2011年6月26日日曜日

第二百九十八夜/ミドリシジミ

 シジミチョウの中でもとりわけ美しいグループがある。♂の翅の表面が緑色に輝くミドリシジミ類(ゼフィルスと呼ばれる)で日本の蝶の中でも最も美しいことで人気がある。中高生の頃、このチョウを採集するために梅雨時にもかかわらず毎週山に通った。標本を作るに特徴的な翅表面の緑色と後翅の尾状突起が完璧にそろう事(これを完品=カンピンと呼んだ)が絶対条件。だがフィールドで採集する個体では非常に難しい。そこで完品を得るために晩秋から冬にかけて山に行き、卵を採集する。卵は春、食樹(幼虫の食べる樹木)の芽吹きにあわせてふ化する。だから春から梅雨明けにかけては自室の机の上はシャーレ(幼虫を飼育する容器)が200個以上も積まれるようになる。週末のフィールド通いも忙しい、毎日の幼虫の世話も忙しい、世話を怠ると病気もでる、餌の確保も大切だ、その上、生態的な記録もとらないといけない、よなよな顕微鏡で幼虫を覗いているわけだ・・・これは自分にとって何ものにも代え難い幸せな時間、他人から見れば完全に病気以外のなにものでもない。さてこのミドリシジミの仲間、フィールドでの採集も難儀だ、コナラ等の樹木の樹冠を居場所とするので捕虫網も10mの長さのものを振り回すことが必要。絶えず樹冠のあたりを見ていて、素早く動くチョウをめがけて「よいしょ、えいや!」と振り回す訳だ、体力と視力がもの言う。子どもの頃から小さな昆虫を追いかけたお陰だろうか「動体視力」にはやや自信がある。だからスポーツ観戦時もその動体視力がもの言う。今日は車を運転しながら、路肩の栗の花に吸蜜に来たミドリシジミを見つける(もちろんよそ見でなくて)。後続車がいるので路肩で止まりたいが止まれない。いったん通り過ぎてUターンして戻ると・・・既に飛び去っていない。こうなれば直感で、チョウが止まりそうな枝葉を探す・・・やっぱりいた。ミドリシジミ(♂)が葉に止まりテリトリー(縄張り)を見張っている。周辺はハンノキ林もある、きっとどこかにもっといるはずだ、この個体の状態からすると来週からは♀も登場するに違いない。Photo:2011/06/26 @近江八幡市、滋賀県

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