2012年4月22日日曜日

第三百三十夜/タヌキのためフン?

京都御苑で見つけた「貯めフン」。習性から察するとタヌキの仕業か? タヌキは行動範囲の中に糞をする場所を決めていて、1頭で約10か所のため糞場があると言われている。今日見つけた「貯めフン」の内容物はほとんど銀杏(イチョウの種)、すごい量である。探してみるとすぐ近くにイチョウの大木がある。それにしてもこれだけの銀杏を食べて体は大丈夫なんだろうか?・・と心配してしまう。 「胃腸」だから大丈夫って? それにしても京都御苑のタヌキは昼間どこに潜んでるのだろうか? Photo:2012/04/22 @京都御苑、京都市

2012年4月13日金曜日

第三百二十九夜/ハナムグリ

 どことなく元気の無いハナムグリ、それもそのはず、よく見ると右側前翅(鞘翅=体を覆っている堅い翅)が一部割れている。鳥に襲われたのかもしれない。完全には割れていないのでこの堅い前翅が身を護ったということか。Photo:2012/04/10 @京都御苑、京都市

2012年4月9日月曜日

第三百二十八/春のキジバト

 所々で落ち葉を掻く音がする。音の主はキジバト。春の繁殖のためのペアリングがどの個体も出来ている。あちらこちらで2羽なかよく落ち葉のなかから木の実や草の種を探し、ついばんでいる。そのうちの小柄な2羽を見ているとどんどんこちらにやってくる、頭を上げて周囲を見ているのでかがんでいるこちらの姿は知っている。じっとしているとなおもこちらにやってきて最後は50cmぐらいの近さまでやってきた。時折こちらを見るがさほど気にせず、落ち葉のなかの餌探しに余念がない。まわりからは、シジュウカラとウグイス、カワラヒワ、イカルのさえずりが聞こえてきた。Photo:2012/04/09 @京都府立植物園

2012年4月7日土曜日

第三百二十七夜/雑木林に棲むサンショウウオ

 今日は滋賀県栗東の里山に行く。街ではサクラが五部咲きというのに、今日は少し肌寒く、あられまで降り出す天気。雑木林の中の路の際に湧水の水たまり。中をのぞくとカスミサンショウウオの卵塊がいくつも水中の小枝にからまっている。ゼリー状のバナナ型の卵塊の中ではオタマジャクシ状の幼生が動いている、今週中にも外に飛び出し泳ぎ始めるだろう。Photo:2012/04/07 @滋賀県栗東市 

2012年3月30日金曜日

第三百二十六夜/春のキジ

 河川敷の草むらに何やら動くものがいた。目を凝らすんだがなかなか草むらの主が判らない。よく見ようと一歩踏み入れたとたんに目の前から♀のキジが走り出した。枯れ草にまぎれてまったく居所が判らなかった。お見事!彼女は一目散に葭原に消えてしまった。写真は後ろ姿だけである。Photo:2012/03/29 @蛇砂川、近江八幡市

2012年3月3日土曜日

第三百二十五夜/薪割りで出てきたもの

 友人から京町家のおくどさん(かまど)で炊いたご飯を食べようと誘われた。ご飯を頂く前に仕事があった。かまどに火を入れる前の作業は薪割りである。杉丸太をかまどに入る様に鉈で割るのである。割った断面から出た虫の脚に気付いた、観るとそれは体長1cmほどの小さなカミキリムシだった。幼虫時代に丸太を食い進み、その穿孔のなかで蛹化したものが、羽化した個体のようだ。孔の中で暖かくなるのを待っているのだろう。カミキリムシは出さずに割った丸太を元に戻し、もらってきた。暖かくなって出てきてからゆっくり観察しよう。さて薪割りの途中で虫を見ている僕にまわりはあきれている。でもこればかりは仕方が無い、薪に入っている虫の方が面白いんだから。Photo:2012/03/03 @四条京町家、京都市

カミキリの種名は「ヒメスギカミキリ」と判明しました。(2012/04/12)

2012年2月29日水曜日

第三百二十四夜/立つ鳥跡を濁さずって言うけれど

 「立つ鳥跡を濁さず」って言うけれど、今日は直径10mほどの小さな池の水面に羽を残していった。時折、小鳥達が水浴びしたり、水を飲んだりするので小さな羽はよく落ちてるが、今日のは新しいカモの羽だった。この池でカモを観察したのは2年前の春、カルガモのペアだった。それ以後、全く姿を見ていなかったが人が見ていないところでちゃんと来ていたことが判る。でも羽の落とし主がカルガモかどうかは判らない。Photo:2012/02/28 @京都市

