葉があるが状況はそのもの、クチバシで集めた羽アリを団子にして食べている。口に中には相当量の羽アリ団子が入っているようで喉がぱんぱんに膨らんでいる。カラスにとって羽アリは、大変においしいようで2mほど近くで観ていてもいっこうに止める事はしなかった。軽い羽アリはわずかな風でフワフワと舞い上がり、観ているこちらにも飛んでくる、目にも口にも入りそうだ。
 シロアリの羽アリが飛び立つには、いろいろな気象状況が一致しないと起こらないようである。この日も羽アリの発生はわずかな時間だった、人が観てようとカラスはこの時間を逃す訳にはいかないのである。
 シロアリは数万から数百万頭の単位でコロニー(巣)を形成し、女王蟻と王蟻を中心とした高度な社会生活を営んでいる。役割分担に応じたそれぞれの形態があり、これを階級(カースト)と呼ぶ。ヤマトシロアリの場合、4月中旬から5月中旬の雨が降った翌日などの気温が上がり蒸し暑くなった無風の日の午前中に飛び立つらしい。飛び出した羽蟻は地面に落ちるとすぐに自ら羽を切り落とし、そして雌が誘引物質を出し、雄が寄ってきたところでつがいになり新しい巣を作る。まさに前日の15日は雨天で葵祭が翌日16日になった。気温も上がり、風もほとんどなかった、飛び出す条件がそろったようだ。カラスにとっては「花より団子」・・・この一年の中でも、超旬の食べ物を味あわずにはいられないのだ。このカラスも興味深いが、切り株には 巣立とする羽アリを見送る様に白い働きアリが出てきていた。働きアリは白く、か弱い感じの体つきで枯れ木で孔を掘って暮らすに適した形態、羽もないので飛ぶ事は出来ない。なのに切り株の上まで出てきている。彼らには彼らの感情とか意識があるんだろうなとつくづく思う。人間がそれを感じる能力がないだけでね。図らずもカラスの話題が続いてしまった。メジロやツバメの巣を襲うカラスは憎い存在だが、やっぱり面白い生きものである。Photo:2012/05/16 @京都御苑


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