2011年9月1日木曜日

第三百四夜/卵を細枝に託す・クマゼミの産卵

 あれほど熱かった夏なのに過ぎてしまうと、ほっとするどころかどこかさみしい。涼しい日が続くと日ごとにセミの鳴き声も減ってきた。今日はクマゼミがアラカシの細枝(枯枝)に卵を産んでいた。地面から高さ1m程度、鉛筆の太さよりも少し細いぐらいの枝だったのでゆっくりと観察できた。腹部先端を小刻みに動かし続ける、産卵管はまだ出ない。しばらくすると腹部先端より少し上(写真=セミの腹端より少し上に見える)から太い産卵管が現れた、このキリの様な産卵管を全身の力で枝に差し込む。この時、セミ成虫の前脚が強靭なのが役に立つのか。数分をかけて産卵を行なう、卵は樹皮下に産みつけられた。産卵が終わるといったん産卵管を抜き、休み、少し枝の上に移動してもう一度同じことを繰り返す。一回の産卵で相当に体力を消耗するのだろう、産卵と産卵の間の休息の時間は長い。セミが飛び立ったあとは、枝皮に上側にささくれたノミで刺したような痕が残った。産卵された卵はこのまま冬を越し、来年夏前に孵化し、地面に降り長い地下生活(幼虫)に入る。成虫となって地上に現れるのは数年先。成虫の期間は短いが、一匹の生涯(卵〜幼虫〜成虫)を考えると昆虫にしては極めて長生きと言える。Photo:2011/08/30 @京都御苑、京都市

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