2013年2月27日水曜日

第四百四十六夜/狂気のトビ

 10羽以上のトビ(Milvus migransがものすごい勢いで上下に行ったり来たりしている。その高さはちょうど橋の欄干から数メートル上で、そこから急降下で川面まで降りて、再び舞い上がる。橋上から下を見るとすぐ下にトビの背中が見える、なかなか見ることのないアングル。近すぎて、かつ速いので小さなデジカメでは撮れなかった。トビが騒いでいたその訳は、橋下で女性がカモに与えるパンのおこぼれだった。水面を流れて来るパンに狙いを定め急降下して捕まえようとしていたのだった。その飛び方があまりにもすごかったので歩行者も一様に橋上から下を眺めていく。歩行者のすぐ近くを飛ぶので危険な場面もあった。カモに餌を与える気持ちは解らないでもないが、これがトビへの餌付けとなり、日曜日の川岸のピクニックのお弁当をさらう危険な行動に結びつく。Photo:2013/02/27 @鴨川、京都市

2013年2月26日火曜日

第四百四十五夜/思わぬ場面でやってきたオオタカ

 仕事の出先で打ち合せ中、窓の外にオオタカ(Accipiter gentilisを見つける・・・なんでこんな時にそこに現れるんだ・・・打ち合せ相手の肩越しにタカを見つけてしまった。決して打ち合せをぞんざいにしていた訳では断じてない。ただこちらを見下ろすように枝に休むタカを無意識に自分の目が気付いてしまっただけである。ここはやはり「話を中断するようで申し訳ありませんが、窓の外を見て頂けるとオオタカが・・・・ます」と言うよりほかはないこんなチャンス多くはないからだ。オオタカは、大きな雄の成鳥。さすがに打ち合せ中なので双眼鏡など持ち合わせていない、カバンの中のコンパクトデジカメを取り出し一枚だけ撮る。ゆっくりと休息をした後オオタカは、するりと飛び去っていった。会議室(ここは将来、小学校の職員室)からお茶を飲みながらオオタカが見れるなんてなんと贅沢な会議だろう。Photo:2013/02/26 @浅小井、近江八幡市

2013年2月19日火曜日

第四百四十四夜/スズメバチの越冬(続)

 前回のスズメバチの越冬個体を定期的に見ると興味深いことに気付く。今日は小雪がちらつき大変に寒い。スズメバチが越冬している樹皮裏返しにしてみると、いかにも今日は寒いらしく、脚も触覚も、翅までも体の下側に密着させている。人間が寒いに日に体を丸くしているのと同じだ蜂の場合、表面積の広い翅は特に体温を奪われ易いのかもしれない。樹皮をそっと元の場所にもどしておく。Photo:2013/02/19 @京都御苑、京都市

2013年2月14日木曜日

第四百四十三夜/岸辺の樹で休むトビ

 ヨシ原の岸辺にいい枝振りの柳がある、いつも何かが休息しているのでよく見ることにしている。今日は、トビが一羽休んでいた。写真には入っていないが右側の枝端にはアオサギが止まっている。Photo:2013/02/14 @西の湖、近江八幡市

2013年2月5日火曜日

第四百四十二夜/スズメバチの越冬

 朽木の皮をめくると一匹のコガタスズメバチ(♀ Vespa analis Fabriciusiが現れた。越冬中のスズメバチなんて滅多に見れない。越冬中なので動くことの出来ない彼女(女王蜂)を手に取る様に観察できた。時間が経つにつれて大アゴを動かしたり、腹部の先端を動かしたり、飛ぶことは出来ないと判っていてもやはり慎重になる。静かに樹皮を元に戻しておいた。女王蜂が越冬から目覚めるのは、あと2ヶ月ほどはかかるだろう。Photo:2013/02/05 @京都御苑、京都市

2013年2月1日金曜日

第四百四十一夜/カメの目覚め

 毎年、2月頃にカメが水面に現れる、つまり越冬から目覚める。不思議にもしばらく経つとまた見れなくなってしまう。池の底で越冬していたものが、まさか息継ぎに上がってきた訳ではないだろうが一たん目覚め、また暖かくなるまで池底にもぐるのだろうか。水面にぽかんと一匹だけ浮かんでいたカメ(アカミミガメ)の甲羅は泥だらけである、今まさに池底から浮かび上がってきたようだった。Photo:2013/01/29 @京都御苑、京都市

