2009年4月23日木曜日

第七十四夜/エナガの巣

仕事の下見で滋賀県近江八幡市の八幡山(標高271.1m)に登る。下りの雑木林の中で同行のNさんがコンクリート製の休憩所の屋根の上に「羽の塊」を見つける。鳥の死骸か? なぜか運良く、傍らに錆びた脚立が・・・こうなれば手に取って見るしか無い。屋根に上がってみるとそれは苔と(鳥の)羽の塊だった。手に取ると驚くほど温かい(と感じた)。ひと言で言えば「苔に覆われた羽布団が爆発した感じ」。その大きさと巣材から考えると「エナガの巣」に間違いないと思う。巣材の羽を見ると、キジバト、アオバト、スズメ、アオサギ、カモ類・・・と判る、多分十数種類の鳥の羽が混じっていると思う。(全て並べて種類を調べてみる予定)それにしても小さなエナガが良くこれだけの羽を集めたのかと感心した。【2009/04/23】Photo:@滋賀県近江八幡市八幡山

2009年4月21日火曜日

第七十三夜/オドリコソウ


 今日は小雨の中、京都御苑を歩く。野鳥は、スズメ、シジュウカラ、コゲラ、メジロ、ハシブトガラス、キジバト、ドバト、ムクドリ、ヒヨドリ、ビンズイ、イカル、シメなどいつもの顔ぶれ。ただし特記としてアカハラ、コマドリが見れた。両者、大きさの差はあるが同じツグミ科の仲間、胸羽が赤いところも似ているのが面白い。コマドリはカメラ視線でバードバスに来て、多くのカメラマンに囲まれていた。一方、アカハラは一羽でしきりに枝垂桜の下で落葉をかき分け、時折なにかをついばんでいた。アカハラが落葉かきをしていた場所で同じ様にしてみたけれどアリぐらいしか見当たらなかった。はたしてアリを食べていたのだろうか?

 公園協会のSさんにオドリコソウの群落を見せて頂く。草地でおなじみのヒメオドリコソウに比べ草丈も高く、花も一回り大きな感じがする。ケヤキの林床に群落を作っているためかヒメオドリコソウのような暑苦しさはない。ここでは、白花と薄いピンクのものが見れた。【2009/04/21】Photo:@京都御苑

2009年4月13日月曜日

第七十二夜/ヒゲナガカワトビケラ


 夜、鴨川の端にある地下鉄の出入口のライトにたくさんの虫が集っていた。これは子どもの頃、鴨川や疎水に魚釣りで昼夜を問わずいつも現地調達できた生き餌だった。当時、現地で魚釣りをしていたおじさん達はこれを「チョウ」と呼ぶと教えたくれた、しかしチョウと言うよりも一見蛾のようである。この昆虫、蝶でも蛾でもない。本名を「ヒゲナガカワトビケラ」と言う。確かに名前の通りヒゲ(触角)が長く、体長以上の長さを持っている。この虫の幼虫は、川底の小石の間に糸で網(巣)を張りそこにかかる落ち葉や藻、昆虫を食べていると言う。この幼虫も成虫同様、いい釣り餌に使える。さらにこの仲間の幼虫は人間も食べ(つまり食用)、長野県伊那谷では「ざざむし」と呼ばれ主に佃煮や揚げ物などにして珍味として売っている。佃煮加工後は見た目ゼンマイかワラビの様ではあるが、生きている状態を知ってる僕は食べる気にはなれない(というのが正直なところ)。
【2009/04/12】Photo:@川端丸太町地下鉄出入口、京都

2009年4月10日金曜日

第七十一夜/コサギ


 芦屋川(兵庫県)にかかる橋の上から川面をみると、一羽のコサギがしきりに魚を捕っていた。川中に立ち黄色い足先で川底を泥を上げない様に注意深く掻いている。踊りのドジョウすくいの時の足の動きにも似ている。時々、小魚が飛出しサギのつくる影に逃げ込むようだ。狙いを定め、水中にクチバシを差し入れる。小魚が逃げれば、早足で追いかける。見ていると飽きない。さて、彼らのお腹を満たすためには一日どれぐらいの魚が必要なのか? 
写真上:足先で川底を「サッサッサ・・」と小刻みに掻き、小魚が飛出すのを待つ。写真下:飛出した獲物を見定め「ズバッ」と水中に頭を突っ込む。【2009/04/10】@芦屋川

第七十夜/テングチョウ

 今日はとても暖かな一日だった、京都御苑を散歩。キチョウ、ツマキチョウ、ムラサキシジミ、ルリタテハ、キタテハ、ヒオドシチョウなどの越冬を終えたチョウをずいぶん見る事が出来た。このテングチョウ(天狗蝶)も越冬を終えて元気に飛び回っていた。地味ながらなかなか愛嬌のあるチョウだ。幼虫はエノキの葉を食べる。【2009/04/09】Photo:@京都御苑・母と子の森

2009年2月27日金曜日

第六十九夜 道でシジュウカラを拾う


 自宅近くの路地で一羽のシジュウカラが死んでいた。羽やクチバシや脚に汚れたところも無く,とても美しい個体だった。健康な個体そのもののように思われた。死因は判らない(解剖すればだいたいの見当はつくのだが)が,建物の窓に追突したように思われた。路上から小鳥を拾い上げ,小鳥の軽さに驚き,そして手にした羽の美しさに見とれたのだった。すぐそばに小学校の道路脇花壇があったので植え込みの中においた。【2009/02/26】Photo:@京都市左京区岡崎

