2011年5月21日土曜日

第二百八十八夜/マガリケムシヒキ

 水辺の草地でアブが盛んに小さなムシを捕らえている。このアブの名は「マガリケムシヒキ」という体長15~20mm。全体は黒く、胸部背に灰白の模様があり、肢の脛節は黄褐色をしている。♂の腹部先端は丸く、♀は細く尖っている、だから写真の個体は♀である事がわかる。成虫はヨコバイ、ハエ、ガガンボ、ハナアブなどの小型の昆虫を捕らえて体液を吸うが、幸い人の血は吸わない。名前の「マガリケ」は♂♀共に頭部裏にある、前方90度に曲がった毛を持つ事から名前が付けられている。♂♀の腹部の形も曲がった毛も他の人にとっては、どうでもいい食えない話だけど、やっぱり自分の目で実際に確かめたくなる。Photo:2011/05/20 トンボ池(一般公開の日)、京都御苑

2011年5月19日木曜日

第二百八十七夜/ヨツボシトンボ

 府立植物園にクロスジギンヤンマを見に行く。前回は盛んに産卵していたのだが今日はその姿を見る事は出来なかった。変わりにヨツボシトンボを見れた。このトンボ決してどこにでもいる種ではなく、比較的観るのは難しい。主に寒冷地の平地から山地の水生植物が繁茂する池沼や湿地、湿原などに生息する。北海道など寒冷地では春から秋まで比較的普通だと言うが、温暖地では春に限って出現し、個体数も少なく生息地も限られているらしい。翅にある4つの黒色斑が名前の由来。Photo:2011/05/19 @京都府立植物園、京都市

2011年5月18日水曜日

第二百八十六夜/ムクドリとミミズ

 葵祭りを観に京都御苑に行く。祭りの後、御苑を散歩。松林の草地でムクドリが大きなミミズを仕留めたようだ。見ているとなかなか苦戦している。食べずにぐるぐると振り回している。半分に切ろうとしているのだろうと見ていると、なんと振り回している間にミミズの両端をくわえることに成功。つまり輪っか状にくわえたかったのだ。なかなか器用だ。やっと輪っかにしたところで、今度はまっしぐらに林めがけて飛んで行ってしまった。きっと巣にはお腹をすかせたこども達が待っているのだろう。葵祭の観覧の最中に後ろのご夫婦「あの人より、トンビの方がきれいだね・・・」。なにも人とトンビを比べることは無かろうにとその方向を見ると、時代装束の列の上にはトビが風に乗っていたのだった。確かに暑い中ではあるがだらだらとやる気無く歩く祭り人よりもトビの方が明らかに美しい身のこなしで新緑の空を舞っていた。判らないでもないご意見だった。Photo:2011/05/15 @京都御苑、京都市

2011年5月12日木曜日

第二百八十五夜/コチドリ

 仕事先、車で移動中に見つけたコチドリ。水田の畦の上を右へ左へ、あっちにこっちに、こちらのすぐ側まで来たと思うと、向こうへ飛び去り、再びこちらへ忙しく動き回っている。双眼鏡で見ているとしきりに地面をつつき何かを食べている。なかなかかわいらしいチドリである。小学生の頃、釣り好きのH君が僕の家にこのチドリのひな鳥を持ってきた。河原で拾ったので保護した、飼えというのである。その頃、僕に家にはいろいろな小鳥がいた。だから僕に渡せばなんとかなるだろうと言う訳だ。河原の小石にも似た模様の羽で全身を覆った手の中にすっぽりと収まる小さなひな鳥は居間の畳の上を元気に走り回るのだが、いっこうに餌を食べない。ついに朝にはホコリのように箱の隅で動かなくなっていた。チドリの仲間の巣は、地面に小石を敷きならべたくぼみで、そこに卵が産み落される。ひな鳥は、ふ化後しばらくすると歩き出し、親鳥と共に行動し、餌を食べる。スズメの様に巣立ちなんて事はしない。ふ化した時は、すでに目も見え、しばらくすると走り回るほどの状態になる。鶏のヒヨコと同じである。H君は迷子のひな鳥を保護したのではなく、おせっかいにも地面に隠れていたものを連れ帰ったという訳だ。これからの季節、小鳥の巣立ちビナが多くなる。車が走る道路上にいた時は別としても、人間が善かれと思って手を出してはいけないのである。Photo:2011/05/12 @守山市、滋賀県

