2012年8月18日土曜日

第三百八十九夜/ご先祖様の使い・ウスバキトンボ

 今日の夕立は、すごい雷雨と強雨だった。近くの草地で雨宿りのウスバキトンボ(Pantala flavescens)♂を見つける。このトンボは、全世界の熱帯・温帯に広く分布するトンボで、日本では夏から秋にかけて全国でどこでもみられる。「赤とんぼ」に似ているが赤とんぼの一種ではない。水辺から遠く離れて飛び回るので、街中でも目にする機会が多く、日中はほとんどの個体が飛び回っている。これはあまりはばたくこともなく、広い翅で風を捉え、グライダーのように飛ぶことができ、長時間・長距離の飛行ができるため。体の割に足はキャシャで草木の枝や葉先に翅面を上に向けて止まらず、写真のようにぶら下がる様に止まる。ウスバキトンボは寒さに弱く、幼虫は水温4℃で死滅するといわれる。毎年日本で発生する個体群は、東南アジアからの飛来に加え、八重山諸島で幼虫越冬したものが春先に成虫になり、世代交代を繰り返しながら、季節の移ろいとともに日本を北上してゆく。そしてほとんどの地域では越冬できずに死滅する。お盆の頃に成虫がたくさん発生し、ふわふわと飛び続ける彼らを「ご先祖様の使い」つまり「精霊とんぼ」とうまく言ったものだ。Photo:2012/08/18 @近江八幡市、滋賀県

2012年8月17日金曜日

第三百八十八夜/ハスの花

ハス・蓮(Nelumbo nuciferaの花びらが一片、二片と散りつつある。ちょうどこちら側半分が落ちて理科の教科書にでも出てきそうな「花の構造断面」というような状態になっていた。茎、花びら、おしべ、めしべ(結実しているけど)のつき方がよくわかる、手前には葉まである。ハスはインド原産のハス科多年性水生植物、花を「蓮華」(れんげ)といい、仏教とともに伝来し古くから使われた名である。 また地下茎の「蓮根」(れんこん、はすね)や実は、野菜や生薬として利用される。茎からは繊維が採れ、葉は料理に使い、お盆の行事には欠かせない。全草が古くから利用される植物。ここで新しく疑問、花びらの数は何枚あるのか。Photo:2012/08/17  @京都御苑、京都市

2012年8月16日木曜日

第三百八十七夜/コナラシギゾウムシ

 お盆を過ぎると雑木林もすこしづつ秋の気配を感じる様になる。雑木林の秋と言えばドングリ。このドングリに卵を産みつけるシギゾウムシと呼ばれる甲虫の仲間がこれから忙しい季節となる。ドングリは「堅果(けんか)」と言われる、熟して大きくなるととても堅くなる。コナラシギゾウムシ(Curculio dentipesは、ドングリがまだ緑色で完熟しない頃に「殻斗(かくと)」(つまりドングリの帽子の部分)の部分(殻斗に覆われているドングリの外皮は柔らかい)から口を錐の様にして孔を開け、産卵管を差し込んで卵を産みつける。ドングリの中で孵化した幼虫は実を食べて育ち、外に出て土中に潜り越冬した後に蛹化・羽化する。クリを食べた時に中からなにやら虫の幼虫が出てくる事があるが、あれはこのゾウムシの仲間(クリシギゾウムシ)。Photo:2012/08/15 @京都御苑、京都市

2012年8月15日水曜日

第三百八十六夜/昼間の羽化・アブラゼミ

 夏の御苑は人の話しも聞こえない程のセミの声。ニイニイゼミ、アブラゼミ、クマゼミ、ツクツクボウシ、ヒグラシと全て出そろった。普通は捕食者に見つかりにくい夜間に地上に現れ羽化する蝉も今日は明るい時間に見ることが出来た。羽化したばかりのアブラゼミ(Graptopsaltria nigrofuscataの体は透き通るような白さで、時間が経つとゆっくりと褐色の色味がついてくるが、複眼だけは最初から黒々としており十分な視力を持つと言われる。セミは短命と言われるが、実際は6年から7年間の幼虫期+3週間程度の成虫期、これは決して短命ではなく昆虫としてはむしろ長命である。
 小学3年生の頃、このアブラゼミを沢山捕らえて、複眼と単眼のそれぞれまたは両方にバンソコウを貼り(つまり目隠しをする)、放す実験(ほとんどイタズラ)をした。予想は大きく外れ、複眼にバンソコウを貼ってもセミはちゃんと飛んでいってしまうが、単眼に貼ると無茶苦茶な方向に飛んでいってしまうのだった。時には空高く舞い上がったかと思うと地上に向かってまっすぐに飛んできて地面に激突してしまうのだった。大変な殺生をした。アブラゼミを見るといつもこの時の事を思いだす。Photo:2012/08/15 @京都御苑、京都市

2012年8月14日火曜日

第三百八十五夜/ゴマダラチョウの終齢幼虫

 ゴマダラチョウ(Hestina japonicaの終齢幼虫がエノキの下のアオキの葉上にいた。本来ならエノキの葉上に糸を吐いて台座を作り、そこに止まっているはずである。昨夜から今朝にかけての強雨を避けて下に降りたとは考えれず、きっと強雨に打たれ落下してしまったのだろう。なにはともあれ無事で何より。このまま無事なら後1週間もすれば蛹になるだろう。Photo:2012/08/14 @京都御苑、京都市

2012年8月13日月曜日

第三百八十四夜/アカハナカミキリ

 北海道の朝の散歩では、いろいろな生きものに出会った。その中でも必ず出会ったのがアカハナカミキリ(Aredolpona succedanea)、全身が茶色がかった赤色のやや小さめのカミキリムシでちょうど発生のシーズンだったこともある。真夏の林に多く、白い花に集まったり、山道を横切って飛んだりするのだがここの公園ではアジサイの葉上に集まっていた。1、2頭がふわーっと飛来して、何頭もになり、やがて1、2頭とふわーっとどこかへ飛び去っていく。朝の集会にでもやってきた感じである。
これで北海道の生きもの話はひとまずお休み。Photo:2012/08/08  @白樺緑地、石狩当別、北海道

2012年8月12日日曜日

第三百八十三夜/コキマダラセセリ

 朝の散歩で関西ではあまり平地で出会わないセセリチョウを見つける。コキマダラセセリ(Ochlodes venatus (写真の個体は♀)茶褐色の黄色い斑紋がきれいだ。斑紋が似た種でキマダラセセリという種もいる、こちらに対して「コ=小」と名につくが大きさは変わらない。Photo:2012/08/08  @白樺緑地、石狩当別、北海道

2012年8月11日土曜日

第三百八十二夜/ヒラタシデムシ

 積丹半島の岬では沢山のヒラタシデムシ(Silpha paerforata(=北海道特産種、本州に生息するよく似た種はオオヒラタシデムシという)がいた。むしろ甲虫と言えばこれしか目にしなかった、特に岬の頂きにいたる遊歩道で多く見る。なかでも歩行者によって踏まれつぶれたカタツムリを3頭仲良く食べているものを見ていると面白かった。左下の個体がメスで、他の2頭はオスのようだ。食事を終えた2頭のオスは交互に下のメスに交尾を迫るのだが、メスはいっこうに相手にせずカタツムリを食べる事を止めない、やがてオス達は交尾をあきらめさっていくのだが、メスはまだなおカタツムリを食べ続けていた。卵を産むためにはオスより多くのエネルギーが必要なのだろう。この様子を見ているとなんと無防備な昆虫であるのか、しかしこいつをつかむとお尻から大変に臭い液体を出すのでだれも相手にしないようだ。きっとこの辺りの動物はこのことを知っているんだろうな。やたらとどこでもぞろぞろ歩いている。
  シデムシの仲間は動物の死体に集まり、それを餌とすることで有名な甲虫。名前の由来は、死体があると出てくるため、「死出虫」と名づけられたことによる。また、死体を土に埋め込む習性をもつものもあるため、漢字では「埋葬虫」と表記することもある。Photo:2012/08/07  @積丹半島、北海道

2012年8月10日金曜日

第三百八十一夜/突然の出来事・チゴハヤブサ

家の裏の公園に朝の散歩。キィ・キィ・キィ・キコ・キコ・キコ・・・・興奮した鳴き声と共にすごい勢いでタカが飛んできた。小鳥が高木の込み入った枝の中に逃げ込んだ、獲物の小鳥を追ってきたようだ。タカは小鳥が逃げ込んだ樹のまわりを勢い良く旋回し始めた。そのタカは、チゴハヤブサ(Falco subbuteoだった。数回旋回を繰り返し、枝先に瞬間止まったかと思うと、やって来た反対の方向に飛び去った。結局、この狩りは失敗のようだった。この間10秒に満たない出来事だっただろう。チゴハヤブサがくるまでは小鳥のさえずりで賑やかだった森もこの時ばかりは、静かになりチゴハヤブサの鳴き声だけが際立った。チゴハヤブサが飛び去った後は元のさえずりで賑やかな森に戻った。
  チゴハヤブサを見たのは初めて、もちろん狩りも初めてだ。なんだか実際にあったのかどうかも確信できないぐらいの突然の出来事だった。写真はこの2枚だけ、不満足だが良しとしよう。写真上:瞬間、梢に止まる。写真下:鳴きながらすごいスピードで梢を旋回している、小鳥が飛び出てくるのを狙っているのだろう。翼は細く、完璧に揃った尾羽がきれいだ。Photo:2012/08/07 @白樺緑地、石狩当別、北海道

2012年8月9日木曜日

第三百八十夜/タカネトンボ

 積丹半島からの帰り道、路面に2種のトンボを見つける。両者とも車との接触で落ちていた。1種はオニヤンマ、ヒックリ返っていたものを路面から拾い上げると元気に飛び去った。車と接触して脳しんとうでも起こしていたのだろう。もう1種がタカネトンボ♂(Somatochlora uchidai、胸部が金属的な緑色に輝く美しいトンボである。他に多数の蝶やメジロの事故死体もあった。メジロは事故直後の様、外傷はないきれいな羽をじっくり観察した後、近くの森の林床にそっと置いてきた。他の生きものの大切な糧となる事間違い無し。Photo:2012/08/07 @積丹半島、北海道

2012年8月8日水曜日

第三百七十九夜/ミサゴ

 積丹半島の話のつづき。海にそそり立つ半島の突端から海側をみると眼下に岩の尖塔が見える。その切り立った尾根に2羽のミサゴ(Pandion haliaetusを見つける。(写真中央の岩稜上の草地に2羽が見える)写真には写っていないがすぐ右にも尖塔があり、その頂きには巣があった。巣には一羽のヒナ鳥が見えた。おそらく写真の2羽は親鳥で、巣にいるのは巣立ち可能なヒナ鳥と思う。両者はしきりに鳴き声を交わしていた。別の岩島の頂きにはハヤブサが居た。愚かだった、身軽に歩こうと車に望遠レンズを置いてきてしまったのだ。取りに戻るには時間的余裕が無かった。時間の許すかぎり双眼鏡で眺めていた、ハヤブサは飛び去り、ミサゴはいっこうに動く気配が無く鳴き声だけ響いていた。
 さてこのミサゴの英名は「Osprey」最近よく聞く名前である、本物のOspreyはあの鈍重なデザインの機体ではなく、すごくきれいな海鷲で、急降下し水面近くで脚を伸ばし両足で獲物(おおくは魚)を捕らえる。Photo:2012/08/07 @積丹半島、北海道

2012年8月7日火曜日

第三百七十八夜/ハヤシミドリシジミ

 私用で北海道を訪れた。限られた時間のなかではあったが積丹半島に行って来た。半島を形づくる斜面は、風雪・波の浸食で海側はとても急峻で尾根から海岸まですっぱりと切れ落ちている、一方反対側(つまり陸地側の斜面)は比較的なだらかな斜面がひろがる。斜面は一面ササ類に覆われ、風雪の影響を強く受ける上部斜面ではカシワの疎林が広がる。今回、ここを訪れた僕の目的はこのカシワ林にあった。カシワ林は海側からの風雨を避ける様に低く、地面を這う様に成長している。枝高さは地表から0mから高くてもせいぜい3.0m程度。観光用の園路を外れ尾根までの道沿いに何本ものカシワを見ながら歩く。やっとお目当てのハヤシミドリシジミ(Favonius ultramarinusを見つける。不思議な事でなにが彼らをそうさせるのか、ある一本のカシワには十数頭のハヤシミドリシジミが居た、隣の木には一頭もいないのにである。遠くの木にもいくらかのミドリシジミが飛ぶのが見えるがそれほど多くはない。斜面地のササは胸辺りまで成長し、足元の不安定さに加えて、地面にはアリがおそろしくいる。夕方になるにつれ風も吹き出し、写真を撮るのは悪条件となってしまった。ミドリシジミも葉の間に隠れる様に休んでいた。写真はあきらめ時間の許すかぎり双眼鏡での観察とした。ここ積丹半島では、ハヤブサ、ミサゴの営巣、ハリオアマツバメなどゆっくり見る事が出来た。Photo:2012/08/07 @積丹半島、北海道

2012年8月6日月曜日

第三百七十七夜/エゾアカゲラ

 私用で訪れた北海道。旅に出た時は必ず近くの森まで朝の散歩をする事にしている。森や川を見るとその土地の歴史や自然生態が判る。今回もお決まりの朝の散歩。今日はまず最初に公園でキツツキの鳴き声に出会う。鳴き声をたどるとエゾアカゲラ♂(Dendrocopos major(エゾアカゲラ:北海道で繁殖するアカゲラの亜種)がいた、近くに別個体(♀)もいたので彼らはペアだろう。さらに探すと近くの木に新しそうな巣孔を見つける。時期的には繁殖は終わっているのでこれは今年の営巣孔と思う。それにしても家裏の公園でアカゲラの繁殖が見れるとは羨ましい環境である。Photo:2012/08/06 @白樺緑地、石狩当別、北海道

2012年8月3日金曜日

第三百七十六夜/ムラサキシジミ

 夏真っ盛りである。こんな季節には樹木の新芽は伸びないものである・・・がここは少し違う。定期的にアラカシの生垣が手入れされているので、その度に樹木は新芽を延ばす。いわば人為的に樹木の成長がかく乱がされている。そんな人為的なかく乱をうまく利用する生きものも多い。ムラサキシジミ(Narathura japonicaはアラカシの新芽に産卵をする、常に新芽が見つかるために繁殖が容易となるので個体数は多い。新芽にはアブラムシも多い、このムラサキシジミはアブラムシが出す甘い汁を吸っている。Photo:2012/08/03 @京都御苑

2012年7月31日火曜日

第三百七十五夜/スズメのねぐら

スズメ達がヨシ原のねぐらに入るシーンに出くわした。数十羽程の群れで飛んできてヨシ原の近くの木にでしばらく止り、やがて様子を窺ってから一直線にヨシ原に入る。ヨシ原の中に立つ柳にも鈴なり状にスズメがとまる(写真)。ヨシ原は大変に賑やかだ。陽もすっかり暮れ、コウモリの飛翔も見える。ひととおりスズメがねぐら入りした後、今度は同じヨシ原にツバメが十数羽程の群れで飛んできて次々にねぐら入りした。(午後7時30分頃)チュンチュン・・・チュンチュン・・彼らの言葉に耳を澄ますがやっぱり意味は判らない。このヨシ原は道の駅に隣接する小さなもの、さて何羽の小鳥達がここをねぐらにしているのだろうか。Photo:2012/07/31 @草津道の駅、烏丸半島、滋賀県草津市

2012年7月26日木曜日

第三百七十四夜/セグロアシナガバチ

 小学校の野外体験プログラムでカヌーを使ったヨシ原散歩を行う。水面で漂う一匹のセグロアシナガバチ(Polistes jadwigae を見つける、パドルで救い上げ、舳先に止まらせる。羽や体が乾いたところでヨシの葉に移す。このような時のハチは、おとなしい。やがてその方向に巣があるのか、飛び去っていった。Photo:2012/07/26 @北之庄、近江八幡市

2012年7月24日火曜日

第三百七十三夜/モリアオガエルの旅立ち

水辺から離れた樹林地で地面をはねる小さなカエルを見つける、やっと前後の足が生えそろったばかりモリアオガエル(Rhacophorus arboreusの子ガエルだった。オタマジャクシ時代の尾がまだ1cmほどお尻についている。注意してみると同じようなサイズの子ガエルが何匹も見つかる。正面から覗き見ると、体をぺたりと木の幹に伏せる。すでに外敵から身を守ることを知っているようだ。こんな小さなカエルが水辺から離れ樹林で暮らし始めていたことは意外だった。もう少し大きくなるまで水辺にとどまると思っていたからだ。この子ガエルの尾は、明日にはすっかり体に吸収されるだろう。その後、数日間はなにも食べない拒食期を過ごした後、蚊やハエ、クモなどの小さな昆虫を食べるようになる。このカエルが産卵のために水辺に再び訪れるのはいつになるのだろうか。名前から察する事が出来る様に彼らの生活の舞台は「森」である。この子ガエルも例外ではなく、それまで樹上が生活の場となる。繁殖が出来る程大きくなるまでには数年必要かもしれない、それまで彼らのまわりにはトカゲ、ヘビ、クモ、鳥・・・など外敵に囲まれているようなもの、どれほどの個体が無事に生き延びれるのか。頑張れケロちゃん。Photo:2012/07/24 @京都御苑

2012年7月22日日曜日

第三百七十二夜/ヒカゲチョウ

 日陰にいるからヒカゲチョウ(Lethe sicelis・・・翅の表は淡い褐色、裏は淡い褐色に目玉模様。これと言って特徴も無く、際立った彩りにも欠けるが、なぜか好きな蝶の一種。暑い日差しを避けて常緑樹のひんやりとした林を歩くと出会う。静かに下草に止まっているのが似合う。マレイシアの熱帯雨林にいる気がするからか。Photo:2012/07/22 @京都御苑

2012年7月14日土曜日

第三百七十一夜/謎解きのヤゴ(1)

 トンボの幼虫(ヤゴ)の種類を同定するのはなかなか難しい、生きていればなおさらである。2週間程前に栗東の谷戸にある農道際の水たまりになんとなく異なるヤンマ型の幼虫を見つける。はっきりとここが違うと言い切れない、こんな時はこの何となくが大切だ。謎解きのために2匹を持ち帰り育てる。 なんとなく種類が違うのだから、なんとなく行動もことなる。どこが違うと問われても、やっぱり何となく違うとしか答えられない。
 そのヤゴ達は凄まじい食欲だった、そのヤゴの1匹が3日前から餌を摂らなくなった。複眼と翅部のふくらみも目立つ様になった。昨夜はそのヤゴの様子が違った、水面上をむいていよいよ羽化の頃合いを計っている様子。羽化の場面を見ようと待つがいっこうに水から上がる気配が無い。さて?朝一番に見るとすっかり羽化を終えていた。残念。
 羽化したのは、ヤブヤンマ(♂)(Polycanthagyna melanicteraだった。黒地に黄緑斑があり、複眼から顔面は瑠璃色できれいな大型のトンボ。名前から判る様に藪(ヤブ)の中に潜む、早朝と夕方に活動する黄昏ヤンマの一つ。丘陵地や低山地の植物性沈積物が多い木陰の池沼や小さな水溜りなどに生息、5月中旬ころから出現し9月末頃まで見られる。羽化した成虫は、元の場所に放つ。飛び去る姿はあまりにもきれいで写真を撮ることも出来ず。またまた残念。
 残る1匹もそろそろ食欲が鈍ってきた、今週中には羽化する様子、どのような成虫がみられるのか楽しみ。Photo:2012/07/14

2012年7月13日金曜日

第三百七十夜/シオヤアブ

 昨夜のアシナガバチは人を刺す事があるが、こちらのシオヤアブ(Promachus yesonicus は 人を刺す事はない。ただし捕った獲物をぶすりと口吻で刺す。毛深いハチに似た体形で、褐色の大きなムシヒキアブの仲間。全身に黄色の毛がはえており、腹部 は、この毛のために黒色と黄褐色のしま模様に見える。脚は黒色だが、すねの部分だけが黄褐色。写真は♂で、尾(腹部)の先端に白い毛が生えているのでよく目立つ。
 草原や林の周辺の、日当たりの良い場所でよく見られる普通種。待ち伏せ型の狩りをする。普段は葉上や枝の先端にとまり体を休めているのだが、近くを甲虫やハエ、アブなど、他の昆虫が飛ぶとすかさず飛び立ち、強靭な足で羽交い締めにして、口吻を突き刺す。大概は 相手の頭部と胸部の急所ポイントを一差しする、必殺仕置人の技みたいだ。獲物は、マメコガネなどの小型の甲虫から大きなトンボも対象とする。第百三十二夜 (2009/08/14)では、シオヤアブ(♂)がシオヤアブ(♂)を捕獲した写真を紹介した。飛ぶ昆虫なら相手を選ばないようだ。親子ともに肉食で、幼虫は土中や朽 ち木の中にいて、他の昆虫などを食べて育つ。写真のシオヤアブは、飛翔するクサギカメムシを捕らえ、食べている(体液を吸う)。 
Photo:2012/07/10  @京都御苑



2012年7月11日水曜日

第三百六十九夜/ハチは人を刺すのか?

 今日は小学校がキャンプをする際に注意すべき「ハチ対策」を書いていた。
ハチは人を刺すのか? これはYESでもあり、NOでもある。だから今回も一番先に「ハチは理由なく人を刺す事はしない」と説明書きした。刺されないためには相手を良く知る事が先ず一番である。
 先日もある場所でハチに刺されそうになった人がいた、その人は頭近くにやってきたアシナガハチを手ではらおうと懸命だった。間違いない事はハチは人を刺すつもりでやってきたのではない。アシナガバチはその人の整髪料の香りに引かれて来たかもしれない。幸い刺されずにすんだがいつ刺されてもいい状態を自らが作り出していた。
 多くの場合、ハチに刺される時は人がその原因を作っている。 ハチが来た時は、じっとして次の行動を知る方が無難である。ハチだって刺すには大変なエネルギーが必要である。人を刺したってなにもメリットがない。実は僕は女性や子どもの発する「キャー」って高い声のもつ波長にもハチが反応すると思っている。だからハチが来ても無駄に怖がらず、騒がず、そっとその場を立ち去る事で問題は解決するものだ。
 子どもの頃読んだ「シートン動物記」では野生動物に出会った時、動物に対面して静かに諭す様に一言「森にお帰り」で人と動物が互いを認め合った。この気持ちで接したいものだ。
だから、ハチがやってきても「なにもしないから安心しなさい」と言ってその場から静かに立ち去ろう。 その時、まちがっても「さよなら」なんて手は振ってはいけない。
  写真は、セグロアシナガバチ(Polistes jadwigae。蛾の幼虫を巣に運ぶために肉団子にしている最中。(Photo:2012/07/10 @京都御苑

2012年7月9日月曜日

第三百六十八夜/アマガエルの若カエル

 どんな生きものでも幼児顔ってあるけれど、やっぱりカエルにもあるみたい。カエルの場合は「幼児」っていうとオタマジャクシになってしまうから、正確には「若蛙」。写真の若蛙は、アマガエル(Hyla japonica体つきもまだ小さく、足がどことなく弱々しい、なかなか愛嬌のある顔である。
 でもかわいいばかりでなくつき合うには、ちょっとばかりの注意が必要。アマガエルの皮膚はつるつるした粘膜に覆われるが、この粘膜からは体を細菌などから守るため毒が分泌されている。手で触る分には問題ないが、傷ついた手で触ったり、触った手で目や口を擦ったりすると、激しい痛みを感じ、目に入った場合は失明することもあると言う。
 小学生の頃、親友のヒロシ君はなによりもこのカエルが大好きで、家の水槽には沢山のアマガエルを飼っていた。そんな彼は大好きなカエルをいつも手や顔の上にのせいていた、果たしてヒロシ君は大丈夫だったのだろうか。今考えると少々ゾッとする・・・当時の本にはそんなこと書かれていなかった。Photo:2012/07/08  @滋賀県、高島市

2012年7月8日日曜日

第三百六十七夜/トノサマガエル

 最近、カエルと言うとモリアオガエルばかり見ていた。久しぶりにトノサマガエル(Rana nigromaculata)の顔を正面からみるとカエルと言うよりもどこかヤモリかトカゲの様な顔つき(両生類よりもは虫類的な)に見えた。目口の顔のバランスが原因だろうと思うが、不思議である。写真は♂。Photo:2012/07/06 @金勝、栗東市

2012年7月6日金曜日

第三百六十六夜/オニヤンマの季節

 オニヤンマ(Anotogaster sieboldii の羽化痕(ヤゴの脱け殻)を見つける。体長さ5cm程で体の表面は汚れたような色で、がっちりした体に毛深いのでよく目立つ。今日は小さな側溝(道路の脇の溝)のまわりの草葉、電柱、石などにいくつも見つけた。水路から5メートルも離れた民家の塀にもあった、ずいぶん歩いたものだと感心する。不思議とこの場所は例年沢山の羽化痕を見つける。水面からの高さは、だいたい1m以下、多くは50cm内外に多かった。このオニヤンマが飛び始めると、ああっ夏が来たんだ・・・と思うのだ。オニヤンマは日本で一番大きなトンボ、卵から孵って成虫になるまでに5年程の幼虫生活を送る。Photo:2012/07/06  @金勝、栗東市

2012年7月5日木曜日

第三百六十五夜/エレガントなカメムシ

 長い手足に長い触覚、スレンダーなボディに引き締まった肩、緑の体に褐色のマント、なかなかエレガントなカメムシ。名を「オオクモヘリカメムシ(Anacanthocoris striicornis」と言う、名前は体の特徴からきている。きれいなのだがやはりカメムシ、非常時に出す匂いは、カメムシらしく悪くはないが、ナイスとは決して言えない。Photo:2012/07/04 @京都御苑

2012年7月4日水曜日

第三百六十四夜/親はつらいよ・ムクドリ

 巣穴から落ちんばかりに身を乗り出し餌をねだるムクドリ(Sturnus cineraceusの子ども達。巣穴には四羽いるが、いつも3羽がせり出し、すこし弱いのか一羽は後ろで控えている。そこに親はひっきりなしに餌を運んでいた。今日のメニューは、ほとんどミミズのようである、雨が降ってミミズが地面にはい出してきたところを捕るのだろう。3分とかからず餌をくわえて戻ってくる。(♂♀2羽だから一羽あたりは6分ぐらいか)
 一度、見ている僕のすぐ前に2cmほどの小さな昆虫(蛾のようだった)がはらりと落ちて来た、親鳥が落した餌だった。すると親鳥はそれ拾うためにすぐに急降下し地面に降りた、そこで始めて人間の存在に驚いた様子だったが、再びくわえ飛び立ちヒナに与えた。小さな虫でも貴重な餌だ、親鳥にとってあの小さな虫でも捕らえることは決して容易でなさそうだ。子ども達の食欲を満たすにはどれほどの餌を運んでくるのか、痩せる思いの親鳥でした。子ども達は明日にでも巣立ちしそうだが、もうしばらく親鳥の苦労が必要である。Photo:2012/07/04 @京都御苑

2012年7月3日火曜日

第三百六十三夜/虫目、キノコ目

 宮崎駿さんと養老孟司さんの対談集「虫目とアニ眼」という面白い本がある、これとはほとんど関係しないけど「虫目とキノコ目」と言う「目」がある。時には「虫目と鳥目」と言うのもある。フィールドで「あっ!あれ!」って同じ方を見ているのに人によって見つめるものが違う、見つけるものが違う。例えば、エノキの樹冠にとまる小さな蝶を見つけ虫屋が指差す先に、鳥屋(鳥の研究者)は小さな鳥を見つけ、互いに「おおっ!いるではないか!」と言ったりする。あたかも同じものを見ているかごとくにである。しかし話してみるとほとんど違うものを見ていたりするから面白い。先日も知人が「そこに!」と指差した先にあったにょろっとした白いものの向こうに僕は虫を見ていた。「そこ!」って言われてもキノコには目が反応しない、無意識のあいだに虫を見つけようとする。
 地面からにょろっと生えた1cmほどの白い物体は「クモタケ(Nomuraea atypicolaと呼ばれるキノコの一種。通常、このキノコはトタテグモに生じる。このクモは地中に筒状の巣を作り,地面との境である巣の上端は蓋がついている。このクモがキノコの菌に感染したとき,この菌は巣の底にいるクモから長い菌糸の束を出し,蓋を押し開けて地上に伸び出し,その先端に粉状に多数の胞子を作ると言う。これがにょろっとした白い物体の正体。このキノコを掘るとその一番下にはクモの死骸がついていると言う事だ。Photo:2012/06/26 @京都御苑

2012年7月2日月曜日

第三百六十二夜/アリ? それともクモ?

 ハエトリグモの仲間にアリグモと呼ばれる仲間がいる。写真はその仲間の代表格の「アリグモ(Myrmarachne japonica」(写真は♂)。アリグモは、蟻のように全身ほぼ黒(若干の模様が腹部にある場合がある)で、草葉の上や木の幹を歩いている。歩き方は蟻そのもの、第一脚はいつも持ち上げて構え、ぱっと見、蟻の触覚と見間違う。これはアリに擬態しているものと考えられる。擬態の目的として、「アリを捕食するため」の攻撃的擬態という説と「アリに似せることで外敵から身を守るため」という隠蔽的擬態がある。かつては「アリを捕食するため」という説が主流で、まことしやかに「巣穴に入り込んで幼虫や蛹を担ぎ出す」とまで言われたらしい。しかし、その確実な観察記録はないと言う。だから実際は、蟻に似せて外敵を避けるための擬態であるといわれるようになった。蟻はハチの仲間で攻撃的な昆 虫だから、似せる事で他者からの攻撃を避けられることが最大のメリット。アリグモは獲物を捕らえるためのクモの巣は張らず、歩き回り(徘徊型)獲物を捕らえる。Photo:2012/06/26  @京都御苑

2012年7月1日日曜日

第三百六十一夜/オオシオカラトンボの顔

 野菜に豊作がある様に昆虫にも豊作らしきものがある。つまり例年よりも発生が多いと言う訳だ。 今年はオオシオカラトンボ(Orthetrum triangulare melaniaが多いようである。昆虫の個体数変化の原因として考えることは、気象によるものと生息場所(繁殖場所)の変化によるものだろう、実際はもう少し複雑だろうが。さて、気象に見ると、例年とさほど変化がない気がする。一方、生息環境的にはどうか・・・このトンボは広範囲に移動する種類ではないのでこのトンボが生息する場所(ここでは池)の変化によるものが大きいだろうと出来る。・・・が実際は今いるトンボ(成虫)の個体数は昨年度の産卵状況に左右されるので、今年の変化を探しても答えは見つからないはず。つまり昨年の産卵期の環境はどうだったかを知る必要がある・・・昨年の記録をたどり、一昨年との変化を探してみよう。
 トンボの顔は面白い。実にクールでポーカーフェースである。大きな眼(複眼=小さな眼がいくつも集まっている)はどこを見ているのかさっぱり判らない。ただ餌となる蝿や蚊等の小さな昆虫が近くを飛ぶとすかさず飛び立ち捕らえる。また近くに別の♂が進入するとこれまたすかさず飛び立ち、追い払いう。形からも想像できるように高性能なレーダーのような全方位的視力を持っているはずである。 しかしこんな高性能なはずの眼だけど、正面からゆっくりと近づくとカメラのレンズの先端が触れるほど接近できる。実際に逃げられ、初めてレンズが相手に触れた事に気付く事もある。トンボを指で捕まえる時に、目の前で指をぐるぐる回すが、やたらに回さずに正面からゆっくりと指を近づける方がゲットの確率は高い。Photo:2012/06/26 @京都市内

第三百六十夜/謎解きの幼虫(蛾)

 5月にテングチョウの幼虫をフィールドから採集してきてその成長を写真に収めた。その時採取したエノキの一枝に一緒に紛れ込んだ2頭(匹)の鮮やかな緑色の青虫がいた。但し、これはテングチョウの幼虫ではなく蛾の幼虫である事は判っていた、やがてテングチョウが蛹になり、羽化した後もその青虫は蛹になる気配がなかった。あいかわらずエノキの葉を食べ続けた。
 テングチョウが羽化(5月30日頃)し、その1週間後(6月7日頃)に繭を作り蛹になった。そしてその繭から茶色の地味な蛾が6月27日に羽化した。幼虫を見ても種類が判らなかったがこれで同定できる。その蛾は「モクメクチバ(Perinaenia accipiter)」、2ケ月半に及ぶ謎解きがようやく終わった。この蛾の翅は、アオバズクの食痕から見つかることがある。Photo:2012/06/30 @京都市