2012年2月27日月曜日

第三百二十三夜/早春に産卵するニホンアカガエル


 里山の水田脇でニホンアカガエルの卵を見つける。まだまだ冷たい田んぼの水、そこにはおびただしいカエルの卵があった。親ガエルは冬眠から産卵のためにいったん降雪も終わらない早春に目覚め、産卵を終えた後、もう一度5月頃まで休眠(春眠)するという変わった生態を持つ。多くのカエルやヤモリが水田を産卵場所として利用するなかで、捕食者が少ない早春に産卵し、他のカエルがオタマジャクシの間に、子ガエルとなって雑木林に帰って行く、という作戦なのか。産卵がされていた田んぼのまわりにはおびただしい卵塊以外に、イノシシの足跡と彼らが土を掘り返し荒らした草地があった。近くの水溜まりにはアカハライモリや水生昆虫の姿も見れた、確実に春が来ている。写真:(上)ニホンアカガエルの溺死、(下)水田溝の卵塊 Photo:2012/02/26 @堅田、滋賀県

2012年2月26日日曜日

第三百二十二夜/オナガガモ

 三島池の二大勢力の一つ、オナガガモ。メス(写真手前)は特徴の無い褐色の羽に覆われているが、オス(写真奥)の尾長と頭の模様が特徴的、オスの頭と頬の焦げ茶色の羽は見る角度によって深い緑色に輝く。オスの体の特徴が名前の由来になっていることが判る。オス・メスともクチバシのブルーグレーがきれいだった。どれもすっかりペアになって仲むつまじ。このカモ結構ずうずうしく餌を与える人間が来ると真っ先にやってきてすぐに岸辺にまで上がってくる。カルガモやマガモよりも警戒心が薄いらしい。東京・不忍池でもそうだった。Photo:2012/02/22 @三島池、米原、滋賀県

2012年2月25日土曜日

第三百二十一夜/モヒカン頭のヒドリガモ

 三島池にオナガガモと共に沢山いたヒドリガモ。名前はオスの頭と首が緋色「深紅色」から、緋色の鳥「緋鳥(ひどり)」と呼ばれたことから名付けられたと言う。でもその緋色はまるでモヒカンの様でもあるから覚えやすい。オスはピュー、ピューという特徴あるかわいらしく甲高い声で鳴くが、メスは他のカモ同様低い声でガァー、ガァーと鳴く。食性は植物食。水面に浮かぶ植物性の葉や茎・根・種等を採食する。また、昼までも岸や中洲に上がって陸上の植物も食べる。潜水は得意ではないらしく、三島池ではオオバンが潜水してくわえてきた水草を横取りするので嫌われていた。Photo:2012/02/22 @三島池、米原、滋賀県

2012年2月24日金曜日

第三百二十夜/ダイサギと言う白鷺

 よく「白鷺」っていうがその名の鳥はいない、よく見かける白いサギをひっくるめて白鷺って言っている。 その中身はダイサギ、チュウサギ、コサギの「大中小」の3種類。みんなまとめてシラサギと呼ばれているように、風貌がどれもにているため、野鳥に興味の無い人は区別して見てない。つまり白い鷺のようなものは全て白鷺なのである。今夜の白鷺は体長は 90cm ほどで、日本ではアオサギと並ぶ最大級のサギ=「ダイサギ(大鷺)」である。全身の羽毛が白色で、雌雄同色。脚と首が非常に長く、くちばしも長い。足は全体が黒い。夏羽ではくちばしが黒くなり、足の基部がわずかに黄色がかる。また胸や背中に長い飾り羽が現れる。眼先が緑がかる婚姻色が現れることもある。冬羽では飾り羽がなく、くちばしが黄色くなる。チュウサギと似るが、チュウサギは体長が小さい。またダイサギはクチバシが長く、また眼下にある口角の切れ込みが眼より後ろまで食い込むことで容易に判別できる。
 チョットややこしいのは、日本国内ではこのダイサギの中に亜種の2種があって、亜種チュウダイサギ(学名 E.a. modesta)が夏鳥として(日本で繁殖して冬は南方へ渡る)、亜種オオダイサギ(学名 E.a. alba)が冬鳥として(中国東北部で繁殖して冬に日本へ渡り越冬する)、それぞれ観察される。夏に見られるのが「中大」、冬に見られるのが「大大」である・・・・が野鳥に興味の無い人は白鷺同様、どうでもいい話なのである。
 だれもがきれいだなと思うのは、この鷺がゆったりと水辺を歩いていたり、舞っている時だと思う。目の前をゆっくりと純白の大きなつばさを広げ飛ぶ姿は本当にきれいなのである。Photo:2012/02/22 @三島池、米原、滋賀県