2011年5月2日月曜日

第二百八十四夜/モンカゲロウ

 水辺のキショウブ葉上に大型のカゲロウを見つける。体色などの特徴からモンカゲロウだろう。足は細くきゃしゃなのに前脚だけは長く発達しており、止まっている時に前脚を前方の空中に突き出すようにしている。これは大きな触覚のように見える。このカゲロウの仲間は幼虫期を水中で過ごし、成虫になるのだが、完全な成虫の前に「亜成虫」と呼ばれる時がある。水中からいったん羽化し=亜成虫、そのあとすぐにもう一度羽化して「成虫」になる。一度、羽化し翅が伸びた後にもう一度脱皮する昆虫は他にいない。成虫は餌を取らず、交尾を終え、水中に産卵すると、ごく短い成虫期間を終える。翅をもった期間は、まったく生殖のためだけに陸上に現れるということだ。はかないものの例えに「かげろう」があるが、これは成虫の期間の短さがその理由とも言われるが、幼虫期にほぼ一年過ごしているのだからけっしてはかなき命と言う訳ではなさそうだ。Photo:2011/05/02 @京都御苑、京都市

2011年5月1日日曜日

第二百八十三夜/ツグミ

 樹木の新緑もすっかり出そろった感じ。夏鳥も姿を現し、繁殖も始まっている・・・なのにまだ居残っている冬鳥もいる。ツグミ(写真)は北国から越冬のためにやってくる。来たばかりの頃は群れだが、冬の間は単独行動。このツグミが再び小さな群れを作るようになった。ふるさとの北国に帰る日も間近なようだ。北国の春から夏は短いので、大慌てでパートナーを見つけ、子育てをしないといけない。今度、御苑にやってくるのは今年の秋。考えてみれば、一年の半分以上の期間を日本で過ごしている事になる。ツグミを正面から見るとけっこうコワモテである。Photo:2011/04/30 @京都御苑、京都市

第二百八十二夜/クロスジギンヤンマの産卵

 なんだか暑くなったり寒くなったり、日ごとに入れ替わる天候に今年の春はちょっとおかしいと思うのは人間だけか。外では野鳥の子育てが盛んだし、水辺でもトンボの産卵が始まっていた。でもこのクロスジギンヤンマ(♀)の産卵早くないか? 植物園の小さな睡蓮池で盛んに産卵を繰り返す。一度、産卵し始めると水中の植物生体内に産卵するために比較的時間が必要、そこで注意深く近づく事で、ほとんど接写状態の写真も収めることが出来た。でもこのぐらいの適度の距離が周りの環境も判っていいと思う。*このクロスジギンヤンマは、第215話(2010/06/10)と、2回目の登場となりました。Photo:2011/04/30 @京都府立植物園

2011年4月27日水曜日

第二百八十一夜/ツマキチョウ

 春先に現れる小さなシロチョウの仲間のツマキチョウ。名前の由来は前翅のつま先の黄色から。この蝶、ちょうど今頃2〜3週間程度現れて来年の春まで現れない年1回の発生。食草に産みつけられた卵から生まれた(ふ化)幼虫は、食草のハタザオの仲間、イヌガラシ、ナズナ、ダイコンなどを食べ、梅雨入りまでには蛹になってしまう。学生の頃、この卵を沢山採集して多くを蛹まで育てた。ある年の事、夏〜冬を乗り切った蛹達からは翌春、きれいな成虫が羽化した。しかし、たった1個の蛹だけは夏まで待っても羽化することはなかった。きっと死んでしまったのだろうと思い、その蛹を本棚に飾っていた。夏が過ぎ、秋が過ぎ、年末の大掃除の時も片付けられる事がなかった蛹。次の春、つまり蛹になってからまる2年が経った日。外出から戻り部屋に入った時にそこに一頭のツマキチョウが舞っていたのだった。「あれれ?」・・・「おおっ!」生きものってすごいなと思った。室内は自然界に比べれば外敵はいないかもしれないが生きものにとって劣悪な環境、その中で丸2年間耐えてきたのだった。全部がいっせいに成虫にならずに大きな時間差を持って成虫になる事によって子孫をつなぐ。決してめずらしくない、どこにでもいる小さな蝶をこの時から僕は特別な目で見るようになった。当時の図鑑にはこんな事例は書かれていなかったが、近年の本には「稀に二冬あるいは三冬を過ごして羽化する場合もあることが報告されている」と書かれている。写真の吸蜜植物はウマノアシガタ。Photo:2011/04/26 @京都御苑

