2012年6月28日木曜日

第三百五十九夜/虫こぶ〜究極の「衣食住」

果実のような、葉のような、なんとも得体の知れない塊を樹木の葉によく見る、どことなく植物の様でもあるが違う気がする、やはり気持ち悪い。だから存在は知っていてもそこには何かが潜んでそうで子どもの頃から苦手だった。長い間、見て見ぬ振りをしていた気がする。これは「虫えい・虫瘤(英: gall)」と呼ばれるものだ。ところが最近、糞虫の研究者であるT先生からいろいろな虫瘤のお話を伺う様になると、逆に興味が湧いてきた。よく知らないことが、身を遠ざける気持ちを生み出していた事が判る。
先日は写真の「エゴノネコアシ」と言う虫瘤を教えて頂いた。エゴノキの枝先に小さなモンキーバナナ型の実のような物体がついている。エゴノネコアシとはよく言い当てた名を付けたと思う。実はこの中には「エゴノネコアシアブラムシ(Ceratovacuna nekoashi」(←学名にまで「ネコアシ」ってついている)というアブラムシが入っていて、植物の内部に卵を産み付けることによって、植物組織が異常な発達を起こしてできるという。だからこの虫瘤を割れば中からぞろぞろとアブラムシが出てくる。興味深い事には、アブラムシがエゴノキに入らないと出来ないらしい。
他の樹木でも虫瘤はできるが、ある特定の昆虫(アブラムシやハチ、ハエなど)または細菌が、それにあった特定の植物に入らないと出来ないらしい。まったく不思議な関係である。昆虫はこの中にいれば食も保証され、外敵からも身を守れる、これは虫達にとって究極の「衣食住」ではないか! さて一方、体内(枝・葉内)に入られた植物にとってのメリットはなにかあるのだろうか・・・。Photo:2012/06/26 @京都御苑

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