2012年2月22日水曜日

第三百十九夜/アオサギと雪山

 フン虫研究者のT先生、野鳥研究者のN先生と3人で米原の三島池に鳥を観に行く。数日前の積雪で埋もれた池と伊吹山を想像して行ったのだが、なんと池周辺の雪はほとんど溶けてしまっていた、さすがに伊吹山は積雪たっぷりで双眼鏡で見限り山頂の小屋も雪に埋もれている。天気に恵まれ風もなく、暖かな一日。三島池では、ヒドリガモ、オナガガモ、コガモ、カルガモ、マガモ、アヒル(合鴨)、バン、オオバン、ダイサギ、アオサギ、カワウ、エナガ、カワラヒワなどが観られた。時折、パンを持ってやってくる来園者のまわりにカモ達が集まる。池の借景になっている伊吹山(1377m)を見ていると、池端の松の頂にアオサギが止まる(写真)。アオサギも雪山を眺めているよう。伊吹山はまだまだ冬の様相だがアオサギの脚は赤く色づき早くも婚姻色が出始めている。池のカモ達もすっかりカップルが出来上がっている。カモ達の渡りも以外に早いかもしれない。帰り道、西の湖にハイイロチュウヒを見に行くが、ここでも空振りで今日はなにも出なかった。いつもなら風が強いアシ原には全く風がふいていない。猛禽類の狩りは風との関係があるのだろうか。Photo:2012/02/22 @三島池、米原、滋賀県
 

2012年2月21日火曜日

第三百十八夜/何かが違う今冬

 自宅の庭にも雪が積もった。西洋ヒイラギの赤い実と雪はよく似合う・・・がさてどうしたものだろう今年は今になっても赤い実がすべて残っている。これは本来喜ばしい事なのだが、そうでもない。例年なら年末にヒヨドリが一日で食べ尽くしてしまうほどなのに今年は違う。山間部では雪が多いと聞くが地方全体ではやはり暖かいのか。この小さな木になる実に頼らなくとも山には豊富に食べ物があると言うのか。仕事で度々通る琵琶湖大橋に近い湖岸道路でも同じ事を気付いた。今年は琵琶湖のカモ類が少ない。北国では例年にない豪雪、ならばカモ類が越冬のためにさらに多く来てもよさそうである。気候の問題か、それとも地震の影響でもあるのだろうか。いろいろな場所で気付く、例年と何かが違う今冬である。Photo:2012/02/20 @京都市

2012年2月18日土曜日

第三百十七夜/雑木林とコサギ

 京都市内にもようやく雪が積もった。北陸や東北の積雪のことを考えると喜んではいられないが、やはり雪が積もって健然な冬期である気がする。早速、植物園に散歩に出かける。雪景色を一目見ようと普段よりも来園者が多い。散歩をしていると不思議な場面に出会った。カシ林の薄暗い林床をコサギが歩いている。普段、コサギは川辺にいる鳥でこのような場所にいる事を見た事が無かった。様子を伺っていると選んでこの暗い林床を歩いている、偶然迷い込んできたのでない事は確かだ。お目当ては餌らしい。小走りに歩いたかと思うと立ち止まり、地面を凝視し、しきりに何かをついばみ食べている。こんな行動を繰り返していた。コサギに習って、同じ様に地面に目を凝らすが何がいるのか判らない。積雪で水浸しになった地面からミミズでも出てきているのかもしれない。それにしても地面に残る雪にコサギの白羽がすっかりまぎれて保護色になっていることは面白い。雪が無ければ目立って仕方ないだろうに。Photo:2012/02/18 @京都府立植物園