2009年2月24日火曜日

第六十八夜 冬のニホンミツバチ

 仕事の出張先で以前から観察をしているニホンミツバチの巣を見に行く。霊園の中にある一本のヒノキのウロに営巣して5年ほど経つ。人通りの多いところではないが,通常は危険と思われすぐに撤去されてしまう。そこで「ここに巣をつくるミツバチはニホンミツバチです。いたずらしないかぎり刺す事はありません。見守ってやって下さい。」と張り紙をした。実際にとてもおとなしく,この巣の写真を何度も撮った時も,巣の入口に止まっているハチを指で触った事も刺される事は無かった。(でも真似はしないでください)もちろんこの件は霊園管理事務所にも伝え,巣の保護をお願いした。効果があったのか一度の苦情も無く,撤去される事も無く営巣している。今日はその木のウロの下に一片の巣が落ちていた。拾い上げると一匹のニホンミツバチが止まっている。巣には冬の蓄えの蜜はなく,空っぽだったのでこのままで越冬出来るかは確かではないが,巣をウロの奥に入れておいた。暖かな日には梅花の蜜を求めて飛ぶと思う。もうすぐ春だ頑張れ。【2009/02/23】
Photo:2009/02/23 @谷中霊園,東京都台東区

2009年2月13日金曜日

第六十七夜/砂玉のまち



 熱帯雨林の森を後に街に戻る。砂浜に行くと無数の砂団子があった。直径5〜10mm程度。だいたい中心には砂団子の2倍ぐらいのサイズの穴がある。これはカニの巣穴だ。なぜ砂玉が出来るのか。これはカニが昼間に潮が引くと巣穴から砂をかき出しながら現れ、活動を始める。カニは掘り出した砂を団子状にして外に捨てる。これを繰り返したため、巣穴の周りには小さな砂団子が放射状に多数残される。よく見ると巣穴に近い砂団子ほど乾燥して,遠くのものほど湿っている。つまり穴に近い場所から砂団子を捨て始めるようだ。砂団子の間の通路には細かなカニの足跡が残っていた。砂団子の大きさの違いは,カニの大きさの違い。カニが運び出す砂団子を見ているとそれぞれの力関係も判るようだった。
カニは砂の中の有機物やプランクトンを鋏脚でつまんで口に入れ、食物を濾した残りの砂は口の上部に丸く固め、鋏脚で切り取って足元に捨てる。食べかすも砂団子になる。
体表の模様は砂浜に紛れる保護色となり、遠目には砂の塊が動いているようにも見える。砂面に目が慣れて来ると巣穴に逃げ込むカニが判る。中には他の個体の巣穴に逃げ込んで巣穴の主に追い出され、逃げまどうものもいる。歩くと地面に伝わる振動でカニが隠れなかなか見れないが,巣穴の横で動かずに待っていると数分で姿を現した。
砂団子をいくつかの巣穴に転がすと,それぞれいくつもいくつも転がり落ちていった。ただし,どの巣穴もいくつか入れたところでそれ以上は落ちなくなる。2つのシーンが想像できた。一つ目はまっすぐに掘られた穴も途中で横に曲がっている。二つ目は穴の途中にいるカニに砂団子が引っかかってしまった。どちらもカニにとっては迷惑な話しだ。
砂浜に広がる砂団子を見ていると,飛行機から見た時の住宅地や街のようでも,里山と谷戸地形のようでもあった。これがカニ達とっての街そのものなんだろうなと思った。ちなみにこの砂玉のまちは,満ち潮が来ると全てなくなり,引き潮になるとカニ達が再び同じ作業を繰り返す。【2009/02/13】

Photo(上):砂浜に広がる砂団子,飛行機から見る里山の地形に似ている。Photo(中):巣穴から放射状に広がる砂団子。Photo(下):静かに待っているとカニが姿を現した(コメツキガニの仲間と思う)。@Tanjung Aru, Kota Kinabalu, Malaysia. 2009/01/21

2009年2月12日木曜日

第六十六夜/タテハチョウの一種

 
 ブルネイの熱帯雨林の森で粘りにねばって撮れたタテハチョウの一種(Terinos clarissa ♂)。この蝶もなかなか止まらない,風の向きや光の方角を考え慎重に近づくがあと少しと言うところで必ず逃げられてしまった。しかも,決して遠くには逃げず,すぐに戻って来る。これにはなんとも悔しい。この機会を逃せばもう会えないかもしれない。こんな時はじたばた動かず,蝶が戻って来るのを待つ方が良い。そしてやってきたらゆっくり,時にはすばやく近づいて撮る。今回も最後はいつもの様に地面に腹這いになってなんとか撮れた。お腹の下にはアリの行列。これには近くで見ていたガイドも笑ってた。端から見れば面白いに違いない。【2009/02/12】
Photo(上):翅の裏はオレンジ色の地色に銀色の縞模様。Photo(下):翅を広げると全体は黒に近い濃紺色,後翅の一部に鮮やかなオレンジ色がきれいだった。翅には傷の一つもない,羽化したての個体のようだった。@Temburong River,Batang Duri. Brunei 2009/01/17

2009年2月11日水曜日

第六十五夜/朽木に見つけた甲虫

 テレビで見る熱帯雨林には,非常にたくさんの生きものが映し出される。しかし実際に森を歩いてみると意外と昆虫には出会えないものである。今回,甲虫で一番大きかったものがこの朽木に止まる虫。名前は判らない,体長4.5cmぐらい,光沢のある体にオレンジ色の斑紋がきれいだった。これはオオキノコムシの仲間か。朽木に発生したオレンジ色の菌類を食べているようだった。つまみ上げてみると動きは鈍い,指先にかすかな臭みが残った。【2009/02/11】@Batang Duri. Brunei 2009/01/17

2009年2月10日火曜日

第六十四夜/ウラナミジャノメの仲間

 森のテントの周りをしきりに飛び回っているウラナミジャノメ(ジャノメチョウの仲間)が一頭。写真を撮ろうと近づくと逃げられてしまう。そこでいつもの様に観察してみるとある一定の場所を回っている事が判った。お目当ては,葉っぱの上の水滴らしい。この手の仲間は,花になんか来ない。腐った果実なんかが大好物。このチョウを引きつけている葉っぱの水滴は何だろうか,葉っぱに止まりしきりに吸っていた。さて,このチョウの名前をガイドに聞いてみた。答えは「クプクプ」(マレー語で蝶の意味)。違うチョウの名前を聞いてみた。こちらも「クプクプ」。どのチョウもみんな「クプクプ」なのだ。つまり生活にあまり役に立たないものに関しては固有の名前はつかない。せいぜいついて「クプクプ・メラ」程度である。これは「赤いチョウ」の意味。翅が赤ければみんな「クプクプ・メラ」になってしまう。白い蝶の場合は「クプクプ・プティ」。そうだ唯一,彼らが知っている蝶の名前があった。現地で「Rajah Brooke's 」ラジャ・ブルックスと呼ばれる大型のアゲハチョウである。(学名:Trogonoptera brookiana 和名:アカエリトリバネアゲハ)名前は19世紀のマレイシア・サラワク王国初代白人藩王(ラージャ)だったジェームズ・ブルック卿に献名された学名より。ガイド達がこのアゲハチョウの名を知っているのは土産物売り場で展翅されたものが売っているからである。今回は3度,遠くを飛び去る姿を見た。【2009/02/09】

Photo:葉上の水滴を吸うウラナミジャノメの一種 @Batang Duri. Brunei 2009/01/17

2009年2月8日日曜日

第六十三夜/電灯に来たハンミョウ

 夜の電灯にはいろいろな生きものが集る。昼間の森をどれだけ歩いても出会えない昆虫もやって来る。この夜,雨に中を電灯にやってきたのはハンミョウ(体長20mmぐらい)。英語では「Tiger beetle」と呼ばれる。素早く走り回り、獲物を捕まえる姿がネコ科の動物に似ていることからそう呼ばれるようになったらしい。灯火に来た個体は,日本のニワハンミョウに似るが翅の斑紋が赤い(日本のものは白い斑紋)。昼間の森を歩いても見る事はなかった。しかもこの一頭も写真を撮った後,どこかに飛び去ってしまった。熱帯の森に住む生きものは,種の多様性に富むが,その種毎の個体数はけっして多くはない。いつも一期一会なのだ,今度いつ会える? さて,気になる種名だが,東南アジアには500種類以上のハンミョウが分布しており,アフリカ、中米に並んでハンミョウの種類が多いエリアと言う。満足な図鑑はないので種名を知るにはかなり難しそうだが,会えただけで満足である。【2009/02/08】
Photo:電気にやってきたハンミョウの一種(種は不明) @Batang Duri. Brunei 2009/01/17

2009年2月7日土曜日

第六十二夜/極細の脚のカワトンボ

 森の細流を歩くと川面にぴかりぴかりと金属的な緑色の昆虫が飛び逃げる。小さなカワトンボの仲間だが,どうしても写真に撮れない。そんな中やっと撮れたカワトンボの一枚。残念ながら先の金属色に輝くカワトンボではない,しかしなかなかきれいな姿をしている。熱帯の森の林縁は,太陽光の当たる場所と日陰との陰影のコントラストが強く,そんな環境の中を飛ばれると,本当に居場所が判らなくなる。マレイシアには,マレーバクと言うパンダ柄(白黒)のユニークなほ乳類がいる。動物園で見るとその体色で居場所がすぐに判ってしまうが,そのはっきりと分かれた白黒の体色も陰影の強い川岸の風景にまぎれると言う。だから白黒もりっぱな保護色なのだ。金属色の羽色を持つトンボも同じ。きらびやかな翅も止まっている時は黒く見え,飛び始めると川面には反射する陽光や水の流れにまぎれてしまう。【2009/02/07】
Photo:川岸に休むカワトンボの一種,緑色の体色に極細の脚がとても美しい @Batang Duri. Brunei 2009/01/17