2011年4月5日火曜日

第二百八十夜/アオバト

 アオバトを見るとつくづくきれいな鳥だと思う。胸から頭部にかけての黄緑色から濃オリーブグリーン、羽の赤紫色(これは雄の場合だが)。この美しい羽色の体が彼らが棲む樹林に入るとまったくの保護色になってしまう。地面から上を見上げると陽光に透ける葉のように見え、肩の赤紫色が枝や樹皮と区別付かない。樹冠から見下ろすと今度は頭部の濃緑から肩の赤紫色が葉面の風景にまぎれるのだろうと思う。これは捕食者に対しての魚体の色と同じ効果があるのだろう。どんな鳥も自分が棲む環境の中で羽色を進化させてきたこと思うと驚く。Photo:2011/04/05 @京都御苑、京都市

2011年3月29日火曜日

第二百七十九夜/虎斑木菟


 虎斑木菟と書いて「トラフズク」と読む。「虎のような斑紋を持つミミズク」という意味である。ミミズクとは、頭に耳のような冠羽をもつフクロウの総称。今日はこのトラフズクの姿をやっと写真に収める事が出来た。今年になって6羽程度の集団越冬の木を見つけた。しかしいざ写真を撮る段になってみるといなかったり、こちらの気配を察して飛び去ったりして写真にすることが出来なかった。ねぐらの近くには沢山のペリット(消化できないものを塊にして吐き出したもの)が落ちている。その一つを拾ってみると、ご覧のようなネズミの頭骨(黄色い鋭いものが前歯)と毛を見る事が出来る。このペリットは一見動物の糞のように見えるが無臭。毎日拾って水にさらせばその内容物が判別できるし、一日どれぐらいのネズミを食べているかも判るだろう。このミミズク、食べ物のメニューはそれほど広くないようで、転がっていたペリットのほとんどはネズミの毛玉だった。どれほど多くのネズミを周辺の田畑から獲ってくるのかとても興味深い。Photo:2011/03/29 @浅小井、近江八幡市、滋賀県

2011年3月22日火曜日

第二百七十八夜/国鳥・キジ


 川岸の草地を歩いていた時、クズの枯枝の向こうから赤い顔とにらむような黄色の鋭い目が見えた。キジだ!近すぎる。こちらが動けば対岸に飛び去るのは間違いない。体をかがめ向こうが動き出すのを待つしかない。しばらくじっとしているとこちらを伺いながらゆっくりと現れた。顔の様子から先ほどまでの警戒心は伺えない(瞳孔の鋭さが消えている)。時折、地面をつつくように何かを食べている。互いの間の草がキジの顔に重なってよく見えない。欲を出してしまった・・・体を動かした瞬間にキジは小走りとともに、大きな羽音を残して対岸の葭原に飛び込んでしまった。写真のキジは♂で、顔の赤い部分(鶏のトサカにあたる)は皮膚が露出していて、耳のように見える冠羽も目立っている。これは繁殖に入っている証拠。キジはテリトリー(縄張り)が強いので多分ここにくればいつも見れるはず。Photo:2011/03/22 @浅小井、近江八幡市、滋賀県

2011年3月21日月曜日

第二百七十七夜/ヒヨドリと個性

 庭にやってきたヒヨドリ。いつも同じ個体を見ているとその個性もよく判る。ヒヨドリとメジロ・・共に食べ物が同じなので常に敵対関係にあるらしい。庭のえさ場にメジロがやってくるとすかさずヒヨドリが追い散らす。しかしこの個体はどうもそうではないらしい。メジロがやってくる事を許容してる様子。どこかおっとりしている。メジロもそれを知ってか、さほど慌てない。鳥たちを見ていると共通言語を持っているようでもある。それが理解できれば面白いのになとつくづく思う。Photo:2011/03/21 京都市

