2012年6月19日火曜日

第三百五十二夜/白いイトトンボ

 水際の草地から白いイトトンボがフワフワと飛び出てきた。羽化して間がないモノサシトンボだった。翅も体も白く柔らかそうだが、唯一眼部だけが色を持っている。セミもトンボも羽化直後なのに複眼部だけはちゃんと色がついていて、周辺の様子がよく見えるようである。彼らにとって羽化する時が一番危険な状態である、そのような状況のなかでもさまざまな判断が出来る様に目だけはすっかり機能していると言われている。Photo:2012/06/12 @京都御苑

2012年6月18日月曜日

第三百五十一夜/蛇の目を持つ蝶

 やっと梅雨らしいお天気となってきた、梅雨と言えば「傘」が手放せない季節である。こんな少し薄暗く湿っぽい季節に似合うのがジャノメチョウの仲間。
 写真は「ヒメジャノメ」(姫蛇目、学名 Mycalesis gotama)。薄暗い下草のなかを消極的に飛んでいる。消極的というのはあまり連続して飛ばないと言う事、けっして飛ぶのが嫌だとか苦手と言う訳ではない。このジャノメチョウの仲間の特徴は、翅の紋様に蛇の目(じゃのめ)を持つものが多い。この蛇の目とは、名のごとくヘビの目から名づけられた同心円を基調にした模様のことである。
 僕が学生の頃は、ジャノメチョウの仲間は「ジャノメチョウ科」として科を与えられていたが、最近では「タテハチョウ科ジャノメチョウ亜科」に属するチョウの一種となっている。
 この蝶の仲間は、薄暗いところを好むのと、茶色の地味な体色などから間違って部屋に入ろうものなら「蛾だ!」なんて新聞紙ではたかれるか、すぐさま追い出されるが、そもそも蝶と蛾の区別なんて明確に出来ないのである。大変に気の毒である。

  他にも「蛇の目」と言う言葉は、よく耳にする。例えば、使った事は無いけれど、蛇の目傘、ジャノメミシン 。
  ウィキペディアで調べてみると・・・・
蛇の目傘:畳んだ状態が細身の和傘である。本来は蛇の目に見えるように紙を張り付けたものをいった。
蛇の目の砂:相撲で、土俵際の判定のために整備される土俵のすぐ外に撒かれる砂のこと。かつて土俵が2重であったときの名残である。 蛇の目猪口:酒や醤油の品質を確かめるために用いられる猪口には、濁りをみるために底に青色の輪の模様が入っている。利き猪口ともいう。
蛇の目紋:正式には弦巻紋(つるまきもん)と呼ばれる日本の家紋の一種である。

・・・と言う訳でこの蝶、けっこう和のテイストに満ちている気がする。
Photo:2012/06/12 @京都御苑

2012年6月17日日曜日

第三百五十夜/カラスとドングリ

 今日、またカラス(ハシボソガラス)の賢さを一つ知った。二羽のハシボソガラスがなにやら探し物をしていた。隠した食べ物を探しているのかと観察していると、丸いものをくわえた。双眼鏡で見ると「チョコボール」、なかなかいいものを拾ったと思った。すぐに食べずにチョコボールをくわえてしばらく歩く。今度はそれを脚に挟み、クチバシで割っている。(写真上)なかなか苦労しているが、ようやく中身を食べる。チョコボールなら割らずに食べれるはずである・・・? この行動を何度か繰り返す。
いくらラッキーとは言え、チョコボールがそんなに落ちてはいないだろうとさらに観察、食べていたのは「チョコボール」でなく「ドングリ」だった。食事中のカラスには悪いがその場所を見に行った。なんとそこにはドングリ(アラカシの実)の殻が沢山落ちている(写真下)。驚いた事には、カラスは地表に浮き出た木の根に止まり、木の根の窪みにドングリを入れて=安定させてクチバシで割ったようである。丸く小さなドングリを足で挟むのは容易ではない。そこで木の窪みを利用したのだろう。脚で木の実を挟み割る事は他の鳥でも知られている。しかしこのカラスがこの木の根を「特別な場所」として日常的に利用し実を割っていたとなると、これは「道具に近いもの」を使っていると言ってもいいだろう。次回はこの「特別な場所」でカラスを待つ事にしよう。Photo:2012/06/17 @京都御苑

2012年6月16日土曜日

第三百四十九夜/アオバズクの子育ての季節

 アオバズク(青葉木菟、Ninox scutulata)の子育ての季節に入った。松の洞を巣孔に選んだカップルの♂が近くの枝で見張りをしている。外敵のカラスやオオタカに背後から狙われない様に、背と頭の上には松の枝が多く込み合い、かつ巣孔と周囲を良く見れる場所を選んでいることが判る。この♂は胸のストライプがくっきりと太くなかなかかっこいい。
 さて今年のふ化はいつ頃か? ヒナが孵れば見張りに加え、今以上に食べ物集めがものすごく忙しくなる。Photo:2012/06/16 @京都市

2012年6月15日金曜日

第三百四十八夜/ヤゴの脱け殻

ヤゴ(トンボの幼虫=水蠆)とはトンボ目(蜻蛉目)の幼虫を指す通称(俗称)。水際の草地にヤゴの脱け殻をよく目にする季節になった。脱け殻には背中に開いた小さな割れがある、まるでファスナーか何か付いている様にきれいにあいている。この背中に開けた小さなスリットから新しい体を滑り出し、羽を伸ばし、大きなトンボが現れる。つくづく不思議な構造だと思う。トンボは蝶やカブトムシの様な蛹(さなぎ)の時代がなく、「卵→幼虫→成虫」のように姿を変態させていく。だから基本的には、幼虫と成虫の体の作りには大きな変化は無い。
さてトンボ類は化石として出土し、その歴史は3億年前に生息していた古代トンボ=メガネウラ(日本語ではゴキブリトンボともいう)まで遡り、昆虫の仲間では古くからいる生きものなのである。この仲間で現在知られている限りで史上最大の昆虫「メガネウロプシス・アメリカラ」は翅開長760mm(約30インチ)もあったと言われている。現在はこんな巨大なトンボはいないが、体の構造も、生態もさほど変わっていないはずである。小さなヤゴの脱け殻でさえも、すごく精巧な構造に驚くのだから、この古代トンボ=メガネウラの脱け殻はさぞかし立派で、持ち応えのあるものだろう。現代のトンボの様に俊敏に飛ぶ事ができなかったようだが、生きた個体が飛んでいてもたやすく捕虫網に入らない、巨大な魚を捕るような強靭で大きなネットか投網が必要になるな〜。
ちなみにこの巨大トンボ・メガネウラは「風の谷のナウシカ」の腐海のシーンで「大王ヤンマ」(森の見張り役)として登場していた。写真のヤゴは「マルタンヤンマ」と思われる。Photo:2012/06/12 @京都御苑

2012年6月13日水曜日

第三百四十七夜/アリの高速道路?

 地面に埋め込まれた園路の鉄製の縁(まわりの土と園路をくぎるための縁)の上に行列を作る小さなアリ(アミメアリ?)を見つける。まわりの地面や園路には枝葉や小石がたくさんあるので小さなアリにとって大きながれきの中を歩くようなもの。鉄の縁はまっすぐで平らである、この上を歩けばスムーズだと言わんばかりにものすごい速度で歩いている(走っている?)。
 一昨日(6月11日)、新聞で「JR東日本・山形市の高瀬―山寺駅間でカモシカをはね、車両点検のため一時停止。運転を再開した45分後今度はツキノワグマをはねた」と言う不幸な事故を知った。辺りは山間部で近くには「熊ヶ根駅」と言う名の駅もあるから、もともと野生動物の大変多い地域なのだろう。きっと事故にあった野生動物は、日常の道として草むらやヤブ漕ぎを避けすっきりとした線路を利用していたに違いない。この日の朝はそこに運悪く電車が来てしまった、または地形的に逃げるタイミングを逃したか、ひょっとすると雨が降っていて電車がやってくる音に気付かなかったのかもしれない。短時間の間に大型動物2頭の事故は偶然ではないだろう。新聞記事からいろいろなことを思った。
 さて今日のアリだって、でこぼこの地面を歩くよりは鉄の一本道を歩く方がずっと楽なのである。Photo2012/06/13 @京都御苑

2012年6月4日月曜日

第三百四十六夜/逆さ一輪挿し・コガタスズメバチの巣

イヌツゲの垣根の中にぶら下がる「逆さ一輪挿し」。これはコガタスズメバチの女王蜂が最初に作り上げる巣。高さ12cm、直径5cm程で細い首を下に向けている。削り取った樹皮と唾液で練られ、形作る巣は本当に陶器のようでもある。雨が直接当たらない様に、他者から見つからない様に、巣が大きくなっても下の枝に当たらない様に、本当に具合の良い場所に作られる事に感心する。この巣には既に卵が産みつけられているのか判らない。昨日は時々、出入りを見るが今日は全く出入りを確認していない。Photo:2012/05/27 @京都御苑、京都市

2012年6月2日土曜日

第三百四十五夜/ナミアゲハを見る不審者?

 今日はどこにでもいるナミアゲハなんですが、よく見ると地味ではあるがけっこうきれいな蝶である。この蝶を見ると必ず 日高敏隆先生の「チョウはなぜ飛ぶか」(日高敏隆選集 I )を思いだす。ナミアゲハの♂にとって白黄色と黒のシマの紋様が♀の存在を判断する大切で魅力的なサインなのである。
 実はこの写真の向こう側(樹木の向こう側)には中学校の体育館がありちょうど学生がバレーボールの練習をしていた。僕が蝶の写真を撮っていたところ、それを少し離れて見ていた知人から「不審者扱いされるぞ」って注意されたのだ。なにが問題か判らなかった、それは生徒の写真を盗み撮りしているのと間違えられるというだ。大人が虫に興味を持つことはそれだけでも不審者的に思われそうなのに、加えて背景までもが問題となるとは本当困ったものである。Photo:2012/06/02@守山、滋賀県

2012年5月30日水曜日

第三百四十四夜/樹液を吸うコゲラ

 オオスズメバチが大アゴで傷つけたコナラの樹皮からしみ出す樹液を吸いにやってきたコゲラ。樹液にやってきた昆虫がお目当てと思いきや、虫には見向きもせず樹液を吸っている。鳥だって甘いものには目がないのである。だから目の前にいるシロテンハナムグリなんて石ころ同然の無視である。そのような状況の中でも唯一気にする虫はスズメバチのようだ、実際にスズメバチがやってくると威嚇はするが実力ではスズメバチのほうが強いらしく飛び去ってしまった。もちろんハチがどこかへいけばまた樹液にやってくるのだ。Photo:2012/05/30 @京都御苑

2012年5月29日火曜日

第三百四十三夜/オオスズメバチは偉いのである

 人って生きものを見るとなんだかんだ・・・例えばこのスズメバチを見ると危ないだの、怖いだの好き勝手なことを言うが、よく見ると彼らだった必死に生きているし、彼らのお陰で他の多くの生きものが恩恵を受けることもある。写真のオオスズメバチは、コナラの樹皮を強靭な大アゴで傷つけしみ出す樹液を食べている(吸っている)。
 このスズメバチが樹皮を傷つけるお陰で、シロテンハナムグリやサトキマダラヒカゲ、ゴマダラチョウ、多くのアブやハエ、そしてコゲラまでもやってきて甘い樹液にありつける。一見すると大きな顔をして偉そうに樹液をなめているのだが、彼らにしてみれば自分たちの特権なのである。Photo:2012/05/29 @京都御苑

2012年5月24日木曜日

第三百四十二夜/モリアオガエル

今年のモリアオガエルの産卵は例年に比べ少し遅いようである。鳴き声は時々聞こえるので、丹念に水際を探せば見当たるはず・・・ようやく水際のコケの中から顔を出す個体を見つける。頭だけを出して休息している、眠たそうな面持ちである。これから産卵シーズン、さて今年はどのぐらいの卵塊を見ることが出来るか楽しみである。Photo:2012/05/24 @京都市

2012年5月22日火曜日

第三百四十一夜/メジロを前から見る

 今の季節、ちょっと樹々があるところにいけばさまざまな鳥の囀り(さえずり)を聴くことが出来る、なかでもメジロは小さい体から驚く程の声量を出して囀っている。特に江戸時代からメジロは鳴き合わせる(競争)道楽の対象となってきた、もっとも近年ではそんな遊びもできないが。その囀りは「忠兵衛・長兵衛・忠長兵衛!」とか「チルチルミチル・チルチルミチル!」と例えられている。さて、この身近な野鳥・メジロのことを今まで書いていなかった。よくよく考えればメジロの写真データはPCのトラブルで消えたからだった。そこで写真に収めようとしても収まらないのが自然の生きもの。しかたなく満足でないが先日に撮ったものを眺めて気付いた、それはメジロの正面写真である(頭から尾までがほぼ一直線にならんだ状態)。正面から見るとなんて円形に近い体なんだと・・・早速、円定規で真円を描いてみる(写真の赤い線)となんと驚くばかりにピッタリ!もちろん写真を加工してなんかいません。考えれば飛行機の動体も真円、これが空を飛ぶ生きものの空力構造なんだろう。メジロのくちばしに付いているのは「よだれ」「鼻水」なんかではありません餌です。写真の画像が悪いのは拡大のせいです。Photo:2015/05/22 @京都市

2012年5月20日日曜日

第三百四十夜/テングチョウの幼虫

訳あってテングチョウの説明を数日後にすることになった。フィールドのエノキでは沢山の幼虫を見つけていたが日に日にその数が減っていく、見ているとスズメやメジロが獲っていくことが判る。このままでは説明時にすっかりいなくなってしまうことが予想できたので5頭の幼虫を自宅に持ち帰った。これらを手持ちのエノキの苗で育てる事にした、持ち帰った幼虫はほとんど終齢幼虫、エノキの葉を食べ尽くし数日後にはすべて蛹となった。そして・・・予想した通りフィールドの幼虫は全ていなくなった。テングチョウの説明は幼虫と成虫の写真と実物の蛹ですることにした。Photo:2012/05/20 @京都市

2012年5月16日水曜日

第三百三十九夜/羽蟻を食べるカラス


 京都御苑で葵祭を観た後、園内を散歩。マツの切り株の上でハシブトガラスがなにやら熱心に食べている。こちらでもあちらでも同じような個体がいる。これは何か訳がありそうだと近づく と・・・ご覧のような状況だった(写真下)。なにか細かなものが切り株を覆い尽くしうごめいている、その中でハシブトガラスがクチバシを切り株の面に平行 になるように・・・例えるならスプーンでビンに残ったジャムをそげ落す様に・・・ 飛び出そうと切り株から出てくる羽アリ(ヤマトシロアリ)を食べている(写真上)。テレビの自然系の番組を見ているようだ。
「濡れ手に粟」という言葉があるが状況はそのもの、クチバシで集めた羽アリを団子にして食べている。口に中には相当量の羽アリ団子が入っているようで喉がぱんぱんに膨らんでいる。カラスにとって羽アリは、大変においしいようで2mほど近くで観ていてもいっこうに止める事はしなかった。軽い羽アリはわずかな風でフワフワと舞い上がり、観ているこちらにも飛んでくる、目にも口にも入りそうだ。
 シロアリの羽アリが飛び立つには、いろいろな気象状況が一致しないと起こらないようである。この日も羽アリの発生はわずかな時間だった、人が観てようとカラスはこの時間を逃す訳にはいかないのである。
 シロアリは数万から数百万頭の単位でコロニー(巣)を形成し、女王蟻と王蟻を中心とした高度な社会生活を営んでいる。役割分担に応じたそれぞれの形態があり、これを階級(カースト)と呼ぶ。ヤマトシロアリの場合、4月中旬から5月中旬の雨が降った翌日などの気温が上がり蒸し暑くなった無風の日の午前中に飛び立つらしい。飛び出した羽蟻は地面に落ちるとすぐに自ら羽を切り落とし、そして雌が誘引物質を出し、雄が寄ってきたところでつがいになり新しい巣を作る。まさに前日の15日は雨天で葵祭が翌日16日になった。気温も上がり、風もほとんどなかった、飛び出す条件がそろったようだ。カラスにとっては「花より団子」・・・この一年の中でも、超旬の食べ物を味あわずにはいられないのだ。このカラスも興味深いが、切り株には 巣立とする羽アリを見送る様に白い働きアリが出てきていた。働きアリは白く、か弱い感じの体つきで枯れ木で孔を掘って暮らすに適した形態、羽もないので飛ぶ事は出来ない。なのに切り株の上まで出てきている。彼らには彼らの感情とか意識があるんだろうなとつくづく思う。人間がそれを感じる能力がないだけでね。図らずもカラスの話題が続いてしまった。メジロやツバメの巣を襲うカラスは憎い存在だが、やっぱり面白い生きものである。Photo:2012/05/16 @京都御苑


2012年5月10日木曜日

第三百三十八夜/マヨネーズとハシボソガラス

カラスと言う鳥は、ほんとうに観ていて飽きない。今日のカラス(ハシボソ)は草地に飛来したかと思うと草の根元からビスケットぐらいの白い四角いものをクチバシで拾い上げた。これはあらかじめ隠してあった食べ物だろう。カラスは食べ物を木のウロや、草むら、時には線路敷きの砂利の下に隠す「貯食」という習性がある。もちろん隠した食べ物はちゃんと後で食べるのである。
写真のカラスはその白いものを脚で押さえてしきりにクチバシで何かしようとしている。しばらく経ってようやく、中身を食べ始めた。クチバシは真っ白に汚れている。やがて満足したように小さなゴミを残し、近くの木に移りクチバシをきれいにし始めた。
さて、何をいったい食べていたのか?僕はカラスがいた場所に行った・・・それはお弁当に付いている「マヨネーズわさび風味」とプリントされた小袋だった。マヨネーズの小袋は隅が三角形に切り取られ、あのクチバシでどうやって食べたかと思う程すっかり内容物が無くなっていた。先ほどまで僕がカラスを観察していたが、今はカラスが僕を観察している。空になった小袋を拾い上げる人間を観てカラスは何を思っているのだろうか?僕はこの小袋をもとあったように置きその場を立ち去った。きっとカラスはもう一度、この小袋をつまみ上げ、「???」と思うのだろうな。
夜中なのに先ほどからカラスが 騒いでいる・・・とこの後「ドンッ!」0時20分地震だ。京都南部震度3。地盤の微妙な揺れは、木の根から幹に伝わり、カラスが寝ている枝に伝わる。この地盤の揺れを察知して騒いだのだろう。カラスは本当に興味深い生きものである。Photo:2012/05/08 @京都御苑、京都市

2012年5月7日月曜日

第三百三十七夜/巣立ちのモズ

 仕事先でモズがしきりに警戒の鳴き声をあげは始めた。今の季節だから近くに巣でもあるのだろうと遠ざかった時に横から巣立ちビナが飛び立った。十分に飛べるのだがまだまだ自由にとは行かずに、このあと横の茂みに逃げ込んだ。ヒナは全部で3羽だった。親鳥が警戒の鳴き声をあげると近くのキンモクセイの刈り込みに逃げ込みじっとしている。この近くで巣をかけていたのだろうか、数本の込み入った樹木のまわりから離れようとしない。近くでは親鳥が子ども達の居場所と外敵の侵入を見張っている。ヒナ鳥の大きさは、親鳥とほとんど同じで、尾羽を上下に動かす仕草もすっかりモズらしい、ただ尾羽の長さは親の1/3ほどでまだかわいい。観察していると近くのケヤキの木にカラスが巣をかけている。どうも親鳥の警戒は僕よりもむしろカラスかも知れない。カラスの巣の近くではムクドリも見張りをしていたから彼らも近くに巣を持っているに違いない。この季節、モズやムクドリにとって卵や子どもを襲うカラスの存在が一番の脅威に違いない。Photo:2012/05/07  @近江八幡、滋賀県

2012年5月6日日曜日

第三百三十六夜/ノコギリクワガタの初もの

滋賀県栗東の里山で森の整備に行く。参加者のTさんが腐った切り株を動かしたら中から現れたのが小振りのノコギリクワガタ(♂)。今の時期に成虫と言う事は、昨年春に蛹から羽化したものがそのまま一年を朽木内で過ごした新成虫である。外に出て樹液に来るのはもう少し先だと思う、写真を撮った後、再び朽木に戻しておいた。この個体を見て子どもの頃よく捕まえたのはこのタイプの小型ばかりだったことを想い出す。牛の角のような湾曲する大アゴを持つ個体は、ほとんど採れなかった。成虫の大きさを決定するのは、幼虫時の環境と言うけれど地域的な特徴もあるだろう。Photo:2012/05/06 @栗東市、滋賀県

2012年5月5日土曜日

第三百三十五夜/街に舞うトビ

  京都の東山連山を代表する大文字山に登る。山頂からはトビが風に乗り空中で停止するのが間近に見える。風に流されたかと思うと上手く気流に乗り上へ下へ、急降下をしても再びももとの空間に戻ってくる・・・トビの尾羽は体(左右の翼)に対して直角になるほど自由に舵をきり、左右の翼と首でも微妙に体重移動をしているように見える。観ていてまったく飽きることはない。時間を忘れて観てしまった。時々、カラスが追いかける、無風なら勝ち目もあるが、こんな強い風に乗るトビにはかなわない。シジュウカラ、キビタキ、アオゲラの声を聞き、ツミと思われる小型のタカの姿も見れた。Photo:2012/05/05 @大文字山、京都市

2012年5月2日水曜日

第三百三十四夜/エノキの虫こぶ

 エノキの新葉にテングチョウの幼虫を探している時に不思議なものを見つけた。葉の表面にドングリのような形の緑色した「こぶ」である、これは「虫こぶ(虫瘤)」と呼ばれるもので、植物の内部に昆虫が卵を産み付けることによって、植物組織が異常な発達を起こしてできるこぶ状の突起のこと。虫癭(ちゅうえい)とも言う。虫こぶは、昆虫の種類と樹種(樹木の種類)の関係が強いようで、どれでもいいと言う訳ではなさそうだ。
 ある特別の関係が必要。今日、見つけた虫こぶの場合=「(植物名)+(部位)+(形状)+フシ」→「エノキ+ハ+トガリ+タマ+フシ」と呼ばれる。この虫こぶの中には、エノキトガリタマバエの幼虫が入っているはずである。この虫こぶは、もう少しすると、葉から脱落して下に落ちてしまう(写真の葉上には2個が並ぶが、葉の中ほどに既に落ちてしまったと思われる丸い痕跡がある)。幼虫は、地上におちた虫こぶの中で、来年の春まで過ごし蛹になり、3~4月に成虫になって虫こぶから出て、エノキの新芽に産卵する。どんなハエか知らないが、全く不思議な生活である。Photo:2012/05/01 @京都御苑、京都市
参考文献:日本原色虫えい図鑑 湯川淳一、桝田長 編著 全国農村教育協会

2012年5月1日火曜日

第三百三十三夜/これでもガの仲間

草地を低く、草葉を縫う様にしてハタハタ・フワフワと小さな虫が飛ぶ。目立つのはその虫の白く長くしなやかな触覚。体長の3倍はありそうなヒゲのためにバランスが少々悪いようだ。ようやく葉に止まる。まぎれも無く小さなヒゲナガガの仲間。調べるとクロハネシロヒゲナガ(ヒゲナガガ科)、種名が読みにくいので・・・クロハネ・シロ・ヒゲナガ(ガ)と区切ると判りやすい。写真は長く立派な触覚(ヒゲ)を持つ♂の個体だが、♀の個体の触覚はもう少し短く、根元が黒く太い。名前の由来は体の特徴の「黒い翅+白い+長いひげ+蛾」より・・・とはいってもこの黒い翅に光があたると一瞬きらりと緑紫のような微妙な色にひかりきれいだった。最初の一頭に気がつくと、辺りの草地に沢山飛んでいることに気付く。ただし全部♂で、彼らはもうすぐ羽化するであろう♀を探し待っているに違いない。果たしてどんな生活をしているのだろうか。Photo:2012/05/01 @京都御苑、京都市

2012年4月25日水曜日

第三百三十二夜/セアカクロキノコバエ

  すっかり暖かくなって樹林地では、ハグロケバエがわんわんと飛び出している。羽化した個体が地面を歩き、梢ではフワフワと舞っている。同じようなケバエが葉に止まっている。こちらは体が赤い種類と思い写真を撮る。最初は気付かなかったのだが頭部の大きさ、触覚の形状でケバエでない事に気付く。体つきは、ガガンボの様でもあり、チュウレンジバチの様でもある。小さな頭部に鮮やかな橙赤色の体、黒い翅が特徴的で触覚と脚が長い。調べるとセアカクロキノコバエと判った。名前から想像できる様に幼虫はキノコ類の菌糸を食べると推定されている。普段は出会っても素通りしてしまうような虫なのだが、ケバエを観ていておまけのごとく気がついた。一度見ると興味が向かう。Photo:2012/04/24 @京都御苑、京都市

2012年4月24日火曜日

第三百三十一夜/テングチョウ

 今日はTシャツ一枚で過ごせる程の暖かな一日。ツマキチョウ、モンシロチョウ、キチョウ、キタテハ、ナミアゲハ、テングチョウなど元気に飛んでいた。エノキの枝先の新芽はすっかり開き始め、そこには産卵をしようとテングチョウが行ったり来たり。ゴマダラチョウの幼虫もそろそろ落ち葉の下から枝先に登りはじめる頃だろうと思う。里ザクラの花も満開、ウワミズザクラとコナラも開花し始めた。テングチョウは今日で3回目の登場です。Photo:2012/04/24  @京都御苑、京都市

2012年4月22日日曜日

第三百三十夜/タヌキのためフン?

京都御苑で見つけた「貯めフン」。習性から察するとタヌキの仕業か? タヌキは行動範囲の中に糞をする場所を決めていて、1頭で約10か所のため糞場があると言われている。今日見つけた「貯めフン」の内容物はほとんど銀杏(イチョウの種)、すごい量である。探してみるとすぐ近くにイチョウの大木がある。それにしてもこれだけの銀杏を食べて体は大丈夫なんだろうか?・・と心配してしまう。 「胃腸」だから大丈夫って? それにしても京都御苑のタヌキは昼間どこに潜んでるのだろうか? Photo:2012/04/22 @京都御苑、京都市

2012年4月13日金曜日

第三百二十九夜/ハナムグリ

 どことなく元気の無いハナムグリ、それもそのはず、よく見ると右側前翅(鞘翅=体を覆っている堅い翅)が一部割れている。鳥に襲われたのかもしれない。完全には割れていないのでこの堅い前翅が身を護ったということか。Photo:2012/04/10 @京都御苑、京都市

2012年4月9日月曜日

第三百二十八/春のキジバト

 所々で落ち葉を掻く音がする。音の主はキジバト。春の繁殖のためのペアリングがどの個体も出来ている。あちらこちらで2羽なかよく落ち葉のなかから木の実や草の種を探し、ついばんでいる。そのうちの小柄な2羽を見ているとどんどんこちらにやってくる、頭を上げて周囲を見ているのでかがんでいるこちらの姿は知っている。じっとしているとなおもこちらにやってきて最後は50cmぐらいの近さまでやってきた。時折こちらを見るがさほど気にせず、落ち葉のなかの餌探しに余念がない。まわりからは、シジュウカラとウグイス、カワラヒワ、イカルのさえずりが聞こえてきた。Photo:2012/04/09 @京都府立植物園

2012年4月7日土曜日

第三百二十七夜/雑木林に棲むサンショウウオ

 今日は滋賀県栗東の里山に行く。街ではサクラが五部咲きというのに、今日は少し肌寒く、あられまで降り出す天気。雑木林の中の路の際に湧水の水たまり。中をのぞくとカスミサンショウウオの卵塊がいくつも水中の小枝にからまっている。ゼリー状のバナナ型の卵塊の中ではオタマジャクシ状の幼生が動いている、今週中にも外に飛び出し泳ぎ始めるだろう。Photo:2012/04/07 @滋賀県栗東市 

2012年3月30日金曜日

第三百二十六夜/春のキジ

 河川敷の草むらに何やら動くものがいた。目を凝らすんだがなかなか草むらの主が判らない。よく見ようと一歩踏み入れたとたんに目の前から♀のキジが走り出した。枯れ草にまぎれてまったく居所が判らなかった。お見事!彼女は一目散に葭原に消えてしまった。写真は後ろ姿だけである。Photo:2012/03/29 @蛇砂川、近江八幡市

2012年3月3日土曜日

第三百二十五夜/薪割りで出てきたもの

 友人から京町家のおくどさん(かまど)で炊いたご飯を食べようと誘われた。ご飯を頂く前に仕事があった。かまどに火を入れる前の作業は薪割りである。杉丸太をかまどに入る様に鉈で割るのである。割った断面から出た虫の脚に気付いた、観るとそれは体長1cmほどの小さなカミキリムシだった。幼虫時代に丸太を食い進み、その穿孔のなかで蛹化したものが、羽化した個体のようだ。孔の中で暖かくなるのを待っているのだろう。カミキリムシは出さずに割った丸太を元に戻し、もらってきた。暖かくなって出てきてからゆっくり観察しよう。さて薪割りの途中で虫を見ている僕にまわりはあきれている。でもこればかりは仕方が無い、薪に入っている虫の方が面白いんだから。Photo:2012/03/03 @四条京町家、京都市

カミキリの種名は「ヒメスギカミキリ」と判明しました。(2012/04/12)

2012年2月29日水曜日

第三百二十四夜/立つ鳥跡を濁さずって言うけれど

 「立つ鳥跡を濁さず」って言うけれど、今日は直径10mほどの小さな池の水面に羽を残していった。時折、小鳥達が水浴びしたり、水を飲んだりするので小さな羽はよく落ちてるが、今日のは新しいカモの羽だった。この池でカモを観察したのは2年前の春、カルガモのペアだった。それ以後、全く姿を見ていなかったが人が見ていないところでちゃんと来ていたことが判る。でも羽の落とし主がカルガモかどうかは判らない。Photo:2012/02/28 @京都市

2012年2月27日月曜日

第三百二十三夜/早春に産卵するニホンアカガエル


 里山の水田脇でニホンアカガエルの卵を見つける。まだまだ冷たい田んぼの水、そこにはおびただしいカエルの卵があった。親ガエルは冬眠から産卵のためにいったん降雪も終わらない早春に目覚め、産卵を終えた後、もう一度5月頃まで休眠(春眠)するという変わった生態を持つ。多くのカエルやヤモリが水田を産卵場所として利用するなかで、捕食者が少ない早春に産卵し、他のカエルがオタマジャクシの間に、子ガエルとなって雑木林に帰って行く、という作戦なのか。産卵がされていた田んぼのまわりにはおびただしい卵塊以外に、イノシシの足跡と彼らが土を掘り返し荒らした草地があった。近くの水溜まりにはアカハライモリや水生昆虫の姿も見れた、確実に春が来ている。写真:(上)ニホンアカガエルの溺死、(下)水田溝の卵塊 Photo:2012/02/26 @堅田、滋賀県