2012年2月17日金曜日

第三百十六夜/ノスリの飛翔に見とれる

 タカ類の飛翔を見ていると時間が過ぎるのを忘れてしまう。実に見事。風を読みながら、時にはゆったりと舞ったり、空中に留まり地面の一点を凝視したり、また時にはすべるように上に下にと軽やかに移動する。時折、すとんと落ちる様にヨシ原に入るが獲物に逃げられたのかすぐに舞い上がってくる。是非ともその狩りの様子を見たいと思うのだが、なかなか出会えない。双眼鏡で見ていると目の様子まで判る、正面からこちらに向かってくる時などはゾクゾクしてしまう。この時期、西の湖のヨシ原にはノスリ(写真)、ミサゴ、ハイイロチュウヒ、チュウヒ、オオタカ、チョゲンボウ、トビなどのタカ類が観察できる。それぞれに体形や飛び方が違っていてなれればその判別は容易である。Photo:2012/02/17 @西の湖、近江八幡市、滋賀県

2012年2月8日水曜日

第三百十五夜/葦原を舞うハイイロチュウヒ

 仕事帰りに近江八幡・西の湖のヨシ原に寄る。雪まじりの風、北西からの風がもの凄く強い。遠くに見える工場の煙突から出る煙り(水蒸気?)は、真横にどこまでも流れていた。大きな望遠レンズでチュウヒを狙うバードウォッチャーも今日はそうそうに引き上げていく。午後4時頃、ハイイロチュウヒがどこからとも無く現れた。独特のV型につばさを上げて、畑や水田の地面すれすれ高さ1mぐらいを滑空している。畑の前に障害物(土手や堤防)が現れると一旦、上空に軽く舞い上がり再び降りてくる。時折、急に地面に降りる。獲物のネズミを捕らえたか? 暗くなるにつれ彼らの活動域はヨシ原に移動し、同じような飛行を繰り返していた。一羽、二羽と個体数が増えてくる。午後5時、ヨシ原には七〜八羽以上のチュウヒ、ハイイロチュウヒを見た。少し上空ではノスリが旋回し、近くの電柱にはチョゲンボウが止まる。褐色のチュウヒが時折、ヨシ原に降りる、しかしどこにいるのか判らない。以外に近くから飛び立ち驚く事もある。こちらの「見たい!」という気持ち=気配を察するのか、ヨシの中で用を足していると(気配が消える?)、向い側から現れた。何も出来ず見送るばかり。そんな鳥たちもやがて暗くて見えなくなった、時々ひらりひらりと軽やかに飛ぶのはトラフズクだろう。予想以上に多くの個体を見ることが出来た、こうなったら写真なんてどうでもよくなる。Photo:ハイイロチュウヒ♀ 2012/02/08 @西の湖、近江八幡市

2011年11月27日日曜日

第三百十四夜/カワセミ

 府立植物園に行く、蓮池の四阿に幾人もの鳥を撮る人たち。レンズの先は、池の中央のネットに止まる一羽のカワセミ。決して良くない場所なのにカワセミが動く度に皆さんしきりにシャターを切る。カワセミはそんな魅力を持つ鳥である事はもちろん判っているがどうもこの様な人達の動きと、このような環境での撮影は好きになれない。はなれたところからコンパクトデジカメで一枚だけ押さえた。Photo:2011/11/21 @京都府立植物園

2011年11月9日水曜日

第三百十三夜/モリアオガエルの幼体

 観察を続けているある池のモリアオガエルが冬期どこで越冬するのか知りたかった。毎年探してはいいるものの確実な事は判らない。昨年はハスの枯葉が漏斗状になった中に潜んでいるものを見つけたが果たして春までいたかどうかは判らなかった。今年も探す、やっと一頭の幼いカエルを発見。体長2cmに満たない今年上陸した個体だった。池そばの倒木の地際にあいた孔にすっぽりと収まっていた。如何にも居心地が良さそうだ。乾燥に弱い彼らは以外にも水際からはなれずに越冬していると考えても良さそうだ。Photo:2011/11/02 @京都市