2011年3月19日土曜日

第二百七十六夜/ツグミの仲間のイソヒヨドリ

 造園工事現場にやってきた珍客イソヒヨドリ(♂)。頭から胸、背中にかけて綺麗なブルー、お腹の辺りは茶色のコンビカラー。職人さんが運んでくる土がお目当てのようで、見ているとミミズとコガネムシの幼虫をついばんでいるようだ。名前に「ヒヨドリ」と付くが行動を見ていると「ツグミの仲間」である事が判る。その動きはとても面白く、立ち止まり胸を張ると次に頭を地面につけるようにしてお尻を高く上げる。地面にいる時はこれを繰り返す。ムシを食べた後は近くの屋根や柵の上で次に運ばれてくる土砂を待っていた。平気で車の下にも入り、この時もカメラに気付くと車の下に隠れた。素知らぬ振りをして樹木や土をいじっていると、すぐ後ろまできていた。あまり人を怖がっていないようだ。Photo:2011/03/18 @守山市、滋賀県

2011年3月13日日曜日

第二百七十五夜/シメ

 ニュースで報じられてる東北関東大震災の悲惨な状況を疑うばかりの穏やかな一日。いろいろなことを思い浮かべながら京都御苑を歩く。こちらが無心で歩いているからか普段は臆病なシメ(文鳥をひと回り大きくしたような野鳥)が目の前の草地で餌を食んでいた。地面に転がった松ぼっくりから種を取り出しているようだ。この野鳥は、ヨーロッパ中部および南部からロシア南部を経て中国東北部、サハリン、カムチャツカ半島までの、ユーラシア大陸中部域に広く分布する。北方で繁殖した個体は、冬季南方へ渡る。日本では北海道や本州の中部以北で繁殖するほか、冬鳥として本州以南に渡来する。もうしばらくするとふるさとに繁殖のために旅立つ。冬場は肌色だったクチバシの色が変わりだしている、はやくも繁殖期の姿が現れてきた。Photo:2011/03/13 @京都御苑、京都市

2011年3月9日水曜日

第二百七十四夜/二種のタカに魅せられる




 今日は葭原一帯に強い風が吹いていた。時折吹く強い風で車が揺れる程。ハイイロチュウヒを見に行ったが見当たらず、変わりにミサゴ(写真上)とノスリ(写真下)が元気よく飛び回っていた。ノスリは獲物でも見つけたのかすごい勢いで葭原に見え隠れした。近くの畑地にはチョゲンボウが地面にとまっていた、強い風を避けているかのようだ。さて仕事でいったん葭原を去り、日暮れにもう一度同じ場所を訪れた。この時間タカ達の姿は無かったが、トラフズク(フクロウの仲間)が複数羽、葭原を元気に飛び回っていた。このトラフズク、越冬時(冬場)は少数の群れで同じ木に止まる習性が有る。実は先日、この群れを葭原近くの木に見つけたのだ。今日も昼間確認すると確かに枝に止まっていたが、夕方にはすでに活動を始めたようでいなかった。日暮れの葭原と畑地に飛ぶトラフズクを双眼鏡で追いかけるが、しばらくしてすっかり日も暮れ見えなくなった。今日はなかなかラッキーな一日。Photo:2011/03/09 @近江八幡市、滋賀県

2011年2月25日金曜日

第二百七十三夜/トビは油揚をさらうか?

 その体験は突然きた、聞くに勝るその瞬時と迫力・・・「大切にしているものを横取りされてあっけにとられること」これを昔からトビに油揚さらわれると言う。現代では油揚ならぬサンドイッチやお弁当がさらわれると聞く。その事件が自分の身に起こった。相棒と二人、僕は鴨川の川面を遊ぶ水鳥を見ながらベンチでサンドイッチを食べようとしていた。「鳶には注意しないとな〜」と周囲を注意していたその瞬間、相棒が今まさに食べようと手にしたコロッケパンが消えた。不思議なことに「バッサ!」と言う羽音は事件の後で聞こえた。つまり羽ばたき一つせず背後から急降下したトビは大人二人の間(互いの間は50cmもない)をピンポイントでコロッケパンをつかみ獲った後に羽ばたき一つで0.5秒後には10メートル前方上空に舞い上がった、と言う訳だ。悔しいやら、感動やら、関心するやら、複雑な思いでトビとコロッケパンを見送った。一回280円の少々お高い餌やりだがすばらしい(?)体験になった。この餌の獲りかたは許しがたい、しかし立派な猛禽類としての運動能力を認めるには十分である。草原でうっとりしているネズミだったらこれでは歯が立たない。今度はカメラの上にパンを置いて、その瞬間を撮ろうか・・・なんてことを思ってしまう。さて、今回の体験で判ったことは「鳶に油揚・・・」のことわざに有るようにきっと昔から鳶はこんな餌の獲り方をしていたんだろうなと思った。Photo:2011/02/25 @鴨川、京都市

2011年2月23日水曜日

第二百七十二夜/キツネの巣穴と昼間のフクロウ


 仕事の現場でキツネの巣穴を見つける・・・といってもあまりにも判りやすい場所で驚く。さてここは今までなんども通った場所である。今まで気付かなかったことの方がおかしい。砂山に直径25cmぐらいの穴が3本、内2本が奥まであるようだ。穴の入り口には真新しい足跡が残る。肉球で出来たくぼみの砂はまだ湿り気があったから人の気配を察して巣穴に逃げ込んだのかもしれない。よくよく見ると巣穴の周りの砂は枯れ草の上に乗っている・・・ということは今年に入ってから掘られたものに違いない。キツネには気の毒だがこの場所は春にはグランドとして整備されてしまう。さてどうしたものか。この後、すぐ側で昼間に飛ぶフクロウを見た(めったなことでは見れないと思うのだが)、キツネがフクロウに化けて逃げていった? さほど羽ばたきもせず、羽音一つ立てずに樹々の間を滑らかに飛ぶその飛行に大変驚いた。フクロウが飛び去った辺りを見ると地面にいくつものペリット(餌動物の消化できない部分=毛、羽根、骨、うろこなどの塊)が見つかった。キツネの糞も沢山有る。見るとほとんどがネズミの毛と骨、キツネとフクロウどちらも知恵もの、両者ここではネズミが主食のようだ。Photo:2011/02/23 @浅小井、近江八幡市、滋賀県

2011年2月17日木曜日

第二百七十一夜/オカヨシガモ

 ヨシの茂る水路を気持ち良さげに泳ぐカモ達。少しスレンダーなボディ、地味なカモがやって来た。このカモ、オカヨシガモという(写真は♂)。雄雌共にあまり特徴がないのですぐに見過ごしてしまう。水面に映るヨシのなかを泳ぐ姿はとても綺麗だった。Photo:2011/02/17 @浅小井、近江八幡市、滋賀県

2011年2月15日火曜日

第二百七十夜/五位鷺(ゴイサギ)

 普段なら夜行性の上、警戒心の強いゴイサギ(*)が真っ昼間にしかも人が近づいても逃げる気配もなく池に架かる端のたもとにたたずんでいる。側を通る人は「なれているのね」なんて言いながら写真に収めていくのだけれど、よくよく見れば生気がない。本来なら真っ赤に目立つ虹彩(目の白目の部分)も濁っている、目もどこか落ち込んで見える、ゴイサギの特徴でもある2本の白い冠羽(頭の飾り羽)も一本しかない、さらに見ると背中の一部の羽がなくなり、周りの羽がべっとりと汚れている。このゴイサギの冠羽の特徴からちょうど一週間前に写真に収めた個体と同じだった。一週間前は元気なようだったが、その頃からなにか体に不調があったことも想像できる。そしてこの一週間満足に餌も食べていないのかもしれない。一体このゴイサギの身に何が有ったのだろうか。背後からオオタカの一撃を喰らい、逃げてきたのか? なんとか元気になって欲しいと心から願う。

*ゴイサギ:サギ科の鳥。全長58センチくらい。頭と背が緑黒色、翼は灰色、顔から腹は白く、頭に2本の飾り羽がある。幼鳥を星五位(ほしごい)、成鳥を背黒五位(せぐろごい)ともよぶ。夜行性で、水辺で魚・カエルなどを捕食。名は、醍醐(だいご)天皇の命によって捕らえようとすると素直に従ったので、五位を授けられたという故事に由来。
Photo:2011/02/15 @九條池、京都御苑、京都市

その後のゴイサギ:この写真を撮った夕方、近くの水路で力なくたたずみ、翌日別の水路で死んでいたことを知人から伝えられた。時勢がら死体は保健所に届けられ、インフルエンザの検査がされたそうだ。検査は陰性。その後、死体がどのような処分をされたかわからない、おそらくその亡がらは別の生きものの血となり肉となる野生の生きもの本来の最期とはならなかっただろう。一羽のゴイサギに起こった事件、それがもとで餌を採れず、加えて積雪に勝てなかったのか。自然界ではごく日常的な出来事、ならばこそせめて草むらで死なせてやりたかったなと思うのである。(2011/02/17)

2011年2月5日土曜日

第二百六十九夜/葦原のホオジロ

 琵琶湖の内湖/西の湖のヨシ原を歩く。今日は(も)ハイイロチュウヒ(タカの仲間)をカメラに収めようと沢山のバーウォッチャーが土手沿いに並んでいた。人を避けてヨシ原のなかに入ってみた。背丈3mを越すヨシ原に足を踏み入れるとまるで迷路の様、遠くの山を目印にしないかぎり迷ってしまうだろう。時々、ヨシ刈りで出来たぽっかりとした空き地が現れる。そんな見通しの悪い場所ならではの出会頭系接近遭遇ってあるもんだ。ヨシ原を曲がったとたん地表から2m程度の高さでハイイロチュウヒがこちらに向かってきたのだから。互いの距離は5mほど、残念なことにカメラに三脚につけていたからさすがに写真は撮れなかった。ハイイロチュウヒも驚いて急上昇。しかし肉眼でしっかりとその姿は見せてもらった。2度目の出会いを期待したが、その後はこんなラッキーな出会いは無かった。周りのヨシ原に耳を澄ませば、パチパチと周囲から音がする。ホオジロ(写真)の群れが草の種子やヨシの茎を割る音だった。Photo:2011/02/05 @西の湖、近江八幡市、滋賀県

2011年1月26日水曜日

第二百六十八夜/チョゲンボウとカラス

 今日は、ハヤブサの仲間のチョゲンボウの姿を頻繁に見ることができた、しかもつがいだった。写真の個体(左側)は♀で、貯水塔に止まり♂が飛び去った方に時折、鳴いている。♂を呼んでいるのだろうか。しかし残念ことに鳴き声に反応したのはカラスだった。チョゲンボウ(写真の左側)を見つけてすぐ隣の柱に止まって様子をうかがっている、その距離2m。
体の大きさはカラスの方がずっと大きいので、カラスがチョゲンボウに襲われるということは無いだろう。なぜ至近距離で、一羽でやってきたのか興味深い、これは外敵として注意(*1モビング)しているのか、単にこの鳥に興味が有ったのか。カラスは鳴かずちょっかいも出さず、すぐ側でチョゲンボウを観察しているだけである。10分ほどこの状態が続く、さすがに居心地が悪くなったのかチョゲンボウがすぐ側の木の梢に移ると、カラスは「なんだつまんない」と言いたげに別の方に飛んでいってしまった(カラスの行動はおもしろい)。冬の田畑ではこのチョゲンボウの狩りのシーンを時折見ることが出来るが、今日はだめだった。Photo:2011/01/25 @浅小井、近江八幡市、滋賀県

*1 モビング(擬攻撃):タカ類やフクロウ類、カラス類などが現れると、小鳥が群れを作ってつきまとい、それを追い払う行動をとることがあります。こうした行動をモビングと呼びます。この行動は実際の攻撃ではなく、嫌がらせをして追い払うのが目的です。カラス類は小鳥のモビングを受けることもありますが、一方、ノスリ・オオタカなどのタカ類に対してモビングを行います。時には数十羽がタカの回りの飛び交うこともあり、観察者にタカの存在を教えてくれます。

2011年1月21日金曜日

第二百六十七夜/ダイサギと言う名の白鷺

 僕たちは、ごく普通に白い鷺を見て「白鷺」と言ってしまうが、白鷺と言う種の鳥はいない。今の季節、琵琶湖界隈でよく目にする「白鷺」はダイサギ。車窓から見ている分には餌を獲る光景も見れる、さらによく見ようと車から降りるまではいい。いざ写真を撮ろうとカメラを見せたらあら不思議、大きな体をふわっと浮きあげて、さーっとあっちの岸辺まで軽々と飛び去ってしまうのだ。なかなか悔しい思いをする。関西なら「白鷺」と言えばコサギ、チュウサギ、ダイサギ、アマサギぐらいを覚えておけばいいだろう。今の季節はコサギ、ダイサギ。チュウサギ、アマサギは夏鳥として渡ってくる。Photo:2011/01/20 @守山、滋賀県

2011年1月20日木曜日

第二百六十六夜/シロハラ

 雪日はさすがの冬鳥たちも寒そうだ。府立植物園の樹林地を歩いているとすぐ近くの茂みからウグイスの地鳴きのような声が聞こえる、慎重に近づくがいっこうに見つからない。思い込みとは怖いもので、鳴き声をたよりにウグイスのいそうな地際ばかりに目を凝らしていた。見つからない・・・・ふと見上げると手が届きそうな場所にシロハラが一羽休んでいた。写真を撮ろうにも近すぎて撮れない。静かに後ずさりしながらやっと写すことが出来た上の写真はノートリミング(ピントが甘いのは暗くて手ぶれを起こしたから)。逃げる様子も無い、実に寒そうに見える。しばらくして子どもたちが声を高らかに走ってやってきた、さすがにこれには我慢できず飛び去ってしまった。Photo:2011/01/16 @京都府立植物園

2011年1月19日水曜日

第二百六十五夜/鵺(ぬえ)とトラツグミ

 「鵺(ぬえ)の鳴く夜は恐ろしい」は、作家・横溝正史『悪霊島』(あくりょうとう)の映画のキャッチコーピーで記憶に残っている。これは薄暗い森の中から、また夜中に聞こえてくる細い不気味な声の正体が架空の生きもの=鵺(ぬえ)または鵺鳥(ぬえどり)の鳴き声として、気味悪がられることがあったからだ。しかしその声の正体は、この写真の不思議な雰囲気をもつトラツグミ。名は「虎模様のツグミ」からつけられている。明るいところに滅多なことでは現れず、多くの場合薄暗い森やその林縁が生活場所。シダの茂る林中を、するするする・・と音を立てずに歩き、時々立ち止まってじっとしている。地面の落ち葉にクチバシを入れて、聞き耳を立てている。ある時はお尻をふりふりする。多分、この鳥が起こす振動で反応する土中の昆虫やミミズの音を聞いているのかもしれない。派手さもカワイさも無いが、なかなかいい存在感を感じさせてくれる鳥である。Photo:2011/01/16 @京都府立植物園

2011年1月18日火曜日

第二百六十四夜/アオジ


 冬鳥の中には人への警戒心が弱いものも少なくない。そんな小鳥は羽の様子や顔の表情もよくわかり、こちらが不用意に動きさえしなければ長時間観察することが出来る。写真の小鳥も同様で、2m程まで近づくことができた。こちらとの距離が2mを切ると3m程向こうに行ってしまう。種名を「アオジ」というスズメ程の大きさの鳥である。地面で草木の種をついばむことに余念がない、がその動作は絶えず体の向きを変え、ついばんだ種を食べている時は地面から頭を上げて周囲を見ている。これは一羽で行動する小鳥がもつ共通の動作のように思える。少ない植物の種子をついばむには単独のほうがよいのだろう、しかし単独行動のリスク、つまり外敵を察知しずらい。餌を群れでついばみ外敵に対しての防御をするか。それぞれの小鳥たちの活きるための力を見る気がする。Photo:2011/01/16 @京都府立植物園

2011年1月16日日曜日

第二百六十三夜/青い鳥・其の二

 今年二度目の積雪日。こんな日、生きものたちがどのように過ごしているか見ようと植物園へ出かける。日曜日なのだか雪の為に来園者とほとんど出会わない。おかげで数種類の冬鳥をゆっくり見ることが出来た。さすがに鳥たちも寒さでまんまるになっている。写真は、ルリビタキ♀(脇のオレンジ色が強目なので若い♂かもしれない)。杭の上に止まりながら時折地面に降りて餌をついばんでいた。Photo:2011/01/16 @京都府立植物園

2011年1月11日火曜日

第二百六十二夜/ルリビタキは幸せの青い鳥か?

 冬を越すために渡りの途中で立ち寄る小鳥、春までとどまる小鳥。冬鳥の顔ぶれも落ち着いてきた。そのような小鳥の中にとても臆病な種や個体、逆に人間を警戒しない種や個体がいて興味深い。今日、出会ったルリビタキは他の小鳥よりも人見知りしない種類だが、写真の個体はとりわけ馴れ馴れしい。それというのも野鳥の写真を撮っている方々が餌付けをしているから。人気の個体ほど餌をもらえるので近くまでやってくる。そしてこちらを見て餌を催促するような声まであげるのだ。僕は野生の生きものへの餌付け行為は控えるべきと考える。しかし当の僕も子どもの頃、餌を与えていろいろな生きものを見てきた。だからあまり偉そうなことは言えない。
 幸せの青い鳥・・・このような小鳥が近くにやってくる、見ることはすばらしい。それ以上にこの小鳥が自由に暮らす森がここにあること、そしてこの森で時間を過ごせることが幸せと思えることが本当に幸せなんだろうなと・・・わかったようなわからないようなことをこの鳥を観ていて思った。このルリビタキ、一見きれいでかわいいのだが、よく見るとその目はやっぱり野生。写真の個体は♂。Photo:2011/01/11 @京都御苑、京都市

2011年1月9日日曜日

第二百六十一夜/百舌鳥

 雪の河川敷を歩くとモズ(♂)が一羽、柳の枝から草むらに目を凝らしている。視点の先にはカシラダカの小群が草の種を食べていた。カシラダカを狙っているのか、他のものを探しているのかわからない。しばらく観察していると別の木に移り、同じように草地に目を凝らす。時折、地面に降りるものの獲物はいないらしい。動物性の餌を食べる鳥たちによってこの季節を乗り越えるのも楽じゃない。Photo:2011/01/08 @蛇砂川、浅小井町、近江八幡市、滋賀県

2011年1月8日土曜日

第二百六十夜/雪中のアオスジアゲハ蛹

 樹木調査中に雪景色の中、モミジの枝先に新緑を見た。モミジの紅葉に新緑だから虫屋としては直感的に注目すべきものと感じる。角度を変えてみるとまぎれも無いアオスジアゲハの蛹である。空にすかしてみるとその透明感のある緑がとても美しかった。Photo:2011/01/08 @浅小井町、近江八幡市、滋賀県

2011年1月1日土曜日

第二百五十九夜/謹賀新年・雪に思うこと

 今冬初めての降雪、さっそく日常のフィールドでもある京都御苑に出向く。積雪は10cm少し。これだけの降雪は久しくなかった。樹林地を歩くもほとんど生きものの気配はない。時折、カラスやヒヨドリが飛び去る。この降雪で命を落とす鳥もいるだろうなと思いながら、頭上から落ちてくる雪や小枝に注意し歩く。時折、近くで遠くで枝の裂ける音のすぐ後に大きな音をたてて落枝が地面の落ちる。街中の樹林は降雪に弱いらしく、大きく水平に張り出した枝は地面に触れるように垂れ下がり、頭上の大きな枝は雪の重さに絶えかねて裂けてしまう。雪で出来た幹の傷は新しい生きものの住まいとなり、落枝も同じになるだろう。山間では、積雪で多くの若い鹿が死ぬだろう、そしてこれも他の生きものの糧となる。雪は新しい命を生み出すことにつながる。Photo:2011/01/01 @京都御苑