2013年1月30日水曜日

第四百四十夜/ヒガラのコツコツ

シジュウカラがコツコツとサクラの枝先で餌を食べているとき、その上ではヒガラが枝先にぶら下がったままでコツコツしている。身軽なヒガラ(Parus aterは、枝先の窪みに隠れていた虫を見つけたのだろう。冬場はシジュウカラなどの群れと行動を共にすることが多いが、地面に近いところで餌を採るシジュウカラに比べ、小柄なヒガラは枝先によく見る。少し採餌の場所を変えることで互いに競合しないようにするためだろうか。Photo:2013/01/29 @京都御苑、京都市

2013年1月29日火曜日

第四百三十九夜/シジュウカラのコツコツ

 森を歩くと頭上からかすかに「コッコッコッ・・」と音がした。見上げるとシジュウカラ(Parus minorが何かを両足に挟みクチバシで割る音だった。
 子どもの頃、伏見稲荷の参道でおみくじを引くヤマガラを見たことがある。お金を小さな賽銭箱に入れると、ヤマガラが緋毛せんの台の上に据えられた小さな社の鈴をクチバシで2度、3鳴らし、扉を開け、中からおみくじを取り出す。そのおみくじを止まり木の上で足で挟み封を切り、こちらまで持って来ると言う芸だった。どうやって仕込んだのだろうと、何度見てもそれは不思議で、仕草はとてもかわいかった。
 ヤマガラもシジュウカラもこのような行動はフィールドで盛んに見ることができる。野鳥の行動をうまく利用したとは言え・・・どうやって芸として仕込んだのか? 残念ながら今はこんなおみくじを見ることは出来ない。Photo:2013/01/29 @京都御苑、京都市

第四百三十八夜/ビンズイ

 太陽が雲に覆われ日が陰ると急に気温がさがる寒い日は、陽光の暖かさを本当に感じる。こんな思いは人間だけでなくどうも鳥たちも同じようだ。今日はビンズイ(Anthus hodgsoniが寒そうに枯れ草の上に止まっていた。頭から背にかけて、緑がかったかっ色は大変に地味だけど、なかなか品があっていい。尾を上下によくふっている姿はかわいらしい。Photo:2013/01/29 @京都御苑、京都市

2013年1月28日月曜日

第四百三十七夜/葭原を舞うハイイロチュウヒ

 近江八幡市の西の湖に立ち寄った。この季節、ここのヨシ原ではハイイロチュウヒ(Circus cyaneusを見ることが出来る。変わった名前だがタカの仲間で、学名は「サーカス サイアニス」、ブルーの曲芸師。ひらりひらりと飛ぶ姿に、その体色(ただし♂の成鳥)のブルーグレー(=やや暗い青)を当てはめたのだろうか。今日も数羽のハイイロチュウヒがヨシ原をひらりひらりと舞っていた、残念ながら♀ばかり。
 雌はよくありがちな褐色系だが上尾筒(尾羽の付け根の部分)は明らかに白くて飛翔時にはそれがとてもよく目立つ(写真)。雄も上尾筒が白いようだが上面が灰色なので目立たない。タカなのに、顔はフクロウに似ているのでなんか変である。これはネズミやカエル等を主食として捕るために、それらが立てるかすかな音も捕らえ易くするための構造なのかもしれない。Photo:2013/01/28 @西の湖、近江八幡市

2013年1月27日日曜日

第四百三十六夜/サルスベリとマヒワ

 今日(1月27日)は、定期的に開催されている京都御苑冬の自然教室(主催:京都御苑管理事務所、国民公園協会京都御苑)。野鳥解説担当で参加。前日の小雪が残る御苑は寒い。始まる前にひと歩き、陽光が射してくると野鳥の姿も見れたので一安心。今回の参加者は全員で75名ほど、これが2班に判れて生きものを探りながら歩く。さて野鳥観察本番の前に、昆虫・植物の解説があったので野鳥は少し姿を消してしまたか? どうも上手く鳥が現れない。シロハラ、シメ、シジュウカラ、スズメ、キジバト、トビ・・・個体数も、種類数もなんとも少ない。会が終わり全員が集まり解散の直後、後ろにあったサルスベリの実を求めてマヒワ(Carduelis spinusの群れがやってきた。マヒワ達は、十数分の間、我々の頭のうえで実を食べていてくれた。時折、サルスベリの実が風に舞う様に落ちてくる。野鳥の観察はこちらが思う様に展開しないのが常だが、今回もそうだった。Photo:2013/01/27 @京都御苑

