2012年6月15日金曜日

第三百四十八夜/ヤゴの脱け殻

ヤゴ(トンボの幼虫=水蠆)とはトンボ目(蜻蛉目)の幼虫を指す通称(俗称)。水際の草地にヤゴの脱け殻をよく目にする季節になった。脱け殻には背中に開いた小さな割れがある、まるでファスナーか何か付いている様にきれいにあいている。この背中に開けた小さなスリットから新しい体を滑り出し、羽を伸ばし、大きなトンボが現れる。つくづく不思議な構造だと思う。トンボは蝶やカブトムシの様な蛹(さなぎ)の時代がなく、「卵→幼虫→成虫」のように姿を変態させていく。だから基本的には、幼虫と成虫の体の作りには大きな変化は無い。
さてトンボ類は化石として出土し、その歴史は3億年前に生息していた古代トンボ=メガネウラ(日本語ではゴキブリトンボともいう)まで遡り、昆虫の仲間では古くからいる生きものなのである。この仲間で現在知られている限りで史上最大の昆虫「メガネウロプシス・アメリカラ」は翅開長760mm(約30インチ)もあったと言われている。現在はこんな巨大なトンボはいないが、体の構造も、生態もさほど変わっていないはずである。小さなヤゴの脱け殻でさえも、すごく精巧な構造に驚くのだから、この古代トンボ=メガネウラの脱け殻はさぞかし立派で、持ち応えのあるものだろう。現代のトンボの様に俊敏に飛ぶ事ができなかったようだが、生きた個体が飛んでいてもたやすく捕虫網に入らない、巨大な魚を捕るような強靭で大きなネットか投網が必要になるな〜。
ちなみにこの巨大トンボ・メガネウラは「風の谷のナウシカ」の腐海のシーンで「大王ヤンマ」(森の見張り役)として登場していた。写真のヤゴは「マルタンヤンマ」と思われる。Photo:2012/06/12 @京都御苑

0 件のコメント: