2009年2月13日金曜日

第六十七夜/砂玉のまち



 熱帯雨林の森を後に街に戻る。砂浜に行くと無数の砂団子があった。直径5〜10mm程度。だいたい中心には砂団子の2倍ぐらいのサイズの穴がある。これはカニの巣穴だ。なぜ砂玉が出来るのか。これはカニが昼間に潮が引くと巣穴から砂をかき出しながら現れ、活動を始める。カニは掘り出した砂を団子状にして外に捨てる。これを繰り返したため、巣穴の周りには小さな砂団子が放射状に多数残される。よく見ると巣穴に近い砂団子ほど乾燥して,遠くのものほど湿っている。つまり穴に近い場所から砂団子を捨て始めるようだ。砂団子の間の通路には細かなカニの足跡が残っていた。砂団子の大きさの違いは,カニの大きさの違い。カニが運び出す砂団子を見ているとそれぞれの力関係も判るようだった。
カニは砂の中の有機物やプランクトンを鋏脚でつまんで口に入れ、食物を濾した残りの砂は口の上部に丸く固め、鋏脚で切り取って足元に捨てる。食べかすも砂団子になる。
体表の模様は砂浜に紛れる保護色となり、遠目には砂の塊が動いているようにも見える。砂面に目が慣れて来ると巣穴に逃げ込むカニが判る。中には他の個体の巣穴に逃げ込んで巣穴の主に追い出され、逃げまどうものもいる。歩くと地面に伝わる振動でカニが隠れなかなか見れないが,巣穴の横で動かずに待っていると数分で姿を現した。
砂団子をいくつかの巣穴に転がすと,それぞれいくつもいくつも転がり落ちていった。ただし,どの巣穴もいくつか入れたところでそれ以上は落ちなくなる。2つのシーンが想像できた。一つ目はまっすぐに掘られた穴も途中で横に曲がっている。二つ目は穴の途中にいるカニに砂団子が引っかかってしまった。どちらもカニにとっては迷惑な話しだ。
砂浜に広がる砂団子を見ていると,飛行機から見た時の住宅地や街のようでも,里山と谷戸地形のようでもあった。これがカニ達とっての街そのものなんだろうなと思った。ちなみにこの砂玉のまちは,満ち潮が来ると全てなくなり,引き潮になるとカニ達が再び同じ作業を繰り返す。【2009/02/13】

Photo(上):砂浜に広がる砂団子,飛行機から見る里山の地形に似ている。Photo(中):巣穴から放射状に広がる砂団子。Photo(下):静かに待っているとカニが姿を現した(コメツキガニの仲間と思う)。@Tanjung Aru, Kota Kinabalu, Malaysia. 2009/01/21

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