2013年1月23日水曜日

第四百三十五夜/「うごめくもの」これも野生

 人間が生きものを見てどう思うかは彼らの知ったことではない。それは当たり前だろう。しかしながら人間は勝手なもので、見た目で判断してしまうものだ、「気持ち悪い」と。多分、この手の生きものは一般的には気持ちのよいものではないだろう。今日、地面に見つけた「うごめくもの」を最初見た時には僕もそう思ったのは事実である。それはなぜだろう?その動きと体の透明感がそう思わせるのか?体長1cm、黒い頭部に内蔵が透けている透明な体、足はある。その数100匹を下らないだろう。大変な数の個体が絡まり合いながら移動しているのだ。何ものか見当もつかない・・・これが気持ち悪さを増加させる。それでも眺めていると、不思議なことに気付く。何やら訳も判らずうごめいている彼らにも、目指している場所があり、そして不完全ながらも先頭があるらしい。塊の中なら一匹が歩き始めると数匹がそれに続く、しかしながら彼らが先頭となると言う訳ではなく。別の個体が別の方向に行こうとすると、また何匹かがそれに習う様に動き出す。こんなことを繰り返しながら全体の行くべき方向が決まるようだった。彼らの合意形成ってなんだろうか。こうなると気持ち悪さは、すっかりどこかへ消えて、興味が沸いてくるものだ。彼らの正体は、蛾類(メイガの仲間)の若齢幼虫のような気がする。Photo:2013/01/23 @京都御苑、京都市

2013年1月15日火曜日

第四百三十四夜/さすがに野生、これこそ野生

 さすがに野生、店頭で目にするノッポで、色白なキノコとは違います。広葉樹の切り株に発生する冬のキノコ。キノコも上に落ちている葉の大きさから想像できるが、このキノコの株は手のひらの2倍以上もある立派なもの。これが正真正銘の野生のエノキダケ(Flammulina velutipes。採りたい気持ちがいっぱいだけどここはだめです。同じ切り株に毎年発生します。Photo:2013/01/15 @京都御苑

2013年1月6日日曜日

第四百三十三夜/枯葉の下で春を待つ

 新年あけましておめでとうございます。本年も生きものと彼らの生活をお伝えしていきます。よろしくお付き合い下さい。
 自宅の近くのお寺さんまで散歩、子どもの頃はエノキの大木が沢山あったのに今は大半が伐採され、残る木もその姿は痛々しい。 夏の陽光を受けて梢を滑る様に飛び回っていたオオムラサキとかゴマダラチョウはもう観ることはできない。少し足をのばして樹林地のエノキまで行ってみた。そこのエノキは昔からゴマダラチョウやテングチョウが多かった。根元の葉を少し探すと案の定、ゴマダラチョウの越冬幼虫Hestina japonica)がいくつか見つかる。思うところの枯葉を「えいや!」とトランプゲームの「神経衰弱」のようにめくってみる。一発で出ることもあるし、いくらめくっても全くでないこともある。まるで占いをしているようだ。今回は5枚目ぐらいで見つかる。まあまあの出来だろう。写真を撮った後は元の場所に隠しておく。春になって新芽が芽吹く頃に再び降りてきた木の幹を新葉目指して登る。それまでにシロハラ(野鳥)に食べられない様に。Photo:2013/01/06  @黒谷、京都市

2012年12月24日月曜日

第四百三十二夜 X'MAS と ヨーロッパコマドリ

 イギリスの小鳥達は、どうしてここまで人を恐れないのだろうと思う。写真のヨーロッパコマドリ(学名:Erithacus rubecula、英名:European Robin, Robin)は、レンズの先端からわずか30cmほどの至近距離。別に餌付けをされている個体でもなく、写真を撮るために餌で釣っている訳でもいない。枝に止まっている個体に静かに近づいただけである(もちろんいくらかのコツはあるが)。イギリスはバードウォッチャーの国で、誰もが野鳥が大好きなので度々餌を与えることはあるだろうが、それほど頻繁にと言う訳でもなさそうだ。日本との大きな違いは、鳥がいるからと言って人が集まらないこと(基本的にはほっておく)、イヌも大変な躾がされているので鳥も追わない(時々、遊びたいのだろうリスは追っかけているが)。長いレンズをずらりと並べることもないようだ。これらが逃げない訳とは思わないが、お国柄と言えば、それが鳥のお国柄なのだろうか。日本は農耕民族だから絶えず作物を鳥から守る(鳥を追う)行為をしてきた、そのことが鳥の遺伝子に入っていると何かで読んだ。なんとなくうなずいてしまうのである。
  ちなみにこのヨーロッパコマドリは、イギリス人が大好きな野鳥の一つである、ロンドン・タイムズが1960年代初めに行った人気投票でも一位、政府などから正式に制定されてはいないが一般に国鳥とされている。ちょうど今の季節、クリスマスには西洋ヒイラギ(ホーリー)の赤い実にコマドリの絵柄がなからず現れる。Photo:2012/12/16 @エディンバラ、イギリス

2012年11月27日火曜日

第四百三十一夜/アオサギの獲物は?

 池の中でアオサギ(Ardea cinerea が獲った獲物は・・・ウシガエルだった。アオサギの体から判断すると、それはかなり大きめのカエルである。獲物はサギにとってやはり大きいらしく、なんどもなんども半分まで飲み込むが、あと一息のところでカエルの後ろ足が飲み込めない。再び吐き出す、カエルをくわえているのもさ重たいのだろう、くわえている時はクチバシまで水中につけて休んでいるほどだった。同じことを何度か繰り返しやっとカエルの全身を飲み込んだ時は胸の当りがカエルの形に膨らんだようにさえ見えた。この十数分かかった格闘のあとも胸をふくらせたアオサギは水の中に立ちすくんでいた。おそらく飛び立つにも体が重いのか? 以前、鴨川で一羽のアオサギが同様に大きなウシガエルを捕らえる場面に出くわした、その時は捕らえたものの暴れるウシガエルを飲み込めず放棄したことがあった。アオサギの食事メニュの中に大きなウシガエルは特別なものでは無いようである。Photo:2012/11/17  @京都府立植物園

2012年11月18日日曜日

第四百三十夜/ゴミムシダマシの越冬

 昨年来、ナラガレ被害で枯れた大きなコナラ(目通り径75cm 樹高20mオーバー)を伐採した。地面に大きな音と共に倒れた木の幹をみていくと、幹に開いた孔(地上から6mほどにあったカミキリムシの脱出孔)が裂け、中にできた空洞には数種類のゴミムシダマシが集団越冬していた。ニジゴミムシダマシの仲間、キマワリ、ユミアシゴミムシダマシなど4種類以上がびっしりと寄り添う様に詰まっていた。伐採した木の近くにその部位のみ運び立てかけておいた。Photo:2012/11/18 @栗東市、滋賀県

2012年10月30日火曜日

第四百二十九夜/これは何ものか?

 写真の虫を見て何ものか判ればあなたは相当な虫好き。体長は約2.0cm、群青色に輝く体、大きな腹部が特徴です。 翅がとれた蜂?それとも女王アリ? さて答えは後日。大変に興味深い生態をしています。Photo:2012/10/29 @栗東市、滋賀県

 
-->その正体とは:キュウシュウツチハンミョウ(Meloe auriculatus
近畿以西から九州に生息し、晩秋に発生するツチハンミョウの仲間。これでも甲虫の仲間ツチハンミョウの仲間の体液には、カンタリジンという致死量30mgの毒物(蛋白質脱リン酸化酵素阻害剤)が含まれ、ツチハンミョウ類の分泌液が皮膚につくと、水疱性皮膚炎を形成し直るのに2週間くらいかかるので要注意。その生態は興味深く、ツチハンミョウの♀は土の中に4千個以上の卵をうみます。 ふ化した幼虫は、地上に現れアザミなどの花にのぼり、蜜を吸いにやってきたハナバチの体にしがみつく。やがてハナバチにつれられて巣に戻った幼虫はハナバチの卵や食料を食べて育つという性質があります。登る草を間違えたり、しがみ付く相手を間違えると生存はできない。その生存率の低さから、4千個以上の卵を生むと言われている。

2012年10月28日日曜日

第四百二十八夜/陰の主は?

 陰の主は、セスジツユムシ(Ducetia japonica(写真は♀)でした。ほっそりとした姿は陰からは想像できない。Photo:2012/10/25 @京都府立植物園

2012年10月25日木曜日

第四百二十七夜/陰の主は?

 アカメガシワの葉裏に映る不思議な陰。葉表の主はだれか? しなやかに伸びる2本の触覚、長く細い後脚・・・・。答えは明日。Photo:2012/10/25  @京都府立植物園

2012年10月22日月曜日

第四百二十六夜/ナイスなキャラのイラガ

 小さく、きれいな蛾を見つける。これは幼虫に刺されると痛いイラガの仲間、ヒロヘリアオイラガ( Parasa lepida lepidaの成虫(♀)。翅の色と紋様、脚につくふさふさの毛(すね毛?)、毛むくじゃらの体・・・なんだかぬいぐるみみたいで、ディズニーのキャラクターにでもなりそうな雰囲気を持、成虫は毒を持たないので触っても大丈夫。Photo:2012/10/22 @近江八幡市、滋賀県

2012年10月20日土曜日

第四百二十五夜/初対面のカメムシ

 今日見たカメムシは初めて見る。普段よく目にするクサギカメムシ(Halyomorpha halysの特徴を備えているが、体の白点がやけに多い、これは個体差と見ていいだろうが、一点だけ気になる部位がある。顔が普段見るクサギカメムシに比べ鈍く尖る様に長いのだった。体の斑紋は個体差としても、体形は個体差として現れにくい。 ゆっくり調べることにしよう。Photo:2012/10/20  @平野神社、京都市

2012年10月17日水曜日

第四百二十四夜/木漏れ日にオオアオイトトンボ

 オオアオイトトンボ(Lestes temporalisの♂が水辺に張り出した小枝で縄張りを占有していた。このイトトンボは羽化した後、いったん水辺を離れ薄暗い林内で未成熟期を過ごす。十分に成熟した後、秋に水辺に戻ってくる。だから初夏に見られた成虫は夏にはまったく水辺では見れない。水辺に戻った♂は縄張り持ち、♀を探す。興味深い習性があり、産卵は水辺に直接行わず、水面に張り出した樹木の枝(樹皮に埋め込むように)に集団で行う。寒さにはめっぽう強く、12月に入っても見られる。Photo:2012/10/13 @栗東、滋賀県

2012年10月16日火曜日

第四百二十三夜/竹林に浮かぶ緑の島

 林床に浮かぶ小さな緑の島を見つけた。ここは竹林の中である。これぐらいの緑ならどこでもありそうだが竹林の林床の植物生態は意外に貧相である。竹林に浮かんだようなわずか直径50cmほどの切り株島には、数種類のシダ類とそれ以上の樹木の実生や草が育っている。なんと10種類以上の植物が寄り添っているようだ。なぜだろうかと考えると、竹林の枯葉が堆積した場所に樹木や草の種が落ちても発根→発芽→成長まで至らない、地面から少しでも盛り上がっていると光が得易いのだろう・・・と想像した。人にとってどうってことない一つの切り株が作る新しい環境、ここに新しい命の可能性が生まれる。Photo:2012/10/13 @栗東市、滋賀県

2012年10月15日月曜日

第四百二十二夜/里山の神・ミドリセンチコガネ

 栗東の里山で森遊びワークショップ。誰かが拾い置いたミドリセンチコガネ(オオセンチコガネの緑色型 Phelotrupes auratusの亡がら。まだ生きているようにきれいに輝いている。ミドリセンチコガネは鹿、イノシシや他の獣糞などを食べるフンコロガシの仲間(糞食性のコガネムシ)。この仲間でもある「スカラベ」は古代エジプトでは、その習性が太陽神ケプリと近似したものであることから同一視され、再生や復活の象徴である聖なる甲虫として崇拝され、スカラベをかたどった石や印章などが作られた。ここ栗東の里山では、ミドリセンチコガネの亡がらになった後も輝く力を観ると、こいつを地面に埋めておくとやがて新しい命となって現れる気がしないまでもない。森を見ていると餌を探して地面すれすれに飛ぶミドリセンチコガネがいた。丸い体で頭でっかちだけど意外に飛ぶのが上手い。Photo:2012/10/13 @栗東、滋賀県

2012年10月14日日曜日

第四百二十一夜/虫採りは一人に限る

 虫を観るなら・採るなら一人に限る。大勢で歩くと肝心の見えるものが見えてこない。今日は仰木の棚田を多くの人と歩いた。歩く端々から沢山の生きものが顔を出してくれるが、ほとんどの人は気付かない。歩いていると棚田の畦に植えられていた目の前のイチジクの実にはキボシカミキリ(Psacothea hilarisがしっかりと汁を吸っている。やはりだれも気付かない、でもこれが普通なんだろうな。農家にとって許しがたい害虫のカミキリムシだが、シーズンを過ぎ、熟れ損じた実につく今は多めに見てもらえるのだろうか。Photo:2012/10/14 @仰木、滋賀県

2012年10月13日土曜日

第四百二十夜/赤とんぼの季節と言うけれど

 稲刈り後の田んぼには、かつて赤とんぼと言われるトンボが無数にいた記憶があるが、近年はどうも様子がおかしい。かつて秋の田んぼに掃いて捨てるほどいた赤とんぼがいない、しかもその代表種のアキアカネが全くいない。
今日も目にしたのは写真のナツアカネ(Sympetrum frequensばかりである。昆虫の変化の原因は、環境の変化である、つまり田んぼの変化。今の田んぼは稲穂が実る頃にはすっかり水が落される乾田ばかりで、稲刈りの後は歩ける程に地面が乾燥し、昔よくあった「ぐじゃぐじゃ」した場所なんてない。水面でも地面でもない「ぐじゃぐじゃ」した場所に直接卵を産むアキアカネにとって、今の田んぼは産卵環境ではなくなっている。おいしいお米で有名な魚沼の山間地は、稲刈りの直前まで水が入っていて(稲刈りの時に足元が不安定なので水を抜く)、稲刈り後は田んぼ湿地になる。こんな場所でなければアキアカネは棲むことが出来ない。乾田化されていない場所で採れる最高のお米とトンボ・・・赤とんぼの種類を見れば、環境の変化もわかる。Photo:2012/10/13 @栗東、滋賀県

2012年10月11日木曜日

第四百十九夜/オオスカシバ

 今日は郵便局からの帰り道、クチナシの葉を食べるオオスカシバ(Cephonodes hylasの終齢幼虫を見つける。食痕と糞の量からして相当数の幼虫がいるはずだが、目につくのは数頭のみ。体のサイズからして、もうしばらくして地面に降り、土中で蛹になりそのまま越冬するはずである。クチナシはビルの周辺や公園によく植えられる灌木なので、これを食樹とするオオスカシバ(蛾の仲間)は街中でもよく見る事の出来るきれいな蛾である。クチナシの食害はけっこうひどいが、その割にはさほど駆除されないのは幼虫が目につきにくいからか、それとも毛虫でないからか。Photo:2012/10/11 @京都市
オオスカシバの成虫はこちら→第百六十夜(2009/10/16)をご覧下さい。

2012年10月10日水曜日

第四百十八夜/ミヤマアカネ

 出張先の小諸・停車場ガーデンのせせらぎにきたミヤマアカネ(Sympetrum pedemontanum 写真は♂)。北海道・本州・四国・九州に分布し、丘陵地や低山地のゆるやかな流れや田んぼに生息するが、ものすごく普通と言う訳ではなさそうだ。特徴は、雄雌とも翅の縁紋から内側にかけて褐色斑があるので多種と見間違う事はない。なかなか敏感で他のアカネ(赤とんぼの仲間)よりも注意深く近づかないとすぐに逃げられてしまう。Photo:2012/10/09 @小諸市、長野県

2012年10月2日火曜日

第四百十七夜/モリアオガエル

 モリアオガエル(Rhacophorus arboreusの今年夏生まれの個体(体長3cmほど)がシュロの葉上で休む。アマガエル程ではないがこのカエルも体色を周囲の色に合わせる事が出来る。写真のモリアオガエルもずいぶんと青みをおびた体色になっている。驚く事に体色だけでなく体にワックスを塗ったようなツヤが出ている。色ばかりでなく質感も似せることが出来るのか?近くには数匹の若カエルを見たがどれもこれほどツヤがない、とまっているのは光沢のないクサギの葉など。これは興味深い。水辺から離れた樹林に生活の場を移し始めているようだ。Photo:2012/10/02 @京都御苑、京都市