2009年2月6日金曜日

第六十一夜/食べて理解・熱帯魚のフライ

 森歩きのガイドが夕食を獲りに行こうと言う・・・といっても場所はテントのそばを流れる川である。道具は,釣針,オモリ,テグスである。餌はその辺りの地面を掘ればいくらでもいるミミズ。川岸から餌をつけた仕掛けを川に適当に投げ入れ,当りを待つ。今日は釣果が良くないらしい。連日の雨で川が濁り,水温も下がっているのが原因か。さすがのガイドの仕掛けにもなかなか当りがこない。粘りに粘り小一時間かかってなんとか自分の食いぶち分の魚をそれぞれ上げた,といってもみんな小物ばかり。釣果はオイカワのような銀色のきれいな魚1匹(20cmぐらい),小さなナマズ1匹,スパイニール(ウナギを平たくした様な魚=熱帯魚店で見た記憶がある)が数匹。僕は小ナマズと小スパイニール。そして最後に尺物スパイニールを落としてしまった。逃げたサカナは大きい。あげくのはて,大切な針を川底に引っ掻け,糸を切ってしまった。結局,時間も道具も失ってしまった。魚の写真を撮ろうと思い,小屋に戻ると既に時遅し,フライなって皿に盛られていた。熱帯魚店で人気のスパイニールは小骨が多く,しかもむちゃくちゃ硬く味なんてもんじゃなかった。釣れない,食えない,撮れないの三重苦だった。但しこの日の夕食は,シダ類の新芽(現地名:キパス,近くの草むらでいくらでも採れた)の炒め物に魚のフライ,そしてチキンカレーとご飯,けっこう多彩なメニュー。全て現地調達の食材だった。そんな訳で今夜は生きものならぬ「あげ物」の話しとなってしまった。生きものを知るためには食べてみる事も大切だ。【2009/02/05】
Photo:中央で姿をとどめているのがオイカワ形のサカナ,周りでバラバラになっているのがスパイニール。@Batang Duri. Brunei 2009/01/17

2009年2月5日木曜日

第六十夜/夜活動するスズメバチ

 森の夜,近くの小屋でハチを見つける。ハチは一般的には昼行性なので気になった。日本のアシナガバチの様に寝てはいない。大きさは日本のアシナガバチを少し大きくした程度(体長25mmぐらい)。活動していたのでいたずらは止した,こんなところで刺されでもしたら大変。写真をもとに調べてみると「オオヤミスズメバチ(Provespa noctarna)」の仲間のようだ。夜行性のハチの特徴として,目が大きく,体の色が淡いなどの共通した特徴があるらしい。【2009/02/05】Photo:@Batang Duri. Brunei 2009/01/17

2009年2月4日水曜日

第五十九夜/アリとシロアリ

 熱帯雨林の夜は,想像以上に騒々しい。日本の森とはケタ違い。これも生物多様性の森のなせる技か。森の我が家・テントの中で横になっていると,すぐ脇から,時には遠くの森から,コオロギやキリギリス,セミ,カエル,鳥,鹿の声をはじめ,何かが地面の落葉を踏む音,川の音,高い樹々の葉に溜まった雨水が地面に落ちる音,などが夕暮れと共に夜明けまで止む事なく続いた。生きもの達の鳴き声は時間と共に内容が変わっていった。時々,近くのロングハウスから犬や鶏の声も聴こえる。朝起きてみると昨夜,ライトに集って来たシロアリ(羽蟻)を小さなアリ(体長3mmぐらい)が襲っていた。アリよりもはるかに大きなシロアリはすぐに逃げられそうに思うのだが,そうではなさそうで,次々に襲わればらばらにされて運ばれていた。【2009/02/04】Photo:小さなアリの集団に襲われた羽蟻(シロアリ)。@Batang Duri. Brunei 2009/01/17 

2009年2月3日火曜日

第五十八夜/蜜を吸う鳥

 ブルネイの街中の花灌木で小さな鳥が吸蜜していた。大きさは日本のメジロより一回り小さく,スリムにした感じ,湾曲した細いクチバシと三色の羽色が特徴。英名:Olive-Backed Sunbird  和名:キバラタイヨウチョウ 学名:Nectarinia jugularis . 英名では「背中のオリーブ色」を特徴として,和名では「腹部の黄色」を特徴としているのが面白い。でも実際は顔から胸にかけての光沢のある紺色と腹部の黄色が目立つ。花はIxora(和名:サンタンカ).【2009/02/03】Photo:@B.S.B, BRUNEI 2009/01/15

2009年1月31日土曜日

第五十七夜/マレーワシミミズク

 雨に恵まれた森歩きから町にもどり,一周10分とかからない小さな町を散歩しているとふと頭上に視線を感じた。やっぱりいた,見上げるとヘアーサロンの看板の上にワシミミズクが一羽こちらを見ている。名前は,Barred Eagle-Owl(=縞模様のあるワシミミズクの意味 または Malay Eagle-Owl 和名:マレーワシミミズク 学名:Bndo sumatrana)。黄色いクチバシが特徴。木に止まっていれば特徴ある体の模様も保護色になるがここでは目立ってしまう,しかし場所の意外性もありほとんど気づかない。一緒にいたガイドでさえ気づかなかった(もっとも今回はガイドよりも僕の方がいろんなものを見つけたのだが)。脚には何もついていないようなのでペットとして飼われているものでは無いようだった。カメラを向ける僕が気にかかるのかこちらが位置を返る毎に上から首を回しこちらを見ている。こんなステキな鳥に出会えてラッキーだ。【2009/01/31】
Photo:看板の上から僕を見下ろすマレーワシミミズク @Bangar,Brunei 2009/01/16

2009年1月30日金曜日

第五十六夜/森の民・イバン


  ブルネイの森歩きの案内は,現地先住民イバン族にお願いした。彼らは熱帯雨林の民で,生活そのものを森に依存している。樹木から安全な飲料水を採る方法,数あるヤシからどの葉が屋根材に適切か,森歩きでお腹が減ったら何を食べるか,腹痛やケガをした時の手当の草はどれか,森に生育するラタン(籐:ヤシの一種)にも毒があるものもある・・などなど,驚くほどの情報と知識である。どうやってそれを知ったのか・覚えたのかと尋ねた。答えは,森を歩きながら親から全て教わったと言う。代々,何百年,何千年もの時間と経験を経て実証されたものだ。方や森の中で生活に必要な植物(有用植物)を効率よく得るために守り・残してきた。彼らと森を歩くと手つかずと思われていた熱帯の森も実は人との関わりで今に至っている事が判る。まさに彼らは生物多様性の森の一員と言える。他の野生動物との大きな違いは,火を使う事,刃物を使う事である。ボルネオ島に住む伝統的な先住民族はイバン族はじめ共通しロングハウス*1と呼ばれる共同住宅・村の形態を持っている。彼らは、基本的に小規模な農耕(焼き畑)と狩猟・採集生活をしているが、最近貨幣経済の浸透が見られ、商品作物の栽培や、都市への出稼ぎによる現金収入を求め生活形態が徐々に変わってきた。現在では僕の様な観光客・研究者のガイドや手工芸品販売(土産物用)により現金収入を得ている者も少なくない。
 熱帯の森歩きでは,日本の森の様な道標や地図はない,道も不確か(細流も立派な道になる),ボートによる移動が必要,樹木が高くて見通しが利かない,地形が複雑,時には仕掛け矢(狩猟用ワナ,ワナの存在は「印」があるが僕たちには判らない)もある・・・などなど結構大変。そこで効率よく,かつ安全に歩くには,現地住人にガイドをお願いするほかにない。【2009/01/30】
Photo(上):森への移動はまず川から始まる。幅75cm,長さ7〜9mほどの細長い船(ロングボート)に船外機をつけて驚くほどの渓流を遡る。水深が浅くなったり小滝が現れると船をみんなで引っ張り上げる場面も出て来る。激しい使用に耐えるために側板と底板の材質(使用する木の種類)が異なる。Photo(中):森の中でヤシの葉を使った屋根材の作り方を実演。Photo(下):森を歩くとパラン(山刀,ナタ)で道を塞ぐ倒木などを伐る必要がある。かなり太い枝も一断ち,大細工も小細工もこれ一本。そこで彼らは休み時間も河原から砥石を探し刃の手入れを怠らない。鋭いパランはイバンの男のプライドそのもの。@Batang Duri. Brunei 2009/01/16

*1 ロングハウス:高床式長屋状の家屋で,個々の部屋の前に大きな共有スペースを持つ。五世帯程度の小規模のものから何十メートルにも及ぶ大規模のものまで,まさにロングハウスである。柱は丸太もしくは角材の掘立柱,床や壁は竹が利用される。床にはラタンで編んだゴザが敷かれる。屋根はかつてはヤシ葉葺きだったが今ではトタン葺きが多い。一つのロングハウスには,必ず一人の「長(おさ)」がいる。森に入る場合は,このロングハウスの「長」への挨拶から始まる。

2009年1月29日木曜日

第五十五夜/森のカタツムリ


 ブルネイの熱帯雨林でとても美しいカタツムリを見つけた。直径25mmぐらいだから大きくはないが,不思議な模様を持っていた。よく見ると透明な外殻の中に茶色い模様があり,その奥に下地の茶色が見える,例えるなら「水ようかん」もしくは「アップルコンピューターMACのマウス」のような感じでもある。表面は非常に滑らかで,透明感のある光沢。なんとも不思議なカタツムリだった。まったく写真を撮るのも忘れ見とれてしまった。(後で一枚しか撮っていないことに気づいた)熱帯の森を歩くと驚くほど不思議で,美しい生きもの達に多く出会う。しかし,その個体数は驚くほど少なく,このカタツムリにはもう二度と会う事は出来ないかもしれない。もちろん種類は判らない。そして森の消滅と共に数多くの生きものが人知れず地球から姿を消していく。生物多様性の森を歩くといろいろな思いが頭をよぎるのだ。【2009/01/29】
Photo(上):外殻の拡大,水ようかんみたい。 Photo(下):カタツムリの全体像,葉っぱの下側に付いていた。どうやって他の個体と出会うのか?@Batang Duri. Brunei 2009/01/16

2009年1月28日水曜日

第五十四夜/万年筆ヤスデ

 さて,森でのドリアン話しの続き。ドリアンを食べて種や皮を足下に捨てると驚くほど早くいろいろな生きものが集って来る。それほどドリアンの香りは強く,果肉は美味しい。やってきたのは「万年筆ヤスデ」と呼ばれる大型のヤスデ,長さ25cmぐらい,太さ直径1.5cm強。普段は触るときれいなゼンマイ状(螺旋状)になるが今日はドリアン食べたさか興奮状態でいくら触ろうがつつこうが,まったく丸くならずひたすらドリアンの種の表面に残った果肉にまとわりついていた。いくらシーズンだからといって,彼らがこの美味しい果肉にありつけるのは唯一,誰かが食べた後だけだから仕方が無い。【2009/01/28】Photo:ドリアンの果肉を探す万年筆ヤスデ,地面に落ちている棘はドリアンの外皮の棘  @Batang Duri. Brunei 2009/01/16

