2012年6月22日金曜日

第三百五十五夜/ミズイロオナガシジミの産卵

 京都御苑にミズイロオナガシジミ(Antigius attiliaが確認されたと聞いたのは昨年だった。ミズイロオナガシジミは、ゼフィルスと呼ばれるミドリシジミの仲間で、決して珍しい種類ではないのだが子どもの頃はこれを捕虫網に収め、標本にする事でゼフィルスの世界に一歩踏み込んだと満足だった。よりきれいな個体(翅に一つの傷もない)を手に入れるために冬の雑木林に入り、卵を採集し成虫まで育てた数は楽に百を越えたと思う。そんな蝶なので是非見てみたいと探したがダメだった。はたして以前からこの森にいたものなのか、自力で近くの山から飛んできたのか、それとも誰かが放蝶したものか・・・不思議に思った。
 この情報は今年になってまた入ってきた。早速いそうな場所を探しているとアベマキの小枝から小さな白いシジミチョウが飛び出した、まさしくミズイロオナガシジミ。さらに観察するとこの個体は♀で、アベマキの小枝の上を歩き出した。経験的にこの行動は産卵場所を探していると直感した、しばらくすると腹部の先端を直径8mm程の枝にある古芽の窪み(2年前の葉が落ちた跡)に押し付け始めた。産卵が始まった。産卵は1分程で終わる。すると今度は観察している僕のソデの辺りに止り歩き出した・・・見ていると腹部を曲げてまさに産卵行動(写真上)・・・これは良くない、かるく振り払う。彼女は近くのアベマキに移り小枝を歩き新しい産卵場所を探している、よほど産卵がしたいらしい。
 産卵直後の卵(写真下=葉痕の真ん中の白いもの)は、ごま粒程度の大きさで、やや緑色を帯びたつややかなものだった。その後、近くの枝で計3個の卵を見つける、それ以外に今年春にふ化した卵痕のようなものも見つける。この卵はこのまま夏・秋・冬を越し、来年の新芽の季節に幼虫がふ化し、梅雨頃に成虫となり再びこの木のまわりを飛び回る。どのような経緯でここに来たかは判らないが、この様子だと来年も観察できる。Photo:2012/06/20 @京都御苑

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