2011年6月1日水曜日

第二百九十三夜/人知れず過ぎるヒメボタルの夜

 京都・桂川の河川敷にヒメボタルを見に行く。このホタル、ゲンジボタルやヘイケボタルのように川岸ではなく、樹林地の林床部に生息する。何故かと言うと、幼虫はカワニナを食べて生長するのではなく、オカチョウジガイ(陸貝)を食べるため。この陸貝の仲間は湿った林床部を生活の場とする。ちなみにデンデンムシ(カタツムリ)も陸貝。ヒメボタルの発光は、すこし黄色がかったストロボ光(パッ、パッ、パッ、パッ・・)で歯切れ良く明滅を繰り返す。まるでクリスマスツリーだ。10時頃から活発になり夜12時をピークとするらしい、かなりの夜更かし型。11時頃はまだ下草に止まって光っていたホタルも12時頃になると、地上20cm程度の高さを緩やかに飛び始めた。オスは飛翔しながら発光するが、メスは草木につかまった状態で発光する。ちなみにメスは後翅が退化して飛べない。写真の中で同じ位置で強く光っているのが♀の光、空中にある細かな光の点そして光の軌道がオスの発光。樹林地のなか凄まじいばかりの光だった、ここは知られている生息地では日本で一番広く個体数も多いという、ただしこの生息環境が今後も守られると言う保証はどこにも無い。幸いこの生息地は研究家達により生息調査・保護活動が続けられている。活動が夜遅く人に知られる機会に乏しい、河川の水質汚濁に左右されない事などを考えると以外に身近な場所で生息をしているとも考えられる。しかしこのことは人知れず生息地が開発され、絶滅していることでもある。ながらく都市人にとって水際も山際も無駄な土地として扱われてきた、悲しい事に今でもそれは同じ。興味深い事にこんな場所こそ環境の多様性を持ち、面白い生きものがいっぱい暮らしている場所なのだ。僕たちはある場所や環境を語る時に、様々な季節、様々な時間を費やし多様な感覚を駆使しない限り、判った・知ったなんて安易に言ってはいけないのだ。この地を守っているボランティアの方々に感謝。真っ暗な樹林地でヤブ蚊に耐えながら、10分露光してやっと撮れた。満足にホタルの光をとらえようとすると20分以上の露光が必要。Photo:2011/05/31 桂川河川敷、京都市

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