2009年1月27日火曜日

第五十三夜/野生のドリアン

  今の季節,マレイシアは果物の王様と言われるドリアンのベストシーズン,僕も久しぶりに大好物のドリアンを沢山食べた。ドリアンの楽しみは食べるだけにあらず。トラックの山積みドリアンの中から自分の好みの味を探す事から始まる。柄の状態,針の感じ,重さ,振った時の振動,そして最後に皮をすこし開いて香りを確かめる。探すのに15分,やっとありましたこれぞと思える一個。やっぱりうまい。田舎に行けば市場で野生のドリアンを売っている(街で売っているのは果肉の多い栽培種)。今回もいろいろなドリアンを見る事が出来た。中でもブルネイの森で食べた野生のドリアン(実の表皮が赤く,棘が緑,そして中身が濃い黄色)は果肉は少なかったのだが,いままで食べたドリアンで一番濃厚な味で美味しかった。山では,ナタ(パラン)で棘を全部取り去ってから,半分に割って食べます。食べ終わった種を川に捨てると残った果肉に魚が群れます,森に捨てるといろいろな動物や昆虫がにおいにつられてやってきます。みんなドリアンが好きなんですね。不思議に現地の人も食べ終わった種を遠くに投げ捨てます。そうやってドリアンの種は森に暮らす生きものによって遠くに運ばれます。ドリアンは甘い果肉を野生動物に食べさせることによって子孫を森に広げる。そして森に住む民(ここではイバン族)は,ドリアンやラタンを始め森に暮らすために必要な様々な草木(有用植物)を守り・残していく。一見,全く手つかずに見える森にも自然生態系の一部に組み込まれた森の民が大きく関っている事が判る。上手く出来ていますね。だからドリアンは森で食べて,種を遠くに投げるのが正しい食べ方?【2009/01/27】
Photo(上):野生のドリアン,直径20cm〜25cm,実の表面は赤く,棘が緑。Photo(下):ナタで半分に割って果肉を食べます。中に見える楕円形の白い部分は種の断面,種と皮のあいだのクリーム色の部分が果肉 @Batang Duri. Brunei 2009/01/16

2009年1月26日月曜日

第五十二夜/所変わっても品変わらず・アオスジアゲハ

 マレイシア・コタキナバルの街を歩いていると道路脇の駐車場の濡れたところにアオスジアゲハが吸水に来ていた。この蝶は日本のものとほとんど変わらない。但し,街路樹にクスノキ科の植物があまり使われていないので日本の夏に見かける個体数よりもずっと少ない。日本の街の中の方がずっと個体数が多い。それは食樹である街路樹にクスノキが沢山使われているからだ。普通のアオスジアゲハと判っていてもやっぱり写真に撮っておきたい,そこで最初は落ち着きなく飛び回るチョウが止まりそうなところに見当をつけて待つ,「元気だね〜ここにきなさい」なんてぶつぶつ言いながら,ひざまづきほとんど地面にうずくまる様な、さらには腹這いのかっこで写真を撮る・・・と知らずのうちに僕の後ろで何人かの人が必ず立ち止まって見ていく(多分,最初は心配してくれて)。僕は蝶を撮り,通行人は僕を観察していく。何人かは、ひと言ふた言質問し、説明を聞き「ほうっ〜」って言うが,ほとんどの人の頭の中は「???」だろう・・・そりゃそうだ。【2009/01/26】
Photo:駐車場で吸水をするアオスジアゲハ。背景に見えるのは車の下側。@Kota Kinabalu,Sabah,Malaysia 2009/01/20

2009年1月25日日曜日

第五十一夜/所変われば色変わる・赤いツマグロオオヨコバイ

 僕たちの暮らす身近な場所であればどこでもと言うほど見かける昆虫にツマグロオオヨコバイと言うセミの仲間がいる。成虫は,全体が緑色で頭の部分に黒点そして羽の端部に黒い紋がある。この虫の幼虫は黒紋は無く,黄緑色の体の形から「バナナムシ」と呼んだりもする。東南アジアのブルネイの熱帯雨林の森でもこのツマグロオオヨコバイ見かけた。但し見つけたのは,赤いツマグロオオヨコバイ。日本の緑色のものとは種類が違うと思うが,色を除けばその他は大変に良く似ている。止まっているのは,バナナの葉っぱだから赤い体が逆によく目立ってしまう。この体色からすると普段は,赤い葉か赤い葉柄(葉っぱの付け根の部分)を持つ植物にいるのかもしれない。この小さな昆虫の仲間は,特定の植物との関係を強く持ち,世界中のあらゆるところにいるらしい。同じ種類でも,所変われば色変わると言う事もあるかもしれない。詳しい名前を探る事もこれからの楽しみ。【2009/01/26】Photo:@BANGAR,BRUNEI 2009/01/15

2009年1月24日土曜日

第五十夜/マングローブに生きるテングザル



 五十夜の今夜は海外編。最近,テレビでもお目にかかることの多いテングザルの話し。テングザルは,世界中でもボルネオ島のマングローブ林だけに生息する大型のサル(ボルネオ島固有種),雄が天狗のように長い鼻をもつために和名ではテングザルと呼ばれる(テングのようにピンと立っていないのでむしろ「釣りバカ日誌のスーさん」に似ている),英名はProboscis Monkey(大きな鼻のサル)。さてこのサルとの最初の出会いは僕がマレイシアに暮らしていた約20年前のこと。休暇を取っての旅行中,マングローブ林にそった道をバイクで走っていた時に突然,草むらから飛出した犬のような動物が僕の膝のあたりにぶつかってしまった。バイクの転倒は免れたが,一方,犬らしみものは草むらにひっくり返ってしまった。幸い両者ケガはなかったが大変に驚いた(こんな経験はもうできないだろうな)。草むらからマングローブの林に逃げていった姿を見てその生きものがテングザルと判った。湿地に広がる林には20〜30頭の群れが見えた。当時,このサルはさほどテレビでも紹介されていなかった。今ではボルネオ島のマングローブ林や湿地林の急速な消滅で、絶滅の危機に直面している。現在8,000頭を下回ったとも言われている。今回,このサルに会いに行ってきた。訪れた場所はボルネオ島の小国・ブルネイ王国。ブルネイは,産油国であるために森林伐採に依存する事なく経済が豊であったために熱帯雨林や海岸から河川にかけて広がるマングローブ林や湿地林が比較的良く残っている。首都の町からボートで20分程度でテングザルの生息地にアプローチ出来た(マレイシアでは少なくとも数時間の移動が必要)。現地旅行社のエコツアーに参加すれば簡単だがべらぼうに費用が高い(約120ブルネイドル=B$),しかも他の参加者がいるとこちらが行きたい場所・留まりたい時間が制限される。ユックリとサルを見るためには,ツアーは利用出来ない。まずは桟橋に行ってボートのチャーター交渉をする事から始まった。テングザルの活動時間が主に朝夕に限られるために,かれらの活動時間前には生息場所に達していて静かに待つ必要があった。お昼を食べて桟橋に行くと何人もの水上タクシードライバーが声をかけて来る(水上村=カンポン・アイルが広範囲にあるので小型のボートが移動手段として発達している)。その中からこちらの条件に合うボートを探す。チェックポイントは,1)サルの居場所をちゃんと知っているか,2)値段は妥当か,3)こちらの要望を理解しているか,など。その中に屋根付きのボート(海の上で待つので日差しが欲しい)のトミー氏と35B$で交渉成立の握手。彼はサルの生息地をよく知っているようで,もし見れなかったら10B$返すと言う。人柄も良さそうでこちらの要望も良く理解してくれた。まだまだ強い日差しの午後2時,マングローブ林にボートを進めた。サルが出そうな場所,また休息中のサルの群れを探した。しばらくして遠くの木に腰掛けるサルを発見。ボートをマングローブの中に滑り込ませ,エンジンを切り,サルの移動を待つ。午後2時半頃になるとサルが徐々に移動を始めた。日射しによって出来た陰影の強い木立の中に休む個体はなかなか見つけられない。しかし,コツが判るとだんだんとサルの存在がよく見えるようになってくる。意外に近くにいたりなんかする。10頭程度の小さな群れだが,メスザルや子ザルが水面上高さ10m程度の枝を移動してきた。そして移動する群れの最後を守るかのように大きな雄ザルが現れた。雄ザルはこちらの様子を伺い,水平に張り出した枝に座った。ちょうど20mほどの距離。雄ザルはこちらを頭上から見下ろしている。赤ら顔に大きな鼻,大きなお腹(肉厚なマングローブの葉や新芽,実を主食としており,その消化のために腸が発達している),長い手足,長い尾,そして変わった毛色。声も聞く事が出来た,「キャッキャッ」と鳴くメスや子どもに対して雄は,「ブグーッ」と言う低いおナラのような声を出した。観察するにはこれ以上の条件は見当たらない。双眼鏡で観察,写真を撮る。しばらく経つと,なんと雄ザルのまぶたがおりてしまった。どうも昼寝の続きのようだった,面白いのは枝から落ちないように長い前後の脚を枝にかけている,時々,首が「がっくと」落ちる。まったく人間と変わらない。寝顔はマングローブの木陰の風を受けて大変に気持良さそうだ。徐々にこちらも眠たくなってくる。両者ほとんど昼寝状態。30分以上もそんな状態が続いた。こちらもそろそろ次なる場所に移動しようかと準備していると,気配を感じてか彼も目を覚まし再び群れに加わっていった。ガイドのトミー氏もこれには興奮気味,こんなラッキーな状態はあまりないらしい。ツアーの様に見ようと焦ってはいけない,写真を撮ろうと焦ってもいけない,まずはサルと同じ気分になる事が大切。さて,しばらくボートを進めると今度は,樹木が生い茂った岸辺に2.0m以上の大きなワニが甲羅干し。こちらは写真は撮れず残念。逆に大きなワニの瞬時の動きに驚いた。その後,20頭以上のサルの群れも見る事が出来た。4時を過ぎるとテングザルを売り物にするエコツアーボートが増えてきた。こうなるとサルの行動が活発になり見やすくなったとしても,見学者が増え,ボートがゆれて,暗くなって来るので写真を撮る条件は悪くなる。さっさと町に帰る事にする。トミー氏の招待で自宅=水上ハウス(柱が水底に立てられた家,床の下は水面。水道,電気はきている。但し下水は下の海に。水上ハウスはとても快適)に行き,奥さん手製のお菓子で少し遅いAFTERNOON TEA を過ごした。トミー氏には約束のボート代35B$に加えてお茶代の御礼にプラス5B$の40B$を支払う。今回はとても短い体験だがテングザルと共に味わったマングローブの木陰での時間は最高に幸せだった。【2009/01/24】
Photo:上/湾内から河口にかけて生育するマングローブ林:東南アジアのマングローブ林は良質の炭(備長炭)生産,エビの養殖,埋め立てなどで急速に消滅している,
Photo:下/昼寝をするテングザル(♂)
@B.S.B, BRUNEI 2009/01/17