2011年11月1日火曜日

第三百十二夜/秋のオオアオイトトンボ

 オオアオイトトンボ、光沢の強い緑色をした美しいイトトンボ。アオイトトンボに似るが、こちらの方がやや大きい。京都御苑界隈では、秋になってから見る事が出来る。このトンボの産卵習性は面白く、水面におおいかぶさった木の樹皮に産卵する習性がある、そのために木陰のある池でよく発生している。成虫は、池の周辺の林床や、うすぐらい草藪で見かけることが多い。体が大きい割には、脚部がキャシャだからか、草にぶら下がるように止まる。Photo:2011/11/01 @京都御苑

2011年10月18日火曜日

第三百十一夜/樹上に住むアオマツムシ

 今や街の街路樹でよく見るアオマツムシ。コオロギやキリギリスの仲間とは、思えない面構え。むしろナナフシの顔の様である、樹上に住むとこんな顔になるんだろうか。日本では本州、四国、九州に分布。明治時代に中国大陸より日本に入り帰化した外来種という説が一般的だが、原産地ははっきりせず、日本での初記録年月日も1898年という説と1908年ごろという説があるが、はっきりしていることは初記録地は東京都の赤坂榎木坂であるらしい。一生を通して樹上に住むので土の地面が無くても、少々乾燥した環境にも対応できるたくましさ、だから街のなかでも増えることが出来る。バス待ちの時に頭の上で声はすれど姿は見えず・・・形が平たく、葉や枝の上を素早い動きをするためだ。Photo:2011/10/18 @京都御苑、京都市

2011年9月27日火曜日

第三百十夜/リスアカネ

 今日は暖かく気持ちのいい一日だった。陽がさすといろいろな昆虫が顔出す。そろそろ赤トンボの季節。下界の暑さを避け山地に登っていたアキアカネも下界に降りてきた。ハスに覆われた池ではリスアカネの産卵も始まった。リスアカネの♀が空中から草が繁茂した水際に、まるで尾の先を水に打ち付けているかのように卵を産んでいる(打空産卵という)、これは産むというより「蒔く」という方が正しい表現。面白い光景だった。名前の「リス=Risi」はイギリスのトンボ学者F.Risに献呈されたもの。外来種ではありません。Photo:2011/09/27 @京都御苑、京都市

2011年9月16日金曜日

第三百九夜/アメンボ

 鴨川は台風12号の影響もほとんどなく、むしろ河原の堆積物が流され本来の清流に変わった。護岸の植物のたくましさは驚くばかりで、濁流に没したものさえ元気に残っている。川岸の水流が穏やかなところでは、魚の稚魚が沢山泳いでいる。濁流の中どのようにして過ごしたのか。水面に軽やかに浮かぶアメンボは、構造的にとてもきれいな姿だ。その動きから想像しにくいが水面に落ちてくる昆虫を見つけると直ちに捕らえて体液を吸ってしまう。Photo:2011/09/16 @鴨川、京都市

2011年9月14日水曜日

第三百八夜/クジャクチョウ

 出張先(長野県小諸市)で出会ったクジャクチョウ。夏場の高原ではよく見れるが街中の駅前で見るとやっぱり長野なんだなと思ってしまう。翅の裏側は地面か枯葉のような模様で翅を閉じているとどこに止まっているのか判らない。時折、ぱっと翅をひろげるとそこには名前のクジャクの羽模様の目玉が現れる。この目玉模様、生きている時は前翅にしか見えないが展翅標本にすると後翅にも現れる(生きている時は前翅に隠れている)。今、見ることが出来る個体は越冬に入り、来年春に再活動する。@小諸市駅前、長野県小諸市 Photo:2011/09/12

2011年9月8日木曜日

第三百七夜/蛾の身になにが起こったか?



 知人より蛾の写真が送られてきた(写真上)。翅の紋様からするとオスグロトモエ(♀)だと思う。「思う」と言うのは、近似種のハグルマトモエに非常に似ているからなのだ。この写真を見て「おおっ!」と興味を持った。その興味は蛾の種類ではなく。この蛾の左下翅にざっくりとするどく、あたかも爪で(しかも5本指?)はぎ取ったかのような欠損にである。その部分を拡大すると写真下のように「スパッ」となにかで切り落とした様になくなっていることが判る。こんな傷がただ飛んでいる時に付くとは思えない、翅の状態から羽化してさほどの日も過ぎていない、しかも片側だけだ。はたしてなにがこの蛾の身に起きたのか? 実はこの蛾の翅は、アオバズクというフクロウの仲間の食事痕によく現れる。この翅の傷もアオバズクから逃れた時に出来たものか? それとも街灯に引き寄せられ壁に止まっていた時にネコに手を出されたか・・・そんなことを想像すると一枚の写真からでも自然の中で起こる様々なことに思いが向かうのだった。原則として自分が撮った写真を使っていますが、今回は友情出演です。Photo:2011/09/07 @京都御苑。京都市

2011年9月7日水曜日

第三百六夜/木陰で休息するカラスアゲハ

 木陰で休息するカラスアゲハ(夏型♂)を見つける。翅はまっさら、鱗粉も尾状突起も完璧、羽化してまもない個体と思う。普通は春と夏の年2回の発生、夏の個体は7〜8月に羽化するのでこの個体は少し時期遅れの登場とも言える。でも自然界では発生の時期が微妙にずれる個体がいることで健全なのだ。種のほとんどが同じ時期に発生してしまうと気象などの自然環境に大きな変化が出た時に、一番大切な繁殖に支障が出てしまう。登場する時期がばらばらとある一定の約束の上(大まかな季節)でずれることで、自然環境の変化に対応できるので健全なのだが、かといって変な時期に一匹だけ登場してもこれまた繁殖が出来ない。虫の世界はなかなか複雑に、かつ上手く出来ている。このカラスアゲハの場合は、登場するある一定の約束とは、春型5月頃(前年秋に蛹になって越冬した個体が羽化=春型)、夏型7〜8月頃に羽化(春の個体が産んだ卵から発生したもの=夏型)する時期である。これを年2回発生という。Photo:2011/09/06 @京都御苑、京都市

2011年9月2日金曜日

第三百五夜/よくわからない蛾の世界

 虫の世界はよくわからない。大きくてりっぱなものはほんの一握りで、ほとんどは小さくてその生活史も満足に判っていない。芥子粒のようなハエや甲虫でいっぱいである。ぱっと見で「**の仲間だ」と判れば良い方(これが難しいのだが)で、この写真なんかはフィールドで見ると植物の種が葉っぱについているとしか思えない。ほとんど見過ごしてしまう。幸いに「蛾の仲間」と言うことまでは経験上で判る。体長10mmに満たない、動きもせずひたすら葉の上で、頭を下にむけて、触覚を体に沿わしている。体の不思議な体色は、翅の模様である。調べると「ヤブマメヒメシンクイ」名前だけでは植物なのか鳥なのかさっぱり見当もつかないだろう。でも蛾の仲間である。ポップ類を食害するヨツスジヒメシンクイと酷似するが、はっきり判っていることは食草の違い。名前の頭につく「ヤブマメ」を幼虫は食べる。判らないから面白い、でものめり込むにはちょっとした勇気も必要。Photo:2011/08/30 @京都御苑、京都市

2011年9月1日木曜日

第三百四夜/卵を細枝に託す・クマゼミの産卵

 あれほど熱かった夏なのに過ぎてしまうと、ほっとするどころかどこかさみしい。涼しい日が続くと日ごとにセミの鳴き声も減ってきた。今日はクマゼミがアラカシの細枝(枯枝)に卵を産んでいた。地面から高さ1m程度、鉛筆の太さよりも少し細いぐらいの枝だったのでゆっくりと観察できた。腹部先端を小刻みに動かし続ける、産卵管はまだ出ない。しばらくすると腹部先端より少し上(写真=セミの腹端より少し上に見える)から太い産卵管が現れた、このキリの様な産卵管を全身の力で枝に差し込む。この時、セミ成虫の前脚が強靭なのが役に立つのか。数分をかけて産卵を行なう、卵は樹皮下に産みつけられた。産卵が終わるといったん産卵管を抜き、休み、少し枝の上に移動してもう一度同じことを繰り返す。一回の産卵で相当に体力を消耗するのだろう、産卵と産卵の間の休息の時間は長い。セミが飛び立ったあとは、枝皮に上側にささくれたノミで刺したような痕が残った。産卵された卵はこのまま冬を越し、来年夏前に孵化し、地面に降り長い地下生活(幼虫)に入る。成虫となって地上に現れるのは数年先。成虫の期間は短いが、一匹の生涯(卵〜幼虫〜成虫)を考えると昆虫にしては極めて長生きと言える。Photo:2011/08/30 @京都御苑、京都市

2011年8月23日火曜日

第三百三夜/クモの子を散らす

「蜘蛛の子を散らす」=「大勢の者が散り散りに逃げていく様子をいう」。知っていることわざだが実際にクモの子を散らすことはあまり無い経験だと思う。今夜の写真は、このクモの子を散らした状態のもの。写真のクモは「イオウイロハシリグモ」という、このクモは普段餌を捕る巣をかけない。ただし母グモはまんまるの「卵のう(卵の塊を糸でくるんだもの)」をくわえて運び守るが孵化する前に草葉間に吊るした卵のうのまわりに保護用の簡単な巣をかける。孵化してしばらくはまだ母グモが卵のうを守っているが、この巣に母グモの姿は見当たらない。子グモの塊を写そうと葉に触れてしまった・・・この瞬間、まさに「蜘蛛の子を散らす」状態が起こった。何匹いるのだろう500以上か1000匹以上か見当もつかない、小さなクモがものすごい数動き出した。この塊を「まどい」と言う(団居る、円居=1か所に集まり会すること、特に親しい者どうしが集まって楽しむこと)。 ただしむやみに散ること無く、やがて落ち着くともとの塊に戻った。塊から出ることは、補食される確率が高いのだからもうしばらく大きくなるまで「まどい」を続ける。そこで新たな疑問が、この大きさ子グモの餌は何だろうか・・・ひょっとするとこの中で共食いも起こっているかもしれない。さてこの中から親にまで生き残る確率はどれほどのものだろうか。まどいの大きさは、直径3〜5cm程度。Photo:2011/08/23 @京都御苑、京都市

2011年8月16日火曜日

第三百二夜/子育てをするクワガタ

 「チビクワガタ」と聞くと少し冗談のような名前だが、れっきとしたクワガタムシの一種。他種のように♂が大きなアゴを持っているという訳でなく、名前から想像できるように体長15mmほどのチビで、♂も♀も小さなアゴしか持たない。ただし、他種との違いはその体形よりもその生活にある。普通、昆虫類は親子が互いの顔を知らない、ましてや親が子育てなんかしない・・親は卵を産み死ぬ、その後卵からふ化した幼虫は成長しやがて親となる。しかし、このチビクワガタは、朽木・倒木の中で家族単位で暮らし、成虫(親)が材を噛み砕いて幼虫の餌を生産するという亜社会性生活を営む。成虫(親)は、動物性の餌を好み、樹皮下でミミズや他の昆虫などを捕食しているようだが、樹液に来ることもあるらしい。意外と飛翔性が高く、灯火にもよく飛来する。そんな家族単位の暮らしだから、倒木を割ると100頭以上もの成虫と幼虫が見つかることがあるという。こうなれば家族というよりも「村」の様相だ。Photo:2011/08/07 @京都御苑、京都市

2011年8月10日水曜日

第三百一夜/お面を持つベッコウハゴロモ


 昆虫が持つ翅や体の色や斑紋を見ていつも不思議に思う。なぜそれが必要なのだろうか、どんな時にそれが役立つのだろうか。そして時としてその意味が観察で判ることがある。今日のベッコウハゴロモとクサギカメムシがそうだった。クサギの枝にとまるベッコウハゴロモを写そうと観察していた時、正面からクサギカメムシがやってきた。クサギカメムシがハゴロモの前まで来たその時、ベッコウハゴロモは逃げること無く翅を垂直に、つまり正面から来る相手に対して最大に見える状態にして翅の斑紋を見せつけた(写真上)。瞬間、カメムシの脚がとまり、ハゴロモを避けるように通り過ぎたのだった。なんらかの効果はあったようだ。昆虫の写真を撮る時は頭を上位置にしてしまいがちだが、ベッコウハゴロモの場合、頭を下にした時に翅の左右にある斑紋が「鋭くにらむような目」に見えることが判った。目に見える斑紋は左右の端にあるのでまるで大きな顔に見える。なんと太い眉もある、きりりとした鼻筋も見える(写真下)。そして一番大切な頭部はなんの斑紋もそなわっていない。おそらく捕食者の一撃は翅の目にむけられるだろう、しかしその時は逃げれば良い。大切な身体の部位にはまったく影響は無いのだから。翅の斑紋はまるでパプアニューギニアの原住民のお面のようでもある。Photo:2011/08/09 @京都御苑