2009年1月3日土曜日

第四十九夜/ヨシガモ

 初詣の人ごみを避けて疎水沿いを散歩。例年よりも多いか少ないか判らないがカモのいくつもの小さな群れが道路の渋滞を横目に気持良さそうに泳いでいる。その中になつかしカモを見つける。小学一年生の頃,飼っていたヨシガモだった。僕のヨシガモはヒナの時から飼っていたのでとてもなついていた。やがて田舎(三重県)から京都に引っ越してきた時につれてきたものの,実家の庭で飼うのが少々無理だったので近くの京都市動物園に預かってもらった。動物園の入口広場の大きな鳥用ゲージに入れてもらった。その大きなゲージにはカモをはじめとする水鳥が沢山飼われていたがどれが自分の飼っていた個体か判った。僕はあしげに動物園の大きなゲージに通った,もちろん僕の姿を見つけるとちゃんとやってきた。しかしやがて僕が呼んでも来なくなってしまった。その時は「仕方がないな」と思っていたが,本当は寂しくてしかたなかったに違いない。なぜならそんなことがあってからしばらく大好きだった動物園への足が遠のいてしまったからだ。そんなヨシガモだから目が会ってしまった時は正直嬉しかった。【2009/01/03】
Photo:2009/01/03@京都市左京区岡崎公園/疎水

2008年12月29日月曜日

第四十八夜/スギから生まれたカシの木?


 今年最後のお墓参りに行く。お墓のすぐ横の杉の木を見るとやや不思議・・・よく見ると幹の途中から別の木が生えている(写真下)。今までぜんぜん気づかなかった。さて別の木とは「アラカシ」、つまり常緑性のドングリの木である。杉の木の周りを見てもアラカシは生えていない。ドングリが風に乗って杉の木の洞(うろ)に飛び込むこともあり得ない。きっと小鳥などの小動物が杉の木の洞(うろ)にドングリを隠して、その実が芽生えたのだろう。さて次の疑問、このカシの木は一本か、何本かの芽生えだろうか?カシの根元(つまり杉の木の幹)をみるとこぶ状になって、そこから細い枝が何本も生えている。カシの木の仲間は、枝や幹を伐られたとしても細い芽(ひこばえ)をだして(このことを萌芽=ほうがと呼ぶ)株状になる特性が強い。このカシの木を見ると以前に伐られた様子もあまりうかがえない。ひょっとすると小鳥が冬支度のために洞(うろ)に蓄えたドングリがいっせいに芽生えたのかもしれない。しかしカケスやリスが実の実を洞に隠すことはあるが、この街中の墓地で他の動物でこんなことをするのがいるのか?今後、どんな成長を見せてくれるのか、お墓参りの時の楽しみが増えた。一本の木を見て頭の中ではいろいろなシーンが想像された。【2008/12/29】Photo:@京都市左京区黒谷

2008年12月18日木曜日

第四十七夜/モズのはやにえ(カマキリ)

栗東の里山でアキアカネを見つける。12月も半分過ぎたと言うのに元気に飛んでいる、通常は夏前に羽化するのでもう半年近く生きていることになる。そんなアキアカネの写真を撮ろうとしていたら目の前にあったのが「モズのはやにえ」。生きものの写真を撮っていると良くあること。一度、目にする(見つける)と続けざまに見つかる。例えいなくても何となく気配があるとか、いそうな気がするとか(この「感じ」はけっこう当る)。今回もそれに近い。アキアカネを見つけるまでは、「こんな場所にはやにえ、ありそうだな」と思っていた。この「はやにえ」は、コカマキリのようだ。すでに頭とカマの部分(前脚)は無くなっているが、後ろ足と羽、残された体の形で判る。さて・・気がつけば、アキアカネはどこかへ飛び去ってしまった。
【2008/12/18】Photo:2008/12/14 @こんぜ桃源郷こんこん山(栗東市井上)

2008年12月10日水曜日

第四十六夜/モズのはやにえ(早贄)


 アートギャラリーの小さな庭で『モズのはやにえ(早贄)』を見つける。『モズのはやにえ)』とは、モズが捕らえた獲物の小動物を木などの先端にさしておいたもの。庭では高さ2m程度のムクゲの木の枝先に2匹のバッタが刺されていた。果たして冬の保存食として利用するのかは定かではないが、春になる頃にはあまり見つからないことを考えると少しは利用されているかも知れない(もちろん忘れられているものも多い)。はやにえはモズの縄張りとも関係するのか、同じ場所で複数見つかることが多い。今回、見つけたのはコバネイナゴ(上)とオンブバッタ(下)。その他、よく見るメニューは、トカゲ、カエル、オタマジャクシ、イモムシ、カマキリなど。以前、小さなネズミのはやにえも見つけた。変わったものでは小魚、大物としては小鳥もメニューとして上がる。こうなればモズは、日本最小の猛禽類(もうきんるい=タカやワシの仲間)と言ってもおかしくない。【2008/12/10】
Photo 2008/12/10 @近江八幡市ボーダレス・アートギャラリーNO-MAの庭

2008年11月24日月曜日

第四十五夜/ニホンアカガエル

近江八幡市の近江奥島の森に出かける。林縁のほとんど、そして芝生の一部がずたずたに掘り起こされている。よく見ると一面にイノシシの足跡が残る。芝生広場から林縁へ、そして小川を越え林内にいく筋にもつづく獣道。作物のない公園とはいえイノシシの被害が尋常でない、夜の様子も想像出来る。もし周辺に農地があったとしたらその被害は簡単に想像出来る。イノシシは果たしてなにを探していたのだろうか。イノシシの荒らした林縁を歩いていると足下から一匹のカエルが飛出した。目の後ろから背中に続く線の様子からこれはおそらくニホンアカガエル。こんな小さなカエルもイノシシ達にとってはごちそうなんだろうなと思う。カエルは草むらに戻っていったが、無事生き延びることが出来るか心配だ。【2008/11/23】
Photo : 2008/11/23 @滋賀県近江八幡市近江奥島の森